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窒素(チッソ)肥料は植物の三栄養素のひとつで、化学記号で「N」と表記されることもあります。
植物の生育に欠かせないとはいいますが、それが一体どんな原理で、どんな理由で必要といわれているかがわかると、植物の状態や症状にあわせて、肥料を使いこなせるようになります。
今回は、植物の成長を支える窒素肥料について、ご紹介いたします。
窒素は全ての植物の茎や葉の生育に欠かせない栄養成分で、「葉肥」とも呼ばれるほど重要です。
株全体の成長をつかさどる栄養分として、植物の三栄養素(窒素・リン酸・カリ)のなかでも重要視され、市販の配合肥料の多くは、窒素の含有量を基準としています。
窒素が茎や葉の生育を支えると言われるのは、窒素が葉緑体を生み出す働きをもつためです。
葉緑体があることによって植物は光合成ができるようになり、葉を緑たらしめる葉緑素を生み出します。光合成は植物にとって呼吸のようなものですから、窒素がなければ植物は生きてけないほど大切な要素なのです。
窒素は空気中の80%を占めていますが、植物はガス気体の状態の窒素を吸収することができません。
そのため個体の形、つまり有機肥料(タンパク質に含まれるチッソ成分)や、化学肥料(窒素ガスと水素を反応させてつくる合成アンモニアなど)で与えることとなります。
前述のとおり、有機物にふくまれる窒素成分は「アンモニア態窒素」→「亜硝酸態窒素」→「硝酸態窒素」の順で変換されていきます。
ほどこす肥料の窒素成分がどの種類なのか、また配合量によって、遅行性なのか速効性なのかが変わります。詳しくは後述の「窒素の化学肥料(単肥)の種類」をご覧ください。
なお、植物が根から吸収できるのは、「アンモニア態窒素」と「硝酸態窒素」だけです。ブルーべリーやイネなどはアンモニア態窒素を好みますが、ほとんどの植物は硝酸態窒素で吸収します。なお、亜硝酸態窒素は植物にも人体にも有害です。
アンモニア態窒素は、タンパク質、アミノ酸などの有機態窒素、または尿素を分解したアンモニアから生成されます。アンモニア態窒素は施すと、酸化して無機栄養素(硝酸イオン)になる過程で、土壌のpHも下がり土が酸化するという特徴があります。
また、雨などでの流失は比較的少ないので、与えすぎに注意が必要です。
硝酸態窒素は、アンモニア態窒素などの窒素化合物が酸化して生成されます。硝酸態窒素は、施すと塩基性イオンが残り、土壌のpHが上がります。雨などで流出しやすく、人体には有害です。
有機肥料には窒素のみを含む肥料はありませんが、化学肥料は窒素成分を主とする単肥がいくつかありますのでご紹介します。
配合肥料や化成肥料での配合に、どのような窒素成分が使われているかをみることで、植物にあった肥料を選ぶことができます。
硫安はアンモニア態窒素のみを含む単肥で、窒素分20.5%が成分保証されています。水に溶けやすく、速効性が高いのが特徴で、効果は1ヶ月ほど持続します。また、土壌のpHを下げます。
塩安はアンモニア態窒素が主な成分の単肥です。アンモニア態窒素を25%含み、速効性で、副成分の塩素も栄養分として繊維作物の育成に効果的です。また、土壌のpHを下げます。
硝安は硝酸態窒素とアンモニア窒素を同量ずつ結合させた単肥で、施しても土のpHの変動が少ないのが特徴です。窒素分を34%含み、速効性をもちますが、葉にかかると葉焼けをおこします。
硝安は尿素の次に窒素量が多いです。
尿素は尿素態窒素で構成されており、含まれる窒素分は46%です。尿素態窒素は直接根からは吸収できないので、一般的には液肥として葉面散布による施肥をします。高い速効性があります。
安価で窒素量が抜群に多いのが尿素です。3分で溶けるといわれています。
石灰窒素はシアナミド態窒素で構成されており、含まれる窒素分は21%です。シアナミド態→尿素→アンモニア→硝酸の順で変換されるので、すなわち緩効性の性質を持ちます。シアナミド態窒素は有毒なので、施肥の際も吸い込まないように防護してください。
窒素肥料を多く施肥すると、植物は過剰に硝酸隊窒素を含んだ状態になります。植物自体が窒素過多で枯れることはありませんが、人体には有害物質ですので、硝酸隊窒素を多く含んだ野菜を摂取すると、発がん性物質へと変化したり、チアノーゼ(酸欠状態)になり、最悪の場合は死に至ります。
また、とくに化学窒素肥料は一度にたくさん施肥をすると、硝酸態窒素の吸収が追いつかず、流失する可能性があります。流失した硝酸隊窒素は地下水へと染み出し、環境汚染および飲料水汚染へとつながります。
有機肥料やアンモニア態窒素は、石灰資材や熔リンとあわさると、化学反応をおこしてアンモニアガスになってしまいます。アンモニアガスになると窒素成分は植物に供給されませんし、植物がガス障害を起こしてしまうので、必ず1週間ほど時間をあけて施してください。
ただし、硝酸態窒素はこの限りではありません。
窒素肥料の過不足は葉の状態から判断します。窒素が多い状態だと、葉は青緑に濃さを増していき、茎部分がやや軟弱になる傾向があります。窒素が少ない状態だと、葉が黄色くなり、古い葉が落葉します。
植物にはそれぞれ栄養度の必要量が決まっています。基本的に窒素は元肥で必要量の半分を、追肥によって窒素とカリの残りの必要量分を施しましょう。
とくに野菜は、窒素をゆっくりと効かせると旨味が増します。有機栽培の野菜が美味しいといわれるのは、有機態窒素による栄養供給にして、時間をかけて効かせているためです。
石灰窒素は土壌消毒、再生の面ではかなり効果的です。石灰窒素はその有毒成分で土壌の殺虫・殺菌をおこない、ゆくゆくは有害成分が残らない窒素肥料としての効果を発揮します。
アンモニア態窒素には土壌のpHを下げる特性がありますが、土壌にまくことでアルカリ性に傾きすぎた土壌を酸性に寄せるよう、中和調整できます。とくに硫安、塩安は、土の中に硫酸や塩酸などの酸が残るので、アルカリ性ミネラルが中和されます。
たとえば、ピンク色の紫陽花を咲かせたいときや、酸性土壌を好むブルーベリー、レモンなどを栽培するときは、土壌に窒素肥料をまいて、酸性土壌に調整して使います。
窒素肥料は植物の成長に欠かせませんが、それと同時に、過剰に施肥することで環境汚染や、人体への悪影響を及ぼす可能性もあります。
たしかに野菜は窒素を多くすると大きく育ちますが、栄養面では有害であるということを頭にいれ、窒素肥料とうまく付き合うようにしましょう。
七尾びび
GreenSnap編集部