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日本の土壌は、ほとんどの地域で酸性に傾いています。しかしながら、ほとんどの野菜や草花は、中性から弱アルカリ性を好みます。そこで活躍するのが、「苦土石灰」などの石灰資材です。
今回は、園芸や家庭菜園に欠かせない、酸度調整の役割を担う苦土石灰についてご紹介いたします。
苦土石灰とは、石灰資材の一つで、ドロマイトというマグネシウム(苦土)とカルシウム(石灰)を含む天然鉱物を、加熱して砕いた粉状・粒状のものです。
苦土石灰の成分は、おもに炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムです。また、アルカリ分が53%以上です。
苦土石灰の効果は、「土壌のpH調整」と「カルシウムやマグネシウムの補給」です。
苦土石灰を施すことで、酸性の土壌をじわじわと中性していきます。また。カルシウムには植物の根の発達を促し、株全体を丈夫にする働きがあり、マグネシウムにはリン酸の吸収を助け、植物内の酵素を活性化させる効果があります。
苦土石灰をはじめとした石灰資材は、多くの植物が嫌う酸性土壌を、中性〜弱アルカリ性に調整するために施します。
では、そもそも苦土石灰はなぜ必要なのでしょうか?それは日本の環境に原因があります。
土壌を酸性に傾ける要因は、日本特有の酸性雨です。本来pH5.6以下を酸性雨と定義する見方がある中で、日本の雨はpHは4.6〜4.7ほどと、酸性の度合いが強いです。この酸性雨が大地に降り注ぐことによって、土壌を酸性へ傾けてしまうのです。
酸性へ傾いた土壌では、植物の健康を促すカルシウムやマグネシウムが失われ、多くの植物にとって害となるアルミニウムが溶け出して、植物が必要なリン酸を奪います。また、植物が分泌するはずの有機酸の働きが悪くなるので、肥料分を吸収しにくくなったり、微生物も減少します。
苦土石灰と同じ石灰資材に「消石灰」といいうものがあります。消石灰は生石灰を生成するときにできる石灰で、苦土石灰よりも強いアルカリ性を持ちます。速効性ではありますが、根に触れると植物が痛むので、2〜3週間土に混ぜて置いておきます。なお、マグネシウムは含んでいません。
植物や動物の健康を脅かす病原菌は、生息できるpHが限られています。この性質を利用して、石灰資材で酸度調整をし、病原菌の繁殖を防ぐことを、石灰消毒と言います。
しかし、全ての石灰資材が石灰消毒に使えるわけではなく、苦土石灰は石灰消毒に不向きです。石灰消毒にはpH12の強アルカリ性である消石灰がおすすめです。
苦土石灰を使った土づくりは作付けの2〜3週間前から始めましょう。基本的な手順は次の通りです。
苦土石灰の場合、pHを1.0あげるためには1㎡あたり、200gほど必要です。植物の種類によって、好むpH値は異なるので、育てるものにあわせて調整してください。
なお、苦土石灰は緩効性のため、その酸度調整効果が現れるまで1〜2週間かかります。
苦土石灰に関わらず、石灰資材を肥料と堆肥と同時に施すのは控えましょう。肥料に含まれる窒素分は石灰と合わさることで、アンモニアガスへと変化して消失してしまいます。また、アンモニアガスは植物の酸素を奪って枯らします。
施すときは、最低でも1〜2週間は期間をずらすようにしましょう。
苦土石灰の施しすぎには注意しましょう。やみくもに施すと、土のアルカリ化を引き起こします。いったんアルカリ化に陥ると、酸性を抑えるよりも難しいので。pH測定器やリトマス紙などを使いながら、調整してください。
万が一、土壌がアルカリ性に傾きすぎた場合には、硫安、塩加、塩安、過石などの酸性肥料を施して中和していきます。
苦土石灰はコメリやカインズなどのホームセンターのほか、ネット通販などで入手することができます。また最近ではダイソーなどの100円ショップでも苦土石灰を取り扱っている場合があるようです。
苦土石灰の価格は、10kgで800~1,000円ほどが相場です。粒状か粉状かで値段と扱いやすさも変わります。
卵のカラにはカルシウムが豊富に含まれており、細かく砕いて粉状にして施すことで、苦土石灰と近い効果が得られます。ただし、効果は緩やかで酸度調整の効果も低いので、微調整に代用するくらいに捉えて置くといいでしょう。
乾燥剤はお菓子や海苔などの製品に入っているもので、製品記載に石炭と書かれているものであれば、苦土石灰の代用品として使えます。卵のカラよりも酸度調整効果は高いですが、微量栄養素はあまり含まれていません。
苦土石灰や他の石灰資材での酸度調整は、草花や野菜を育てる土づくりで欠かせない項目です。ただ、大事なのは、育てる植物が好むpHと、現状の土壌pHの状態をよく理解することです。過不足なく苦土石灰を上手に活用して、園芸や家庭菜園を楽しんでください。
GreenSnap編集部