『ヒペリカム』（弟切草）
🏷️今日のお花


むかしむかし——
ある名医がいました。彼は、どんな病も治すと評判で、秘伝の薬草を使って多くの人を救っていました。
しかし、その薬草の名と調合法は誰にも明かさず、ただ弟だけに伝えたのです。

ところがある日、その弟は、兄の留守中に密かにその薬草を他人に教えてしまいました。
それを知った兄は怒り狂い、裏切りを許せず、弟を殺してしまったのです。

——血に染まった草むらに、翌日、不思議な花が咲きました。
それが「弟切草（オトギリソウ）」と呼ばれるようになったのです。
名の通り、「弟を切った草」。

その花の汁は血のように赤く、触れると皮膚を染めるほど。
まるで兄の後悔と弟の無念が、今もそこに宿っているかのようです。


ヒペリカムはその仲間で、花のあとに生まれる実は、やさしい色をしています。
ピンクや赤に熟すその姿は、
「怒りと悲しみを超えて、やっと心が癒えた兄弟の魂」
を表しているとも言われています。

かつて流れた血の赤が、いまはやわらかな実の色となり、
「赦しと鎮魂の象徴」として、人々に愛されているんです。



今日も良い一日をお過ごしください