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日本の国花である桜の中でも「ソメイヨシノ(染井吉野)」は、日本に咲く桜の約80%を占めるほど、身近かつ有名な桜です。ですが、そのほとんどが一つを原木とするクローンであることや、寿命や発祥の地についてご存知でしょうか。
今回は、親しみ深いけれどあまり知られていない「ソメイヨシノ」について、詳しくご紹介します。
ソメイヨシノとは、原種の桜であるエドヒガンザクラとオオシマザクラが、交雑して生まれた品種の桜です。生育が盛んで、街路樹や公園樹として、日本全国に多く植えられています。
花は枝から房状に伸びて3~5個つき、花色は咲き進むにつれ、桃色から白っぽく変化していきます。5枚の花びらの先には切れ込みが入り、花径は3〜4cmほどです。
ソメイヨシノは花が咲き終わった後に、若葉が生えてくるので、満開時には株全体が桃色に染まった様子が楽しめます。
ソメイヨシノの発祥の地は東京都豊島区駒込といわれています。ソメイヨシノの歴史は意外と浅く、江戸時代の終わりから、現在の豊島区駒込で商いをしていた植木屋がソメイヨシノを売り出したのが始まりです。
ソメイヨシノの「ソメイ=染井」は、駒込にある大字(地名)に由来するもので、現在も駒込には染井霊園や染井通りなどの名称が残っています。また、駒込駅北口には、ソメイヨシノの発祥の地であることを記念として「染井吉野桜発祥之里碑」が設置されています。
一説では、ソメイヨシノの寿命は、60年ほどといわれています。この説では、戦後すぐに植えられたソメイヨシノの樹勢が、21世紀に入って衰えたことを根拠にしており、生育が盛んな一方で病気に弱い特性があると考えられています。
ただし、日本各地には樹齢150年ほどのソメイヨシノが点在しているため、「ソメイヨシノ60年寿命説」を否定する声も多いようです。ソメイヨシノの寿命は育て方や環境によるとことも大きいようです。
日本の街中や公園に植えられているソメイヨシノは、そのほとんどが全く同じDNAを持つクローンだということが、近年の研究により明らかになっています。
一説では、上野恩賜公園にあるソメイヨシノを原木に、接ぎ木という手法で全国に普及していったと考えられています。
クローンだからこそ、個体差なく一斉に開花し、満開のソメイヨシノ並木を楽しめる反面、致命的な病気に感染すると、一気に枯死していく可能性もあります。
ソメイヨシノの開花時期は、例年3月下旬〜4月中旬です。開花条件には諸説ありますが、2月以降で気温15度以上の日が、合計23〜25日ほどになると、開花し始めるといわれています。
ソメイヨシノは花を咲かせたあと、5〜6月ごろに、紅色から黒紫色の果実をつけます。
よく混同されがちですが、甘酸っぱいフルーツの「さくらんぼ」は、ソメイヨシノの果実ではありません。さくらんぼは、ソメイヨシノと同じバラ科サクラ属のセイヨウミザクラという植物の果実です。
ソメイヨシノの果実は、たしかにさくらんぼに似た形をしていますが、渋みがあって食用には向かないので注意しましょう。
街中や公園の大樹となったソメイヨシノを楽しむのもいいですが、鉢植えや苔玉で育てて、自宅の庭や部屋の中で楽しむこともできます。
ソメイヨシノは種からは育てられないので、市販の苗を購入するか、次の方法を試してみるといいでしょう。
①挿し木:親株から切り取った枝(挿し穂)を、土に挿して育てる方法
②接ぎ木:台木と穂木を用意して、接着して育てる方法
それぞれの方法を、詳しくご説明します。
ソメイヨシノを挿し木で育て始めるには、まず、2〜3月に新芽がついた枝か、6〜7月に新梢を10cmほど切り取って、挿し穂を用意しましょう。切り取るときは、親株の切り口には傷口を保護する目的で癒合剤を塗るようにしてください。
挿し穂の切り口は斜めに切り、水に1〜2時間浸しておきます。そのあとは、切り口に発根剤を塗布して、赤玉土小粒の用土に挿しましょう。1週間ほどは土が乾かさないように水やりをし、しっかり根付いたら、表土が乾いたら水やりする程度にして育てましょう。
ソメイヨシノを接ぎ木で育て始めるときは、オオシマザクラの台木を用意しましょう。ソメイヨシノからは、1〜2月上旬までに10cmほど枝を、切り口が斜めになるように切り取り、穂木を用意しておきます。
台木に上から斜め45°ほどの角度で切り込みをいれ、穂木の切り口と密着するように合体させます。接ぎ木テープで固定し、接ぎ目は土に埋めて育てていきましょう。しっかり接ぎ木できるまでは、乾燥させないように水やりして育ててください。
ソメイヨシノは私たちの生活でもっとも身近な桜の花です。春に満開になる様子は、新年度を気持ち新たに迎えるきっかけにもなりますね。これを機に、ソメイヨシノの特徴をしって、春の桜・ソメイヨシノをもっと楽しみください。
松原真理子
GreenSnap編集部