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ヤブカンゾウは、日本最古の和歌集『万葉集』に「忘れ草」の名で登場するほど、古くから親しまれてきた植物です。夏の訪れを告げる鮮やかな花は鑑賞価値が高いだけでなく、新芽やつぼみは美味しい山菜としても評判です。ただし、似た植物に毒草があるため、収穫には正しい知識が必要です。
ヤブカンゾウは元来ユリ科に分類されていましたが、研究の結果現在はツルボラン科とされています。林間の道端や野原、土手などの日当たりのよい環境に自生しており、地下茎(ランナー)をのばし群生していることもあります。
ヤブカンゾウは花が咲かないと思っている人も多いですが、実は6~8月の真夏に花を咲かせています。
ヤブカンゾウの花は、やや赤みがかった鮮やかなオレンジ色をしており、直径8cmほどの大きな花を咲かせます。雄しべや雌しべの一部が花びらに変化した「八重咲き」が特徴で、非常に華やかな印象を与えます。
ただし、ヤブカンゾウの花は、朝開いて夜にはしぼんでしまう「一日花」ですあるため、生活サイクルによっては見たことがない人も一定数いるでしょう。
ヤブカンゾウの花が一日でしぼんでしまうその儚い姿から、嫌なことを忘れると結びついた説や、美味しい新芽を食べたり美しい花を眺めたりすることで、心に抱えた不安を忘れてしまうと信じられた説があります。
「実際には3日ほど咲いている」という声もありますが、おそらく一本の茎に次々と新しい蕾が咲くため、毎日咲いているように見えるだけなのでしょう。
ヤブカンゾウに似た植物には、「ノカンゾウ」や「キツネノカミソリ」などがあります。
最も似ていますが、こちらも食用になります。ヤブカンゾウが「八重咲き」であるのに対し、ノカンゾウは「一重咲き」という点で見分けられます。
花の色が似ていますが、キツネノカミソリは全草に毒があるため絶対に食べてはいけません。
キツネノカミソリは、夏に花が咲くときには葉が完全に枯れて落ちています。花があるのに葉がないものは、毒草の可能性が高いと覚えておきましょう。
また、ヤブカンゾウの葉は二つ折りで重なり合っていますが、キツネノカミソリの葉は平らで形も異なります。
ヤブカンゾウは毒草のキツネノカミソリと姿が似ているため、食べられないと思われがちですが、古くから親しまれてきた山菜の一種です。
ただし近年の研究で、ヤブカンゾウにはイヌサフランなどが持つ猛毒「コルヒチン」に似た成分が含まれていることがわかっています。含量は微量ながら、下剤のような作用を持つため、体質や摂取量によっては下痢などを引き起こす可能性もあります。
安全に美味しくいただくためには、生のまま大量に食べるのは避け、さっと茹でてアク抜きをしてから調理するのが基本です。
ヤブカンゾウは花やつぼみを収穫するため、夏頃が収穫ピークです。ただし、新芽を食べる場合は、ふきのとうと同じ時期である3~5月頃がよいでしょう。
ヤブカンゾウの葉は黄緑色で薄っぺらく、根元にかけて茎が白くなります。その根元の部分を手で折るように採取するか、鎌やナイフで刈り取ります。葉は横に広がって大きいものを選ぶとよいでしょう。
小さなバナナのような見た目のヤブカンゾウのつぼみは、次の日花を咲かせそうなしっかりと膨らんだものを選びましょう。余裕をもってつぼみよりも少し下の茎の部分を採取します。
春の新芽はほんのりとした甘みと柔らかさが特徴で、レタスのようなシャキシャキとした食感を楽しめます。少しニンニクに似た独特の香りがあるため、食べ過ぎには注意しましょう。一方、初夏に膨らむつぼみは、アスパラガスのような爽やかな風味とオクラのような程よいぬめりがあり、好まれています。
春に芽吹いたばかりの新芽は、さっと茹でてお浸しや酢味噌和えにするのが最もおすすめです。軽く火を通すことで甘みがぐっと増し、食感も良くなります。バナナのような形をしたつぼみは、蒸してマヨネーズを添えたり、天ぷらにしたりすると絶品です。
また、鮮やかな花そのものも、天ぷらや甘酢和えにすることで、独特のシャキシャキとした食感と彩りを楽しむことができますよ。
乾燥させたヤブカンゾウの根は「萱草根(かんぞうこん)」という生薬として利用されます。
利尿作用や消炎鎮痛、止血に効果があるとされています。また、不眠症や膀胱炎にも利用されることもあります。
ヤブカンゾウのつぼみを蒸した後、天日干しにして乾燥させたものを「金針菜(きんしんさい)」といい、消炎剤や止血薬に効果がある生薬として利用されます。さらに風邪や不眠症、むくみの軽減にも効果が期待されています。
また、成分としてβ-シトステロールや複数のアミノ酸が報告されているといわれています。
ヤブカンゾウには「愛の忘却」「悲しみを忘れる」「憂いを忘れる」「宣告」などの花言葉がつけられています。
主な花言葉は恋の寂しさや悲しさ、憂いなどをヤブカンゾウを身に着けることで忘れさせてくれるとして、万葉集で詠まれたことからつけられたとされています。
ヤブカンゾウは川沿いの土手や野原に自生していますが、私有地などで無断で採取することは厳禁です。
可食部分が多く、春だけでなく真夏も楽しめる山菜であるヤブカンゾウを探しに出かけてみてはいかがでしょうか。

GreenSnap編集部