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秋の季語16

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季語は四季折々の風情を愛でる日本文化の象徴です。季語に含められる動植物を中心に、写真付きの俳句歳時記風にまとめた「季語シリーズ」、今回は秋の第十六回です。猫凡という俳号で自作の句を入れています。
【秋の野芥子】
歳時記未収載ですが、当然秋でしょう。キク科の1、2年草で、草丈は1~2m程度。茎や葉を切ると白色の乳液を出すことから一名「乳草」。花は夜には閉じます。「草の花」といえばこうした秋の野の草花が含まれるので便利かもしれません。

鳶のなく日のさびしさよ草の花 井上士朗

秋の野芥子埃にまみれなほ潔し 猫凡
【秋の蝶】
アゲハなどは日本の多くの場所で年に2回成虫が現れるようです。春型と秋型があるわけです。冬に向かって行く末の案じられる哀れがこの季語の主眼とされます。

睦み合う同じ模様の秋の蝶 亜老子

秋の蝶番ひて墜ちて土となり 猫凡
秋の蝶でさらに。

しらじらと羽に日のさすや秋の蝶 青蘿

ステンドグラスそっと開いて秋の蝶 猫凡
【秋の田】
稲が熟して穂を垂れた田。実りの静穏な喜びと共に、一抹の寂しさも。天智天皇の、秋の田の刈穂の庵の苫をあらみわが衣手は露に濡れつつ、は百人一首でもお馴染です。

秋の田にものを落して晩鴉過ぐ 山口誓子

田色づき君傍に在る不思議 猫凡
【秋の海】
夏の賑わいが過ぎ去った静かな海。写真は下関市吉見の秋の海。吉見漁港の沖合に浮かぶ三つ組の無人島を賀茂島と呼びます。この島には八重事代主(海の神)、大綿津見神(海上交通安全の神)、弁財天(水辺の財宝の神)が祀られています。賀茂島の石や草木はすべて持ち出し禁止で、女性は女神である弁財天が嫉妬するため上陸禁止です。

みをつくし遥々つゞき秋の海 高浜虚子

秋の賀茂島を望みて
常ならず遠く小さく賀茂島の見ゆるは老いか秋の孤独か 猫凡
【秋桜】
メキシコ原産ですが、秋風に揺れる風情が日本人好みで広く親しまれています。さだまさしの名曲でもお馴染み。

乱るるといふ美しさ秋桜 伊藤政美

真砂なす地上の星か黄花秋桜 猫凡
【夜長】
暑い夏を越して涼しい夜が長くなるのを喜ぶ気持ち。

まず足の指より洗ふ長き夜 冨士眞奈美

ランデブー短き秋の夜長哉 猫凡
【月見】
月は年中見られるとはいえ、秋の夜長に見る名月は格別なもの。娯楽の少ない古人は薄を活けて中秋の名月を愛でながらお団子を食し歓談したのでしょう。

月見酒天動説のまことかな 小林直司

観月の数多見守り月温し 猫凡
【露草】
ツユクサ科の馴染み深い一年草。涼やかな青は誰からも好まれます。月草、青花、百夜草など異名が多いのも親しまれてきた証拠。

伸びあがつて露草咲いてゐる待つてゐる 種田山頭火

ガガーリン見し青色か月草の花 猫凡
【ハロウィン】
ケルト民族において、大晦日とお盆がいっしょくたになったような祭りで、万聖節とも。日本に定着したのは季節毎の販売戦略、コスプレ、パーティー文化などの影響でしょう。佐藤文香さんに言わせると「ハロウィンを季語とするなら、日本における若者の軽率な空気、いわゆるパリピ(party people)感を本意とするべき」です。

障害者用トイレで着替へハロウィーン 佐藤文香

プードルもコスプレさせられハロウイン 猫凡
【蟷螂】
肉食性昆虫で、分類上ゴキブリやシロアリに近いといわれています。鎌を揃えて構えた姿から拝み虫、斧虫とも。夜は目が黒くなりますが、これは光をより多く集めるためのようです。

かりかりと蟷螂蜂のかおを食む 山口誓子

蟷螂は洒落者夜にサングラス 猫凡
【菊芋】
キク科の多年草。日本各地の平野部に自生。背が高く、秋にいかにも菊らしい花を多数付けます。地下茎は可食ですが、今では全く顧みられず。

菊芋の雨の黄色や野川べり 細見綾子

喰う人も無く菊芋の我が世哉 猫凡
【いなご】
イナゴ亜科の総称を指す場合は稲子、ワタリバッタ(locustつまりサバクトビバッタやトノサマバッタが大量発生して群生相となり、高い飛翔力を備えたもの)を指す場合は蝗、と使い分けるのがほんらいのようですが、日本でトノサマバッタが群生相になることはまずないので、俳句でいなごといえば、〇〇イナゴもトノサマバッタも広く含め得ると私は考えています。

蝗追ふ女体ふはりと川越える 鈴木石夫

何処までもをのこといなごの鬼ごっこ 猫凡
【泡立草】
本来は在来のアキノキリンソウのことですが、外来種セイタカアワダチソウを含めても良いのではないでしょうか。後者は茎の部分が萩の代用として簾等に使われることから代萩(だいはぎ)とも呼ばれます。虫媒花であり花粉を飛ばすことはないので、花粉症とは無関係です。

大利根の曲れば曲る泡立草 角川照子

高き人屈みて話す泡立草 猫凡
【仙人草】
Clematis ternifloraつまり「三枚葉のクレマチス」。和名は実に付く綿毛を仙人の髭に見立てたことから。プロトアネモニンという毒を持ち、別名「牛食わず」「馬の歯落とし」、「馬歯欠(うまのはこぼれ)」。葉をつぶして川に流し、魚をとる魚毒とするそうです。近縁種のサキシマボタンヅルは生薬威霊仙(いれいせん)で、関節痛に効くので疎経活血湯などに配されています。毒も使いようでは薬になるのですが、民間療法以外での仙人草の処方例は知られていません。歳時記未収載で、ネット検索では秋の季語として句作しているもの、晩夏とするものがありました。

何処より降りてきたるや仙人草 写真・俳句ブログ:犬の散歩道https://ameblo.jp/yujyaku/

仙人草白き十字花川に浸け 猫凡
【曼珠沙華】
ヒガンバナの異名。サンスクリット語 manjusakaの音写で「赤い花」の意。釈迦が法華経を説いた際、これを祝して天から降った花(四華)の1つで、天上の花の意味もあるようです。葬式花、死人花、墓花などの地方名も。

砂に陽のしみ入る音ぞ曼珠沙華 佐藤鬼房

稔れるを列して祝ひ曼珠沙華 猫凡
曼珠沙華でもう一句。

曼珠沙華兄死す亡父の顔をして 猫凡
【藤袴】
七草の一つで古名は蘭(らに)。『滑稽雑談』に「漢書に、ある女、野に行きて死にたりけるが、藤にて織りたる袴を著てはべる。その中より生ひ出でたりといふ」とあり、なんともロマンティックな花のようです。オスのアサギマダラを呼ぶ花として有名。

藤袴とは風の色水の色 藤井啓子

藤袴てふ訪わず野に死せり 猫凡
【冷やか】
秋になって肌に直接覚える冷気。石に触れたり、板の間に素足で降りたりした時の感じ。

人退きて忽ち冷ゆる能舞台 横山房子

断崖の拒みて冷えて其処に存り 猫凡
【野菊】
山野に咲く菊の仲間を広く指す言葉で、学問的にはノギクという植物はありません。秋を代表する季語の一つでしょう。

野菊とは雨にも負けず何もせず 和田悟朗

野菊一輪神の光に守られて 猫凡

いかがでしたか?季語シリーズは能う限り続けていくつもりです。次回もどうぞお楽しみに。

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2024/11/19
🙇🏼‍♀️こんばんは!

👏👏👏地上の星か黄花秋桜と
蟷螂の洒落者夜にサングラス
👍🏼です
(私好み)
2024/11/19
セイタカアワダチソウといえば、先日、お風呂に入れて3日目くらいになるとお風呂のお湯が泡立つ、との記事を読みました。ハーブの効能があるようですね🛀

『百鬼夜行抄』でアサギマダラの精が、ヒトに使役されてしまっているのですが、役目を済ませたら目的地に行って相手を見つけて子孫を残して命を巡らせるのです、とジュースを振る舞われながら話しているシーンを思い出しました。

ちなみにこのアサギマダラの精はジュース飲み過ぎでヨタヨタとしか飛べなくなっております💦

ヒトの使役なんかで命を減らすより、命を巡らせる方が良いだろう?と説得されているそのお姿は平安朝の狩衣姿🦋

季節が急に変化している今年、命を巡らせようとしている🦋いつもより目につきました。
2024/11/20
こんばんは。

いつも季語のご紹介ありがとうございます。
月見酒天動説のまことかな 小林直司
いいなあと思いました。地動説が正しいのはわかってますが
つい空を見上げると天動説に惹かれたりします。🌠

「何処までもをのこといなごの鬼ごっこ」 少年ねこたんぽさんが見えます。
子供のころは田んぼでイナゴをたくさん捕まえているおばさんを見かけたものです。あれは佃煮とかにしたんでしょうね。きっと。
少年ねこたんぽさんは純粋に虫取りがしたくて虫かごに入れて
自慢げに持ち帰って見せていそうです。

「真砂なす地上の星か黄花秋桜」
正岡子規の本歌取りでしょうか。
星のようにたくさんのキバナコスモスが揺れてそうです。

「ステンドグラスそっと開いて秋の蝶」 
これはアゲハ蝶。黒の縁取りがステンドグラスめいて好きです。

今回もお世話になります。よろしくお願いします。😊
2024/11/21
こんにちは😊

今回もたくさんの季語と例句とpicとありがとうございます❣️

"秋の蝶"という季語に憧れてます🦋.*˚
たねちゃんさんも上手に作られてましたね。
蝶々ってちょっと怪しい魅力があるというか、あの動きがチョット苦手でした😅
暖かい日が多く庭にたくさん蝶々が来てくれましたがなんだか楽しげで詠むことできず。
いつか作って見たいです😊
2024/11/29
@ビビ⋅アン さん
お読み下さりありがとうございます❣️

夜のキバナコスモスは初めてで、中島みゆきの地上の星がスーッと浮かんできました。
2024/11/29
@risho さん

お読み下さりありがとうございます❣️

嫌われ者にもそれなりの役割があり、そういう存在があるから自分も生きている、それが地球の懐の深さみたいに思えます。
2024/11/29
@ゆん さん
お読み下さりありがとうございます❣️

子供の頃、捕れないコウモリを追いかけ回して転んでしたたか擦り剥いたことを思い出しました。

「地上の星」は中島みゆきの方からの着想です。子規の歌は恥ずかしながらゆんさんのこのコメントで知りまして、あちゃー、同じかぁ!と‥🥲
2024/11/29
@そらもよう さん
お読み下さりありがとうございます❣️

実は私も蝶はやや苦手なのです。鱗粉が手に付くし、翅の美しさに対してボディの生々しい肉感が‥写真も撮りづらいですしね。

秋の蝶というと哀れ、という類型をそらもようさんには是非打破してほしいです。お待ちしています。

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