2025.3.10 里山散歩中 チャボタイゲキの群生に出会いました 初めて出会ったチャボタイゲキ!トウダイグサ属の中でも 特別のちびっこチャン!
不思議で可愛い姿にとりこになり もっと知ることができたらと マクロ観察を始めました
まずは植物体の構造から
2025.3
初めて顔を合わせたチャボタイゲキ
「おや 君は?」と怪訝な様子です!
チャボタイゲキは
トウダイグサ科トウダイグサ属の一年草
トウダイグサ (タイゲキ) のなかでも特に背が低いことから"チャボタイゲキ (矮鶏タイゲキ) " と名付けられました
畑や荒れ地に生え 背高10~15cm
ヨーロッパ~西アジア原産の帰化植物で 江戸時代に日本に入り 関東地方以南〜九州に少しづつ広がりを見せているといいます 小石川植物園の群落は知られていますね
·写真はチャボタイゲキの花です
·真ん中にポヨンと垂れ下がっているのが雌花 (蒴果) です
後ほど詳しく見ていきます
チャボタイゲキはまっすぐに主軸を立ち上げ 茎葉は互生し 主茎の先端に3枚の輪生葉をつけます
チャボタイゲキを上から見ました
三股分岐のさらにその先端には対生に葉がつき 枝は二股に分かれます
その先に杯状花序をつけます
二股分岐は繰り返され その都度杯状花序が作られます
赤丸の部分が1単位の花です
1つの杯状花序を正面から見ています なお ここからは水栽培のもとでのマクロ観察となります
①〜⑦がひとつの花の単位です
①苞葉 葉の変化形 蕾の時 杯状花序全体を包む
②腺体 三日月形で両端に角 (付属体) があるのが特徴! 蜜を出す
③総苞裂片 花序の基部にあるが見えにくい
④雄花 花弁も咢もない 雌性先熟(雌しべが受粉して蒴果ができてくると 雄しべが黄色に熟す)
⑤柱頭
⑥子房 (蒴果) ぽてっとして可愛い!
⑦雌花 ⑤柱頭+⑥子房 花弁も咢もない
1つの花は横幅(苞葉間)10-15mm
腺体は1mm!
蒴果は成熟すると2mm!
とても小さいですね
子房 (蒴果) が成熟していく過程
赤矢印
子房が成長を始めました まだ 1mmくらい
黒矢印
ほぼ倍の大きさ
2mmほどに大きくなった子房 (蒴果)
十分成熟してきたように思います
腺体の下方にポヨンと垂れ下がっています
次の段階です
上
垂れ下がっていた蒴果が水平に持ち上がりました!
下
蒴果は3室に分かれていると思われ各背面に2条のくっきりとした翼がみられます
種子は各部屋に1つづつ入っているのでしょうか
これは別の蒴果です
散布直前の蒴果をとらえることができました
確かに3部屋に各1つ 合計3つの種子が入っています
(日中フラッシュ撮影)
種子の放出
水栽培開始して4日目の杯状花序
子房 (蒴果) は2mm 十分に成熟してきたように思えます
そこでこの蒴果を観察することに決めました
観察開始から14時間30分後には垂れ下がっていた蒴果は持ち上がっており 蒴果は3裂し種子が2つ (あるいは3つ?..) 確認できました
さらに24時間後 (観察を開始してから38時間30分後) 殻内には明らかに2つの種子が確認できます
1つは散布されたようです
さらに11時間後 観察開始から約49時間30分経過する間に
殻に残る種子は1つになりました
さて 蒴果が割れて36日が経ちました
依然として殻内の1つの種子は残ったままです
殻は茶色に変化してきました
もうこれ以上残った種子を放出する力は残ってないように思えました
直立した雌しべは何を意味するのか
さて観察を開始すると 写真のように
上に直立した果柄と花柱 (いわゆる雌しべの茎) をたくさん目にしました
これは 何を意味するのでしょうか?
調べると これに対して全く異なる2つの見解が記されていました
1. 未受精の雌しべが直立したもの
2. 種子散布後に果柄・花柱が直立した状態
さてどちらが正しいのか
あるいはどちらも正しくないのか
さらに観察を続けました
ちょうど裂開が生じているこの蒴果で観察を始めました
同じ時間の写真を上下に並べています
下; 斜め上方からみた写真では殻内に種子は1つ確認され
残りの2つはすでに散布されていました
48時間後 依然として果実殻は果柄に付着しています
観察を始めて16日後 付着していた果実殻も種子もすべて落下し
果柄 および花柱 (雌しべの茎) が直立伸展しているのを確認しました
つまり果柄と花柱の直立伸展は
「お産完了 安産宣言」ということのようでした
蒴果の裂開から果柄・花柱の直立伸展に至る日数や経過は1つの1つの果実により様々で 最終的に果実殻や種子をつけたまま枯れて直立伸展に至らないものも多くありました
追記: なお得られたこれらのデータは 水栽培という非日常の生育環境のために修飾されている可能性はあるかもしれません
種子の特徴
花期を迎えたチャボタイゲキは次々と種子を飛ばします
種子は自分の大きさの200-300倍 距離にすると30-50cmも飛ばされます!!
大きさ 1.5mm×0.8mm!
赤褐色 側面に3-7個のくぼみ
白い円錐形のカルンクルが先端に付着しています!
種子が自分の大きさの300倍も飛ぶメカニズム
その1 "果実の成熟と乾燥"
文献によると チャボタイゲキの蒴果は熟すと乾燥して外皮が裂け 細胞に不均一な緊張がかかり 弱い部分からパカッと3つに裂けることが記載されています
この時思い出すのは 成熟した蒴果がまるでカマキリの頭のように3角形をしており さらにその3部屋の背面に二条の深い翼を3本持っていたことです
こうした構造により より不均一な緊張が生じ翼と翼の中間部分が根元まで裂けたのではないかと推測しました
確かに下の写真を見ると翼と翼の中間部分が根元まで裂けています
300倍も飛ぶメカニズム
その1 "果実の成熟と乾燥" つづき
蒴果自らも3つに裂けて種子とともに落下した姿です
その場合裂けるのは 上の写真の翼の部分(赤線)です
蒴果のスムーズな裂開と落下は種子を効率よく飛ばすのに貢献しているかもしれません
300倍も飛ぶメカニズム
その2 "果柄の立ち上がり"
蒴果が裂開する直前 または同時に
それまで下を向いていた果柄が水平に立ち上がります
この動きにより勢いがつき種子をより遠くに飛ばすために役立つといいます
こうして チャボタイゲキは自身の果実の複合した物理的な力で種子を飛ばす「自動散布」を行っているのです
しかし事はそれだけではないようです!
さらにチャボタイゲキが持つ生存戦略
チャボタイゲキの種子に付くカルンクルは種皮の一部が肥大化したもので アリが好む栄養体です
トウダイグサ属の植物によくみられますが
チャボタイゲキでは これが脱落しやすく そのためアリ散布は限られているといいます
しかし チャボタイゲキの種子は粘着性という優れた特性をもち鳥散布にも適応しているといいます
つまりチャボタイゲキは自動散布に加え アリ散布と鳥散布をうまく組み合わせて近場と遠距離の両方に生育範囲を伸ばす能力があるのです
チャボタイゲキの持つたくましい生存戦略が見えてきました
まとめ
●花期を迎えたチャボタイゲキを水栽培で育てながら 開花から種子散布までのマクロ観察を行いました
●成熟した蒴果は水平に持ち上がり3裂して種子を散布しました
●種子の散布が完了すると果柄・花柱の直立伸展がみられました
●2mmの蒴果から1.5mmの種子が3つ自動散布されました 種子は30-50cm 飛ばされました
●種子が自分の大きさの200-300倍飛ぶメカニズムを考察しました
●種子の持つ特性(カルンクル 粘着性)により たくましい分散能力を持つことを考察しました
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引用・参照文献(順不同)
1. ビオ・荒川さいたま「チャボタイゲキ」
2. 素人植物図鑑「チャボタイゲキ(矮鶏大戟)」
3. 好奇心の植物観察「チャボタイゲキ 輪生葉序の変化ー好奇心の植物観察」
4. 野山の花たち「トウダイグサの花の構造と違い」
4. Dti.ne.jp 「チャボタイゲキ-DTI」
さいごに
チャボタイゲキの観察は2025年3月に行ったものです
種子の散布は一瞬に終わると予想していましたが 何日もかかることが多く 観察は約一ヶ月間続きました
チャボタイゲキは「冬型一年草」といわれ 秋に芽生え春に種子散布後は枯れるといいます(ただし一年中花が咲くこともあるといいます)
観察終了後 採取した株と散布された種子を群落に戻し 植え直した時は2025年5月 すでに群落は枯れ初めていました
そして一年後の2026年2月同じ場所に再び群落を確認することができました! それがうれしく また ほっとし「みどりのまとめ」への投稿はその時決めました
チャボタイゲキのことはまだよく知られていない部分も多いと思います
たくましい生存戦略を示すこのチャボタイゲキの全国進出(?)の今後を見守りたいと思います
冗長な観察記録となりましたが 最後までお目を通してくださりありがとうございました
これはまだこちらでは見ていないのですが、種子が不思議な形ですね😳
ちょっとびっくりです‼️
詳しく、お疲れ様でした🙇♀️