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民家の庭先や公園などに植えられている人気の庭木、シマトネリコ。常緑樹で風景になじむ樹形や葉のかたちをしていますが、実は生育旺盛なため、美しい樹形で保つためには定期的な剪定作業が必要となります。今回は、そんなシマトネリコの剪定の方法や時期、目的や効果などについてイラストを用いながら詳しくご紹介します。
シマトネリコはモクセイ科の常緑小高木に属する樹木類です。寒さにも暑さにも強く、1年中鮮やかな葉が楽しめることから、日本では庭木によく選ばれていますよね。
ただしシマトネリコは剪定をしないで育てると、鬱蒼とした姿になったり、風通しや日当たりが悪くなって株自体も不健康になる影響があります。
そもそもなぜシマトネリコが庭木に選ばれてきたのかというと、常緑樹と生命力の強さの他にも、涼しげでさわやかな演出ができるという点が大きいです。しかしシマトネリコは剪定をしないと、どんどん葉が茂って重たく鬱蒼とした姿になるので、さわやかな姿とは程遠い印象になってしまうので注意が必要です。
シマトネリコは定期的に剪定すると下記のようなメリットがあるので、必ず定期的に行いましょう。
住宅街などで見る庭木として育てられているシマトネリコは、地面から複数の幹が伸びる「株立ち」という樹形で2mほどの高さにつくられることが多いです。しかし、じつは自生地なら10mほどの高さに伸びる生育旺盛な植物でもあるのです。
8号以上の大株になると、地植えなら1年で1m、腰ほどの小さい株でも50cmほどは伸びます。庭木に選ばれる植物の中では群を抜いて成長速度が速いので、定期的に剪定をする必要があります。
シマトネリコの剪定をする時期は、春(3月下旬〜4月上旬)、初夏(5月中旬〜6月)、秋(9月中旬〜10月中旬)頃が適期です。
樹形を見ながら、1年に1〜2回剪定する頻度でお手入れすると、さわやかな株姿を保つことができますよ。
年に1〜2回の剪定といいましたが、基本的には毎年必ず「春」にバッサリと剪定して、「夏」「秋」には樹形と軽く整えるイメージと思っておくといいでしょう。
なお、剪定をする時期によって剪定方法や、剪定後の成長が異なるので、詳しく解説していきます。
春の剪定はシマトネリコを大きくしたい、逆に高さを低くしたい、樹形をコントロールしたいというときの剪定に向いています。
3月下旬〜4月上旬は新芽が伸びていく時期でもあるので、春の剪定では思いっきり剪定しても、どんどんと大きさを増して伸びていってくれますよ。万が一切り方に失敗しても、強い萌芽力があるので枯れてしまうことはほぼありません。
剪定を年1回に抑えたいというなら、春の剪定がおすすめです。
初夏の剪定は枝ぶりのバランスを整えたいときに向いています。ただし、シマトネリコの開花は7月ごろなので、初夏に剪定をすると花芽まで切ってしまう可能性があります。開花を楽しみたいなら、この時期の剪定は避けましょう。
初夏は新芽が成長して安定している時期なので、5月中旬〜6月頃に剪定をすると、太さや伸び具合がそろった枝が伸びていきますよ。
秋の剪定は不要な枝だけを切る、仕上げの剪定に向いています。
シマトネリコは冬に休眠を迎えるため、この時期の剪定では負担のない軽めの剪定にとどめましょう。9月中旬〜10月中旬ごろに伸びすぎた枝だけを切るような軽い剪定だけにします。休眠中のシマトネリコに負荷をかけないよう、切りすぎには注意が必要な時期です。
お家の庭木として植えられているシマトネリコは、株立ち樹形が多いです。「株立ち」とは一つの株元から複数の幹が生えている、上の写真のような樹形のことをいいます。
株立ちシマトネリコの剪定の基本は、「透かし剪定(間引き剪定)」という方法です。透かし剪定とは不要な枝を付け根から切って、二度と生えないように取り除いていく方法のことをいいます。
最終的に、株の向こう側が透けて見える程度、小鳥が通り抜けられる程度を意識して、バッサリと思い切り剪定していきましょう。春の剪定ならかなりたくさん切ってもすぐに茂るので、やりすぎかなというくらいがちょうどいいです。
なお、不要枝とは、下記のような枝のことをいいます。
透かし剪定では枝を切る位置、枝の切り方にポイントがあります。
透かし剪定は根元から切ると先述しましたが、こちらのイラストの通り、分岐元の枝のように切るのではなく、少し角度をつけて切り口を最小にすることが大切です。
このように切ることでその後切り口が早く塞がり、ぼこっとならずにキレイに治ります。
また、枝をきちんと根元から切らないと、減らしたいはずがさらに分岐して枝が増えたり、枯れてしまうことがあるので、必ず根元で切るようにしてください。
とくにシマトネリコは萌芽力が強く、少しでも枝が残っていると分岐するので注意しましょう。
なお、直径が2〜3cm以上の太い枝を切るときは、まず分岐点から少し離れた位置で下側から切り込みをいれ、切れ込みから先端側に少しずれて切り落としましょう。
こうすることで、枝の重みで途中で折れたり、切れ込み部分で止まるので幹を傷付けずにすみます。最後にもう一度根元で切り直して完了です。
シマトネリコはとくに株立ちの樹形で長年育てると、1本1本の幹が直径15〜20cmにも太くなって、植樹したときとはほど遠い力強い姿になってしまいます。
これは上に伸びるにしたがって土台を強くしなければというシマトネリコの本能であり、定期的に透かし剪定・強剪定をしていても、年々太くなるのはあたりまえのことです。
でもせっかくシマトネリコを植えたのなら、繊細で涼しげな株立ちの樹形を保ちたいものですよね。
そのようなときは、株立ち樹形のシマトネリコなら、複数あるうちの1本の幹を根元からバッサリ剪定して、株の更新をしていくのもいいでしょう。
シマトネリコの株立ち樹形では、地面から立ち上がる幹を3〜4本程度(樹高が低い若い株なら5〜6本)で保つのが理想です。
それに加えて、地面から伸びる若い枝「ひこばえ」を1本残して育てておけば、幹を根元からバッサリ剪定しても、そのひこばえが次の幹となるので樹形が大きく乱れることもありません。
どの幹をバッサリ切るかですが、複数の幹が円を描くように分散配置されていることが大切なので、より密集して偏っている幹を選ぶようにしてください。のちにノコギリを入れるスペースも考えながら伐採する幹を選ぶといいですよ。
ちなみに株への負担が大きいので、この根元から切る剪定は必ず春の時期に行ってください。
シマトネリコは基本的に透かし剪定で十分ですが、前項の株立ち樹形を整える場合のほか、木の高さを抑えたい場合も強剪定を行います。
「強剪定」とは、枝を途中で切って再び伸ばしていく剪定方法のことをいいます。透かし剪定とは違って、切り口の下から新しい枝が生えてくるように、節や芽の上1cmほどの位置で枝を切ります。
木の高さを抑えたいときは、高く伸びている幹を好みの高さでバッサリと切りましょう。その後切り口の下から新しい枝が伸びますが、これを根元から切っておけば当分は高さを生み出すような枝は伸びてきません。
ちなみに、強剪定とは切り戻し剪定のひとつであり、強剪定のほかに弱剪定という方法もあります。
この強弱の違いは枝を切る深さの違いです。強剪定では枝を深く切り戻し、その後太い枝を早く伸ばします。反対に弱剪定では枝を浅く切り戻し、その後細い枝をゆっくり伸ばします。
たとえば、細い枝は強剪定して、太い枝は弱剪定していくと、どの枝も太さや勢いが揃うようになります。枝数を増やしたい場合や、樹形をコントロールしたい場合は、強剪定と弱剪定をうまく使いわけて切るといいですよ。
シマトネリコの剪定後は、どんなに細い枝を切っても必ず癒合剤を塗ってあげましょう。
シマトネリコは丈夫な木として知られていますが、それでも無防備な状態におくと、樹勢が弱い時期などには枯れたり病気や虫の影響が樹木全体に広がってしまう可能性もあります。
剪定と剪定後のケアは、シマトネリコに限らず常にセットで行ってあげましょう。
シマトネリコを剪定するポイントをいくつか紹介しました。シマトネリコを剪定するときのポイントは「風の通り道」をつくってあげること。枝どうしがぶつからないことや、葉が重ならないことなどを念頭において作業すれば、それほど難しくないでしょう。
切るべき枝の特徴を覚えておき、気づいたら清潔な剪定バサミで切る、といった習慣をつけておくといいかもしれません。
大きくなり過ぎたシマトネリコの剪定は、けがや事故を避けるためにも、無理をせずプロの庭師さんや業者さんの手を借りるようにしましょう。
1年中鮮やかな緑の葉を楽しめるシマトネリコ。大きくなりすぎないよう、上手にバッサリ剪定してきれいに育ててあげたいですね。
松原真理子
GreenSnap編集部