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so.ra
2021/02/06
🌷チューリップ物語🌷その13
晴れた日が続いて、今ではチューリップの体を隠していた落ち葉も、どこかへ飛んでいってしまい、冷たい風と太陽の光に小さなチューリップの球根はカラカラに乾いてしわしわと小さくなっていくのだった。
自分はこのまま枯れてしまうかも知れない、そんな不安が胸を重くする時もあったが、今のチューリップの球根は、ただあの木の根もとの穴に飛んでいくことだけ。その自分の姿を何度も何度も心に描いて、『次の風か来たら、きっと飛んでやる!』そう思って空を見上げるのだった。
暖かな日差しの日が続いて土手に生えていた柳が芽吹いた。その芽に小さな銀色の頭が顔を出した朝、突然その風がやって来た。
ゴーと唸るような音と一緒に、たくさんの枝がパチパチと飛んできた。畑の土は舞い上がって、あたりは茶色の靄がかかったようだった。
「よし!今だ!」チューリップの球根は、体を起こして風に乗った。飛んで、落ちて、弾んで、転げて、、たくさんの落ち葉と一緒に飛ばされていった。ところが、穴まであと一息のところで止まってしまった。
そして風はだんだん弱くなってくる。
もうこれまでか、そう思ったとき、一枚の大きなプラタナスの葉が飛んできて、チューリップの足元に刺さるように止まった。
『君はどこをめざしてるんだい』落ち葉が尋ねた
『あの穴だよ。あの穴まで、何がなんでも飛んでいきたいんだ!』
『それなら、今度大きな風が吹いたら、君をのせて飛んでいこう!!いいかい、君も空を飛ぶ翼が生えた気持ちで心をあわせるんだ』
チューリップは大きく頷くと、空と行く手を交互に睨んで次の風が吹くときを待った。
その時、再び地響きのような強い音がして風がやって来た。それはさっきより一層強い風だった。チューリップの球根はプラタナスの葉に乗るように舞い上がり、あっという間に穴に転がり込んだ。チューリップが落ちると、落ち葉はまた勢いよく飛んでいった。
冒険は成功した。
チューリップは深いため息をついた。
そこは深くて暖かく気持ちのいい場所だった。
小さなチューリップが穴に落ち着くと、その上から何枚かもの落ち葉も落ちてきた。
『おめでとう!上手くいったわね』それは、懐かしい菊の葉の声
『いった通りだったな。この冒険をやりとげたのはお前さんの力だ!良かったなボウズ!』
カラスに穴を開けられてボロボロになった蔦の葉もそこにいた。
そして、菊の葉っぱが言った。
『あなたは知らないでしょうけど、実は蔦さんが、あなたが立ち往生をしたら、あなたを乗せて運んでねってプラタナスの葉っぱに何度も何度もお願いしてくれたのよ。あれから私達は、カラカラに乾いていくあなたをずっと見ていたわ。それでもあなたはいつも希望を捨てなかったから、応援したくなったのよ。私達は冬の寒さからあなたを守るわ。そして朽ちたらあなたの肥料になってあなたの芽吹きを応援するわ』
その言葉を聞いて、チューリップはまた嬉しくてポロポロ涙をこぼした。
『ありがとうみんな!僕、今とっても暖かい。一人だと思ってたときも、僕を見守ってくれてて、、本当にありがとう。
僕、きっと春に芽吹いて花を咲かせるよ。今年が無理なら、来年きっと花を咲かせるからね』
菊の落ち葉も蔦の葉も、カサリと音をさせてチューリップを優しく覆った。
その日吹き続けた風は、小さなチューリップの球根と落ち葉の上を通り過ぎたくさんの土をかけていった。
続く
🌸東京 晴れ 10℃
物語を読んで下さって有り難うございます。次が最終話です😊❤️
今日もいい日に💕
ミント大好き
2021/02/06
チューリップ🌷の冒険楽しませてもらいました😊ありがとう😄
いいね
1
返信
so.ra
2021/02/06
@ミント大好き
さん
こんにちは😃
チューリップ物語を読んで下さって、ありがとうございました😆💕✨
実は、次でまたちょっとした展開があります(#^.^#)
次で最終話の予定です。よかったら、また立ち寄ってくださいね❣️
いいね
1
返信
はる❤️波瑠美
2021/02/07
一人じゃない❗️いつも 側には 沢山の人がいる❗️支えてくれている人がいる❗️って事ですよね💕
素敵な物語✨✨✨
いいね
1
返信
so.ra
2021/02/07
@はる❤️波瑠美
さん
一人じゃなかったって知ることとか、陰で支えてもらったって知ることは、あとになってからってことも多いよね。支えられてるって、幸せですよね❤️
いいね
2
返信
鳥さん
2021/02/08
@so.ra
さん チューリップ🌷君、報われて良かったです。大人の読む物語で、いろいろと考えさせられました。不条理に対することも多いですが、この物語を覚えていて読み返したいです。
いいね
1
返信
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so.ra
お出かけ先で出逢った花にとても感動して、こんな感動をどこかに残したいと始めたGSでした。花に添える言葉が上手く書けなくて、それなら575とか、詩にすれば書けるかなと、詩を書くようになりました。でも、私はやっぱり口べたで、どうしようもない天然で‥。ちゃんと届けたい想いが言葉にできなくて‥。何度も、自己嫌悪にもう投稿をやめてしまおうと思ったりもしました。(一度止めて、このアカウントは再開したものです)でも、そんなとき、今はおほしさまになってしまった天美ちゃんが、初めて私の言葉を書きとめてくれて‥私は言葉を紡ぐ人になりたいと思いました。そして、挫折しそうになるたびに、みんなが声をかけてくれて‥そんなみんなの暖かさに支えられて続けてこれました。いつも、こんな私にいいね!をくれるみんな、心からありがとうございます。みんなが今日も明日もずっとずっと幸せでいられますように🍀
場所
お出かけ先
キーワード
sora の物語
チューリップ物語
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自分はこのまま枯れてしまうかも知れない、そんな不安が胸を重くする時もあったが、今のチューリップの球根は、ただあの木の根もとの穴に飛んでいくことだけ。その自分の姿を何度も何度も心に描いて、『次の風か来たら、きっと飛んでやる!』そう思って空を見上げるのだった。
暖かな日差しの日が続いて土手に生えていた柳が芽吹いた。その芽に小さな銀色の頭が顔を出した朝、突然その風がやって来た。
ゴーと唸るような音と一緒に、たくさんの枝がパチパチと飛んできた。畑の土は舞い上がって、あたりは茶色の靄がかかったようだった。
「よし!今だ!」チューリップの球根は、体を起こして風に乗った。飛んで、落ちて、弾んで、転げて、、たくさんの落ち葉と一緒に飛ばされていった。ところが、穴まであと一息のところで止まってしまった。
そして風はだんだん弱くなってくる。
もうこれまでか、そう思ったとき、一枚の大きなプラタナスの葉が飛んできて、チューリップの足元に刺さるように止まった。
『君はどこをめざしてるんだい』落ち葉が尋ねた
『あの穴だよ。あの穴まで、何がなんでも飛んでいきたいんだ!』
『それなら、今度大きな風が吹いたら、君をのせて飛んでいこう!!いいかい、君も空を飛ぶ翼が生えた気持ちで心をあわせるんだ』
チューリップは大きく頷くと、空と行く手を交互に睨んで次の風が吹くときを待った。
その時、再び地響きのような強い音がして風がやって来た。それはさっきより一層強い風だった。チューリップの球根はプラタナスの葉に乗るように舞い上がり、あっという間に穴に転がり込んだ。チューリップが落ちると、落ち葉はまた勢いよく飛んでいった。
冒険は成功した。
チューリップは深いため息をついた。
そこは深くて暖かく気持ちのいい場所だった。
小さなチューリップが穴に落ち着くと、その上から何枚かもの落ち葉も落ちてきた。
『おめでとう!上手くいったわね』それは、懐かしい菊の葉の声
『いった通りだったな。この冒険をやりとげたのはお前さんの力だ!良かったなボウズ!』
カラスに穴を開けられてボロボロになった蔦の葉もそこにいた。
そして、菊の葉っぱが言った。
『あなたは知らないでしょうけど、実は蔦さんが、あなたが立ち往生をしたら、あなたを乗せて運んでねってプラタナスの葉っぱに何度も何度もお願いしてくれたのよ。あれから私達は、カラカラに乾いていくあなたをずっと見ていたわ。それでもあなたはいつも希望を捨てなかったから、応援したくなったのよ。私達は冬の寒さからあなたを守るわ。そして朽ちたらあなたの肥料になってあなたの芽吹きを応援するわ』
その言葉を聞いて、チューリップはまた嬉しくてポロポロ涙をこぼした。
『ありがとうみんな!僕、今とっても暖かい。一人だと思ってたときも、僕を見守ってくれてて、、本当にありがとう。
僕、きっと春に芽吹いて花を咲かせるよ。今年が無理なら、来年きっと花を咲かせるからね』
菊の落ち葉も蔦の葉も、カサリと音をさせてチューリップを優しく覆った。
その日吹き続けた風は、小さなチューリップの球根と落ち葉の上を通り過ぎたくさんの土をかけていった。
続く
🌸東京 晴れ 10℃
物語を読んで下さって有り難うございます。次が最終話です😊❤️
今日もいい日に💕