色々な場所の照度を測り育成環境について考えます
冬場に測ったので室内に差し込む光が多く
南側は特に明るい数値になっています
考え方と目安程度です
はじめに
店で働いている時から少なからず
「窓のない部屋でも育てられる植物ってありますか?」
というお客さんはいました
だいたい
窓のない部屋=玄関やトイレなど
窓以前に電気も一瞬しかつかず暖房もない場所の事です
一つ確かな事はそういう場所は植物はともかく
大体の生物は育ちません
仕事なんでキツくは言いませんけど
真っ当な植木屋さんはそういうお客さんには植物を勧めません
大体ドライフラワーやフェイクなどを勧めます
健全に植物を育てるための光について考えるまとめです
光の種類について
明るさの単位には良く聞くものでは
ルクスとルーメンという単位があります
ざっくり言うと
ルクスは空間の明るさ
ルーメンは光源の明るさで
蛍光灯などにはルーメン
部屋の明るさにはルクスを使います
一般的な明るさを表にした物です
明るい室内でも外と比べると暗いですね
他によく聞く単位ではケルビンと言うのがあります
これは実際の明るさではなく光に含まれる色の種類で
色温度として照明器具に表記されます
昼光色とか中白色とかの意味がこれ
光の色は通常の色と違い白に近いほど
多くの色が入ってて光が多いほど明るくなりやすいです
(ライトの場合は一概には言い切れないですが)
真っ白に見える光の方が
日中の日向の太陽光に近く
たくさんの種類の色が得られます
カメラ撮影時に照明を5500kに近づけるのは
自然光に近い光で写真を撮る思惑があります
特徴としては赤い光は屈折し遠くまで届きにくく
青い光ほど遠くまで届きやすいです
空や海が青い理由がこれです
(厳密には違う)
こちらは同じ水槽用ライトNEMOの淡水用と海水用です
見るからに色が違うと思いますが
一番の違いは淡水用にはUVが含まれず
自然光に近い色合いに調整されていて
海水用は海底に届く青とUVをメインに調整されています
淡水用の方が明るく見えますが
実際明るさが必要なのは
サンゴの入っている海水用です
かなり極端な例ですが
人間が目視で感じる明るさと生物が必要とする明るさには
差があるのがわかりやすいかな
葉の色について(追記)
じゃあ緑色の葉っぱは緑の光を吸収するのかというと
どうも違うらしいです
元から赤い葉や黒い葉の植物もあるので軽く検索すると
緑の葉が含む葉緑素が多く吸収する光は
赤、青紫、青緑で緑の光はあまり吸収しないそうです
(反射するから緑色に見える)
なぜ緑色を使わないかは諸説あって判明してないらしいですが
人間には有害なUVも植物には必要な光だと分かります
(私が室内光の方が明るくても可能な限り外に出す理由はこれです)
発芽時は緑の光を使ったり水草はまた違ったりの説明があって
海洋大学のホームページ記事が面白かったので気になる方は是非
http://www2.kaiyodai.ac.jp/~takamasa/kogosei/kogosei.html
さらに黄色の葉のイチョウと
普通の緑系の葉を持つ楓や
落葉しないキンモクセイに含まれる葉緑素を調べた論文
この論文は葉緑素本体の色の濃淡で葉の色が決まるのかを調べようとしていて
結果としては色の種類や比率ではなく
葉緑素全体の量で葉の色が決まると結論づけられています
https://gakusyu.shizuoka-c.ed.jp/science/ronnbunshu/103125.pdf
キンモクセイは濃い色の葉をしているので
クロロフィルの量が多いのはなんとなくわかりますが
黄葉するイチョウも紅葉する楓も
元々含まれるクロロフィルの量はさほど差がないように見えます
桜は濃い色の葉緑素が少なく他よりも全体的な量が少なそう
葉緑素が多ければ少ない光でも光合成できる確率は増えます
その上で自分に不必要な色は反射していると言うことなので
それぞれの葉色である程度の光の適性はわかるかもしれません
ちなみに理系ではないので論文とか読むの好きですが
私は詳しくはわかりませんよ
植木屋の経験を下敷きに素人考えをしています
(うん10年前は写真印刷専攻の芸大生でした)
夏と冬の差(追記)
夏場は太陽の角度が高く日が室内に入りにくく
冬場は逆に入りやすいのは誰でもご存知の通りですね
また日照時間も夏は長く冬は短く
室内取り込みの増える冬は
日はよく当たるけども窓が小さいと日照時間が足りなかったり
逆に夏場は日が思ったよりも差し込んでおらず
冬場より室内が暗かったりもあります
今回は冬の正午ごろの明るさの数値です
本題
では実際植物を育てるのにどれだけ光がいるのか実測値で測ってみます
今回は家庭でも使いやすいシンワのデジタル照度計を使います
セパレートになっていて数字を見る時に
自分の影にならないのが良いところです
簡易なので屋外では測定範囲を超えてしまいます
あとルクスのみ測れます
それなりのスマホであれば照度や色温度は
アプリでも測定できるのがあります
南向きの場所
1月26日晴れ 11じ半過ぎから
15分程度で全箇所を測定
当然ですが屋外日向は測定値を超えるので冬でも数値が出ません
この機械は最大測定値が40,000lxなので色々な位置で
どの程度遮光されていくのか変化を見ます
(冬の晴れた日正午は50000lxが目安のようです)
置いてる植物も書いていますが
湿度や温度などその他の要因があるので
必ずしも同じ明るさならいけるというわけではないのを
ご了解いただけると幸いです
同じベランダ内の半透明のガラスパネル越し
24,900lx
表示桁数の都合出ている数字の10倍で計算する設定で測っています
庇はありますが冬なので太陽の角度が浅く
直射が半透明ガラスで遮光された明るさです
日陰が20000〜10000lxくらいなので
既に明るい日陰をちょっと超える程度の明るさですね
UVカットの入っていないすりガラスです
ベランダの真下の通路では周囲の色も白く
測れるギリギリを行ったり来たりしています
こちらはベランダと違い外向用のアクリルの擦りパネルです
空間の明るさを測るので反射光など
全てが含まれた明るさが計測されます
同じく南向きの木陰になる庭まで出てきました
かろうじて測れる33770lx
木陰は葉の揺らぎや木の高さ
葉の密度などで結構変わります
樹高2mくらいの細葉の小さい木の影ですので明るい
ジャングルに生えるような鬱蒼とした場所だと
下草に当たる光はもっと少ないでしょう
少し離れたマンションと半透明パネルの影になる花壇の明るさ
27580lx
影のできる建物から距離が離れているので
濃い影にはならず割と明るいですね
いわゆる明るい日陰です
ただ日照時間も相まって背の低い良く花の咲く植物は
冬場やや育ちにくくなります
夏場は日射角が変わり日が高くなるので
完全な日向です
季節によっても日当たりはだいぶ違います
一度室内へ
南向きリビングの窓辺(ベランダ庇は1mくらい)
先程のベランダ柵のガラスに遮られない日向です
明るさは35320lx
外のガラスパネル影より明るいですが
快晴から薄曇りの明るさが70000〜30000と考えると
割と光は遮られていますね
我が家の窓は複層のUVカットガラスなので
より光の遮断が激しいと思います
アデニウムやサボテン、プルメリアなど特に光を好む植物の
休眠しなかったが寒さで外に出せない日の置き場です
この段階で周年屋外の光を好む植物には
室内では光が足りていないのがわかります
同じ窓辺より1.5m室内のローテーブル上
日向ですが20620lx
猫が日向ぼっこするにはちょうど良いようです
窓辺と比べかなり照度が落ちましたね
おおよそ明るい日陰と呼ばれる明るさ
直射では葉が日焼けしやすいけど
明るさはそれなりにいるウンベラータなどが向いていそうな明るさ
ただテーブル上の明るさなので天井付近は掃き出し窓でも
この地点よりは暗いです
同じリビング内で窓より4m奥
高さ1.6m地点の吊り鉢
一気に照度は下がり800lx
会社など少し明るい目の照明をつけた部屋と同じくらいになりました
角度が壁向きなんで実際は1000lx超えるかなと思いますが
いわゆる明るいオフィス程度かな
比較的明るさのいる着生植物や
やや暗めのように書かれる植物に適した明るさかな
オンシジュームなどの着生ラン
ホヤやペペロミアなどの明るめの場所に生える下草や着生植物を吊っています
同じリビング内南向きですが
ベランダの奥まった部分の窓
(庇の長さは2mくらい)
直射は入ってくる腰高の窓の明るさ
19840lx
完全な明るい日陰相当になりました
ユーフォルビア類や休眠しているパキポディウムを置いています
窓の断熱性能が高くリビングは一日中
エアコンを切らないので窓辺でも置けますが
家にいない時や夜間に暖房をつけない場合は
窓枠に植物を置くのには温度の点で注意が必要です
同じ南側ですが波ガラスの窓
庇はなく昼間は日を遮るものはないです
32270lxと擦りガラスよりは明るい
明るい木陰くらいになっていますね
秋からシゾバシス(ケープバルブ)を置いていますが
明るさもちょうど良いようです
夏場は光以上に庇がない分暑くなるので
温度が上がりすぎる気がします
我が家はあまり寒くない時期は室内に植物を置かないのでなんともです
リビング内にある両面の空いている本棚
日は小窓から入りますが掃き出し窓の明かりは
本に遮られて当たりません
250lx
今までの数値からすると格段に暗く見えます
ただ普通の住宅の蛍光灯下が500lxなので
200lxくらいあれば小説など活字の本でも一応読めます
写真の通り人の感覚では暗い感じはしません
植物には暗い部類に入る位置です
常湿化を目論んでいるアグラオネマを置いています
建物の影になる北側はどうなのか
家の外に出て北側も測ってみます
20230lx
外壁が白っぽく庇もない形状なので
比較的明るい日陰となっています
下段フェンス付近は10000程度まで下がります
真昼の東と西の影も似たような数字
購入時に立っていたお家ではイチジクがこの部分に植っていました
日陰を好む庭木の育ちやすい明るさですね
周年家の影で風通りが良く上段は
暖かい時期のモンステラやアンスリウム置き場になっています
これくらいの北側の部屋の窓枠付近(庇なし)
4750lx
窓の段階で雨の日の5000lxより暗いようです
窓から3.5m離れた床面では350lx
北側の部屋には植物を置いていませんが
暗めの樹林下の植物の向く明るさです
明るくない部屋でも育てられますって書いてる
「明るくない部屋」はこのくらいです
昼の窓辺なら本は普通に読めます
壁際はちょっと暗いかも
さらに波形ガラスに網戸のついた北側窓辺
2510lx
当然ですが遮るものが多いと明るさは減ります
ガラスの形状も網戸の有無も結構差が出る要因ですね
違う位置で出ますけど比較的光の少ないのを好む
シダ類などが葉焼けもせずに良さそうですが
北側は南より暖まらないので観葉植物の場合は温度が気になります
東向き窓辺で波ガラスと網戸のある窓
1950lx
我が家の場合は開けている北側より
東西の方が隣家が近く接近しているわけではないですが
建物影の影響で正午付近は東西の方が暗いようです
朝や夕方は東西それぞれの方が明るいです
エアコンの温度があまり来ないので高地のランと
トキワシノブなどのシダを置いています
窓辺は朝日で暖まりますが夜間は10度超えるくらいですね
透明ガラスの屋上扉は光を遮るものもなく13700xlで
南ほどではないですが明るさを確保していました
常時置いている植物はないですが
モンステラやセローム、アンスリウムなんかは置けそう
南から光が少しでも取れるかにもよりますけどね
その東窓がキッチンなのですが窓が小さいので
電気なしで本が読めるかと言われると微妙なライン
全く読めないわけではないが窓辺以外は厳しい
通常植物を置くのには向いていないところと言えます
窓が小さいと光の入る時間が短かったりで
明るさはあるように見えても照射時間が足らない場合があります
窓のある玄関へ
180lx
右側の棚部分ですね
扉面のみに窓があるタイプで
どこのご家庭でも大体そうですが南向きに玄関はつけないので
玄関にしては明るいですが部屋ほど明るくなるわけではありません
窓付近は1080lx
明るいかもしれませんが
そこに置くなら玄関外に寄せ植えでも
置いてはどうかと思うのは私だけでしょうか
玄関に暖房を入れるご家庭は少ないですし
観葉植物は明るさで耐えても寒さに負けそうですね
温帯のシダなどならいけるかなという感じです
ちなみに
窓のないトイレは0.3でした
まあ0でしょうけどセンサーケーブルを通す隙間の光でしょう
照明のついた状態で1m付近で100lxくらい
人間でも何時間かに一回数分だけ豆球のつく
真っ暗な空気のこもった部屋に閉じ込められたら
数日でおかしくなると思いますけど
本気で聞いてくる人って実際いるんですよ・・・
測定のまとめ(追記)
今回計測した結果のまとめです
今回測ったのは同じ部屋ではないので
このように全方向窓があると
全体でもっと明るいでしょう
同じ部屋の南向き窓辺でも
ベランダの奥行き(庇の長さ)で明るさが違い
ベランダも柵なのかパネルなのか腰壁なのかで
光の入り込む量に差が生まれます
窓から離れれば直接光が当たっていても
少しずつ明るさは減っていきますし
窓が小さければ日照時間が少なくなります
窓の素材やガラスの種類網戸の有無でも
明るさに差が出ていますね
新しい窓などはUVカットもあるので
野外よりかなり光の減少が見られました
ライトについて
冒頭でチラッと出たLEDライトですが
よく言われるLEDの特性で光が拡散しないというのがあります
ライト真下にセンサーを入れると
この機械では測れないくらいの強光になっています
(40000lx以上)
明るさは十分出ているのがわかります
ちょっとずらしてライト幅に少し被る位置でも
5880lxまで下がります
明るく見えても言うほど横には拡散しないので
40cm上の高さにライト幅7cmのを設置して
下で当たる面積は30cmくらいだと思った方がいいです
距離を離せばそれなりに下側で広がりますが
当然その分の照度は落ちます
冒頭に説明した通り植物にはそれぞれ光合成に必要な光の色があり
安いLEDは色が少ないものが多いです
高いライトは分刻みで光の量を細かく設定できますが
寿命が2-3年のライトにしては引く値段がします
(前に水槽で使っていたprime hdの商品ページより)
このライトはランダムで雨の日を起こしたりもできます
植物も夜は寝ますのでアプリで徐々に明るくし
夕方も徐々に暗くできるとより安心です
水草をやってる人は何個もライトを使って
東から西への日の通り道や色と明るさを再現される方もいますね
この辺がLEDの種類と値段の差です
生き物だから
タイマーの話ついでに生活周期についても
植物も動きませんが生き物なので夜は眠ります
夜寝るのがわかりやすい植物ではカラテアが有名で
暗くなると葉が閉じます
そして朝は早起きで夜は日の入りと共に寝ます
日の出と日の入りの時間は生息地によって違いますが
室内の植物にとっては明るくなるのはカーテンが空いた時間から
暗くなるのは電気が消える時間まで
日中部屋は十分な明るさがある家でも
お出かけ中はカーテンを閉めていたり
夜遅くまで起きていて照明が当たる時間が長いという原因で
ヒョロヒョロに徒長する場合もあります
頻繁に置き場を変えたり方向を急激に変えたりで
葉焼けを起こす場合もあります
植物は基本的に起きている時間に
良く日が当たる方向に葉を向けます
葉裏では光合成をしないので
窓に向かって葉を伸ばした植物を見栄えが悪いと
表裏入れ替えると葉裏に強い光を受けて葉焼けします
葉の角度を変えるのが早い植物も
たまにありますけどね
植物は移動できないを基本に
急なことをしないのが一番です
室内の明るさが大体わかったところで
植物の種類でも気候の適性地以外に
光や風による適性があります
サボテンのように光を遮るもののない荒野に適応したものや
シダ類や着生植物のように鬱蒼と他の木が生い茂る
光は直接浴びれない湿気の多い場所で育ったものなど
育った環境によって変わってくるものです
特に品種改良された植物だと忘れがちですが
元々の植物や長く育てられていた土地環境を
調べたり想像したり、時には行ってみるのも
また違った植物育成の楽しみ方ですね
自生地の月ごとの気温や天候の平均は検索すると調べられます
プラントハンターさんはグーグルマップなんかで上がっている現地写真を見て
ここは生えてそうだって目星をつけて探しに行かれるそうですよ
光、そして生育環境について考えるのも
文字ばかりでは飽きてしまうし
人によって言うことが違う!
となりがち
ステイホームが長くなり植物の世話も減っているこの時期
お家の植物の自生している国へ
ジャングルや荒野、高山などなど
バーチャルトリップもお勧めです