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冬から春にかけて、庭の片隅で美しく咲くクリスマスローズ。寒さに強く、ガーデニング初心者の方でも簡単に育てられますよ。
今回はクリスマスローズの苗と開花時期の関係性、鉢植え・地植え別での育て方についてご紹介します。
クリスマスローズは耐寒性がある一方、高温多湿に弱いため、きちんと夏越しさせることができるかが重要になります。うまく夏越しさせるためにも、「育てる場所選び」と「水やりの頻度」「肥料の与え方」には特に気をつけてください。
また、クリスマスローズは苗の種類も多いので、どの苗を選ぶのかもしっかり把握しておきましょう。
クリスマスローズは、基本的に明るい日陰〜半日陰となる場所を好みます。
強い日差しを苦手とするため、強い直射日光や西日の当たらない、水はけと風通しのいい場所で育てましょう。
秋から早春までの開花シーズンは、直射日光や西日の当たらない「明るい日陰」で管理しましょう。
開花が終わった春以降から秋にかけては、日差しの強い日が発生する可能性があります。そういった日は、軒下や樹木の下などの日陰におくか、室内で管理するのもいいでしょう。ただし、この場合は、窓際などの風通しのいい場所に鉢を置きましょう。
クリスマスローズを庭に地植えするときは、植える場所選びがもっとも大切になります。
秋〜冬はよく午前中は日が当たり、午後は日陰になるような「半日陰」に、春〜夏は「明るい日陰」になる場所を選びましょう。
たとえば落葉樹の足元に植えると、夏場は日差しを防いでくれて、冬場は日が当たるといった調整ができるのでおすすめです。とくに木立生のバラの足元に植えると、通年花が楽しめるのでいいですよ。
軟弱な苗を選ばないよう、クリスマスローズの苗を入手するときは、この5つの条件をできるだけクリアしている苗を選びましょう。
ただし、葉が少ないものを選ぶようには書きましたが、交配品種の系統によってはもともと葉が多くなるものもあります。傾向としてはダブル(八重咲き)は葉が多く、シングル(一重咲き)だと少なくなる傾向があります。
そのため、葉の枚数を比べるときは、咲き方や品種系統が同じものを見比べるといいです。
そもそもクリスマスローズは、種まきから3年以上経過しないと花が咲きません(3年生株以上)。そのため市場には下記のような名称で出回っており、入手した苗によっては開花時期が異なります。
苗の名称 | 特徴 | 開花時期 | 出周りサイズ |
開花株 | 花が咲いた状態で出回る苗。すぐに開花が楽しめる。 | 12〜2月 | 5〜6号 |
開花見込み株 | 開花する見込みのある苗。翌年1〜3月に咲く見込み。 | 11〜2月 | 4〜6号 |
ポット苗 | 1年生もしくは2年生の未成熟の苗。1〜2年育ててから咲く。 | 10〜3月 | 3〜4号 |
価格的には割高ではありますが、初心者の方は「開花株」や「開花見込み株」から育てるのがおすすめです。
開花前のクリスマスローズの苗は、一般的に10〜12月頃に市場に出回ります。また、すでに花が咲いている開花株については、1月頃に市場に出回ります。
「メリクロン苗」と「実生苗」の違いは、咲いた花の形や色に個体差が生まれるかどうかです。
クリスマスローズは種から育てるとまったく同じ花は咲きません。ニュアンスカラーが美しい花や、ダブル(八重咲き)の花が生まれる可能性もあり、それが魅力のひとつでもあります。
ただし、もし育てたい花色や咲き方が決まっている場合は、「花姿のわかる実生苗の開花株」を選ぶか「メリクロン苗」を選ぶといいでしょう。
クリスマスローズは根腐れしやすいため、妖艶で水はけのいい土を好みます。
市販の「草花用の培養土」もしくは「クリスマスローズ専用の培養土」を用いましょう。初心者の方は専用土を選ぶのがおすすめです。
「草花用の培養土」を使う場合は、より排水性を高めるためにも、2割ほど川砂か軽石小粒を混ぜてあげると良いでしょう。
もし一から配合したい場合は、「赤玉土小粒5:腐葉土3:軽石小粒2」に元肥(緩効性肥料)を混ぜます。
クリスマスローズは、庭土の酸度が「弱酸性〜中性」の状態を好みます。日本では、一般的に庭土はもともと酸性に傾いているため、庭土に腐葉土や堆肥などをすき込むといいでしょう。
たとえば、1㎡ほどの広さの地面を30cmほど掘り下げて耕し、腐葉土もしくは牛糞堆肥を3kg、さらに規定量の緩効性肥料をばらまき、よく混ぜておきます。
クリスマスローズの植え付け時期は10~12月頃が最も適期です。ポット苗はまだ未熟なので、気温が完全に低くなる前の11月下旬頃までに鉢へ移すといいでしょう。
また、花が終わったあとの5月頃でも可能です。
事前にクリスマスローズの苗に水やりをして土を湿らせておきます。
新しい鉢に鉢底ネットと鉢底石を敷いてから、土を1/3ほど入れます。
クリスマスローズの苗をポットから抜き、根鉢の下の方を1/3ほどほぐします。
新しい鉢に苗を浅めに移して、鉢のフチ2〜3cm下くらいまで土をいれます。
翌日に水やりをしたら、これで完了です。
クリスマスローズを鉢植えで育てるときは、鉢の高さが30cmほどある深型タイプで、なるべく通気性のいい素焼き鉢やテラコッタ素材のものか、スリット鉢を用意しましょう。
大きさは目安として、苗やもとの株よりも2サイズ上を用意するといいです(例:3号ポット苗なら5号鉢、6号開花苗なら8号鉢)。
なお、鉢植えの場合は、1〜2年に1回の頻度で、春か秋に植え替えをする必要があります。詳しいやり方や時期については、こちらの記事を参考にしてみてください。
クリスマスローズを地植えする場合の植え付け時期は、10~12月頃もしくはの3月頃が適期です。3月の場合は、お礼肥をあげる前にしましょう。
事前に土づくりをすませ、株間を40〜50cmくらい広めにあけて植え穴を掘ります。
ポットから苗を取り出して、根鉢の下の方を1/3ほどほぐします。
片手で苗を持ち、根鉢の肩と地面が水平になるように、植え穴の深さを調整します。
朝植えになるように穴に苗をいれ、その隙間に庭土を埋め戻していきます。
軽く手で土を押さえて、土と根を密着させます。
翌日にたっぷりと水やりをして、完了です。
水やりしたあとに株周りの土が減ったら、庭土を少し足しておきましょう。
開花見込み株や開花株の場合は、出回る時期が12月にずれ込むことがあります。適期からズレますが、できるだけ早く苗を移しかえる、もしくはそのまま開花が終わるまで育て、3月頃に移しても大丈夫です。
秋から初春までは、土が乾燥してからたっぷり水やりします。なお、水やりのあとに霜が降りると根が傷むため、冬の間は午前中に水やりを行うように心がけましょう。
また、気温が高くなる春の終わり頃からクリスマスローズは休眠期に入ります。休眠中は乾燥した環境を好むため、土が乾いてから5日ほどあとにたっぷりと水やりをします。
基本的には水やりは不要で、自然に降る雨に任せます。
ただし、苗を植えつけた直後から2週間ほどは、根を活着させるためにも3〜4日に1回のペースで水やりをします。
夏の暑さを苦手とする品種が多いです。夏場の水やりも基本的には雨に任せて大丈夫ですが、土が乾燥しすぎている場合には水やりを忘れずに行い、葉が枯れ込んできていないか時々注意して観察してくださいね。
初心者の方は、市販の「草花用肥料」や「クリスマスローズ専用の肥料」を用いましょう。そのほか、緩効性の化成肥料でも大丈夫です。
上級者向け!株ごとの肥料の黄金比率
緩効性化成肥料にもいろいろ種類があり、とくに製品表示をみてみると窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)の比率が書かれています。それぞれ窒素は茎や葉に、リン酸は花やつぼみに、カリは根や株全体の生育に効果があります。
細かく考えたい人は、育てている株に合わせて下記の比率の肥料を使うといいですよ。
クリスマスローズへ追肥する時期は、成長期の9月下旬〜翌年5月上旬までです。この間は、月に1回の頻度で追肥します。ただし、10〜11月に苗を植え付けた場合は、直後の1〜2ヶ月は追肥不要です。
株の根元や中心部にある根は栄養分を吸う力が弱いので、土に伸びている根の先端に栄養が届くようにします。鉢植えの場合は鉢の内壁にそって、地植えの場合は株の中心から半径30cmほどの位置に、ドーナツ状に置肥しましょう。
また、鉢植えの場合は水やりしたときに肥料が鉢から流れてしまう可能性があります。不足していると感じた場合は、リン酸の多い肥料を足してもいいです。
夏場の肥料は厳禁です。夏場に葉が元気がないと思ったら、古い葉や痛んだ葉を取り除き、置き場所やお水をどの程度もらっているのかの確認をしましょう。
クリスマスローズの開花時期は、およそ1〜3月下旬頃です。
花の名前からクリスマスの12月ごろに咲くと勘違いされることが多いですが、一般的には晩冬から早春に咲き始めます(ただし、入手した苗の栽培年数や系統によっては開花時期が異なることもあります)。
また、クリスマスローズには大きく2系統の種類があり、この2つでも開花時期が異なります。咲かせたい時期によって選んだり、もしくは花が咲かないと思ったときは品種を確認してみるといいでしょう。
系統 | 開花時期 | 花色 | 特徴 |
ニゲル種(ノイガー) | 冬咲き:12〜2月 | 白から咲き進むと淡いピンクへ | クリスマスローズの名前の由来となった原種のひとつ。やや上向きに開花する。 |
ハイブリット種(オリエンタリス) | 春咲き:2〜3月 | 白、緑、ピンク、茶など豊富 | さまざまな交配を経て生み出された園芸品種。うつむいたような下向きに開花する。 |
ちなみに、園芸店で「クリスマスローズ」という名前で売られているもののほとんどが「ハイブリット種」です。「ニゲル種」は学名である「ヘレボルス・ニゲル」という名前で出回ることもあります。
クリスマスローズの花が終わったら、花茎やいたんだ花弁を切って取り除きましょう。こうすることで種子の形成に使われるはずだったエネルギーを次の開花や夏越しのために使えます。
また秋ごろには前年からある古い葉を切っておくと、次のシーズンに美しい花を咲かせてくれます。詳しい方法はこちらの記事で紹介しているので、チェックしてみてください。
クリスマスローズの増やし方は「種まき」か、植え替えと一緒に行う「株分け」がおすすめです。挿し木や挿し芽はでは増やすことはできません。
種まきで増やす場合は、元の株とまったく同じ花姿のものが育つわけではなく、ひとつひとつ個性のある花が咲きます。種まきの詳しい方法は、こちらの記事を参考にしてください。
また、元の株と同じ花姿のものを増やしたいという方には、株分けがおすすめです(株分けの詳しい方法はこちらへ)。
クリスマスローズは、こぼれ種で増えることもあります。長期的に育てると、自然と新しい株が親株の近くにできていたりします。
クリスマスローズが夏になって急に弱りだしたら、まずは置き場所が暑すぎないか確認しましょう。
次に害虫が発生していないか確認します。とくに夏はハダニやヨトウムシなどの害虫が発生しやすいです。
ハダニはクリスマスローズの葉から栄養を吸収し、弱らせてしまいます。被害が大きくなると光合成不足や生長不良に繋がります。ヨトウガの幼虫であるヨトウムシは、昼間の間は土の中に隠れていますが夜になると出てきて活動し、葉や茎の部分を食害します。葉の裏側に産卵するので、孵化する前に葉を取り除いておく必要があります。
クリスマスローズがかかりやすい病気の一つに「ブラックデス」があります。
ブラックデスは株のさまざまな場所に、掠れたような黒い斑点ができる病気です。最終的には株が縮れて、枯れてしまいます。感染力の強い病気なので、罹ってしまった株は処分しなければいけません。
このブラックデスはウイルス性の病気なので、ハサミから感染することもあります。古葉取りや剪定等でハサミを使用して手入れを行う場合には、1株ごとにハサミを消毒しましょう。作業に関しては清潔さを心がけるようにしましょう。
クリスマスローズの葉の縁の部分や葉先が茶色く変色し、じゅくじゅくとした質感になってきたら、灰色カビ病を発症している可能性があります。これは、春や秋などの湿潤な気候の際に起こりやすい病気です。
この病状がクリスマスローズの株に広がっていくと、株自体が腐敗して枯れてしまいます。定期的に殺菌剤等を散布し、病気の予防を行いましょう。
育てる場所 | 土 | 水やり | 肥料 | |
鉢植え | 調整できる | 市販の土を使用できる | 定期的に必要 | 月1の置肥(+補足の可能性あり) |
地植え | 調整できない | 土づくりが必要 | 基本的に不要 | 月1の置肥 |
クリスマスローズの育て方や、生育のコツを紹介しました。
冬型の植物の中でも比較的育てやすく、難しくないということで知られているクリスマスローズですが、水はけや日当たりには注意しながら育てていかなければなりません。
また長期的に育てるのであれば、クリスマスローズの毒性も理解しておきましょう。クリスマスローズには全体に毒があり、茎や葉の汁が皮膚に触れるとかぶれや炎症を起こすことがあります。
死に至ることはありませんが、手入れの際には必ず手袋をするようにしましょう。また根の部分には、ヘレブリンという毒性分があります。これには心臓の動きを収縮させる力があるので注意してください。
松原真理子
GreenSnap編集部