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お祝い事の花としてよく知られている蘭の花は種類がとても多く、地球上のあらゆる地域に分布している植物です。蘭の種類は「洋ラン」「東洋ラン」というように原産地で分類されたり、「着生蘭」「地生蘭」というような生育環境で分類されます。
今回は蘭の種類について紹介していきます。
蘭の種類は非常に多く、野生種だけでも2万5千種以上あり、主な原産地としては熱帯アメリカ、熱帯アジア、熱帯アフリカなどがあげられます。また、園芸用に品種改良されたものは毎年新品種が登録されており、それを加えると非常に多くの種類が存在しています。
温暖な気候を好む種類も多いですが、地球上では南極大陸をのぞき、アラスカ大陸や北極圏など極寒地域にも分布しています。非常に広範囲で分布しているラン類の植物は、地球上に生息する植物の1割を占めていることになります。
このように非常に多くの種類が存在する蘭ですが、蘭の種類は、生育している場所(着生蘭と地生蘭)や原産地(洋蘭と東洋蘭)などで分類することができます。
蘭を「生育している場所」で分けると、「着生蘭(ちゃくせいらん)」と「地生蘭(ちせいらん)」というように分けられます。
着生蘭と地生蘭では、どちらも生質や形態が大きく異なり、おのずと栽培形態も異なります。蘭を育てる上では手元にある蘭植物が「着生」「地生」どちらなのかを知ることも重要です。
まず「着生蘭」というのは、ラン科の植物の中でも木や根に寄生するように根を張り、そこで成長していく種類のことをいいます。この着生蘭と呼ばれる種類には、コチョウランのほか、カトレアやオンシジウム、バンダ、デンドロビウムなどが含まれます。
主に熱帯、亜熱帯に分布しており、その多くが樹上に生息しています。樹上というのは水分や栄養を確保しづらい環境ですが、それにもうまく対応できるように、その分葉や茎が進化していきました。
根からも空気中の水分を取り込みますが、それだけでは必要な水分量を確保できないので、葉や茎が肥厚し水分や養分を蓄えられるようになっています。これを「バルブ(偽球茎)」と呼びます。
樹木の枝や幹に根を這わせ、株の基部から茎を伸ばして葉をつけたあと、その茎が丸みを帯びて肥厚し、水分や養分を蓄える器官になるのです。
また、そのほかにも「CAM植物」と呼ばれる特徴があります。これは、通常植物が行う光合成とはまったく逆の作用で、日中は気孔を閉じて水分の蒸発を防ぎ、夜になると二酸化炭素を取り込む光合成を行うことです。
もう一つは「地生蘭」です。これは地中や岩などに直接根を張って成長していく種類を指します。
この種類にはシンビジウムやパフィオペディラムなどが含まれます。また熱帯や亜熱帯をはじめとする温帯まで広く分布しています。生育特徴としては、雨期に根や茎を肥大させて水分や栄養を蓄えたあと、乾期になると休眠するものが多くみられます。
中にはツチアケビのように葉緑素をもたず、共生している菌から栄養をもらうものもあり、このような生体のものを腐生ランと呼びます。腐生ランと呼ばれるものの中には花も地中で咲かせ、植物としての一生を土の中で過ごす「リザンテラ・ガードネリ」のようなユニークなものもあります。
蘭を原産地(生息地)で分類する場合は、以下のような2種類に分けられます。
ラン科の植物のうち、日本~中国を原産とする種類の一部を「東洋ラン 」と呼び、それ以外を「洋ラン」と呼びます。
次に、洋蘭・東洋蘭に分けて、それぞれの代表種の名前や特徴をご紹介します。
東洋蘭は名前のごとく、これまで古くから培われた東洋人の美意識や生活になじみ深い趣が感じられるものが多いようです。
東洋蘭には花だけでなく葉芸、鉢も含んだ全体像が観賞対象とされる物もあります。中には、「根」を観賞するフウキランのような種類もあります。セッコクの芸物を長生蘭、風蘭の芸物を富貴蘭といいます。
そのほか、東洋蘭に含まれる「カンラン」は寒さに比較的強く、一般家庭でも比較的栽培しやすい種類です。
日本を代表するランの種類で、北海道から九州まで広く分布しています。
里山や雑木林などに自生しており、漢字では「春蘭」と書きます。
古くから季節の花や祝い事の花として親しまれています。
「寒蘭」は、単子葉植物ラン科シュンラン属の1種で、南部以南の森林内に自生しています。
寒い冬の時期に咲くことから、「寒蘭」という漢字があてはめられています。
花柄は4cmと日本産のランとしては大柄な種類です。
日本原産のランで着生植物の一種で、うどんのような白く太い気根を長く伸ばして、樹木や岩の上に着生します。葉は硬く、5cm~10cm程度の長さ、花は6月~7月頃に1cm~1.5cm程度の小柄で香りのよい花を咲かせます。花色は白やピンク、グリーンをはじめ淡い色合いもあり、園芸種としても人気を集めています。
このほか、エビネやセッコクなども東洋ランの代表種として知られています。
洋蘭の種類は東洋蘭に比べて花色があでやかなものが多く、花を中心に鑑賞されるものが多いです。
中でも胡蝶蘭(ファレノプシス)は、開店祝いなど贈答用としてよく用いられる定番の蘭の花としてよく知られています。栽培時には、最低温度が15度以上になるような環境を作り、温室で丁寧に手間をかけて育てられています。
贈り物の花としてよく知られている花です。蝶が舞うような花を咲かせることからこの名がつきました。東南アジア原産の着生ランで、暖かい栽培環境を好みます。
年末の贈り物としても良く使われる蘭で、主に地生のランです。花の大きさはさまざまで、10cm以上の大型種から3cm程度の小型種まであります。
ラン科の植物の中では、小ぶりで甘い香りをもつ種類が多く存在する植物です。中南米を中心に約400種が存在します。
耐寒性が比較的高く、環境適応能力が高いので、一般的なガーデニング品種としても栽培しやすくなっています。
棒状の茎を伸ばして葉をつけ、葉を落とした茎から順に花を咲かせていきます。原種は約1000種ともいわれ、色や形、特徴などがそれぞれ違うことから、鉢植えで愛好される方も多いようです。デンドロビウムの1種であるデンファレは胡蝶蘭に似た花を咲かせることでも知られています。
大ぶりでゴージャスな花を咲かせることから、「ランの女王」とも呼ばれているカトレアは、荘厳で美しく鉢植えや切り花などどのような形式であっても華やかさが感じられる花です。四方に開いた花びらが四方に開き、その中心は筒状になっています。
東南アジア原産でヒスイラン属に属するランです。濃紫色の花がよく知られていますが、最近は濃ピンクや黄色、白などの花色もあります。花の寿命が長いのが特徴で、花びらに独特の網目模様が入ります。洋ランの中では珍しく神秘的な青系の色と大輪花を咲かせる種類です。
カトレア・シンビジウム・デンドロビウムと並ぶ世界4大洋ランの一つです。袋状の唇弁が特徴的な花です。洋ランの中では比較的寒さに強い方です。花の形からよく食虫植物に間違われることがありますが、自ら虫を捕食するようなことはありません。
種類が多く、種類ごとに色や見た目など生体の特徴はさまざまです。
贈答品としての胡蝶蘭以外にも種類ごとに観賞ポイントを知り、それぞれの美しさや生体に目を向けたいものです。
河村賢治
GreenSnap編集部