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so.ra
2025/09/05
so・raの小さな物語
** たぬき桜 ** その 31
牛小屋に行くと、母牛がぐったりと横たわっていた。
昨日から産氣づいて、今にも産まれるかと思ったんじゃが、なんぼいきんでも出てこない様子じゃて、何とか引っ張り出せんかとやってみたんだが、苦しむばかりで産まれてこんのじゃ。
ヒゲジイは顔をくしゃくしゃにして、先生に説明した。
ヒゲジイの説明を聞きながら、先生は道具を揃え、牛の診察を始めた。
そして、先生が手を突っ込んでお産の介助をはじめ、しばらくすると牛の子が産まれた。けれど、牛の子はぐったりして息をしておらず、先生が手を尽くして蘇生を試みたが、牛の子は息をふきかえすことはなかった。
だめだったよ。
その言葉に、ヒゲジイはがっくりと膝をおとした。
母牛は、母牛は、助かりますかの?先生!
ヒゲジイの言葉に、辛そうに先生がこたえた。
日毛さん、この牛は子宮捻転を起こしてたんです。簡単にいえば、子宮広間膜という所が捻れてしまっていて、正しい位置に戻してやらなければ産むことができない状態だったんです。そうなると、自然に産まれることはなくて、無理やり引っ張ってしまうと、かえってダメージが大きくなってしまうんです。
もう少し、早かったら助けられたかもしれなかったが…。子牛は残念でした。申し訳ない。
先生は、そう言うとヒゲジイに頭を下げた。
先生は何も悪くない。どうぞ頭をあげて下さい。
本当に、もっと早く来ていただけば良かった。それに、わしが、無理に引っ張ったからか…知らなんだ。
子牛も母牛も、辛い目にあわせちまった。そう言うと、ヒゲジイはポロポロと涙をこぼした。
こうなるとやってあげられることがないんですよ。力になってやれなくて、本当に申し訳ない。今、注射を打ったから、今夜が山だと思います。明朝、早く見にきます。
そう言って先生が立ち上がると、ヒゲシイは深々と頭を下げた。
お世話になりました。
わしは、今晩はこの子についててやります。そう言って横たわる牛の体を撫でた。
先生は一礼すると、車に乗り込んだ。健太はヒゲジイを振り返り振り返りしながら、先生のあとを追った。
来たときのワクワクした気持ちが、嘘のように、健太の心は悲しみに沈んでいた。
健太くん、辛い場面を見せてしまったね。しばらくすると、先生が口を開いた。
日毛さんはね、前の牛のお産の時に、引っ張って無事にお産させることができたんだよ。だから、今回も迷うことなくそうしたんだろう。
人も牛も、お産は一回一回が違う。同じ方法にとらわれないで、観察してからだの声を聞くことが大切なんだ。
明日…母牛もだめかもしれん。厳しい場面を見ることになるかもしれないが、また来るかね?
先生が聞いた。
健太が頷くと、早朝に来るように伝えられた。
帰宅すると、健太はノートに向かったが、ヒゲジイの涙が目に浮かび、鉛筆が止まったまま、一言だけノートに書いた。
ヒゲシイ がんばれ!
鬼灯と書くホオズキ
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昨日から産氣づいて、今にも産まれるかと思ったんじゃが、なんぼいきんでも出てこない様子じゃて、何とか引っ張り出せんかとやってみたんだが、苦しむばかりで産まれてこんのじゃ。
ヒゲジイは顔をくしゃくしゃにして、先生に説明した。
ヒゲジイの説明を聞きながら、先生は道具を揃え、牛の診察を始めた。
そして、先生が手を突っ込んでお産の介助をはじめ、しばらくすると牛の子が産まれた。けれど、牛の子はぐったりして息をしておらず、先生が手を尽くして蘇生を試みたが、牛の子は息をふきかえすことはなかった。
だめだったよ。
その言葉に、ヒゲジイはがっくりと膝をおとした。
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ヒゲジイの言葉に、辛そうに先生がこたえた。
日毛さん、この牛は子宮捻転を起こしてたんです。簡単にいえば、子宮広間膜という所が捻れてしまっていて、正しい位置に戻してやらなければ産むことができない状態だったんです。そうなると、自然に産まれることはなくて、無理やり引っ張ってしまうと、かえってダメージが大きくなってしまうんです。
もう少し、早かったら助けられたかもしれなかったが…。子牛は残念でした。申し訳ない。
先生は、そう言うとヒゲジイに頭を下げた。
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本当に、もっと早く来ていただけば良かった。それに、わしが、無理に引っ張ったからか…知らなんだ。
子牛も母牛も、辛い目にあわせちまった。そう言うと、ヒゲジイはポロポロと涙をこぼした。
こうなるとやってあげられることがないんですよ。力になってやれなくて、本当に申し訳ない。今、注射を打ったから、今夜が山だと思います。明朝、早く見にきます。
そう言って先生が立ち上がると、ヒゲシイは深々と頭を下げた。
お世話になりました。
わしは、今晩はこの子についててやります。そう言って横たわる牛の体を撫でた。
先生は一礼すると、車に乗り込んだ。健太はヒゲジイを振り返り振り返りしながら、先生のあとを追った。
来たときのワクワクした気持ちが、嘘のように、健太の心は悲しみに沈んでいた。
健太くん、辛い場面を見せてしまったね。しばらくすると、先生が口を開いた。
日毛さんはね、前の牛のお産の時に、引っ張って無事にお産させることができたんだよ。だから、今回も迷うことなくそうしたんだろう。
人も牛も、お産は一回一回が違う。同じ方法にとらわれないで、観察してからだの声を聞くことが大切なんだ。
明日…母牛もだめかもしれん。厳しい場面を見ることになるかもしれないが、また来るかね?
先生が聞いた。
健太が頷くと、早朝に来るように伝えられた。
帰宅すると、健太はノートに向かったが、ヒゲジイの涙が目に浮かび、鉛筆が止まったまま、一言だけノートに書いた。
ヒゲシイ がんばれ!
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