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カイガラムシはアブラムシの仲間で、バラや果樹、観葉植物、多肉植物など様々な植物に寄生し、成長を阻害する害虫です。名前にカイガラとついているだけあって、成虫はヨロイの役割を果たす貝殻のおかげで、殺虫薬剤が効きにくいので簡単に駆除ができません。
今回はそんな厄介な害虫のカイガラムシの生態と、その防除方法をご紹介します。
カイガラムシはカメムシ目の昆虫で、その体長は、多くは2~3mm、大きい種類で1cm程度の昆虫です。
体色は白をはじめ、灰色、赤褐色、黒などが存在します。白っぽくふわふわした綿のようであったり、殻に覆われていたり、種類によって見た目もさまざまです。
種類によって特徴が二分でき、一つは「成虫になると脚が退化して枝や葉に固着するタイプ」、もう一方は「成虫になっても歩き回って繁殖するタイプ」に分かれます。
カイガラムシは糸のような細長く尖らせた口を枝葉に刺して、養分を吸汁して寄生する害虫です。
アブラムシよりは繁殖力は弱いですが、種類によっては雄が見つかっていないものも多くあり、雌だけで単為生殖をおこなうとされています。ほかにも、植物の特定の箇所に群生する習性もあり、植物の鑑賞価値も落ちます。
植物にカイガラムシが発生すると、吸汁により養分を奪われ、生育に被害を及ぼします。また、カイガラムシの排泄物(甘露)は粘着質な甘い蜜状になって、放っておくとそこから、葉が黒くなるすす病や、枝幹にただれたような傷をつくるこうやく病を誘発します。
さらに、その排泄物に蟻が引き寄せられて美観を損ねるので、カイガラムシによる間接的な被害も甚大になっていきます。
多くのカイガラムシの発生時期は、一般にガーデニングシーズンの5~7月です。初夏からの数ヶ月間での繁殖をピークに、温暖な気候で活動します。
なお、バラに発生しやすいバラシロカイガラムシは春~秋に年2~3回発生し、観葉植物や多肉植物に発生するコナカイガラムシは、室内で年間を通して発生します。
カイガラムシ発生の原因は、幼虫が風で飛ばされたり、鳥などの動物の体に付着して運ばれ、植物に寄生することが主に挙げられます。また、知らないうちに衣服に付着して、室内にカイガラムシを持ち込んでしまうこともあるようです。
カイガラムシは風通しが悪く、埃っぽい場所を好むので、室内に置きっぱなしになっている観葉植物や、葉の密集した多肉植物などで発生しやすいです。
また、柑橘類などの果樹のほか、バラ科の植物に発生しやすく、バラ、サクラ、ウメは被害に遭いやすいので注意しましょう。
前提として、カイガラムシの駆除方法は成長段階によって分かれます。
一般的にカイガラムシの卵や幼虫は繁殖期である5〜7月に発生し、8〜12月の時期には成虫へと成長してしまいます。
成虫になってしまうと、硬い貝殻のような外殻のおかげで、殺虫剤などが効きにくくなるので、なるべく卵や幼虫の段階で駆除するように心がけましょう。
カイガラムシの卵は、布やティッシュなどで拭き取って除去します。なお、カイガラムシの代表的な種類であるコナカイガラムシは、綿のような卵嚢に包まれた卵を、葉の裏などに産みつけるので、日々、葉の裏まで確認するようにしましょう。
ほかの種類のカイガラムシの卵は、貝殻の中で成虫が産下したり、成虫の体の中で発育し、産下するとすぐに孵化するものもあるため、見つけるのが難しいです。
カイガラムシの幼虫の駆除は、殺虫剤が効果的です。
エアゾールタイプや、粒剤を土にまくタイプの殺虫剤が販売されていますが、エアゾールタイプは、噴射の際に植物が冷害をうける可能性があるので、必ず植物から30cm以上離して散布しましょう。
対象植物に応じて、オルトラン水和剤、ベニカ水溶剤、アプロード水和剤などを、5〜7月の間で3回ほど散布するのも非常に効果的です。
薬品を使うのに抵抗がある場合に、牛乳や木酢液を水で薄めたスプレーを使ってみようかと思う方もいると聞きます。
ただし、「牛乳スプレー」は効果が期待できないうえに、臭いやカビも発生しやすいため、あまりおすすめしません。
また、「木酢液」には直接的な殺虫効果はないため、殺虫剤を使用する方が確実です。なお、現在「木酢液」は、殺虫効果を謳って販売されていません。
草間祐輔
カイガラムシの成虫は歯ブラシや、爪楊枝などの先のとがったものでこそげ落としていきましょう。その際、必ず成虫を落としたまま放置せず、ティッシュなどに包んで完全に除去してください。
カイガラムシが大量に繁殖している場合には、剪定に耐えうる植物であれば、思い切って剪定するのもいいでしょう。その際、成虫や卵が振り落とされないように注意しながら、他の植物に接触しないように処分してください。
果樹などの休眠期にあたる冬季であれば、対象植物に応じて濃度の高い薬剤をまいても植物に影響が出にくいため、マシン油乳剤をまいて繁殖を防ぐのが効果的です。
カイガラムシは埃っぽくて風通しの悪い場所を好む性質があります。室内の部屋角などに長期間置いている観葉植物などは、風通しの良い明るい場所に数日移動したり、室内を清潔に保つことも、発生予防につながります。
カイガラムシの天敵はテントウムシです。柑橘類の果樹に発生しやすいイセリアカイガラムシの天敵であるベダリアテントウが有名で、カイガラムシの生息数がそれなりに増えてくると、自然に発生して成虫を捕獲するようすが見られます。
カイガラムシは衣服に付着しやすいので、防除作業の後は、服をすぐに着替えるなどして、室内に持ち込まないようにしましょう。
もしくは、ウィンドブレーカーなどツルツルとした摩擦の少ない素材の衣服を着用して、カイガラムシの付着を防ぎましょう。
カイガラムシの生死は、潰して体液が出るかどうかで判断できます。死んでいれば、虫体はカサカサに乾いています。薬剤の効果が十分であったかどうか、潰して判定し、生存虫が残っていれば再度薬剤を散布するなど、防除作業に役立てましょう。
カイガラムシは20ほどの科に分けることができます。主な種類は以下の通りです。
カイガラムシは完全な駆除が難しく、一度発生すると翌年も発生するといわれるほど、手強く厄介な害虫です。できる限り卵や幼虫の段階で駆除し、果樹などでは冬季に薬剤などで成虫を死滅させて防除していくのがいいでしょう。
カイガラムシ対策をして、楽しい園芸ライフをお楽しみください。
草間祐輔
GreenSnap編集部