牡丹(ボタン)

ボタン科ボタン属の落葉低木。中国原産で平安時代に渡来した。庭木、庭園樹として植栽される。葉は互生し、小葉の先が2〜3裂する。花期は4〜5月。花色は多彩。花弁は幅が広く先が切れ込む。果実は袋果。黒く熟すと割れ、種子が出る。また、寒ボタンの花期は1〜2月で、冬囲いのコモをかぶった独特の姿で風情がある。なお、日本の正月に飾られる葉牡丹(ハボタン)はアブラナ科で全くの別種、夏に咲く松葉牡丹(マツバボタン)はスベリヒユ科の園芸品種でこれも全くの別種。

中国では富貴の相があり、優美、華麗で百花の王として讃えられ栽培も盛んであった。中国では唐代、9世紀の洛陽で大流行し、色変わりや八重咲きなどの園芸品種が開発された。日本には平安時代に伝わり、観賞用に栽培された。元禄時代(17世紀末)に日本人が作り出した花木の艶麗さはすばらしいものがあり、幕末から明治にかけて日本産の苗がヨーロッパに輸出され、世界中の注目を集めるようになった。中国ボタン、和ボタン、洋ボタンに分類され、花の形は一重、八重、千重、万重、花弁が多く中央が盛り上がる獅子咲きなとがある。また、開花期で春咲き、冬咲き(寒ボタン)などに分けられる。

ボタンはもともと薬用植物であった。根の皮を生薬にする。漢方では牡丹皮(ぼたんぴ)といい、下腹部の鎮痛薬、鎮痙薬、婦人病薬として用いられてきた。薬用を目的としたときは、花期に開花させず、できるだけ蕾を取り除いて根の発育がよくなるようにする。苗から4〜5年目の秋に根を掘り採り、よく水洗いして堅い木部を抜き取ってから皮を10㎝位に切って天日で乾燥させる。園芸店のボタンの根はシャクヤクに接いであることが多く、ボタンの根でないこともあるので要注意。

名前は中国名『牡丹』の音読み。明代の『本草綱目』では、牡は根茎からも殖えることを、丹は『赤い』花色を意味するというが、諸説ある。『牡』とはオスのことで、ボタンは種子ができにくいことからオスの花とみなされたことに由来するとする説もある。花は20日ほどで鑑賞でき、二十日草(ハツカグサ)という別名もある。
イノシシ肉をぼたんと呼ぶのは、取り合わせの良いことをいう『獅子に牡丹』からの洒落である。
『ぼたん鍋』は盛り付けた皿が『牡丹』に似ている、あるいは肉の色がボタン色だから等諸説ある。
『ぼたもち』は元々は『牡丹餅』、牡丹が咲く春のお彼岸に食べる餅が由来。
美人を例えて『立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花』というが、これは芍薬が真っ直ぐに伸びた茎の先端に花をつけるのに対し、牡丹は枝分かれしやすく、横に伸びた枝に花が咲くことにちなむ。百合は風で揺れる姿を美人の歩く姿に例えたものといわれる。


よく似た芍薬(シャクヤク)との主な違いは次の通り。

ボタン
・落葉低木
・樹高1〜1.5mほどになり、枝分かれして横に広がる
・葉に光沢がない
・つぼみは先端が尖る
・花期は4月末〜5月初旬

シャクヤク
・多年草
・草丈60㎝くらいになり、まっすぐ立つ
・葉に光沢がある
・つぼみの先端は丸くて尖らない
・花期は5月中旬〜6月末

出典『色と形で見わけ散歩を楽しむ花図鑑』『樹木の事典 600種』『薬草の呟き』『樹木の名前』『生薬単』