カリン(花梨)は、のど飴やシロップ、かりん酒などに利用できる香りの良い実をつける果樹です。春になると紅色の香りのよい美しい花を咲かせ、秋頃に実をつけます。
庭木や盆栽としても人気の高い木なので、自宅で育ててみたい方も多いのではないでしょうか。今回は、カリンの育て方について詳しくご紹介します。
カリンはどんな果樹?育て方は簡単?
カリンは、中国が原産のバラ科の落葉樹です。あまり手をかけなくてもたくさん実をつけることが特徴で、薬用として使われることもあることから、日本でも古くから栽培されてきました。
立ち枝がよく出るので剪定して樹形を整える必要がありますが、狭い場所でも栽培でき、初心者でも比較的かんたんに育てることができます。
カリンは、秋に収穫できるバラ科(ナシ亜科)の果樹です。家庭菜園で育てるならば、しっかりと剪定し、小さなサイズで育てるのがおすすめです。
カリンの栽培に適した環境
カリンの栽培環境は、リンゴとほぼ同じです。比較的雨が少なく、冷涼な気候を好みますが、しっかり管理をすれば北海道から鹿児島まで広く栽培ができます。暑さに弱いので、夏場は日除けをすると良いでしょう。鉢植えやコンテナで育てる場合は、10号以上のサイズを使用します。
沖縄などの温暖な地域では大木になりやすく、成熟する前に実が落ちてしまいます。収穫を目的とする場合は、残念ながらカリンの栽培には向いていません。
よく日の当たる場所が適していますが、西日が強く当たる場所はあまり合いません。風通しがよいのも必要条件です。
カリンの土づくり
カリンは、水はけと水持ちが良く、肥沃な土壌を好みます。とはいえ順応力が高いため、あまり土質は選びません。
地植え栽培のカリンは、適度の湿気のある場所を選んで栽培しましょう。鉢植え栽培のカリンは、赤玉土6:腐葉土4または赤玉土7:腐葉土3といった混合土がよいでしょう。
カリンは地植えの場合には、黒土のような粘土質の土よりも砂質の土のほうが合っています。水はけのよさが重要なので腐葉土を使うのがいいですね。逆に鉢植えの場合には、ある程度水持ちする土でなければいけませんよ。赤玉土6:腐葉土3:川砂1の配分もおすすめ。市販の培養土でもよいでしょう。
カリンの植え方
カリンの接ぎ木部分がしっかりとした苗木を選んで、冬場に日当たりが良くなる場所に植え付けましょう。
地植え栽培のカリンの植え方
地植え栽培のカリンは、植え付けたあと、若木の間は支柱を立てておきます。植え付け後は、株元をワラやバークチップなどで覆いましょう。
- 植える場所を決め、50センチ四方の植え穴を掘る。植え穴はすり鉢状にせず、垂直になるように掘る
- 掘り上げた土に腐葉土1:赤玉土1を混ぜておく。ただし、元の土が粘土質であったり、礫が多いときは使わない。その場合は新しい土を多めに用意する。
- 掘り上げた穴に古い根などがあれば取り除く
- 混ぜた土を植え穴の半分くらいまで入れる
- 苗を傷つけないようにポットから抜きとり、スコップなどで底を優しく削る
- 苗を仮置きし、地面とポットの上部の高さが揃うように土を入れる。幹が植え穴の中心になるように苗を置いて、周囲に土を入れる
- 植えた後は苗の周りを軽く踏み、土を落ち着かせる
- 樹高が高い場合は、植え付け時に、50〜60cmの高さまで苗を切り詰める
- 苗の周囲にドーナツ状に溝を掘り、たっぷり水をやる
鉢植え栽培のカリンの植え方
- 8〜10号の鉢植えを用意し、鉢底ネットを敷いてから鉢底石を3〜5cmほど入れる
- やや高植えになるように半分ほど用土を入る
- 苗を傷つけないようにポットから抜きとり、スコップなどでそこを優しく削る
- 鉢の中心に苗を置き、周囲に用土を入れる
- 土の表面を平らにならし、手で押さえて根鉢と用土をよくなじませる
- 樹高が高い場合は、植え付け時に、50〜60cmの高さまで苗を切り詰める
- 鉢底から溢れ出るまでたっぷりと水やりする
カリンの水やり
地植え栽培のカリンの水やり
地植え栽培のカリンは、基本的に水やりは必要ありません。自然に降る降雨で充分ですが、あまりにも乾燥がひどく、地面がひび割れたようなときは、朝夕の涼しい時間にたっぷり水やりしましょう。
鉢植え栽培のカリンの水やり
鉢植え栽培のカリンは、表土が乾いたらたっぷりと水やりします。花芽が付き始める頃は、水やりをやや控えめにし、真夏は朝夕の1日2回、しっかりと水やりをして下さい。
根元にマルチをしておき、乾いたら水をあげてもよいでしょう。
カリンの追肥・肥料
カリンは、植え付け1カ月後と、鉢植えから地植えに移した後には、球肥を3〜4個鉢縁に埋め込みます。
その後は、1〜2月と5月下旬、8月下旬に根元から少し離れた位置に緩効性肥料を施しましょう。多肥にはしないように注意してください。
カリンの仕立て方・剪定
カリンの剪定は、通常は2年目以降の12〜2月頃に行うのですが、夏場には長い枝がよく伸びますので、夏季剪定も行った方が良いでしょう。夏に長い枝を伸ばしたままにしておくと、あまり実が付かなくなってしまいます。
新梢の先端はなるべく残すようにして短果枝を多く付けさせ、長果枝は切り戻します。切り戻したところから短果枝が出るので、翌年さらによく実が付くようになります。
地植え栽培のカリンの剪定
地植え栽培のカリンは、一般的に開心自然形に剪定して仕立てます。これは、主幹の高さが60〜90cm程度、主枝を3本くらい横方向に伸ばす自然に近い樹形です。植え付けから数年は、あまり切らず放任します。
- 植え付け時に、50〜60cmの高さで苗を切り詰める。根も1/3ほど切る
- 冬になれば、長く伸びた主枝を1/3ほど切り詰める
- 樹形ができてきたら、強剪定をせず、先端を切り詰める程度にして花芽のつく枝を伸ばす
- 6月〜7月ごろ立ち枝がよく出るので、横へ広げるように枝をきり、懐が込み合わないように透かす
混んだ部分は切りますが、切り過ぎには注意しましょう。切り戻しのしすぎで収量が減ることもあるので注意しながら行いましょう!
鉢植え栽培のカリンの剪定
鉢植え栽培のカリンも、開心自然形に剪定しても良いですが、U字形の方がおすすめです。2本の主枝をU字形に仕立てると場所を取らずに済むので、ベランダなどにも置きやすいですよ。
- 植え付け時に、主枝を鉢の2倍ほどの高さに切り戻す
- 冬になれば、長く伸びた主枝を1/3ほど切り詰める
- 伸ばす側枝は先端を切り詰め、他の不要な枝はつけ根で切る
- 6月〜7月ごろになれば、左右に支柱を立て、U字に誘引していく
カリンの開花・受粉
カリンは、4〜5月上旬に紅色の美しい花が咲きます。実つきをよくするには、筆などで人工授粉してやりましょう。家庭菜園では人工授粉をした方が確実に実がなります。
人工授粉では、花の根元にある子房が大きいものを選ぶのがポイントです。子房が小さい花は落果しやすいので、大きいものを選ぶのが成功のコツです。
カリンには品種がなく、一本の木で自分で受粉をするので、基本的には必ず結実し、収穫できるのが嬉しいですね。
カリンの実がならないのはどうして?
カリンの実つきが悪いときは、うまく受粉できていないことが原因である可能性が高いです。
カリンの受粉は、花粉を運んでくれる訪花昆虫が助けてくれますが、都市部の高層階のマンションベランダなどで育てている場合は、訪花昆虫があまりやってきません。
人工受粉をした方が確実に実がつくので、時期になれば、筆先で花の中をくすぐるようにかき回しておきましょう。
カリンの摘果
カリンの実は、5月下旬〜6月上旬になり始めます。基本的に摘果は必要ありませんが、実が多すぎるときや、形が悪い実は、この時点で摘果しておきましょう。
葉20〜25枚に1果の割合で、育ちの良い実を残して摘果します。6月下旬までに袋かけを行うことで、害虫の被害を抑えることができます。
カリンの収穫
カリンの収穫時期は9〜11月上旬です。実の色が緑色から黄色に変わり、良い香りがしてきたら収穫適期です。カリンは実がとても硬いので、生食はできません。果実樹やシロップなどに加工して食べます。
カリンの育て方で注意すべき病気・害虫
カリンにつきやすい害虫
カリンにはさまざまな害虫が付きやすいので、注意が必要です。新芽の茎などに付きやすいアブラムシや、枝に寄生するカイガラムシは、葉や茎の汁を吸う害虫です。見つけたらすぐに消毒をして駆除しましょう。
また、ゾウムシやシンクイムシによる果実の食害についても気を付けます。果実の食害は、6月下旬頃までに袋かけをしておくことで予防できますので、ぜひやっておきましょう。もしも害虫を見つけたら、すぐに捕まえて駆除しましょう。
カリンがかかりやすい病気
また、カリンがかかりやすい病気は赤星病です。ヒバやビャクシン類の植物が近くにあると金が媒介されやすいので注意しましょう。植える場所の近くにないか必ずチェックしておきましょう。
赤星病に感染すると面倒なので、こまめにチェックしましょう。赤星病はカビ(糸状菌)の一種で、葉っぱに症状が出ます。はじめは鮮やかな黄色の病斑が出ますよ。ほかにも風通しが悪いとうどんこ病などにかかることもあります。
カリンの植え替え
鉢植え栽培のカリンは、基本的に2〜3年に一度の頻度でひと回り大きな鉢に植え替えが必要です。植え替えを行わないと、根詰まりして弱ってしまいます。
植え付け時期は、12月または3月頃が適期です。植え替えの手順は、植え付けの時と同じです。
カリンの増やし方(接ぎ木)
カリンは接ぎ木で増やすことができます。「休眠枝接ぎ」や「芽接ぎ」という方法で接ぎ木を作ることができますが、台木とするのは、種から育てた苗木です。
カリンを種から苗木に育てるには何年もの月日がかかるので、初心者の方は市販の苗を購入するのが良いでしょう。
香りがよく丈夫なカリンの木を育ててみよう!
カリンは比較的狭い場所でも育つので、鉢植えなどを用いて、マンションのベランダなどでも育てることができます。庭木としては比較的管理も簡単な方なので、初心者の方にもおすすめですよ。
実を収穫できるまでには3年ほどかかりますが、収穫した実は、ジャムや砂糖漬け、果実酒などにして楽しむことができますし、のどの痛みや咳止めとしての効果も期待できます。ぜひ、家庭菜園でカリンを収穫してくださいね。
この記事を監修した人
七尾びび
家庭菜園士・ベランダ菜園士。株式会社マイファーム松戸農園、松戸千駄堀農園の農園アドバイザー。
循環型の野菜栽培(コンポスト、たい肥づくり)に特化したアドバイザー。
化成肥料の栽培、完全有機栽培まで指導。日本園芸協会会員。同時に農業系、菜園系ライターとして活動中。
この記事を書いた人
GreenSnap編集部
植物好きが集まるスマホアプリ
GreenSnap(グリーンスナップ)は、お部屋や庭で育てている植物、外出先で見つけた気になるお花などの写真を撮影して、気軽に共有したり植物アルバムを作ることができるサービスです。