科学的に正しい剪定の解説
CODIT論
従来の剪定では、傷を負うと人間のように「傷が癒える」と考えられてきました。しかし、アレックス・L・シゴ博士という植物病理学者が研究、提唱した「Compartmentalization of Decay In Trees(CODIT)」という考え方によって、樹木は人間のように傷そのものを治すのではなく、傷害を受けた部分を区画化し、腐朽の拡大を抑えるという自己防衛システムを持っていることが明らかになりました。
植物を栽培している9割以上の人は、切る位置に決まりがあることを知らずに、適当にぶつ切りしているのではないでしょうか。
僕は、CODIT論はおろか、腐朽すら知らない植木屋と会ったことがあるので、その認知度は相当低いと推測しています。
どうして生育に大きな影響を与えるほどに重要な剪定が、ここまで軽視されているのかは不明ですが、少なくともガーデナーの皆さんなら一度は剪定を経験したことがあるはずです。
確かに、適当にぶつ切りすれば腋芽は伸びるので、一見何事もなく成長しているかのように見えますが……、実は構造的に脆弱になっていたり、腐朽菌などの侵入、定着のきっかけになっているかも知れません。
なんなら、根腐れかと思っていたものが、実は枝から進行した腐朽だった、ということも十分に考えられますし、実際にSNSでは根腐れと誤解している人の投稿もよく見かけます。
僕も、初めて剪定する時は相当迷いました。皆さんも相当迷ったことでしょう。なので、今後迷うことがないように、樹木医だけではなく、園芸でも、この考え方が広まるように、この日記を作成しました。
それでは早速本題に入ります。
「枝の付け根には、バークリッジやブランチカラーといった、剪定位置を判断するうえで重要な構造がある」ことはご存知でしょうか。
そんなことを言われたって、知る訳ないと思います。僕も知りませんでした。
バークリッジは、枝の付け根にあるシワのような隆起のことで、ブランチカラーは、枝の付け根にできる膨らんだ部分のことです。これらは剪定において非常に重要な部分となります。
特にブランチカラー周辺には、枝の付け根から幹へ腐朽が広がるのを抑えるための防御機構が存在します。また、剪定によってできた傷口では、その周囲から新しい組織が形成され、時間をかけて傷口を巻き込むように閉鎖していきます。
言葉で言われても何が何だか解らないと思うので、剪定位置と、剪定位置の見極め方を書いた画像を用意しました。
1.バークリッジラインを見る。
2.幹に対して真っ直ぐイマジナリーラインを引く。
3.バークリッジと幹の接合部から、バークリッジを傷つけない位置を基準に切る。
(これは、カラーが明瞭でない場合の切り方です)
ただし、これはあくまで剪定位置を判断するための目安であり、すべての樹木に当てはまる固定的なルールではありません。
青の切断線で切れば、ブランチカラーなどの重要な構造を傷つけず、適切な位置で剪定できます。
その結果、傷口の閉鎖や腐朽の拡大を抑えるうえで有利になります。
とは言え、枝の角度は千差万別で、バークリッジラインが見えにくい樹種もありますし、そもそもカラーが明瞭でない枝もあります。ですが、枝の付け根にある構造を確認し、それをできるだけ傷つけないように剪定するという考え方は、CODITの考え方にも通じるものです。
画像は僕が実際に切ったものです。
どうでしょうか、両方とも綺麗に傷は巻き込まれています。
おそらく皆さんの観葉植物は、スタブ(切り株)カットをされていると思います。スタブは枯死した組織となるため、長く残れば腐朽菌などの微生物が定着する場所になる可能性があります。また、長いスタブでは、そこから腐朽が進行することもあります。水不足などで干からびた枯れ枝が残っていても、同様に腐朽の起点となる可能性があります。
CODIT論(ここでは便宜的にバークリッジ剪定法と表現しています)は、考え方そのものはそこまで難しいものでもありませんし、覚えておくと園芸のQOLが確実に上がります。
基本的な考え方は多くの樹木に応用できますから、学んで損はありません。
今回は重要な事実だけ書きましたが、まだ書くべきことは沢山あります。
気が向いたら、続きを書きます。
主幹を切断したもの
綺麗に巻き込まれています。
主幹剪定(側枝に主幹を切り替えるとき)
バークリッジの末端Cから平行な直線位置にあるBにかけてバークリッジを傷つけずAから切ります。
その結果、写真のように傷が覆われていきます。
側枝の剪定(訂正)
イマジナリーラインを見いだして切る方法を書きましたが、こちらはカラー(膨らみ)が見られない場合の切り方でした。訂正いたします。
これは枯れ下がりから計算された切り方です。
こちらは通常の切り方です。
バークリッジ(シワ)とブランチカラー(膨らみ)を完全に残して切ります。
正しく剪定された側枝
イチジク(Ficus carica)の例で見てみましょう。
木材腐朽菌
サルノコシカケは木材腐朽菌の一種で、傷口から侵入、材を朽ちさせ、倒木の原因になります。引用した画像の木は、近い内に枯死するでしょうね。
枝は幹内部まで繋がっていて、スタブカットをして枝から侵入すると、樹木内部まで侵入を許してしまいます。
近年の街路樹の倒木は、不適切剪定による「腐朽」も原因の一つとされていて、安全性の観点から、非常に問題視されていることからも正しい枝の剪定に関する知識の有意義性は明らかです。
身長以上に育ってしまったウンベラータがあり、どの時期にどれぐらいでカットすればよいのか迷っています。可能なら胴切りしたいのですが、下部の枝には全く葉が出ていません。
冬は日差しが少ない北陸で、昨年冬越しは、室内でもかなりギリギリだった記憶があり迷っております。ご意見いただけたらと思います。