みーん、みーん、アキヤ警備隊本部!! モジャモジャの空き家が出現しました!! ただちに出動願います!!
、、、我々、アキヤ警備隊はニッポンの平和と町の美観を守るため日夜、空き家と戦い続けている。でも、もう、負けそうだ、、、あまりにもこの国には、空き家が多すぎる、、、
そんな第2巻、4話、5話、番外編を収録。読んでくれないと、18キロ痩せちゃうぞ!!
第4話「アンナ・カレーニナ」レフ・トルストイ
1 「幸福な家庭はみんな似ているが、不幸そうな家庭はどこもその趣きが異なっている。」(「アンナ・カレーニナ」より) 赤茶けたごっついチェーンに閉ざされた向こう側、絵に描いたような不幸そうな末路。いまだかつて、幸福そうな空き家にはお目にかかったことがない。ゆえに、緑の空き家はそれぞれ、バラエティーに富みに飛んでいて、楽しませてくれる。
2 3色アイスのようなこの空き家。基調を成す白い壁、スクエアに区切られた中央の緑、最上部では夕陽に染まる枯れツタの橙、、、インドの国旗かと見まがうほどのトリコロールである。ナマステ。
3 繰り返すがここからは、幸福そうな香りなど一切してこない。なのに、なぜか、美しい。と、思うのはボクだけでしようか。この幽玄な美にやられ、腕組などしてしばしここで、佇み眺めていたのだからドクター、もうすでに、空き家パンチドランカーなのかもしれません。
4 この三角屋根の空き家はチャーチ、空き教会なのだから主よ、この通りボーボーである。 原始キリスト教を目指した晩年のトルストイは、俗世を振り切るように家出をする。長年連れ添った妻だけひとり、家に残して、、、 しかし、そんな評伝は正しくない。家に残されたのは、妻だけではない。庭には樹木も残されていたはず。
オシャレでうっすら草を這わせていたのが裏目に出たようだ。
5 わずかに見える三角屋根がさっきの教会。驚くべきことに、隣の家もまた空き家、連続空き家なのであった、、、 右の頬を打たれたら、左の頬も差し出しなさい、、、そうしてどちらの側も等しく、寄り添いあいながら、草に埋もれあっているのです。アーメン。
6 ここが後ろの家の門。 狭き門より入れ。 ここから入るとズボンが汚れる、厳しい厳しい門である。
じつは、その後ろにも、3軒目の空き家が、、、
ちなみにこれは調布でみた2軒連続空き家。わりとある。3軒とか4軒とかになると、お写真が撮れない。動画でないと。空き家系ユーチューバーにならないと、、、
7 ある日、迷子になってテキトーに歩いていると前方に突如、巨大な緑の固まり、大きなツタの一枚壁が見えて来た。エリコの壁か、、、なにかしら?
8 この壁がまさか、空き家だったのだから We don't need no education !! 学校で教わったことなど、何の役にも立ちやしない。空き家を必修科目にして、きちんと学校で教えないと。空き家学部を設立し、真面目に研究に取り組まねば。岸田内閣はとりあえず、空き家庁 をつくることが急務と思われる。
9 反対側は別の顔。1粒で2度美味しい、アーモンドグリコのような香ばしい空き家である。電線がヤバいほどのキンモクセイの香りにやられ、どこをどう歩いて家路についたのか、まったく覚えていない。ストレイシープ、ストレイシープ。もう二度と辿り着けない場所が、人生にはある。ここもそうなのかもしれない。
10 大変です!! 空き家が出現しました!! 地球防衛軍、応答願います!! 隊長!! こんな空き家はじめてです!! 家と家の境目に誕生した、緑の空き家、実体をもたない究極の生命体、アメーバー空き家です!! う~む、、、左は空き家、右は販売所で元気に営業中、そんなちぐはぐを長年放置して来たわれわれ人間の心が、このどっちつかずの悲しい空き家を生み出してしまったのかもしれない、、、(隊長談)
11 隊長!! 階段です!! アメーバ空き家の正体は、階段でした。突撃します!! モーゼの十戒のように、空き家が左右に割れるとそこに控えしはジェイコブスラダー。天国への階段。う~ん、メイクスミーワンダー。 教会が、階段が、インドの国旗が、何もかもが空き家となり、草深く緑に飲み込まれる、先の見えない世の中てある。地球防衛軍基地が、インド大使館が、サン・ピエトロ大聖堂が、次はどこが空き家となるか、誰にも分かりやしないのです。 まさかあそこは大丈夫、、、そのまさかは、もはや、どこにも、ない。もちろん、あなたの実家でさえも、、、
12 今日、小田急沿線を調査中に見つけた撮れたてピチピチの川沿い空き家。制御不能の樹木が向かう先は川、目指すは海。空き家のレミング=死の行進である。陸を海を空を。空き家は日々、増殖を続けている、どこまでも。 ワンダーな気分につつまれたところで次回、空き家版不思議の国のアリス編、空き家インワンダーランドをお届けします。見てくんないと、18キロ痩せちゃうぞ(心労で)!!
オマケ。川沿い空き家の川じゃないほう。もはやお馴染みの光景。
番外編 犬を連れた奥さん アントンチェーホフ
0 空き家の色づく季節となりました。つんつるてんのただの空き家はデッドストックですが、緑の空き家は決して死なない。無責任な人間たちに棄てられても雑草魂で生き続け、春に花を咲かせ、夏に草を蔓延らせ、秋には葉を、真っ赤に燃え上がらせる、、、 緑の空き家は生きている。 この空き家、見覚えがありませんか? 第1回のオープニングを飾った通称「葉っぱの宝石箱」です。久しぶりに前を通りかかったら、まさかの紅葉をしていたので、失禁しそうになりました。 腐葉土ほど空き家を見てきましたが、ここまでキレイな空き家の紅葉は初めてです。空き家トレーディングカードが発売された暁には、相当の高値で取引される1枚となることでしょう。 今宵は予定外の番外編、空き家関係者の貴重な生の声が聞けましたので、ドキュメント~空き家最前線ナウ をお送りします。
1 「深夜の空き家」も前半戦終了。スタート時に豪語したように、グリーンスナップ界に 空前の空き家ブーム など、起きやしなかった、、、大惨敗。ボクは夢見た。地方の疲弊はさぞ、ハンパないはず、、、 日本全国にはもっと凄い、植物園規模の緑の空き家が眠っているにちがいない。咲く花だって違うだろう。 沖縄じゃ、うちなーの空き家でハイビスカスが大爆発!! とか、ご当地空き家を自慢しあい、ワイワイガヤガヤ、、、 そんな日は永遠に来そうにない。ひとりでやるか、、、ひとりでできるもんっ!! そんな問題意識をリバースさせれば果たして、大都会東京のど真中に、緑の空き家は存在するのだろうか? 行ってみた。新宿。あった。↑お写真がそれ。すっかり見慣れたいつもの光景、、、かと思いきやんっ!! 空き家の前に写り込むのは、べ、べ、べ、ベンツ!! 町田や八王子では、一生見られぬ光景、空き家とベンツの豪華共演。日本人よ、これが新宿だ。 どうやら格差社会とやらの波は確実に日本全土を被い、緑に飲まれた緑の空き家もそれに、飲み込まれているらしい、、、格差社会という化け物に。
2 次に向かったのは文京区、日本一ハイソなエリアである。そこで見つけた最初の緑の空き家がこれ。さすが山の手、空き家ですら端正、お上品、まったくモジャモジャしていない。 ところで皆さんは格差社会と聞いて、何を連想されるだろうか? ねーねー、かくさしゃかいー、買ってー、かーくーさ、しゃーかーいー!! もー、かくさしゃかいじゃなきゃ、やー!! 買ってー、買ってったらー、、、ぶぇ~ん、、、 しょうがないわね、じゃ、クリスマスプレゼントに買ってあげるから、、、 わーい!! 格差社会だー!! 、、、などなど、こんなイメージをぼんやり頭に思い描いた人がいたなら、認識が甘すぎるっ!! 格差社会はゆめゆめそんなもんじゃないっ!! もう、その脳の部位まるごと、外科手術で取り除かなきゃ、手遅れっ!!
3 このおうちくらいかな、わりとパンチが効いてたの。それでもここ、人の住んでる気配が、生々しかったのだが。 やっぱり、元々の人間がきちんとしてるんじゃないかしら、山の手って。おそらく、郊外のように引っ越しでシャッフルされず、人の入れ替えが少なかったことがコミュニティを存続させ、周りの目を気にして、モジャモジャを放置するような禁区を産み出すことなく、、、そんな気がした。
ボロボロの家はいっぱいあんのよ、でもそこにガッツで住んでんのよ。ここに住んでる人はここが郷里だから行くとこないし、家が先か自分が先かのチキンレースが、始まって久しいのだろう。 これまででもっとも、空き家判定が難しいエリアであった。
4 そして皆様、お待たせしました、歩くこと4時間弱、やっと見つけた爆発屋敷がこちらです。 やっと会えたね (by 辻仁成)、、、 さすがは文京区、ごっつい石垣の上に建っている、空き家が、、、城かっ!! まぁまぁしかしね、爆発屋敷って見かけほど楽しくないのよ。出オチってゆーの? 見た目のインパクトだけで。 語りかけてくるものがない。だからこれ以上、なにも書くことが、なかったりする、、、
5 僕は晴れ晴れとした気分だ。まるで生れて初めて、あの樅や楓や白樺を見るような気がするし、向こうでも僕を、じろじろと物珍しげに見て、固唾をのんでいるみたいだ。なんという美しい樹々だろう! そして本来なら、こうした樹々にかこまれた生活は、すばらしく美しいものであるべきなんだ!(「三人姉妹」チェーホフより)
6 人間、ライオン、ワシ、ライチョウ、角のはえたシカ、ガチョウ、蜘蛛、水の中に棲む物言わぬ魚、ヒトデ、そして目では見ることのできなかったものたち、すなわち、すべての、すべての、すべての命が、悲しい輪廻を終えて、消え去った・・・・・・。 地球に一つの生き物もいなくなってから、もう数十万年が過ぎ、この哀れな月は空しく明かりを点す。 草原ではもはや、鶴たちが寝覚めの鳴き声をあげることもなく、ボダイジュの林にコガネムシの羽音が聞こえることもない。 寒い、寒い、寒い。空しい、空しい、空しい。恐い、恐い、恐い。(「かもめ」チェーホフ)
7 ほら、なんかへんな門とかあんの、、、ほんと遺跡だな。空にそびえるモジャモジャの城。 なんかね、令和元年の9月14日に、ここに住んでた方がお亡くなりになったんですって。でも相続人がいなくって、、、え? なんでそんな詳しく知ってるかって? このモジャモジャ城の玄関ドアに、貼り紙がしてあったのら。
8 空き家からの手紙。こんなの初めて。読んでいいのかしら? いいともー!! フムフム、、、ミンポーキューヒャクゴジュー、、、 つまんねー、いや、とっくにみだりに立ち入ってんですけど、、、で? オチは? オチはねーの? はぁ? オチのねー文章なんか書くんじゃないわよ!! まわりに白いとこ余ってんだろ、マンガ描けよ!! 法律の勉強ばっかしてねーで、もっとマンガ読め!! まじめか? 法律なんかどうでもいいんじゃー!! あのさ、ここにお手紙を貼った人さ、なにも感じなかったの? 目の前のこのモジャモジャ見て? エモーションを爆発させろっ!! 余白に一句読めっ!! オマエなんかAIに置き換われよ!! その場で服なんかぜんぶ脱ぎ捨てて、すっ裸で走り出せっ(ボクがそうしたように)!! 代わりにボクが一首詠みます。 モジャモジャの お城の草に寝転びて 空にそびえる モジャモジャの城
9 後日、新宿近辺の空き家を徹底リサーチ。歩くこと40分、幾つかの心ときめかない空き家を通りすぎ、お目当てに辿りつく。 いつものようにローアングルでお写真を撮っていると、、、新展開!! 初めて人に声をかけられた、、、びっくりした。キレイな奥さんよ、犬の散歩中の。逆ナンかしら? 「ここの人ですか?」 ノー!! 第一声がそれ? 時候の挨拶は? どうしよう? 不審者まるだし、、、正直に、言うしかナイト。 「まあ、わりとそのぉ、空き家の撮影とか、しちゃってるものなんですが、、、」 ブハハハハ。なにそれ~。でもなぜか奥さん半笑い。ヤッターうけた~、シャレが通じて何より(通報されなくて)。 ボクが名乗ったから、奥さんも名乗ったよ、なんと、この空き家の隣に住んでるものなんです。って。
10 やった。それ、2番目に話を聞いてみたかった人(1番目はやっぱ、空き家を放置してトンズラを決め込んでる人だが)。 「もう、ネズミがすごくて、、、」 ネズミがすごいらしい!! 貴重な生の声。隣人はチューチュー語る。やー、今まで樹木と空き家しか見てなかった、、、ネズミもいたとは、、、 いや、ほんと、2分ほどの立ち話で、ネズミが8回くらい出てきた。浦安に住んでてもあんなにネズミネズミ言わないよ。 なんの相談にも乗ってあげらないのは山々なので、さっきの大爆発屋敷のお写真を見せ、これに比べればまだましなどとゆー、なんの慰めにもならないボクの言葉は軽く受け流されて、奥さんは去っていった。犬は連れて。半笑いは残して。
11 自分の無力さに呆れながらも、その時のボクの胸に浮かんだ心情を正直に告白すれば、、、 他人事でよかった。 ほんと、幸せだよボクら。自分ちの隣がモジャモジャでないだけでも。ネズミ軍団出るよ。その幸運に感謝しよう。犬を連れた奥さんには、ゴメンだけど。 ボクのとんちはいつも遅れる。わりといいこと思いつくんだが、いつも後日だ。犬を連れた奥さんは、グリーンスナップやってるのかなぁ? あれから真剣に考えたボクなりのアドバイスを送ります。 1、政治に訴える。選挙に敗れたNHK党が、今度は 空き家(AKY)党 へと鞍替え。空き家付近の住民の熱い支持を得て国政に復帰。空き家問題に取り組む。「空き家をぶっ壊~す!!」の掛け声とともに。 2、テレビに訴える。テレ東もさ、もうさんざん抜いたじゃん、池の水。新番組「空き家の木ぜんぶ抜く」ってどう? 第1回目はここ、ネズミハウスを。 3、ネットで訴える。奥さんが空き家系ユーチューバーになって、ネズミの被害を訴えたり、犬を連れてオシャレに散歩、食べ歩いてコスメをお薦め、サイゼリヤの女子会で大騒ぎ(プチ炎上)、で、人気出ちゃって、CD デビュー決定!! 曲はもちろん、チューチュートレイン。 まあまあ、でもね、ボクが犬を連れた奥さんに、あの時言うべき言葉は、今にして思えばよ、これしかなかった。あんなにネズミを連呼していたのは、最高のキラーパスだったのに、、、 「その犬をやめて、ネコを飼ったら、どうですか?」
12 >「どうしたら?」もう少しで解決の道が見つかり、そのときはすばらしい新生活が始まるだろうと、ふとそんな気もした。 しかも二人にははっきり分かっていたのだが、終わりまではまだまだ遠く、最も入り組んだむずかしいところは今ようやく始まったばかりなのだった。(チェーホフ「犬を連れた奥さん」より) 次回の「深夜の空き家」第6話~ 失われた時を求めて ~ は、シリーズ最高傑作です。そして悲しいお知らせですが、これから「最も入り組んだむずかしいところ」に突入します。 視聴率の低迷が予想されますのでしばらく「深夜の空き家」は土曜午後3時にお時間を移動「3時の空き家」として深く静かに潜航する。 来週の夜23時からは、前々から暖めてきた特別番組、グリーンスナップを始めてそろそろ1年生記念の豪華祭典!! 1年かかってやっと学んだ、正しいグリーンスナップのやり方を。フツーにキレイなお花の写真を、アップしてもいいかしら?祭り。 掃き溜めのようなボクの汚写真の群れに「ちゃんとしたお花」のお写真が、わんさと仲間入り。しかもとびきりキレイな花ばかりよ。ほんとうでしょうか? ええ、きっと。 ドンミシット、、、震えて眠れ、、、
青梅で見た、空き家からの手紙。勝手に水道を使われたあげくに空き家って、悲しすぎる。
第5話 不思議の国のアリス ルイス・キャロル
1 庭いっぱいに樹木が爆発しているのも大問題であるが、たった1本の木だけが、高く高く伸びている光景の方が、より痛ましいのかもしれない。剣山の山より1本のニードルの方が、深く刺さる。 とっくの昔に閉店した中華料理珍萬。油を使わなくなって久しいその厨房から出火の危険がなくなった、代わりとばかりに燃え上がる緑の木。軽いボヤ騒ぎである。
2 ここ、ボロボロの塾なんですけど、、、生徒募集の旗が立ってて、まだやってるみたい。樹木がこんなに炎上してるのほったらかしで、、、 何の商売をやるにしてもよ、店先のこの木を放置したまま、やる? そこは学習塾ゆえの、特殊な事情があると睨んだ、、、キラ~ン。 願掛けなのでは?説。この木がこの塾の ドラコン桜 で、生徒が合格するまで、剪定はしないのがジンクス。そこにポンコツ君が入塾し、3浪とかしてるからこのザマに、、、 来春こそ、ポンコツ君が大学に受かり、この木がスッキリしますよう、、、
3 これも同じ木。ゴールドクレストだと思われるが、空き家にあるとパンパカパ~ンな木。爆発しまくりで困っちゃう。これ見てると、なんか怖くなるの。例えるなら バイバイン の栗まんじゅう。ん、バイバインしらんの? ドラちゃんのよ。てんとう虫コミックス19巻を読もう!! あそこ、障子が破けてんでしょ、障子が破けてる家って、空き家率高し。
とにかくこの木の爆発具合が、、、フェンスの歪みが、、、
あんな玄関のいいとこで1本だけ、、、
リーゼントみたいになってんの。
あと、これも。
料亭と廃品回収の間で爆発しちゃった、たぶん、料亭の持ち物じゃないかと思うのだが、、、名前が「休み石」っつーの。コロナで長期休養を余儀なくされて、このモジャモジャになったのではないか、、、
町田が飲み込まれる、、、
4 よみうりランド前の再開発が始まって、このへん(ありがた山)ゴーストタウン状態なのだが、おそらくこの家は立ち退き料をたんまり頂いたはず。 買い手のデベロッパーはまとまった更地を根こそぎに、さぞ有効活用するのだろうからなんの問題もない、、、かと思いきやんっ!! 大問題発生!!
5 庭にポツンと愛くるしい、この子が置き去りにされてたの、、、こんなカワイコちゃん、置いてく? 望んでここに芽吹いたのではない。人の都合で勝手に植えられ、飽きたら置き去りにされる。ペット以下の扱いに、樹木の悲しみ、否、怨念は蓄積され、いつの日か人類に、厄災をもたらすであろう、、、
6 話が長くなりまして、そろそろアリスが寝ちゃいそう。白いウサギの代走に、真紅のカニが横走りしたら、そこはもうワンダーランド。 アリスはどこ? 燃え上がる緑の木がジャイアントアリスです。お写真を、よーく見てみてこの木の周り、すべてアスファルト一色。アスファルトに咲く花のように、涙の数だけ強くなることを、岡本真夜も、樹木には期待していなかったはず、、、 住み慣れた土の世界を離れ、アスファルトジャングルにただひとり迷い込み、背丈だけがグングングングン伸びてゆくのは、どんなに不安だろう、孤独だろう、恐怖だろう。 その気持ちを過不足なく理解できるのは、不思議の国のアリスただひとり、そうじゃなくて?
7 このわずかひとり分の区画だけが、この木の地面である。猫の額 などという比喩では生ぬるい。ニヤニヤ笑いだけを残して消えていく チェシャ猫 の額ほど。ニヤニヤ笑いだけを残し、姿を消したのは、誰? 消え入りそうなこの地面に連行され、ぐるりアスファルトに監禁される、まるで囚人。終身刑の。アリスのように夢は覚めない。木は夢を見ないから。出来ることはただ、伸びていくのみ。一点の自由の空を目指し、どこまでも。足枷のように根っこが繋がれたままなのは重々、承知のままに。
8 トゥイードルダムとトゥイードルディーの双子のようなこの木たちも、迷い込んだアリスたちである。彼らの迷い込んだあの壁の向こうは、どんなワンダーランドなのかしら? 府中刑務所である。 何の罪もないままアプリオリに、塀の向こうに植えられる、重大な樹木冤罪事件である。が、救済に名乗りを上げる人権派の弁護士は誰もいない。どうやら樹木に、人権はないらしい。 刑務所周辺は覗かれない配慮から、高層マンションの類いが一切ない。東京に空があるとすれは、ここ。ゆえに無実の双子の木たちは、ここで一際目立ってみえるのが、よけいにもの悲しい。 ついでにいえば、あのタワーは東芝タワー、その給金が奪われたのが、さすがにボクも本でしか知らないが、三億円事件。の現場がほぼ、ここである。
道路はさんで小学校がある、歩道橋が檻で囲まれてんの。脱走しないように。この赤錆のは2年前のお写真、こないだいったらピカピカになってた。さすがにこれではトラウマに。 用意してた引用を使うの忘れた。 >「あの緑色、いったいなにかしら?」アリスは言いました。 (角川文庫 河合祥一郎訳 P70)
9 旧約聖書のバベルの塔は人の手が作ったものだが、人が見捨てた樹木が自力で天を目掛けて伸びてゆくのは、天然のバベルの塔のよう。 気候変動で多発する異常降雨の、伴う雷が狙うのに、格好の標的すぎて恐ろしい。さぞよく燃えるだろう。ふもとの空き家も道連れにすれば、大炎上する燃料に事欠かない。 人の作った街を、アスファルトの世界を、焼き尽くし大地を取り戻さん、カミカゼ特攻隊精神を継いだ天然のバベルの塔が、殉死覚悟で今日も、空高く伸びている。 わりと、あちこちで。