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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 49 健太は高校一年生になった。 お世話になっているお茶屋さん夫妻はとても気さくな人で、我が子のように健太を可愛がってくれた。 お茶摘みや草刈り、夜はお茶の袋詰めなど健太は何でもできることを進んで手伝った。どんな仕事も手を抜かず丁寧にこなす健太は可愛がられ、仕事の覚えが早くて助かると、月に数万円のお小遣いまで貰ったのだった。 健太はそのお金で衣類や学用品、参考書を買い、残ったお金で、2ヶ月に一度の帰省時に両親へのおかずなどを買って帰った。 健太の帰りを待つ両親に、高校での生活や、日々の生活のようすを話し、母の手料理を食べる時間が健太の大きな楽しみだった。 高校の近くには立派な図書館もあり、健太にとっては天国のような環境だった。本をむさぼるように読み、勉強にも集中して取り組んだ健太の成績は、高校でも首席になった。 一方一彦は、 健太の父が撃たれた事件以来、その原因を作ったのは一彦だと、村中からの風当たりが強くなった。それでも一彦の家は兼業農家だったので、健太の家のように収入が激減することはなく、村人との付き合いは疎遠になったが、普段通りの生活が続いた。そんな中、一彦は健太たち家族の困窮ぶりを目にする度に、自分のせいだと心を痛めていた。 そして、そんな氣持ちをふりきるように、一彦は部活の野球に打ち込み、ピッチャーとしてめざましい活躍をして数年ぶりの県大会出場に貢献した。そんな一彦に、数校から高校入学を誘う申し出があり、スポーツ推薦で村から遠く離れた高校へと進学していった。 健太と一彦、それぞれの道は離れたが、心の中では互いのことを思い、元気でいるかなと案じていたが言葉を交わすこともなく、2人の一年があっという間に過ぎていった。 🌱写真は大好きなアガパンサスの花です。夏が終わり、花後につけた実も落ちて、今は茎だけがひよろっと名残を惜しむように、風に揺られています。 🐄 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GS繋がりに感謝
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 48 動物病院には、大きな樹の写真が、 額に入れて飾られていた。 この樹は、ラクウショウって言うんだ。湿地に植えると、幹の周りに呼吸のための呼吸根(気根)が出てくる不思議な樹だ。健太くんは、なんで湿地に植えると気根が出てくると思う? 環境にあってて、どんどん増えようとしてるから? 健太が答えると、先生は笑っていった。 ハハハ、その逆だよ。 気根はね、根っこが水びたしで呼吸が苦しくて苦しくて「呼吸するため」に出したものなんだよ。 僕らは普段植物も呼吸してるって、あまり意識してないけどね。 植物は、僕らが呼吸するための酸素を作ってくれるだけじゃなくて、自分でも幹・枝・根などの表面全体で呼吸しているんだよ。そして、ラクウショウは、湿地に生えると土の中の酸素が不足して息ができなくなるから、地上の酸素を吸うために、根の一部を地上に出して呼吸しようとするんだよ。凄いだろ。 樹は土から根っこを出したら枯れてしまう、だから絶対根っこを出せないと思ってたら、根腐れして枯れてしまう。そんな植物がほとんどなのに、土の上に根っこを出して息をしようとする発想、凄いと思わないかい?誰かに教えられた訳じゃない。ギリギリの状況で、自分の常識を打ち破って自分を生かす挑戦をするんだ。 僕はね、限界を感じる度に、限界を超えろ!って、このラクウショウを見て自分に呼びかけるんだよ。そうやって、この樹に何度も励まされてきた。 先生と樹の写真を見上げながら、健太は、自分の中の常識になってる限界を超えるかぁ…と思いをめぐらせていた。 その時、マリさんがコーヒーを持って、診察室に入ってきた。 あらあら、今日は2人でシリアスな顔をして鑑賞会? 笑うマリさんに、 そうだよ。男として人生をどう生きるか、話をしてたんだよなぁ、健太くん。 先生が健太をみて笑い、いつものように診察室に笑いが広がった。 そして、コーヒーを飲み終わると、真顔になって先生が健太にたずねた。 ところで、君の進路の話なんだけど、家を借りる話はその後どうなった? 健太が、まだ全然あてがないと答えると、それならと先生が話を切り出した。 実は、知り合いで君の希望している高校の近くに住んでおられる方がいてね、優秀なんだけど、経済的な理由で進学を断念するかも知れない子がいる、どこか格安で良い物件があったら紹介してほしいと話してみたんだ。そしたら、自分の家に使わない部屋があるから、使ってもらって良いと、ありがたい申し出を貰ったんだよ。家賃はただで、食事もつけると。その代わり、家業の仕事を少し手伝って欲しいそうだ。 健太は、目を輝かせて言った。 先生!凄いや!家賃も食費もなんとかなるなんて!夢みたいだ。 あっ…でも仕事の手伝いって、何なんだろう。重労働?なのかな? 健太がおずおず尋ねると、先生は笑っていった。 お茶屋さんなんだよ。 だから、収穫期はお茶摘みなんかを、それ以外は、草むしりや、お茶の袋詰めなどを頼みたいそうだよ。 それなら、できそうだ! 健太が満面の笑みで答えると、 それは良かった!と先生も笑顔になった。 実はね、君と話をした何日かあとに、君の父さんが相談に来られたんだよ。君を高校に行かせてやりたいが、住む家の家賃を払うのが難しそうだと。それでも、もしもの時は田畑を手放してお金を作ることになっても、高校だけは行かせたい。せめて、少しでも家賃の安い物件を知っていたら教えてほしいと、それは真剣に頼まれてね。 僕も力になれればって、心当たりに当たってみたんだ。 先生の話に、健太は目頭があつくなった。 道が開ける! 高校に行けるかもしれない! その喜びと、両親や先生や部屋を貸してくれる方の思いが、ありがたくて、ありがたくて、溢れる涙を腕でぬぐうと、健太は深々と頭を下げた。 先生、ありがとうございます。 今日帰ったら父に話をします。 僕、頑張ります! よろしくお願いします。 そんな健太の肩を叩いて、 なっ!道は開けるんだよ!と 先生は嬉しそうに笑った。 健太は両親と話し合い、高校に合格したらお茶屋さんの家にお世話になる事になった。 息子が使っていた部屋だが、もう遠い所に住んでて使わないんだよ。久しぶりに賑やかになって嬉しいよ。お茶屋さんは、そう言って健太を喜んで迎えてくれた。 そうして、無事に高校に合格した健太は、奨学金をもらい、お茶屋さんの家から高校に通う高校生活が始まった。 🌿写真は新宿御苑のラクウショウです。氣根を痛めないように、木道が敷かれています。紅葉の季節はとても綺麗です。とても素敵な場所なので、機会がありましたらぜひ会いに行ってみてください😊。 🐄 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GS繋がりに感謝
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 47 その夜、健太は、学校でのこと、獣医の先生と話したことを両親に伝え、進学をどうするか悩んでいると伝えた。 父は、静かに腕組みをして聞いていたが、奨学金を借りれば学費は何とかなるやも知れんが…高校はここから通える距離ではないからな、と言うと、しばらく考えていた。 それでお前は、どうしたい? 父の言葉に、健太は思った。 本当は 進学したい! 獣医になりたい! そう答えたら、両親は無理をしてでも、高校に行くお金を工面してくれるかもしれない。 でも…それで良いんだろうか? 両親が辛い思いをして支えてくれてる姿を想像するだけで、健太の心は沈んだ。そんな中で…自分だけ夢を追いかけて幸せだろうか?食べるものも慎ましくして、朝から晩まで働く両親の姿を心に浮かべながら、健太の思いは揺れた。 父さん、本音を言えば、高校にすごく行きたい。行ってたくさん勉強して、いつか獣医になる夢に少しでも近づきたい。でも、その為に父さんや母さんに、これ以上頑張らせて大変な思いをさせたくないとも思うんだ。 父さんや母さんが、経済的に無理だって結論したら、僕は中学を出て働こうと思う。そしてお金が貯まったら高校へ行く。高校へ行きながらバイトするからも知れないし、高校を出てから働くかもしれないけど、お金を貯めて大学に行く。何年もかかるかもしれないけど、諦めなければ夢は少しずつ近づいて、きっと実現できるって、今日獣医の先生と話して、今さらだけど氣がついたんだ。何も挑戦してないうちから未来に怖じ気づいて、勝手に絶望しちゃダメだって。回り道の人生は、苦しくて辛い事が多いかも知れないけど、回り道をすることで、たくさん氣づくことがあったり、心が強くなることもあるかもしれないって、それがいつか役立つかも知れないって思うんだ。僕の人生を作るのは僕だ。やってみる価値はあるって思うんだ。 健太が考えながら、ポツリポツリと話す言葉を静かに聞いていた父が、頷くと言った。 わしが知らん間に、お前はしっかり考えられるようになったんだな。 そう言って、父は健太の顔を見た。 お前が獣医になりたいと思うようになって、真剣に勉強に取り組んでいることも知っている。わしらにもっと経済力があったら、お前を悩ませることもなかったと思うと、すまないと思う。だが、わしらとしても、高校ぐらいは行かせてやりたい。 問題は高校に通う住まいを何とかすることだ。安く借りられる方法がないか、知り合いに当たってみよう。 期待させてがっかりさせるかもしれんが、わしらもやれるだけの事をやってみよう。 そう言うと母の方に目をやった。 母も頷いて、諦めなければきっと道は開くと信じて、みんなで頑張ってみましょうと2人に笑顔を向けた。 ありがとう! 父さん、母さん 両親に笑顔を向けながら、健太は両親の愛を感じて胸が熱くなった。 きっと僕の道を見つける! 健太は心で何度も繰り返した。 🌱 写真は新宿御苑の庭園で去年の11月に撮ったものです。加工なしの偶然撮れた不思議な一枚です😊 アオサギをこんなに至近距離で見たのも初めてで…光の中でじっと佇むアオサギの姿が、とても神々しかったです💖 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GS繋がりに感謝
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 46 健太の話を聞き終わると、先生が静かに言った。 それは、健太くんが、もう夢を諦めるという宣言なのかい?挑戦を受けて立つ前に、環境が悪いからと早々に諦めたいと思ってるのかい? と先生が尋ねた。 明るく見える道と暗く見える道、君はまだどちらにだって進むことができる。たとえ高校に行かないとしても、社会に早く出て社会人として経験を積むことになれば、それはそれで学ぶことは多いと思う。でもそれは、夢を諦めることとは別だよ。 自分の最大の理解者は、いつも自分自身だ。その自分を信じる氣持ち、信じて立ち向かって行こうと思う氣持ち。それが、本当の自信じゃないのかね。こんなに課題が多くて絶対に無理!もう諦めるしかない!そう思う時、自分の力量を越えなくては進めないと思う時、人生に試されているんだよ。そして、逃げていれば、大人になっても形を変えてその挑戦は繰り返すんだ。健太くんは、試される前に逃げ出してしまうのかい? 先生の言葉に、健太はハッとした。 試される前に逃げ出す。そうか、まだ挑戦してもいない。 それに…先生が言うように、自分が夢を諦めたくないと強く思っていることに、健太は改めて氣づいた。 先生、… やっぱり諦めたくない。 そして、まだ何も挑戦していない。 父さんや母さんとも相談して、どうしたらうまく行くか、話し合ってみます。 健太は、顔を上げて、先生の顔を見た。もしも、やるだけやり尽くして高校に行くのが無理だってわかったら、その時は未来に繋がるもっと良い道を探したい! 先生は健太の肩を叩いて言った。 やっと、君らしい言葉が出てきたな。 何か困難があって、人生にくじけそうになった時、一つだけ覚えておくといい。 自分が不幸だと思うことを受け入れると、不幸が終わることになるんだ。それは、不幸を受け入れたからだ。 今は、この言葉がピンと来ないかもしれないが、いつかわかる時が来る。その氣持ちを忘れなければ、きっと自分の進む道がみえてくる。 不幸を受け入れる 自分の進む道か 健太は、帰宅の道すがら、中卒で働いたら?高卒で働いたら?その先にどうやったら獣医への道をめざせるか?と自分の未来を想像してみるのだった。 🐄 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GS繋がりに感謝
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 45 コスモスが 今年も咲いている あの花を見ていると 遠いあの日を思い出すんだ 一郎が嫌がって 足を踏ん張る 顔を左右に降って抵抗する その手綱をぐいぐい引っ張って 背中とお尻をぐいぐい押して 車の荷台に二人がかりでのせた 花子は 悲しい眼をして 父さんの手をなめた そして、人間のように 住んでいた牛舎を振り返り 父のかおを見た 手綱を引かれると 頭を降って嫌がった それでも父がどうどうと 声をかけて花子をなだめる よしよしと背中を撫でて 少しずつ少しずつ 引かれて押されて 花子も車へ登っていった 悲しくて 悲しくて 胸が張り裂けそうだった 父さんはどう どう と 声をかけ続けた まるで すまん お別れだ そう言ってるような 悲しい声で 牛を押していた 荷台が閉じられ 父さんが帽子を取って よろしくお願いしますと 深々とお辞儀をした 静かに車が走り出した モウ~ モウ~っと 一郎がなく 花子がなく その声に たまらなくて 健太は車を追いかけた 溢れる涙に前が見えなくて 木の根につまづいて転んだ健太は 手をついたまま叫んだ 一郎 花子 ごめんよ ごめんよ ありがとう 泣き続ける健太の肩に 父が手をかけた その指先が震えていた あぁ 親父も泣いている 健太は ちくしょう!ちくしょう! と地面についた拳を握りしめた しばらくして健太が泣き止むと 父が立ち上がった。 あの子達が住んでいた部屋を、綺麗にしてやろう。手伝ってくれるか? 父の言葉に、健太も立ち上がり 父のあとに続いた。 本当は、一郎は、健太の高校の学費の足しにと、考えていたのよ。もしも、一郎を手放しても、花子は牛乳を売ってしばらく家計の足しにとも考えていたのよ。 健太は、数年後、当時の両親の思いを母から聞いた。父が撃たれた事件以来、村人が牛乳を買ってくれることもなくなり、週に一度市場に牛乳を出すだけでは採算が取れないと、何度も何度も相談して決めたのだったと。けれど、牛は競りで買い叩かれ、売って得たお金は思いの外少なくて、様々な支払い後に残ったのはわずかなお金だけだった。 「それでもね、一郎と花子がいたからあの厳しい時を乗り越えられた。助けてくれたのよ」と話す母は涙ぐんでいた。 🌱 🌱 今日のお花がオミナエシだったので、日曜日に行った昭和記念公園のお茶室前庭のオミナエシを投稿しました。お抹茶と一緒にいただいたお菓子はコスモスでした。可愛いお菓子に手をつけるのを躊躇いながら…美味しかったです😋 三枚目 一面のキバナコスモス(レモンブライト)は咲き始めで、これからますます見頃です。 四枚目 みんなのお手植え♡オレンジのコスモスは、みんなのお手植えだそうです♪素敵な企画ですね。 五枚目 コキアも色づき始め、ピンクとグリーンのグラデーションが、柔らかな雲の絨毯のようでとても綺麗でした。キバナコスモスもコキアも、これからが見頃だそうです🤗 今日のお花 🌿 オミナエシ 昭和記念公園 お茶室前に素敵に飾られていたオミナエシです💖 オミナエシは、秋の七草の一つ オミナエシ属の多年生植物。 別名 敗醤(はいしょう)とも呼ばれ、健康に役立つ植物です💮 🌱10月頃に地上部の茎葉を切り除いて根を掘り、天日乾燥させたものは生薬となり、敗醤根(はいじょうこん)と呼ばれます。 消炎、排膿、浄血作用があり、婦人病に。1日量10グラムの敗醤根を、水500 ccでとろ火で半量になるまで煎じ、3回に分服する。 🌱花のみを集めたものは、黄屈花(おうくつか)。 これらは生薬として単味で利用されることが多く、あまり漢方薬(漢方方剤)としては使われない(漢方薬としてはヨク苡仁、附子と共に調合したヨク苡附子敗醤散が知られる)。 🐄 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GS繋がりに感謝
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 44 ささやかな 幸せは 野の花の白い色 ささやかな 幸せは 花を映す 空の青 ささやかな 幸せは 野原に寝そべって 光のなか あなたの笑顔に 揺れる花影を いつまでも そばに座って見守る時間♡ 🌱 猪狩りの事件以来、村人が健太の家の野菜や卵を買ってくれなくなったため、父は週に一度町の市場に野菜を売りに出かけた。 市場では安く買い叩かれ、品物が売れ残って持ち帰ることもあり、健太が寝た後、両親は家計簿を見つめ、どうやって冬をこえるか相談する日々だった。 屋根の不振もせにゃならんし、農機具もそろそろガタが来ている。 そうね、健太の制服も、この間ズボンが割けて繕ったのよ。もうきつそうで買い換えてあげないと可哀想なのよ。運動靴も穴が空いてるし、どんどん大きくなるから、この冬に着る普段着も買ってあげないとだし…。それに…近所の人が塾の話をしていたわ。せめて参考書くらい買ってあげないとね。あの子は、バイトのお金で必要な物を買ってお小遣い頂戴って言うこともなくて…本当に頑張っていたのに…。もう、アルバイトもなくなってしまったから。 喉が乾いて目覚めた健太は、両親の話を耳にして、自分が思っている以上に、やりくりが大変なことを知ったのだった。 高校へ行くのだって大変そうなのに…その先の学校なんて…。 ちくしょう!何が平等だ! 結局、貧乏だと進学だって無理じゃないか!健太は握りこぶしで枕を叩き、涙を流した。 一晩中眠れずに健太は考えた。 中学校を出て働いても、いつか獣医になる道はあるんだろうか? 両親も、健太も、眠れぬ夜。 窓のそとは、秋の始まりの雨が、しとしとと降っていた。 🌱花の名前 仙人草 この花は、センニンソウと 教えていただきました。 先日、御岳山へ向かう電車の駅のホームにたくさん咲いていました。 センニンソウの花は、キンモクセイに似たさわやかで甘い香りですが、毒があって、茎の切れ目や葉から出る白い汁は素手で触るとかぶれてしまうそうです。知らずに触ってしまう所でした。皆さんも、氣をつけて下さいね。 別名、牛のハコボレ(歯こぼれ)」と言われ、毒があるとわかっている馬はセンニンソウを食べまないし、牛が食べて歯が抜け落ちた、という由来があるためそのような別名で呼ばれているそうです( *´艸) 🐄 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GS繋がりに感謝
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 43 季節が来ると あなたは そっと現れて いつもの あの場所で 笑ってる どこにいたの? 逢えたね ここに 根をはって ずっと そばにいたんだよ あなたがいると 風景が 不思議にとっても あたたかい 笑ってるよね ぜったい 笑ってる おひさまいろに かおる秋 🌱 晴れた日、父と母と健太の3人は、庭の菊の花をもって、たぬ吉を埋葬した山の畑に向かった。 たぬ吉、ありがとう。 3人は花を供え手を合わせた。 ねぇ、父さん たぬ吉の家族は…今も帰らない父さんを待っているのかな? 出会った時のこと、昨日のように思い出せる。たぬ吉は、幸せだったかな? そう言って健太は涙を落とした。 狩りの日は、山の獣たちも何か気配を察するのかもしれんな。 あの日、わしの身を案じて、たぬ吉はおそらく近くで見守ってくれていたんだろう。そうでなければ、あのタイミングで飛び込んで、身を呈してわしを助けるなどできなかったはずだ。いくら恩人だからと、人にそんなことができるか? たぬ吉がおらなんだら、わしはここにはおらなんだ。獣に真心を教えられた。本当に有りがたいことだ。 そう言って、たぬ吉を埋葬した土を撫でて、父は涙をこぼした。 3人は、畑の土手に腰かけて、それぞれ、たぬ吉との日々を思い出していた。 ねぇ、父さん あの日、父さんは覚悟が必要だと言った。今もまた、同じことが繰り返して…。やっと気づいたんだ。 村に暮らすって大変だなって。もしかしたら、父さんや母さんは、こんな理不尽に何回も出会ってきたんじゃないかなって。 そうさなぁ。 わしよりも、母さんの方が風当たりが強いかもしれんなぁ。なぁ母さん。そう言って、父は視線を母に送った。 何もなかったって言ったら、嘘になるわね。苦しいときは苦しいし、辛いときは辛かったわ。でも、お父さんと健太と3人で暮らす生活があれば、みんないつの間にか幸せに変わったのよ。そして、ここの景色、朝から晩まで、変わっていく雲や光、本当に綺麗な山の景色。都会生まれの私には、何もかもが奇跡のように宝物に見えるのよ。 母は、そう言ってにっこり微笑んだ。 大変だけど、幸せな生活か。 赤とんぼの群れが飛んで行く空を見上げながら、 もし、父が死んでしまったら 自分や母はどうなっていただろう。 家族を支える、その責任の重さを、健太は生まれて初めて考えたのだった。 🍂 🐄 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GS繋がりに感謝
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 42 雨が 薪小屋の トタン屋根に落ちていく 嬉しいときは 弾むように 悲しいときは 叩きつけるように 春も 夏も 秋も 冬も 雨を受け止めるその屋根は ただ 静かに 薪が濡れないように 守ってる 🍁 バイト、なくなっちゃたんだ。 朝食の席で、新聞配達は今日はお休みなの?と聞いた母に、健太が答えていった。 もう、いいからって。 畑の手伝いとか家畜の世話のバイトもなくなっちゃった…。 間に合ってるからって。 あっちもこっちも断られて はは…計画変更だ。 健太は力なく笑った。 まあ、そうなの。 私の野菜も、買ってくれなくなっちゃって…困ったわね。 母も、ため息をついた。 狭い村だから…良くも悪くも、何かあるたび、みんなで申し合わせたように変わっちまう。みんなが忘れるまで辛抱するしかあるまいな。 だが…どう算段するか。 父の言葉に、悔しい思いが込み上げた健太は、ご飯をかき込むように口にいれた。 猪狩りの日、健太の父が撃たれそうになり危機一髪だったと、またぎ達から聞いて村は大騒ぎだった。 その父を守ったのが、狸だったということが、さらに噂に尾ひれをつけた。 野生の狸が、人を助けるなどあるまいに。 それじゃあ、あれは飼われていた狸だったとでも。 そうとも、いつぞやの狸騒動を覚えとるか? わしらの村ではご法度と、村長まで確かめにいったあれだ。その狸を実は飼っていて、そいつが恩返しに助けに来たんじゃないかってわけだ。 じゃあ、あの時、わしらはまんまと騙されたわけか? それにしても、昔話じゃあるまいに、そんなに狸が律儀に人を助けるか? そうさな。だが、何にしても、狸が助けたのは事実よ。 全くだ。だが、鉄砲で撃たれそうになった人に、わけは何でだと聞くわけにもいかんからな。 なるほど、気の毒だが同情もできんと。狸の恩返しなど証拠もないことで、昔の話を持ち出すわけにもいかんからな。 まあ、遠巻きにようすを見るか。 村人達は、そんな相談をして、健太の家と距離を取ることに決めたのだった。そして、騒動の原因となった一彦の家にも、同じように距離おいたのだった。 🐄 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GS繋がりに感謝
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 41 森の 小さな広場 朽ちた古木に 寄り添うように咲いた あざみの 優しい くれない 🌱 戸の開く音を聞いて、奥から出てきた健太の母は、胸からスボンまで血だらけの夫の姿を見ると、 キャー!と叫んで、 腰が抜けその場にへたりこんだ。 母さん!どうしたの!! 母の叫び声を聞いて 2階からかけ降りてきた健太も、父の姿を見て絶句した。 何があったの、父さん! そう叫ぶように言うと、裸足で父のもとにも駆け寄り、父の腕を引いて玄関に座らせた。 撃たれたんだよ。 猟師たちに。 命を落とすところじゃった。 たぬ吉が…たぬ吉が…身体をはって助けてくれたんだ。 玄関に腰をおろすと、父は今朝の山で起きた出来事を話した。 本当に、本当に、ご無事で良かった。母は祈るように手を合わせ、涙を流した。 それって、うちだけ回覧板が回ってこなくて、知らなかったってこと! ふざけるな!うちに回覧板を回すのは、一彦ん家だ! 俺、一彦に言ってくる! そう言って怒りで飛び出して行こうとする健太を、父が制した。 待ちなさい。 もし、一彦くんが故意に回覧板を回さずに、わしを危ない目に合わせたなら許せないことだ。 だが、わしが撃たれたときに、身体をはって助けてくれたたぬ吉の事を、なんと説明するかね。 野生のたぬきがなぜ、わざわざ人を助けたと。わしは、ここに来てまで嘘を重ねて、たぬ吉の想いを踏みにじるような事はしたくないんだ。 父の言葉に、 健太は唇をかんでうつむいた。 そうか。 父さん、わかったよ。 答えた健太の握りしめた拳が震えていた。 母は風呂をわかし、 その日、父は仕事を休んだ。 その日、猟師たちは一頭も猪が仕留められなかった。その事を咎められないように、今日山であったことを自分達に都合のいいように、村人に報告した。 村人は健太の父が、猟を知らずに撃たれ、たぬきがそれを助けたと不思議な話を聞いたが、数年前のたぬき騒動を思い出し、助けたたぬきの恩返しかとささやきあった。そして、回覧板を回さなかった一彦の事を噂して、再びよそよそしくなったのだった。 回り回って噂は一彦の家にも届いた。本当かと問い詰められた一彦は、健太の家を飛ばして回したことを父に告白した。 話を聞いた父は、とんでもないことをしたと、一彦を厳しく叱った。だが、その一方で、村人のささやくたぬきの恩返しの話を聞いて、やっぱりたぬきを飼っていたんだと、悔しい想いもしたのだった。 父がいった。 わしは謝りにはいかん。 だがな、一彦、ひとつ間違えば、人の命を奪いかねない事をお前はしたんだ。2度とこんなことを起こさんよう、よく反省するんだ。 激しい剣幕の父に叱られて、一彦は、初めて自分のしたことの重さを知った。本当に健太の父が死ななくて良かった。自分はどんな償いができるだろうと、心から後悔し涙を流したのだった。 🐄 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GS繋がりに感謝
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 39 夏休みが開け、貼り出された健太の自由研究を見て、畜産や牛肉などに興味を持った同級生も多く、子供から聞いて家で話題になったと、健太は近所の人からも声をかけられた。健太の研究は、地域の審査を経て県に推薦されて賞を受けた。 夏休みの間、獣医の先生のもとで学んだ事で、健太は自分の家には獣医の学校に行く経済的な余裕はないことも知ったが、きっと道はできる、諦めない。と、以前にもまして強く思うようになっていた。 夏休みの後半は、学費の足しにと、健太は隣近所の田畑の仕事や、家畜の世話を手伝った。勉強もでき、体格も良く思いやりのある健太は、仕事も早く重宝され、みんなから一目置かれる存在になっていった。 一方、健太との喧嘩以来、健太をいまいましく見ていた一彦は、両親から運動を勧められ、地元の野球少年団に入った。心の空白をうめるように野球にのめり込んでいった一彦も、もともと体格の良かった事もあり、チームの中で一目置かれる存在になっていった。 秋が過ぎ、冬が過ぎ、村に再び春が巡り、そんな2人も中学生になり、隣町に通うようになった。 🐄 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GS繋がりに感謝
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 38 す こしだけ もう少しだけ す ぎてゆく 季節を止めて き らきら光る空の蒼を 夏の記憶と一緒に 心の奥に刻みたいから 💎 最終日か 早かったな 自転車を押して登った坂道の上で、健太は一息つくと町並みを見下ろした。穂が出始めたすすきが、朝陽にキラキラと光っていた。 健太の見学最終日。 健太は自由研究をまとめたノートを持参し、診察が終わった先生に見てもらった。 良くまとまってるよ! 短い間に、頑張ったな。 ノートに目を通した先生に褒められて、健太は笑顔になった。 だがなぁ…。と、先生は続けた。 残念な事に、大切な視点が抜けてる。君はなんだと思う? 先生の予想外の質問に、健太はしばらく考えて、お金の事?と答えた。 う~ん、半分当たりで半分外れだ。 牛も豚も鶏も、食用として育てられてるっていう視点も、大切だと思わないかね。 健太くんは、日本国内で育てる肉牛には肥育ホルモン使用を許可されていないけれど、肥育ホルモンを使用した海外の牛肉は輸入が許可されてどんどん入ってくるという事を知ってるかね。 と先生が聞いた。健太が首を降ると先生が続けた。 日本で取り上げるメディアは少ないんだけどね。アメリカやカナダといった北米産の牛肉は、短期間で身体を大きくするために、99%が肥育ホルモン剤を投与されているそうだ。日本では、家畜の肥育目的でのホルモン剤の使用は、1976年に禁止されているのに、輸入はオーケーというダブルスタンダードのような状況が続いているんだよ。 その結果、日本では最低でも25カ月齢くらいまで餌を食べさせなければ出荷できる体重にならないのに、海外の肥育ホルモン剤を使った牛は、20カ月齢ですでに出荷できるくらいの体重になる。そうすると、どんなことが起こると思う? 肥育ホルモン剤を使った牛は、短期間に育つから餌代も安くすむし、飼育できる頭数も多くなるから、コストも大きく削減できる。その結果、海外の牛は安く売ることができ、大切に時間をかけて育てられた日本の牛は、安く買い叩かれてしまうんだ。そんな状況が続いていてね、それが畜産農家の経営を圧迫してやめていく農家が増えているんだよ。 それだけじゃないんだよ。 君は、日本で乳がんや前立腺がんなどの「ホルモン依存性がん」が増加している事は知ってるかい? それが残留肥育ホルモンと関連があるのではないかと研究した結果が、日本癌治療学会学術集会で発表されたんだ。その結果、なんと赤身肉部分で米国産牛肉は国産牛肉の600倍、脂肪においては140倍ものホルモン残留が検出されたというデータもある。 今スーパーの安売りの肉は、海外のものがほとんどだが、食べ物は命の糧になるだけじゃなくて、その選択がみんなの健康を支えてくれる選択だということ、さらには、家畜を育てている日本の農家の人たちを支えて応援している事にもなるんだっていうことに、みんながもっと氣づいてくれたらと思うんだよ。 何も知らない人が、安いからと肥育ホルモン剤を使った肉を選び、お金に余裕がある層はオーガニックスーパーで、肥育ホルモンフリーの畜産物を選んでいる。知るということは、とても大切な事なんだよ。 『hormone free beef』などのワードで検索すると、ホルモン剤や抗生剤の使用についての、たくさんの記事が見られるよ。翻訳機能を使って調べられるから、興味があったら見てみるといい。 そして、先生は続けた。 君の自由研究は、君自身の興味から始まったかも知れない。でも、君のまとめを見た友達や周囲の人が、自分の毎日の食を見直したり、日本の農家を応援したいと思ったり、世界の事も知りたいと思うかもしれない。 獣医の仕事を調べたことが、そんなきっかけになってくれたら嬉しいと思うよ。 先生の話は、驚くことばかりだった。健太は、この一週間に起きたことを改めて思いだし、日本の畜産を守る人になりたいと改めて思ったのだった。そして、ヒゲジイの涙を絶対に忘れないと、心に誓うのだった。 先生は、中学生になって町に通うようになったら、また気軽においでと言ってくれた。 時々は、甘いスイーツもつくかもよ!と看護師のマリさんも笑って言った。 玄関で手を振りながら見送ってくれる2人を、健太は何度も振り返り振り返り家路についた。 夕暮れの道、沈む太陽が一面を鮮やかな光で包んでいく。 よし! よし! と心のなかで繰り返し、ぐん ぐん とペタルを強く踏んで、健太の自転車が山道をかけ降りていった。 🌱 🌿今日のお花 すすき 花言葉 活力 心が通じる 心が通じるって、嬉しいですね🤗 GSでEMIさんに教えていただいて、9月6日にレンゲショウマを見に行ってきました。レンゲショウマ祭りが9月7日までだったので、ギリギリ数輪先のっている花に会うことができ、感動しました。 そして、途中の山々の風景もとっても素敵でした。写真は、レンゲショウマ群生地入り口の展望台からの風景です😊 すすきの穂が✨キラキラ光って、空が青く澄んでとても綺麗でした。 🐄 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GS繋がりに感謝
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 37 こ ども時代の 夏の残り香 す ぎた日の 青空に揺れていた わた雲のようなコスモス も もう一度 やり直せるなら す んだ空気と りんごの香り 懐かしい あの光のなかで 心を 空いっぱい 開いてみたいと思うんだ 🌿 病院につくと、先生が牛乳瓶に入れた秋桜を、待合室に飾っていた。 おっ、来たか。 初コスモスだよ、可愛いだろう。 マリさんが持っててきてくれたんだ。もう、秋だなぁ。 そう言って、健太の顔を見つめ 大丈夫そうだな と先生はにっこり笑った。 マリさんと、1日のスケジュールの打ち合わせが終わり、積まれたカルテに目を通すと、先生は健太に体を向け口を開いた。 昨日の落ち込みようを心配していたんだが…今日は思いのほか清々しい顔をしてるんでビックリしたよ。 若者は心の回復が早いな! 笑顔の先生にそう言われて、健太は夕べから今朝の出来事の一部始終を話した。 なるほど。 すき焼き かぁ。 君はいい家族に見守られているんだなぁ。 そして、 なぁ、羨ましいよなぁ。 と、マリさんに顔を向けた。 マリさんは、 そうなのよ と相づちを打つと、 先生は駆け出しの頃、牛を助けられなかった時、そりゃあ落ち込んで、何日も大変だったの。 仕事も上の空で… といたずらっぽく笑った。 心を切り替えることは、 簡単なようで難しいんだよ。 たった一人でも、自分を見守ってくれてる存在が、そんな時の支えになってくれる。有りがたいことだ。 そう言って先生に話しかけられたマリさんは、 ほんとよ! 落ち込んだら、甘いお菓子をたくさん買い込む先生を止めるのは、そりゃあ大変なのよ。 そう返すマリさんに、 おいおい、バラすなよ。 と先生が止め、診察室は笑いに包まれた。 その後、先生が真顔になって言った。 日毛さんの所の母牛も死んでしまったそうだ。今朝、お礼の電話があったよ。そして…もう、牛をみんな手離す決心をしたそうだ。 一時、肉牛の飼育は金になって牛を飼うのが流行ったが、今は外国の安い牛肉が入ってきて、国産の牛肉が買い叩かれてしまって大変なんだよ。そこに加えて、今度みたいに死なせてしまうリスクもあるし、大変で畜産をやめていく農家も多いんだよ。 健太くんも知ってるように、日毛さんは、牛をとても大切に育ててこられた。牛の品評会で賞を取ったこともあるんだよ。そんな日毛さんが、畜産をやめてしまうって聞いて、今日は力が抜けてしまったよ。 なぁ、健太くん。 君は肉を買うとしたら、値段で選ぶかね。それとも、品質やそれを育てた人の事を思って買うかね? 今は、みんなが生活が大変で少しでも安いものをと、買う気持ちもわかる。だけど、買うという行動が、日本の農家を応援することに繋がってるって事に、一人一人の選択が集まったら、大きな力にるんだって事に、みんなに氣づいて欲しいと、一人一人とやめていく人を見るたびに祈るような氣持ちなんだよ。 なくなってからでは、もう手遅れなんだがね。豚も鶏も野菜農家もみんな同じ、命を支えてくれる農家が、何でこんなに報われないんだろうね。なぁと、ため息をつくと、先生は机の秋桜をちょんとつついた。 先生の言葉を聞きながら、健太は『買う側の責任と応援』とノートに書いた。そして、この辺の村の人も、みんな年よりばかりだ。もっと、年をとっても続けていけるんだろうか?と書き加えた。 花瓶に飾った秋桜に、陽射しが差し込んで、キラキラ光る診察室に、 さぁ、始めますよ!と マリさんの明るい声が響いた。 今日のお花 秋桜(コスモス) 花言葉・謙虚、調和 🐄 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GS繋がりに感謝
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 36 空腹で寝付けなかった健太は、朝早く父の薪を割る音で目がさめた。 時計を見るとまだ5時だった。 父さん、もう仕事してる。 健太は急いで着替えると庭に出た。 柿の木に絡み付いた葛に花が咲いて、葉っぱにかけたクモの巣には、夜露が光ってキラキラしていた。 あぁ、気持ちいいな。 そう言うと、健太は朝の空気を胸いっぱいに吸いこんだ。 父さん、おはよう。 健太が声をかけると おう、起きたか 健太の声に振り向いた父は、割った薪を運んでくれと健太に頼んだ。 カコーン カッコーン 薪を割る音が、朝の空気に響いていく。薪割りが一段落すると、父はザルもって畑に向かい、健太も後に続いた。 真っ赤に熟れたトマト、キュウリ、ピーマン、ナス。ザルいっぱいになると、庭先の水道でトマトを洗い、父は縁側に腰かけて汗を吹いた。 大きなトマトを一つ、健太に渡すと、父も一つかぶりついた。 夕べ食事をしなかった健太が、勢い良くかぶりつくのを見ながら、父は、うまいかと笑った。 一休みすると、父が口を開いた。 夏休みに入って、お前が自由研究や勉強を頑張ってるのを、父さんも母さんも見てきた。隣近所の畑仕事や家畜の世話も手伝って、小遣いを貯めているのも知っている。そんな、お前の頑張りを見ていた母さんが、久しぶりに健太の大好きなご馳走を作ってあげたいと言ったんだよ。 それで、昨日町に出て肉を買ってきた。お前の喜ぶ顔を想像しながら、母さんが、どんな気持ちで夕食を用意したかわかるか?すき焼きは、家計をやりくりして、母さんがお前のために作ってくれたご馳走だったんだよ。 お前がショックを受けた気持ちはわかる。けれど、お前ももうすぐ中学生だ。もう少し、周りを見て、人の気持ちを思いやれるかと思っとったんだかな。 そう言うと、父は優しい目で健太を見つめた。 そうかぁ、僕は自分の気持ちばっかりで、ほんとに周りが見えてなかった。僕は、本当にお子ちゃまだ。 健太は心の中で、昨日、夕ご飯に手をつけない健太を、心配して見つめていた母の顔を思い浮かべた。 母さん、悲しかったろうな。 僕、悪いことしちゃった。 謝らなくちゃ。 それに、食事抜きで、 ご飯が食べられる有り難みが、夕べは身に染みたよ。一晩中、お腹がグウグウなって眠れなかった。 そう言う健太の言葉に、父が笑い声をあげ、健太の頭に手を置いた。 人間は誰も未熟な所がある。大人になっても反省することが次々に出てくるもんだ。だから、氣づいた事を繰り返さないように、忘れないで心がけていくんだよ。 さぁ、母さんに朝どりの野菜を渡してくれ。 父からザルを受け取ると、健太は台所へかけていった。 母さん、ごめんね。 謝る健太に、母は笑顔を向けた。 実はね、あなたの分、取っておいたのよ。そう言って、夕べのすき焼きを温めてくれた。 すき焼きに、満面の笑顔を見せ健太はもりもり食べ、母はそんな健太を優しく見守っていた。 いつしか山鳩の声は止み、蝉時雨が賑やかになっていた。 朝食を食べながら、自分のなかで何かが変わった事を、健太は感じていた。 🌿葛の花 🌼花言葉 芯の強さ、活力、治癒 🐄 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GS繋がりに感謝
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 35 どうしたの? お腹でも痛いの? 夕御飯は、健太の大好きなすき焼きだった。いつもなら、大喜びでおかわりをするのに、今日の健太は、箸を握ったままうつむいて食べようとしない。そんな健太のようすに、母が心配して声をかけたのだった。 今日は、先生の往診に連れていってもらったんだ。そしたら、行った先がヒゲジイの家で、牛のお産だったんだ。難産で子牛は…死んじゃったんだ。ヒゲジイが泣いていた。母牛も助からないかもしれないって。ぼく…胸がいっぱいで…ご飯食べれない。 健太は、そう話すと涙を落とした。 健太の話を静かに聞いていた父は、そうか と言うと、 ならば今夜は食べんで良い。 健太の分は片付けなさい。 と母に言った。 母は、心配そうな顔をして、健太の顔と父の顔を交互に見つめていたが、やがて はい と 小さく返事をして、 健太の夕食を片付けた。 片付けられていく食事にぼうぜんとしている健太に、 父は もう寝なさい と言うと、 食事を食べ始めた。 健太は、父と母の顔を見つめていたが、やがて立ち上がると自分の部屋へ戻っていった。 なぜ、怒られた? 日記にそう一言書くと、 健太は天井を見上げた。 なんて日だ!そう呟くと、健太は布団に潜ったが、お腹が減りすぎてなかなか寝付けなかった。 🐄 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GS繋がりに感謝
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 34 マ っすぐなのは ツヨイ ことだろうか ク るしいとき サ びしいとき どうにもならない 暗闇に 押し潰されそうになるたびに 思い出すんだ この花を 夕方に花を開き 朝方にはしぼんでしまう 1日花なのに ちゃんと種をつける 植物は 話さない 強さを誇ったりもしない けれど したたかに生きて 花を開き 実を結ぶ いのちを繋いでいく そこには いきる意味は何だろうと 考える隙もない 生きること 今日を精いっぱい生きること それ以上に 大事なことはないと 花に問われる思いがするよ 夕方の畦道を帰りながら、 父が呟いた。 こうして畦道に並んで咲いてると綺麗だなぁ。母さんは、この花が好きだと言うが、摘んで帰っても花が終わってしまうんだよ。 そう言って父は笑った。 マツヨイグサは、夕方に花をつけて、朝方にはしぼんでしまう。それは、生き残るためなんだ。何でわざわざ夕方にって思うだろう?競争率の激しい昼間を避けて、夏の季節の夕方に活発に活動するスズメガという昆虫にピンポイントに照準を絞って、受粉を頼って、この花は咲くんだよ。凄いと思わないか。 もとは昼間に咲いてた花かもしれない、しかも、この土に根を張ってるのに、どうやって、夕方に活発に活動するススメガの生態を掴んだか。そこから、どうやって夕方に咲く仕組みを作ったか。植物にだって、そんなことができてしまうんだ。人なら、もっとできると、道を開けると思わないか? そもそも、みんなが日の出と共に咲くのに、あえてススメガに照準を絞って夕方に咲く道を選ぶなんぞ、なんと意思の強い凄いことだと思わないか?この花は驚くばかりだ。 生き延びるのは、戦うことだけじゃない。周りを観察して、自分だけの知恵を使って、他にはない道を作る。そこに進むと決めたら、強く柔軟に変わっていく。逆境の時も、そこが分かれ道なんだよ。 あの夏の日の父の言葉を 思い出す。 父さん 僕の花は どう咲いたら良いだろう。 僕はまだ 道の途中だ 健太は、小さなマツヨイグサにそっと触れて、呟いた。 🌿今日の花 マツヨイグサ この花のことを知ったら、宇宙人かと思うほど、驚きでした😅 そんな思いをこめて、今回のたぬき桜は、マツヨイグサバージョンです 🐄 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GS繋がりに感謝
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 34 病院に戻ると、看護師のマリさんがコーヒーを入れて、お疲れさまでした と出迎えてくれた。 部屋いっぱいに広がったコーヒーの香りに、 おっ、気が利くなぁ と先生が微笑んだ。 先生が顔を洗う間に、 はい、健太くんも。 そう言って、健太の分もコーヒーを入れてくれた。 お前も顔を洗え、そう言って先生が投げてよしたタオルを受け取ると、健太も涙で濡れた顔を洗った。 はい、お二人さん。 ビスケット、特別サービスよ。 そう言って、マリさんがビスケットを出してくれた。 おぉ、これは好物のビスケット!マリさんの魔法がかかってるから、元気になるぞ!そう言って、ビスケットをつかむと先生が笑った。 マリさんは先生の言葉に微笑むと、 診察まで、あと30分です。一息いれたら、今日の打ち合わせを始めますからね。 と言って、隣室へ戻っていった。 先生は、コーヒーをのみ終わると、ショックだったかい?と、健太に聞いた。 黙って健太が頷くと、 日毛さんは、そりゃあ、子牛が産まれるのを楽しみにしておられた。 牛の子が生まれたら、やっと家の屋根を直せると、そんな話も嬉しそうにしてね。 ここのように山間部の農家は、田畑の収入も少ないから、牛や豚や鶏は大切な収入源になっている。そんな中、母牛も子牛も一度になくしてしまって…日毛さんのショックはさぞ大きいだろう。健太くんも知ってるだろうが…日毛さんは、そりゃあ、牛を可愛がっていたからね。これからどうやって生計を立てていくかも、考えなきゃならない。 どれ程辛いことか。 そう言うと、先生はじっと健太を見つめていった。 健太くん、知ってるかね。 獣医の自殺率は人間を診る病院の医者の約4倍とも言われてるんだよ 獣医は、重病や瀕死の動物を診る機会が多くて、日常的に死と向き合わざるを得ないんだ。 今回のように、何ヵ月も飼い主と誕生を楽しみにしてきた命を、なす術もなく助けられない時もある。 どんなに誠実に治療しても、快復しなかったりなくなってしまうと、飼主からの感情的なプレッシャーも大きなストレスとなることもある。 そして、時には予後不良の動物に、安楽死の判断を下さなければならない時だってある。 獣医は動物の命と深く関わる仕事だから、24時間365日心の休まる時間も少なくて、無力感や罪悪感に悩むことが日常的にあるんだよ。 それでもね、この仕事は嬉しいこともたくさんある。僕はね、物言わぬ動物たちの優しい目が大好きなんだ。子供の頃、僕と一緒に育った大切な犬が死にそうになってね、その時寝るまも惜しんで治療に当たってくれた獣医さんに感動して、獣医になろうって決めたんだ。だから、その時の思いを、ずっと忘れないでいたいと思ってるんだよ。 そう言うと、先生は立ち上がった。 健太くん、伸びをしてみたまえ。 日頃あまりしない動作だが、こうして伸びをすると、縮こまっていた心も伸びるんだ!やってごらん。 先生に言われて、隣で健太も大きく伸びをした。 先生は、はははと笑うと さぁ!午後の診察だ。 気合いをいれて始めるぞ! と、診察室に向かっていった。 🐄 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GS繋がりに感謝 🌸花は、レンゲショウマです。 EMIさんに教えていただいて、土曜日にレンゲショウマを見に行ってきました。 御岳山のレンゲショウマ祭りは、 昨日日曜日まででした。 花はもう終わりに近かったですが、まだ咲き残ったレンゲショウマに出会うことができました。 初めてみる可憐な花に、 すっかりファンになりました💖
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 33 翌朝早く、先生に連れられて健太は、再びヒゲジイの家に向かった。 牛舎に着くと、横たわった牛の横にヒゲジイが座っていた。 先生の姿を見つけると、ヒゲジイは立ち上がりお辞儀をして言った。 朝早くに、ありがとうございます。 明け方に…息を引き取りました。 一晩そばについとりましたが、 なんにも なんにも… してやれませんでした。 どうぞ、最後をみてやって下さい。 そう言って先生に頭を下げた ヒゲジイの頬に、 一滴涙が伝った。 先生は そうでしたか というと、牛の診察をはじめ、 残念でした とヒゲジイに頭を下げた。 先生の目にも涙が光っていた。 この子は、気性が優しくて、人懐こい牛だった。子牛もよう産んでくれて…わしらの生活を助けてくれた。牛小屋に来ると、すり寄ってきて、わしの手をペロペロなめて。そりゃあ、可愛くて家族のような存在だった。 この牛の出産を、子が産まれる日を、ほんに楽しみに過ごしてきた…。この子の存在が、どれほど生活の張り合いになっとったか。まさか、こんなことになるとは、つゆにも思っとらんで…。 そう言ってヒゲジイは泣いた。 大人が泣く姿を、ましてや大好きなヒゲジイが泣く姿をはじめて見た健太は、胸が締め付けられるような氣持ちだった。 ヒゲジイのそばにしゃがんで、静かに話を聞いていた先生は、 役に立てんで申し訳なかった。 と頭を下げた。 私は診察があるから、これで帰ります。もしも、なんかあったら、遠慮なく電話下さい。 先生はそう言って、立ち上がった。 ヒゲジイも立ち上がると、袖口で涙をぬぐい、ありがとうございました。と深々と頭を下げた。 病院に戻る車のなか、先生は無言だった。健太も、泣くまいと歯を食いしばって、窓の外を見つめていた。 🐄 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GS繋がりに感謝 今日のお花 千日紅
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 31 牛小屋に行くと、母牛がぐったりと横たわっていた。 昨日から産氣づいて、今にも産まれるかと思ったんじゃが、なんぼいきんでも出てこない様子じゃて、何とか引っ張り出せんかとやってみたんだが、苦しむばかりで産まれてこんのじゃ。 ヒゲジイは顔をくしゃくしゃにして、先生に説明した。 ヒゲジイの説明を聞きながら、先生は道具を揃え、牛の診察を始めた。 そして、先生が手を突っ込んでお産の介助をはじめ、しばらくすると牛の子が産まれた。けれど、牛の子はぐったりして息をしておらず、先生が手を尽くして蘇生を試みたが、牛の子は息をふきかえすことはなかった。 だめだったよ。 その言葉に、ヒゲジイはがっくりと膝をおとした。 母牛は、母牛は、助かりますかの?先生! ヒゲジイの言葉に、辛そうに先生がこたえた。 日毛さん、この牛は子宮捻転を起こしてたんです。簡単にいえば、子宮広間膜という所が捻れてしまっていて、正しい位置に戻してやらなければ産むことができない状態だったんです。そうなると、自然に産まれることはなくて、無理やり引っ張ってしまうと、かえってダメージが大きくなってしまうんです。 もう少し、早かったら助けられたかもしれなかったが…。子牛は残念でした。申し訳ない。 先生は、そう言うとヒゲジイに頭を下げた。 先生は何も悪くない。どうぞ頭をあげて下さい。 本当に、もっと早く来ていただけば良かった。それに、わしが、無理に引っ張ったからか…知らなんだ。 子牛も母牛も、辛い目にあわせちまった。そう言うと、ヒゲジイはポロポロと涙をこぼした。 こうなるとやってあげられることがないんですよ。力になってやれなくて、本当に申し訳ない。今、注射を打ったから、今夜が山だと思います。明朝、早く見にきます。 そう言って先生が立ち上がると、ヒゲシイは深々と頭を下げた。 お世話になりました。 わしは、今晩はこの子についててやります。そう言って横たわる牛の体を撫でた。 先生は一礼すると、車に乗り込んだ。健太はヒゲジイを振り返り振り返りしながら、先生のあとを追った。 来たときのワクワクした気持ちが、嘘のように、健太の心は悲しみに沈んでいた。 健太くん、辛い場面を見せてしまったね。しばらくすると、先生が口を開いた。 日毛さんはね、前の牛のお産の時に、引っ張って無事にお産させることができたんだよ。だから、今回も迷うことなくそうしたんだろう。 人も牛も、お産は一回一回が違う。同じ方法にとらわれないで、観察してからだの声を聞くことが大切なんだ。 明日…母牛もだめかもしれん。厳しい場面を見ることになるかもしれないが、また来るかね? 先生が聞いた。 健太が頷くと、早朝に来るように伝えられた。 帰宅すると、健太はノートに向かったが、ヒゲジイの涙が目に浮かび、鉛筆が止まったまま、一言だけノートに書いた。 ヒゲシイ がんばれ! 鬼灯と書くホオズキ 悲しい日は、オレンジが心にしみる 🐄 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GS繋がりに感謝
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 30 今日は牛の子が生まれるんだ。 今から出かけるがついてくるかね。 先生が健太にたずねた。 すると、看護師のマリさんが心配そうに口をはさんだ。 先生、良いんですか? あぁ、大丈夫だ。 健太くんには、全部が勉強だ。 そう言うと、先生は健太をのせて往診に向かい、その道々牛のお産について説明した。 牛のお産の前後は農家が一番気を遣う時期でね。牛のお産は産気づいてすぐというわけではないんだよ。農家は何日も前から氣を配って牛の様子を見守るんだ。 はじめに、牛のお産が近づくと、子宮の外の出口が緊張して、糊状の粘液が出てくる。だが、その日はまだお産は始まらない。 子宮の出口が1〜2指幅に開いて、粘液が少し緩くなったら、お産は少し進んで明日か明後日になる。 子宮の出口が3指幅に開いて、粘液が緩くなったら、お産は今日か明日に近づく。 子宮の出口が拳が入るくらい開いて、胎胞(牛の赤ちゃんが包まれた袋)が触れるようになったら、お産はやっと12時間以内くらいの目安になる。 そして、やっと牛の足胞が外陰部から見えてくると、そこから初産の牛で2時間以内、経産だと1時間以内に産むことになるんだ。 長い道のりだろう。 そして、お産は何度も子供を生んだ牛でも、毎回順調とも限らないんだ。君のところの花子の時も、難産で僕が呼ばれたね。 健太は、花子のお産を思い出して、こくりと頷いた。 今日のお産は産気づいてからずいぶん時間がたつらしい。どうも難産らしいから、すぐ来て欲しいと呼ばれたんだよ。 先生の厳しい表情に、健太も緊張しながらメモしていたが、突然、窓のそとの風景に嬉しそうに声を上げた。 あっ!ヒゲジイの家だ! そっかぁ、ヒゲジイ家の牛のお産だったのかぁ! 車が細い小道を曲がった先に見えたのは、健太の知ってるヒゲジイの家だった。 ヒゲジイは、ヒゲを生やしているからと健太のつけたあだ名で、本名は日毛さんと言った。 村で牛を飼っているのは、健太の家とヒゲジイの家2軒だけで、父親どおしが懇意にしており、小さい頃から健太もよく父に連れられて訪れ、子供のいないヒゲジイに孫のように可愛がってもらっていた。 そうだよ。だか、産気づいてから時間が経って母牛もぐったりしてしているらしい。 牛はもちろん命懸けだが、農家も獣医も真剣勝負だ。しっかり見ておくんだよ。 そう言うと先生は、車を降りて健太を連れ足早に牛舎に向かった。 牛舎につくと、ヒゲジイが走って先生を出迎えた。 先生、来てくれて良かった! どうも、1日たつが生まれる様子もないんですじゃ。母牛も弱ってきたもんで…。何とか助けてください!お願いします。 先生は頷くと、小走りにヒゲジイの後に続いた。 🐄 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GS繋がりに感謝♡
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 29 空よりも青い碧 綿雲よりよりも 白いしろ あの日 幸せの中にいたことに ずっとあとに 氣づく ふっと感じる 染みるほどあたたかな光 甦った遠い記憶の あなたの声 今 あなたに会えたら 伝えたい言葉が あるんだ 🌿 健太の見学3日目 その日は、病院は比較的静かだった。診察の合間に、先生はいろんなエピソードを話してくれ、健太はそれをノートにまとめた。 1日の診察が終わる頃、1本の電話がなった。先生はうんうんと話を聞いていたが、やがて沈黙の後、静かに受話器を置くと言った。 昨日診察に来たはるさん家のシロくんがなくなったそうだ。電話口のはるさんは泣いていた。昨日点滴をしてもらってシロくんが少し楽そうになったこと。穏やかに眠るようになくなったこと。そして話を聞いてもらえて、心の整理になったとお礼を言われたよ。 そう話す先生の目元に涙が光っていた。 そして、 さぁ、診察は終わりだ。 ちょっと出かけてくるか。 そう言うと、白衣を脱いで外に出かけてしまった。 唖然として、健太がドアのほうを見ていると、看護師のマリさんが笑っていった。 大丈夫よ。先生はドライなふりをしてるけど、本当はとっても患者さん思いなの。今日みたいなことがあると、いつも大好物を買って、笑顔になって戻ってくるのよ。 それがパフォーマンスなのか、本心なのかわからないけどね…。 まぁ、見ててごらんなさい。 マリさんがいたずらっぽく笑って言った。 そして、その言葉通り、30分もしない内に、シュークリームの箱を大事そうに抱えて、笑顔の先生が戻ってきた。 ねっ! マリさんが健太にウインクして見せた。 さぁさあ、お茶にしよう! 先生がにこにこと幸せそうに、箱を開け、シュークリームにかじりつく。それを見ながら、健太と看護師さんも、シュークリームを口にした。 そして、先生の冗談に診察室が笑いに包まれた。 健太はふと思った。 凄いなぁ、先生はこうやって空氣を作ってるんだ。優しくて暖かい事と、感情に巻き込まれない事は別なんだ。流されない、そしてちゃんと切り替えて自分に戻ってくる。僕も、いつか、そんな大人になれるかな。 健太はそっとノート「流されない」「暖かい空氣を作る人に」と書き込んだ。 🏷️so・raの小さな物語 🏷️たぬき桜 🏷️健太応援団 🏷️GS繋がりに感謝♡
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 28 ひ とは誰でも め には見えない こ ころの宝を持っている う れしい事ばかりじゃない人生の そ の行く道に出会った 小さな花でさえ 人生を支える 力をくれることもある そうして一歩 また前を向く 今までも 今も 道の途中 🌱 健太の見学2日目 きむら動物病院は、町外れの小さな病院だったが、朝から絶え間なく人が訪れていた。 お昼が過ぎて 午後3時 やっと昼食を取ろうとした時に、一人のお婆さんがドアを開けた。 休憩の時間なのは知ってるんですが、どうか見て下さいと、ぐったりしたわんちゃんを抱いていた。 やぁ、はるさん、久しぶりですね。こんな時間に珍しい。 先生はドアを開いて、気さくに声をかけた。 シロくん、ずいぶんぐったりしてるようだが…かまいませんよ、さぁどうぞと、はるさんを診察室に招き入れた。 どうされましたか? はるさんの抱いていた犬を預かると、先生が聞いた。 もうずっと食欲がなくて、あまり食べなくなってたんです。暑さのせいかなと思って様子を見てたんですが、水も飲まなくなって…。この子は大丈夫でしょうか? そう言ってはるさんは、心配そうに 犬に目を向けた。 そうでしたか。 はるさんの話を聞きながら診察していた先生が、しばらくすると口を開いた。 ずいぶんと衰弱しています。 それに、口のなかとお腹に大きなしこりがあります。癌かもしれません。いろんな検査をすれば、詳しい診断ができますが、この衰弱のようすじゃそれすらも負担になってしまうでしょう。今日は点滴をして、様子を見てはどうでしょう? はるさんを優しく見つめると先生がたずねた。 そうなんですか。 はるさんは、震える声でこたえると、ポタポタと涙を落とした。 もっと早く連れてきたら良かったことは、知っていたんです。一人暮らしの私にとって、この子は大切な家族だから。でも…重い病気だったら…日々の暮らしが精一杯でそのお金も払えないからと、診察に来るのをためらってました。…どんどん弱って、ついに水も飲めなくなって、やっと連れてくる決心がついたんです。弱ってくこの子を看病しながら、見守ってるだけしかできなかったんです。もっと早く連れてきてあげれば…。 そう言ってポタポタと涙を落とすはるさんの背中を、看護師さんが優しくさすった。 ずっと心配されてお世話されてきたんですね。大丈夫ですよ。はるさんの想いは、ちゃんとこの子に伝わってますよ。シロくんは、とても衰弱していますので、点滴をしてあげると少しは楽になるかもしれません。今日は点滴をされますか? はるさんが頷き、その日シロは点滴を受けて帰っていった。 点滴をしている間、先生は、はるさんからシロとの生活やこの間どんな看病してきたか、はるさんの言葉に時間をかけて静かに耳を傾けていた。 はるさんの診察が終わり、みんなが昼食を食べたのは、もう夕方になってからだった。 先生、犬の癌って多いんですか? 健太がたずねた。 年をとると多くなるね。癌の宣告をするのは人も犬も辛いものだ。と先生がこたえた。 動物病院はね、病気や治療方針を飼主に理解してもらうために、まずその飼主のお人柄を深く理解することが大切なんだ。 どんな価値観を持っているか、 家族の中でペットがどんな存在か、家庭環境や金銭的な状況も考慮して話を進める必要があるんだよ。 獣医師として見れば、血液検査やレントゲン、超音波、もっと高額な検査もある。…いろんな検査で正確な診断をめざすこともできる。 だけど、もしも、もうすぐ命の終わりが来そうなペットに、苦しい思いをさせて検査をすることをどう思うかね。 はるさんは、旦那さんがなくなった後、愛犬のシロくんと支えあうように生きてきたんだよ。前回は2年前だ。あの時は元気だったが…。 犬のがんの手術は、平均10万〜15万円くらいかかるし、さらに抗がん剤治療は1回3万円以上する。それを月に2、3回を最低でも半年から1年続ければ軽く見積もって年間70万円。手術も入れるとトータルで100万円くらいかかってしまう。ここはバスも来ないから、通院に払うタクシー代もバカにならない。 シロくんの存在がどれ程、はるさんの支えになっているか、今までの様子から良くわかる。だけど、診察費用の心配をして、ここに連れてこれなかったはるさんの思いも、痛いほどわかるんだよ。 どんなに、悔しくて悲しいか。 もしも、シロくんがなくなったら…はるさんのこれからも気がかりだ。だけど、僕らにできることは、ここでの時間だけ。思いを誰かに伝えることで、少し心の整理がつくこともある。点滴の間話を聞いていたのは、そんな気持ちだったからなんだよ。 診察で無償で助けてあげたいと思うこともある。だけど、噂は広まるから、一人にサービスすればやがて全員にサービスしなければならなくなる。仕事だからね…そこに葛藤がある。だけどね、それでもできることに真心を注ぐことはできると、私が先生と尊敬していた人が教えてくれた事なんだ。戦時中、もっと厳しいときの話をたくさん聞いた。僕はその言葉を忘れないようにしてるんだよ。 先生はそう言うと、健太の肩をポンとたたきにっこり微笑むと、昼食もそこそこに、午後の診察に向かっていった。 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GSの繋がりに感謝♡ 🌿ヒメコウゾ🌿 花言葉 過去の想い出 源氏山から北鎌倉へ 険しい山道の途中で出会った ヒメコウゾ(姫楮) クワ科 コウゾ属 コウゾは和紙の原料であるが、ヒメコウゾはコウゾとカジノキの雑種と。 初めて見た♪ 野苺みたいな可愛い実💖 甘いのかな?美味しいのかな? 好奇心で、実を一粒噛んでみた ジャリジャリ…😅甘くなかった💦
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 27 む なしくて く るしくて げ んきが なくなってしまった時 信念 をもって精一杯努力しても どうにもならん時もある そして信念を見失ったと人は嘆くが 信念は今の心を信じると書く 昨日でも 明日でもない 今なんだよ 信じればいつも今そこにある それでも顔を背けたくなるときは 一旦止まって 好きなものを 腹一杯食うことだ そう言って笑うと、獣医の先生は、シュークリームを大きな口を開けてかぶりついた。 そして、2つ目に手を伸ばした所で、 だめです! お体に触りますから、1個だけです。と、看護師さんが取り上げた。 なぁ、あと1個ぐらい良いだろう? 健太くんももう一つ食べたいよな。 先生は同意を求めるように、健太のほうを見ていった。 いえ、僕はもうお腹一杯です。 そう健太が笑って答えると、 ほら、ご覧なさい。健太くんだってわかっているんですよ。と、看護師さん。 なんだよぉ。 厳しい監視役が一人 増えちゃったのかぁ。 先生のおどけた声に、看護師さんも笑い、診察室は和やかな笑いが広がった。 🌱 夏休みの初日、その日を待ちかねた健太は、自由研究の取材に父から紹介された獣医さんを訪れた。 メモの住所には、きむら動物病院と書かれていた。健太がその建物を見つけたちょうどその時、犬を抱いた女性がお辞儀をしながらドアから出てくるところが見えた。続いて見送りに出てきた日に焼けた恰幅の良い白髪の男性を見て、健太が驚きの声をあげた。 あっ、先生だ!! 父から詳しい話もないまま、行けばわかると言われて、メモをたよりに到着した健太は、父が取材を頼んでくれた獣医さんが、いつも花子や家の動物たちを診察してくれる、健太が大好きな、憧れの獣医さんと知って、健太は胸が一杯になって駆け出した。 獣医さんは健太を見つけると笑顔を向け、手を振った。 やぁ、健太くん! 待っていたぞ。先生は健太の肩に手をのせ、ドアを開けて健太を室内に招き入れた。 清潔で温もりを感じるこじんまりした診察室。先生の傍らには、20代くらいと思われる優しそうな看護師さんが立っていた。 はじめまして、健太くん。 先生からお話しは聞いてました。看護師のマリと言います。先生は大雑把だから、何か困ったことがあったら、遠慮なく言ってね。 とマリさんは手を出した。 先生は、マリさんと握手して挨拶をする健太をニコニコと見ながら、 おい、大雑把はないだろう。 言うなら。おおらかって言うんだよ。未来有望な若者に、いい加減なことを教えちゃ行かんぞ。 わっはっは。 そう愉快そうに笑うと、健太に椅子をすすめた。健太は、よろしくお願いしますと深々とお辞儀をして、先生に向かい合って座った。 さて、健太くん。おおよそのことはお父さんから聞いているが、単刀直入にたずねたい。君は私の所で何を学びたいのかね。 先生に聞かれて、健太はカバンから一郎の観察記録やそれまで調べた牛の成長や獣医の仕事など、まとめたノートを先生に渡した。 これは、僕が一郎の成長の記録と獣医さんの仕事について、今日までまとめてきたノートです。始めたきっかけは、自由研究の宿題が出たからだけど…一郎が生まれたとき、先生の仕事を見て凄く感動して、将来獣医さんになりたいって前よりも憧れて…。それに、助けたい生き物にであった時、僕にも知識があったらって思って。 それで、いろいろ調べたんだけど、情報が少なくて…それなら、自分で直接見たり聞いたりして調べたいって思ったんです。 健太の言葉を頷きながら静かに聞いていた先生は、健太から渡されたノートを読み始めた。 今日のお花 🌸 ムクゲ 花言葉「信念」 🏷️たぬき桜 🏷️健太の冒険 🏷️so・raの小さな物語 🏷️GS繋がりに感謝
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 26 健太の家の山の畑の入り口に、 1本の百日紅の樹があった 畑の周りの雑草を一通り刈り終わると、父が百日紅の木の下で、一休みしようと健太を呼んだ。 畑の脇には、山からのチョロチョロと湧き水が流れ出ている。その小さな流れにつけていた、真っ赤なトマトを取り出すと、父が健太に放って渡した。 よく冷えてるぞ! 最高だね!父さん。 父からのトマトを受けとると、健太は満面の笑みでかぶりついた。 野良仕事の至福の時間だな。父も健太の隣に腰を下ろして、トマトにかぶりついた。 百日紅の枝を、山から吹いてくる風が優しく揺すっていく。 汗をぬぐうと、百日紅を見上げていた父が口を開いた。 この樹は、お前が生まれた記念に植えたんだよ。殺風景な山の畑も少し華やかになって、楽しみができるかなと母さんが言ってな。 しばらく健太と樹を見上げていた父が、健太に向き合うと、お前も大きくなったなぁとしみじみ言った。 母さんから聞いたよ。 夏休みの自由研究に、牛の子の観察をしようと思ってる話や、将来獣医になりたい夢を持っていて、獣医の仕事を調べたいと思ってると。 それでな、この間、懇意にしている獣医さんに相談してみたら、それならうちに取材や体験をしに来てみてはどうかなと言ってくれたんだよ。 どうだ?お前が本気で取り組むつもりなら、獣医さんにお願いしてみるが…。 父の言葉に、健太は飛び上がって父に抱きついた。 本当?!父さん! もちろんだよ!凄いや!ありがとう。ありがとう父さん! 健太の喜びように、父も笑いながら続けた。ただし、期間は一週間だけだぞ。それに、遠い距離だが、隣町まで毎日自転車で通えるか? もちろん! もちろんだよ、父さん! やったぁ、やったぁ! 小躍りしながら父の周りをぐるぐる駆け回る健太の声を、蝉の合唱が追いかけた。そんな健太を見守る百日紅の花を、風がそっと揺すっていった。 🏷️たぬき桜 🏷️健太の冒険 🏷️so・raの小さな物語 🏷️GS繋がりな感謝♡
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 25 花子の産んだ子牛はすくすく育った。朝起きると、顔を洗うのもそこそこにまっすぐ子牛のもとにかけていく健太を、 「まるで恋人に会いに行くみたいだな。いっそ牛小屋の隣にお前の部屋を作るか?」と父がからかった。 子牛が産まれてから家族の笑顔も増えていた。花子の産後の回復も順調で、健太は暇さえあれば牛小屋に入り浸って過ごしていた。たぬ吉の事件以来、笑顔が少なくなった健太を心配していた両親は、その嬉々としたようすが何よりも嬉しかった。 梅雨が開け、蝉が賑やかに鳴き始めた夏休み間際のある日、健太たち6年生は、卒業文集に載せる「将来の夢」についての作文と、自由研究の宿題が出された。 えー!自由研究だって~。 うざ~、だる~。 不満を口にする子供たちに、 適当にやってる研究はやり直しですよ!と先生から釘を刺された。 やり直しかよ!そんなの聞いたことないぞー! 先生に抗議するたび、どんどんハードルが上がっていくので、ついに、子供たちは共同研究をしようとか、良い本がある真似すれば良いよ!と知恵を出しあい始めた。 そんな声を聞きながら、健太は自由研究かぁ、楽しみだな。と一人にやにやとしていた。 夏休みに入ってから、いつもあちこちと野山を飛び回っていた健太が、机に向かって何かを調べているかと思うと、深いため息をつくようになっていった。そんな健太の変化を両親は心配しながら見守っていた。 ある日、健太は母から玉ねぎの皮むきを頼まれた。いつもは皮むきをしながら母といろんな話をする、2人にとって楽しい時間だった。でも、その日は健太が何かを考えてるようすで、口も開かず黙ったままだった。そして、ついに大きなため息をついた健太に、母が手を止めて訪ねた。 今日は無口だし、ため息なんて珍しいわね。一郎が産まれてから楽しそうにしていたのに、どうしたの?このところ何か調べたりもしてるようだけど…何か悩んでることでもあるの?良かったら話してみない? 母の言葉に、ハッとして顔をあげた健太は、少し考えるように躊躇していたが、ゆっくり口を開いた。 母さんにはお見通しだね。 実は、夏休みの宿題に自由研究をしてくるように言われたんだ。 それで、いつか獣医になりたいと思っていたから、よし!と思って、一郎の成長や獣医の仕事について調べようと思ったんだ。楽しそうだし、簡単だって思ってたんだけど…。 一郎の観察は楽しいし、順調なんだ。でも…獣医の仕事は調べても、決まりきったことばかりしか書いてなくて、挫折しちゃってるんだ。もっと、何て言うか生きた情報が欲しいなって。僕が一郎が生まれた時に助けてくれた獣医さんに感動したみたいな何かを書きたくて。 それに、実際に獣医になるにはどんな勉強したら良いかとか、どんな道があるかとかも知りたいんだ。そこで、止まっちゃって…。 そう言うとまた健太はため息をついた。 まあ、自由研究を。獣医さんのお仕事は素晴らしいけど…実際の仕事の事を調べるのは難しいわねぇ。 そう言うと母さんはしばらく考えているようすだったか、やがて顔をあげると優しく微笑んで言った。 獣医になるのも、そのお仕事も、考えてる何倍も大変な事かも知れないわね。だけど、知りたいと思った時、自分の目でみて確かめたり考えることは大切よね。 えっ!母さん! 何か心当たりがあるの? 健太が目をキラキラさせて母に訪ねた。 そうねぇ、何か方法があるか、お父さんにも聞いてみるわね。 やったぁ! 健太が飛び上がってガッツポーズを取るのを母は笑って見上げながら、 さぁ!あと一息!皮むきを頑張りましょう。そう言って皮むきを再開した。健太は、さっきとは打って変わって満面の笑みで、腕まくりをして皮むきを再開した。 賑やかな蝉の声 百日紅をふきすぎる風に 庭先の風鈴がチリンと鳴った。 🏷️たぬき桜 🏷️健太の冒険 🏷️so・raの小さな物語 🏷️GS繋がりに感謝♡ 🌿写真は、6月に訪れた北鎌倉の源平山公園の山道に咲いていた山百合です。とても綺麗でした。 ところで、皆さんは、🧅玉ねぎを長持ちさせる工夫をご存知ですか? 農家は、玉ねぎを畑から収穫後にビニールハウスなどに干して乾燥させてから出荷します。そのまま、ある程度乾いたものを保存すると、時々茶色の外皮の内側に黒かびがついている玉ねぎあり、これをそのままで保存すると、そこから腐り始めてしまうんです。そこで、一手間でも、乾いた外側の皮をむいて、タオルで玉ねぎをふいてから、もう一度乾燥させて、外側に茶色の皮ができたら取り込むんです。黒かびのところもふいてしまうから、腐ることもなく玉ねぎは長持ちします🤗。 お店て買われた玉ねぎも同じです。長持ちするので、良かったらお試しください。 🌿
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