「あんたねぇ、幸せになれるよ。」

うわっ、なんだ、なんだっ？！
ホームセンターの多肉売場をうろついてた時だ。どこからか現れた、小柄な少し腰の曲がった老婆が、オレと多肉の間の視界に入り込み、首だけ曲げてオレを見上げてこう言う。

怖い怖い。これは昔見た、世にも奇妙な物語(古っ)とかでありそうなパターンじゃん。
チャッチャッチャカチャーチャカチャーチャカチャー。あのピアノの曲が頭の中で鳴り響いた。オレもついに不思議の国の住人になってしまったか。

「幸せになれるよ。」
呆然として立ち尽くす。
すると後ろから、老婆の息子らしい男性が小走りで駆けてきた。少し気弱そうな男だ。
「お母さん、急にいなくなったと思ったら。どうしたの？」
そう言うと、オレと老婆を交互に見ながら黙ってる。
え、オレが説明するのぉ？！なんて？
「あんたねぇ、お金持ちになれるよ。」
老婆がまた言う。耳を引っ張る動作をしてる。
「あー、分かった分かった。思い出しましたよ。」
キョトンとしている息子に説明する。
「私ねぇ、ほら、福耳なんですよ。小さい頃によく、知らないおばちゃんにこう声をかけられましたよ。いやぁ、何十年振りだろう。」
「そうなんですか。あんまり知らない人に声をかけたりしないから....。」
間が持たない。
「小さい頃からそう言われてきたんで、自分でもそう思い込んでたんですよ。大きくなったらお金持ちになるってね。それが未だにこのざまですよ。」
「ハァ」息子、困った顔になる。それはそうだ。わが家の経済状況など知る由もなく、知っていたとて同意できまい。
「ちょっと大きくなってから気がついたんですよ。ばぁちゃんちの仏間の写真やら法事で会った親戚の耳を見て。これは単なる遺伝で、迷信だって。ウチの親戚に金持ちなんかいないんですから。」
「いやぁ、そんな事はないでしょう。どうもすみませんでした。」
笑顔で去って行ったよ。なんでオレが気を使わなきゃならん。損な性分。やはり金持ちとは縁遠い。

上段、以前見かけた、サッカー場より広い空き地一面にクローバーが咲いている風景。誰もいなくて、沢山あり過ぎて、四つ葉を探す気にもならなかったなぁ。

下段、先日立ち寄ったうどん屋の店先。
会計の時、店主らしき人が言う。(マダツヅクノカ)
「店の前の草むらに四つ葉のクローバーがあるんですよ。五つ葉もある。採って行って下さいよ。この前、宝くじが当たったって一万円包んできた人がいたんですから。イーッヒッヒ。」
行ってみたら四つ葉がいっぱい。五つ葉も。
四つ葉は幸福で、五つ葉は財運なんだよね。
迷信が当たらないのはよく知ってるけど。

まぁ、何本か摘んできて、今、押し花にしている最中なんですけどね。

って、話が長ぇよ！