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山草の一覧

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生馬(イケマ) キョウチクトウ科イケマ属のつる性多年草。山地に生える。葉は長さ3〜6㎝の柄があり、卵形で先は尾状に尖り、長さ5〜15㎝。茎を切ると白い乳液が出る。花期は7~8月。花は葉腋から伸びた長い花柄の先の散形花序につく。花冠のように見える白くて大きいのは副花冠。5裂し、さらにそれぞれ2裂している。花冠はやや黄緑色を帯びた下方に反り返った5裂片。内部はずい柱。果実は袋果。オクラのような形をした披針形で先が尖る。種子は倒卵形。平たく、縁は翼状。基部に白い毛(種髪)が多数つく。袋果は熟すと縦に割れ、種子を出す。よく似たコイケマは葉の基部に深い凹みがあり、花が淡黄色で花柄が短い。 太い根は乾燥させて牛皮消(ごひしょう)と呼び強心利尿薬とする。根はアルカロイドを含み毒性があるので要注意。乳液にも触れないよう要注意。アサギマダラはイケマの葉裏に産卵し、幼虫は葉を食べて大きくなる。鳥などの外敵に襲われないよう、アサギマダラはイケマの毒を体内に蓄積するという。 アイヌは食用、薬用、矢毒など、利用できる植物の部分に名前をつけた。イケマの根は、噛むと強い臭気がある。この臭気を口から吹きかけ、邪気払いの儀式を行うのに使い、また獣を獲るための矢毒にも使った。それで、根に対して『カムイ・ケマ(神の脚)』の名前がついていた。これは、太い根に対する呼称であって、この植物に対する名前ではない。しかし、植物名をカムイ・ケマから借りて『イケマ』にしてしまった。したがって、『生馬』の表記は誤りである。別名の『コサ』は、邪気払いの儀式の時のイケマを噛んだ臭い呼気のことだけをいうので、これも誤用である。 出典『山に咲く花』『草木の種子と果実』『里山のつる性植物』『野草の名前 夏』
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石榴(ザクロ) ミソハギ科ザクロ属の落葉小高木。イラン周辺原産で紀元前から栽培されていた。日本へは中国を経て平安時代に渡来した。日本では果実よりも花を観賞する花木として広がった。様々な栽培品種があり、観賞用の『花ザクロ』、食用の『実ザクロ』の2つに大きく分けられる。地中海沿岸やアメリカでは果実を目的とした実ザクロの栽培が多く、日本のスーパーなどの店頭に出回っているのはカリフォルニア産が中心。枝には鋭い刺がある。葉は楕円形で長さ2~5㎝と小さめ。花期は6~9月。花弁は6枚でしわがあり、雄しべが多数。果実は球形で100~500g、果頂に宿存萼を残して秋に橙紅色に熟す。果皮は革質で硬く、果肉に種子が入っているため、やや食べにくい。果実内に薄い隔膜で仕切られた数個の子室があり、多数の種子が隔膜に沿って並ぶ。種子の外側を覆う白、淡黄、淡桃、桃色などの多汁な外種皮があり、食用とするのはこの部分。爽やかな酸味と甘みがあり、生食、果実酒などによい。果汁はカクテルで使われるグラナディンシロップ(ザクロの果汁と砂糖で作られた赤いシロップ)になる。今日、ザクロは健康によいと人気が高まっていて、特にその果汁が注目を集めている。ビタミンCが豊富で抗酸化作用があり、研究により心臓病、関節炎、一部のがん罹患のリスクを下げることも分かっている。高血圧やむくみ予防によいカリウムも豊富。果実に種子が多いので豊穣や多産のシンボルとされる。 平安時代の鏡は金属製だったので磨いてもすぐに曇ってしまった。持ち主の手に負えなくなると専門の鏡磨き屋に頼んだ。そこでは、よく熟したザクロの果実を割って種子を取り出し、布に包んで鏡を磨いた。種子の表面の半透明の部分にはクエン酸、リンゴ酸が含まれており、この有機酸が曇りを取り除いた。 名前は、漢名の石榴(せきりゅう)の字音の転で、石榴がジャクロと読まれザクロに転訛した。あるいは別名若榴(ざくりゅう)の転訛、原産地であるイランのザクロス山脈からとったなど諸説あり。また、ザクロは紅一点の語源でもある。 出典『食材図典』『身近な樹木図鑑』『世界の食用植物文化図鑑』『色と形で見わけ散歩を楽しむ花図鑑』『薬草の呟き』
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槐(エンジュ) マメ科エンジュ属の落葉高木。中国原産で1000年以上前に渡来したとされる。庭園樹、公園樹、街路樹などに利用される。葉は奇数羽状複葉で長さ15〜25㎝、9〜15枚の小葉がつく。花期は7~8月。花は淡黄白色の蝶形花。大量の花を咲かせ、その花が散り始めると樹の下が淡黄白色に染まる。果実は豆果。長さ4〜7㎝、数珠状にくびれ、裂開せず中にはべたつく果肉に包まれた種子があり、長く枝に残る。種子は歪んだ楕円形で黒褐色、やや光沢があり、へそは端に偏りやや凹む。冬の野鳥や小動物の貴重な食料となり、ヒヨドリは果肉とともに種子を食べ糞には種子が混じる。新芽は天ぷらやお茶に、花の黄色の色素はルチンで高血圧の薬、または乾燥させて止血薬とし、花と果実は染物の染料、果実は痔薬、熟した果実は揉み出して石鹸にと非常に生活に役立つ。 ハリエンジュの別名を持つニセアカシアに似るが、小葉の葉先は尖り、枝に刺はない。ニセアカシアが春に開花するのに対し、本種の花期は初夏から夏にかけてである。 中国では高貴な木とされ、古くから宮廷の庭に植えて大臣の座る位置を示した。最高位の三大臣が槐に向かって座し、その左右に九卿が並んだ。このことから、後に大臣のことを槐位、槐座というようになり、エンジュは立身出世の縁起木となった。 源実朝は、鎌倉幕府の将軍となったものの、北条氏に実権を握られていて、飾り的な将軍になっていた。その現実から逃避するため、歌づくりに励む。朝廷ともよい関係をつくり、右大臣にまで昇る。右大臣を表す言葉が槐である。その上に鎌倉の鎌の金偏の金をつけて、歌集『金槐和歌集』を出した。 『和名抄』ではエンジュの槐を『恵爾須(えにす)』と表示している。エニスがエンジュに変化したという説もある。 出典『葉っぱで見わけ五感で楽しむ樹木図鑑』『草木の種子と果実』『薬草の呟き』『樹木の名前』
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バジル シソ科メボウキ属の一年草。インド・アフリカ原産。日本には江戸時代に中国から目薬として渡来した。茎には4稜があり、よく分枝して直立または斜上し、高さ50〜80㎝になる。茎の下部は木質化して褐色になる。葉は対生し縁に鋸歯がある披針形。花期は7~9月。白色の唇形花を穂状に咲かせる。花後に褐色の果実ができる。食用ハーブとして使われるスイートバジルや儀式に使われるホーリーバジル、レモンに似た香りをもつレモンバジル、全草が濃い暗紫色のダークオパールバジル、シナモンに似た香りをもつシナモンバジルなど約150種が知られる。 古くから薬用、香味用にされてハーブの王様と呼ばれる。葉を乾燥または生で利用する。シソに似た芳香とかすかな辛味がある。トマトとの相性がよく、トマトソースやトマトの煮込み料理、ピザには欠かせない材料。生葉はサラダ、マリネ、パスタ料理などに広く使われる。チーズやバターに混ぜたり、ワインビネガーに漬け込んで調味料として利用される。 水でゼリー状に膨らませた種子で目に入ったゴミをとったことから、眼中の塵をはらう箒の意味でメボウキの和名がある。属名Ocimumは香りを楽しむことに由来して、ギリシア語のOkimon『唇の形』からなど諸説ある。種小名basilicumはbasilikon『王者にふさわしいもの』という意味。 出典『花の事典 970種』『食材図典』『ハーブのすべてがわかる事典』『ハーブ図鑑』
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鳩麦(ハトムギ) イネ科ジュズダマ属の一年草。原産地はインドからミャンマーにかけての地域。数珠玉(ジュズダマ)の栽培品種といわれ、古くから東南アジアで栽培される。古い時代に日本に渡来し、薬用として栽培され始めたのは江戸時代の享保年間(1716~36)から。茎は根際から株立ちして高さ1~1.5mほど。葉は披針形で先は尖り、基部は鞘状で茎を包む。花期は7~9月。葉腋から花穂を数本出す。同一花序に雌花と雄花があり、雌花は苞鞘(ほうしょう💬花を包む器官)に包まれ、開花後実るにつれて固くなり、表面は光沢を帯び子房は発達して苞鞘内に充満する。 9月下旬から10月、果実が黒褐色に熟してきたら根際から刈り取り、1~2日間そのまま干す。その後脱穀して種子(仁)を収穫し、一週間ほどよく日干したものを薏苡仁(よくいにん)と呼ぶ。美肌や滋養、強壮などに薏苡仁を煎じたものをお茶がわりに飲む。 鳩が好んで食べることから名付けられたが、その名は明治時代に入ってからで、それ以前はシコクムギ、チョウセンムギ、トウムギまたは漢名の薏苡で呼ばれた。 よく似たはジュズダマとの違いは次の通り。 ハトムギ ・雑草として生えていることはない ・花序は垂れ下がる傾向がある ・果実は柔らかく、強く押せば潰れる ・果実は光沢がなく縦じまが目立つ ジュズダマ ・野生化して自生している ・花序は上向きにつく ・果実は固くて割れない ・果実の全面がつるっとしていて縦じまがボヤける 出典『自分で採れる 薬になる植物図鑑』『薬用植物ガイド』『日本大百科全書』
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醜男
数珠玉(ジュズダマ) イネ科ジュズダマ属の多年草。熱帯アジア原産で古い時代に伝来した史前帰化植物で鳩麦(ハトムギ)の原種。水辺に多く群生し、高さ1〜2mになる。葉は長さ50㎝、幅1.5〜4㎝で、中脈は白い。花期は9〜11月。茎の上部の葉鞘から花序の枝を数個だし、先端に長さ0.8〜1㎝の壺形の苞鞘(ほうしょう💬花を包む器官)をつける。雌性の小穂は苞鞘の中に3個あり2個は不稔。白い柱頭だけが外に出る。雄性の小穂は長い柄の先につき苞鞘の外に垂れ下がる。果実は苞鞘内で熟し、横楕円形でやや角張る。 先史時代に熱帯アジアから日本列島に移住した人たちが食料として持参した中にジュズダマがあった。この丸い果実は焼くと食べられる。その後、稲が渡来して、ジュズダマは食料の対象からはずれた。 壺形の硬い殻は苞鞘とよばれ、本当の果実はその中に入っている。苞鞘は熟すと灰褐色や青灰色に光り、数珠やお手玉、首飾りなどに使われる。硬い果実に糸を通して数珠をつくったことが名前の由来。 よく似たハトムギはジュズダマの栽培種とされる。違いは次の通り。 ジュズダマ ・野生化して自生している ・花序は上向きにつく ・果実は固くて割れない ・果実の全面がつるっとしていて縦じまがボヤける ハトムギ ・雑草として生えていることはない ・花序は垂れ下がる傾向がある ・果実は柔らかく、強く押せば潰れる ・果実は光沢がなく縦じまが目立つ 出典『野に咲く花』『里山の植物ハンドブック』『草木の種子と果実』『身近な雑草のふしぎ』『野草の名前』
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玉蜀黍(トウモロコシ) イネ科トウモロコシ属の一年草。小麦、稲に並ぶ世界三大穀物。原産地はメキシコとペルー、ボリビア、グアテマラ地域の2ヶ所以上とする説が有力である。紀元前5000年頃野生の近縁種から栽培植物化したといわれる。テオシントおよびトリプサクムと呼ばれる植物に由来するとする説があり、テオシント説とトリプサクム説と呼ばれるが、決定的な証拠はなく、いまだに論争が続いている。15世紀末、コロンブスの新大陸到達後、直ちにヨーロッパへ、100年ほどで世界中に広まり、現在では世界の農業に欠かせない作物となっている。生産量はアメリカが最も多く、全世界の収穫量の約40%を占めている。次いで中国、ブラジル、メキシコとなる。遺伝子組換え品種の開発が最も進んでいる作物のひとつでもあり、アメリカを中心に普及が進んでいる。 日本には1579年、ポルトガル人によって導入された。平地よりも、稲作ができない九州の阿蘇山麓や四国の山間部、富士山麓などで栽培されるようになった。江戸時代には珍品であったが、当時のトウモロコシは実が赤かったので売れず、雷除けになるとして浅草のほおずき市に売りに出したところ大反響を呼び浅草名物になった。北海道には明治初年にアメリカから品種が導入された。現在、日本では約13万haの栽培があるが、そのうち約10万haは飼料用である。主な生産地は北海道が全体の約6割を占め、千葉県、茨城県なとが続く。食用として栽培されるのは一般にスイートコーンと呼ばれる種類がほとんどで、遺伝子のタイプによって、スイートとスーパースイートに分けられる。現在、青果用として店頭に出回るものはほとんどが甘みの強いスーパースイートコーンである。スーパースイートよりも甘みの少ないスイート種はほとんとが缶詰用として加工される。サラダや中華料理に使われるヤングコーンは、青果用のスイート種の二番雌穂を利用したものである。 葉はイネ科特有の葉鞘と葉身からなる。葉身は幅5〜10㎝、長さ数十〜100㎝ほどと長く、互生する。葉鞘は節間とほぼ同じ長さで茎を包む。生長した丈は1.5〜3mに達する。花期は6〜8月。下位節には分げつ(分蘖)を生じ、雌穂をつけることがある。茎の頂部には雄穂、中位以下の葉腋にはオニ皮(苞葉)に包まれた雌穂雄穂をつける雌雄同株の異花で、着粒の95%ほどは風媒受粉による。雌しべの花柱、柱頭は長く糸状に伸び、絹糸とよばれる。この1本1本が子房につながる。トウモロコシの穀粒ひとつぶに対しひげが1本ある。雄花が数百万の花粉粒を放出し、その一部が雌花の絹糸に付着する。平均的なコーン1本分の穀粒は500〜1000粒で、ふつう16列に並んでいる(常に偶数列)。春播種、秋収穫を基本とする。マルチ、トンネル、ハウス利用によって、大幅な作期拡大や早期収穫ができる。旬は7〜9月。 トウモロコシが伝来する以前に日本にはモロコシキビ、略称でモロコシという作物があり、漢字で『蜀黍』と書かれた。その後ポルトガル人によりトウモロコシが伝わり、唐(舶来)のモロコシの意味でトウモロコシと呼んだ。トウモロコシはモロコシより美味しい穀物として『玉蜀黍』と書かれた。玉には形容詞で『美しい』の意味があり、美には『美味』の意味もあるので『美味しいモロコシ』の意味になる。 出典『食材図典』『野菜・山菜ハンドブック』『薬草の呟き』『トウモロコシの科学』『トウモロコシの歴史』『野菜園芸大百科』『野菜の秘密』『草木名の語源』
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醜男
蔓紫(ツルムラサキ) ツルムラサキ科ツルムラサキ属のつる性一〜二年草。インドからインドネシアに至る熱帯アジア原産。赤茎のつる性が基本だが、青茎やつるの伸びない矮性もある。江戸時代に中国から青茎種が導入され、明治時代に紫茎種が導入された。当初は観賞用、薬用、染料用などであった。1970年代から食用にされた。葉は多肉質、葉色は特に裏面が濃い紫色、茎と葉柄が紫紅色。花期は7~10月。花は淡紫色。果実は液果。熟果は紫色〜帯紫黒色となる。葉、茎や花軸、花蕾の柔らかい部分全てを食用にできる。和え物、炒め物、天ぷら、おひたし、酢の物、汁の実などに用いる。茹ですぎると臭みが増し、栄養価も劣るので、軽く1分ほど茹でるに留める。クセが少しあり、ヌルヌル感がある。果実からの色素は食品着色料などの染料として利用される。鑑賞を兼ねたカーテン栽培にも用いられる。 名前は、蔓や葉の付け根、葉脈などが紫色であることに由来する。古くは落葵(おちあおい)と称された。別称にはインディアンホウレンソウ、セイロンホウレンソウ、ジュビン、フジナやフジアオイなどがある。中国名の木耳菜はキクラゲ(木耳)のようなぬめる菜を意味し、あくが多く土臭さもあるが、栄養価が高く、ムチンが豊富で健康食品への加工もある。 日本では明治時代以前の重要野菜の多くが中国から渡来し、西洋野菜が導入されてからも、早く定着したのは主に中国の品種であった。戦後、中国からの導入は途絶えたが、1970年代の国交回復後、多くの種類が中国野菜として導入され、一部は改良されて日本の主要野菜となった。中国では油炒めなど強化力の調理法に適した多肉質の葉茎菜や、北方の貯蔵野菜の必要性に応じた硬質の結球野菜が発達した。また、臭気の強い川魚や肉類のくさみを消す香味の強い野菜、医食同源の思想にかなった薬効のある野菜も多い。これら中国の環境や食文化にかかわる特徴は日本の中国野菜にもみることができる。 出典『野菜・山菜ハンドブック』『食材図典』
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岩煙草(イワタバコ) イワタバコ科イワタバコ属の多年草。いつも水がにじみ出ているような薄暗く湿った岩場に群生する。葉は楕円状卵形で長さ10~30㎝。根際につき、岩から垂れる。花期は6~8月。高さ10~30㎝の花茎を出し、20~30個の花を咲かせる。紅紫色の花は星形で径約15㎜、中心に雌しべが突き出す。筒部に黄橙色の斑紋がある。雄しべは5個あり、花柱を取り囲む。果実は蒴果。広披針形で萼よりも長く、ときに先端に細い花柱が残る。種子はごく小さく、狭長楕円形で両端は尖る。若葉は山菜として古くから食用にされ、イワヂシャ、イワナなどと呼ばれた。少々の苦味が独特の風味として喜ばれ、胡麻和え、芥子和え、汁の具、天ぷらによく合う。葉を干したものは胃腸の民間薬として利用されている。 ナス科のタバコの日本での栽培は、1607年に薩摩国(鹿児島県国分市、現霧島市)でスタートした。原産地は南米のアンデス高原で、スペイン人によって欧州へ持ち込まれ、安土桃山時代にポルトガル人やスペイン人が来訪した際、タバコやタバコ苗が日本に渡った。タバコは大形の草で、高さ1~2mある。葉も大きく、長楕円形で長さ30~50㎝。一方、イワタバコは春から夏にかけて大きな長楕円形の葉を展開させる。葉に網目模様がありタバコの葉に似る。岩場に生えることからイワタバコの名がついた。 出典『里山の植物 ハンドブック』『山に咲く花』『薬草の呟き』『野草の名前 夏』
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姥百合(ウバユリ) ユリ科ウバユリ属の多年草。野山の林内に生える。花茎は高さ60㎝〜1mになる。葉は卵状楕円形で、茎の中途に5〜6個集まってつく。花期は7〜8月。茎の上部に長さ12〜17㎝の花を数個、水平につける。花は緑白色で先だけが開き、内側に紫褐色の斑紋が入る。果実は蒴果。長さ4〜6㎝の楕円形。立ち上がった茎の先に冬まで残るので目立つ。果実の種子は300〜400個。 昔、凶作の折に鱗茎を水に晒してアクを抜き、これを煮て食用にした。鱗茎には良質のデンプンが沢山含まれている。一片ずつ剥がしてよく洗い、甘煮、茶碗蒸し、和え物などにする。 ウバには『老女』『老婆』の意味があるが、この花の場合は『乳母』である。昔、高貴な家の子供には乳母があてがわれ、乳を与え子供を養育した。その子が成人になり結婚したり家督を継ぐといった〝花が咲く〟頃になると、乳母は老いて歯(葉)が少なくなっていた。ウバユリは花が咲く頃になると下のほうの葉(歯)が枯れてなくなる。その枯れた葉を乳母に例え、上に咲く花を成人になった主家の子に例えた。ウバユリの古名に『波々久利(ははくり)』や『貝母(ばいも)』がある。これらも母に関連した名。 出典『里山の植物 ハンドブック』『薬草の呟き』『野草の名前 夏』
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