シャクナゲ類

ツツジ科ツツジ属の常緑低木。北半球に広く分布する。日本には多くの自生種があり、暖地の低山から高山帯まで見られる。山地深くの尾根や岩場などに生える。庭木や公園樹としても植えられる。細い大形の葉が枝先に集まって垂れる。花期は5〜6月。主に淡紅色〜紅紫色の花が前年枝の枝先に集まって咲き、1つの大きな花のように見える。果実は蒴果。秋に熟し裂開する。樹全体に有毒のロードトキシンが含まれる。悪心、嘔吐、痙攣、手足の麻痺、呼吸困難などが起こる。

『石南花』という表記は奈良時代に渡来した唐の薬草書『新修本草』に出ており、日本の学者はこの本を頼りに日本の植物に当てはめていた。『石南花』には節分や除夜に厄病や邪気を払うために扉に飾る『トベラ』を当てた。江戸時代になって、明の薬草書『本草綱目』が渡来した。この本に石南花はツツジ科のシャクナゲではないかと思われる記述があり、日本の本草学の本『大和本草』や『本草綱目啓蒙』では、石南花をトベラではなくシャクナゲの漢名とした。その後、石南花はバラ科のオオカナメモチを指すことが判明したが、広まった読み方はもう変わらなかった。


よく似た仲間は次の通り。

筑紫石楠花(ツクシシャクナゲ)
・日本固有種
・九州に多いことから九州の古い呼び名『筑紫』を名前に冠する
・葉裏は赤褐色のビロード状の気が密生する
・花弁は7裂し、雄しべは14本

本石楠花(ホンシャクナゲ)
・筑紫石楠花の変種
・名前の由来は本州の石楠花、または花が最も美しい『本物』の意味とも
・花が枝先に10個以上も集まり、華麗で豪華
・花弁は7裂し、雄しべは14本
・葉裏は褐色の毛に覆われる

東石楠花(アズマシャクナゲ)
・別名シャクナゲ
・北海道を除く東日本に自生するので『東』がつく
・関東地方では単にシャクナゲと呼ぶ
・花は蕾時は色が濃く、開くと淡くなる
・花弁は5裂し、雄しべは10本

白山石楠花(ハクサンシャクナゲ)
・岐阜県と石川県にまたがる『白山』で発見された
・東北地方でシャクナゲといえばハクサンシャクナゲを指す
・花弁の一部に緑色か褐色の斑点がある

細葉石楠花(ホソバシャクナゲ)
・愛知県と静岡県の一部にのみ自生
・細い葉を特徴とする
・花の上部の裂片に濃色の斑点がある

西洋石楠花(セイヨウシャクナゲ)
・別名ロドデンドロン
・アジア原産のシャクナゲ類を中心にヨーロッパで品種改良されたものをまとめてセイヨウシャクナゲと呼ぶ
・ヒマラヤ南麓からプラントハンターによりイギリスに導入され改良されたといわれる
・1000種類を超える園芸品種がある
・葉裏は明るい緑色

出典『樹木の事典 600種』『葉っぱで見わけ五感で楽しむ樹木図鑑』『薬草の呟き』『ボタニカルアートで楽しむ花の博物図鑑』『樹木の名前』