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「春植物」とは、春に花を咲かせた後に夏まで葉を付け、あとの季節は地下で過ごす植物のことを総称して言います。
そんな儚い魅力を持ち、ニンジンのような可愛らしい葉がポイントの、フクジュソウの育て方をご紹介します。
フクジュソウの花を綺麗に咲かせるポイントは、日当たりにあります。
フクジュソウの花は日光に当たると開花し、夜間や曇の日は花を閉じてしまうため、1月から4月頃の開花期には、できるだけ日当たりのいい場所で育てることが大切です。
花が終わった5月頃からは日陰で育てます。日陰は特に、木漏れ日が当たるような緩やかな日陰が理想的です。
置き場所としては、木漏れ日の当たる場所や、落葉樹の下など明るい日陰を好みます。
室内で育てている場合は、鉢を窓際などに置いて育てます。
フクジュソウは春植物のため、夏には落葉します。地上部が枯れたら日陰へ移動させて、ゆっくりと休眠させてあげましょう。
地植えで育てる場合も同じ様に樹木と樹木の間に植えるなど、日陰になりやすい場所に植えることで繁殖しやすくなります。ただし、冬場の凍結などには十分に気をつけましょう。
夏場の落葉後は休眠の時期に入るため、多湿な環境は厳禁です。とはいえ、極端に乾燥した状態も芽の成長を妨げることになるので、土の表面を触った時に湿り気を感じる程度の状態を維持します。
フクジュソウは水を吸う力が弱い植物ですが乾燥を嫌うので、できるだけ乾いた状態をつくらないようにします。
また、地植えの場合は自然に降る雨に任せて大丈夫ですが、猛暑が続き土が乾いていると感じた時には水をあげて下さい。
鉢植えで育てている場合の水やりの頻度は、1日に1回程度を目安にします。
フクジュソウが開花している時期の水やりはたっぷりと水を与えます。
早い時期に開花したものは凍結により花弁が傷むことがあるので、水やりの際はできるだけ花に水がかからないように、低い位置から根元へそっと水をあげましょう。
春植物のほとんどは肥料のあげ方で成長の仕方が大きく変わる植物です。植え込みをする前に、元肥(あらかじめ土に混ぜておく肥料)に緩行性の化成肥料を、一株当たり数粒混ぜておきます。
芽が出始めたら、置き肥をしますが同時に薄めた液体肥料を10日から2週間に1回ほどの頻度で与えます。生育期に与える肥料の量が翌年の開花に大きく影響するため、肥料はしっかりと与えておきましょう。
フクジュソウの好む土は、水はけが良く少し重めの土です。排水性・保水性・保肥性に優れた赤玉土と、酸性土で通気性と保水性に優れた鹿沼土のそれぞれ小粒の土を使って、ベースの土をつくります。
そこに水はけを良くするための軽石を混ぜたり、有機質を含む腐葉土を少し混ぜてもフクジュソウの好む土になります。
基本的な配合の比率は赤玉土と鹿沼土、軽石をそれぞれ4:4:2で混ぜ合わせます。その状態から自分で様子を見ながら調整を行いましょう。もしくは、鹿沼土だけでも育てることができます。長く効く元肥を忘れずに混ぜておくのもポイントです。
フクジュソウの植え替え時期は、9月から10月の秋頃となります。頻度は株分けの作業も兼ねて、1年に1回から2年に1回程度で行いましょう。
この植え替えを行なうさいに重要なのが、根の扱い方です。フクジュソウは花が咲き終わり、葉も散ってしまった9月から10月の時期は地下で過ごしています。
根が随分長く伸びていると思いますが、フクジュソウは水を吸う力が弱いため、できるだけ根の数は減らさないよう、ていねいに扱い、根を誤って切ったり取り除かないようにします。
また、同時に古く傷んでしまっている根はこのタイミングで除去します。
植え替える鉢はできるだけ大きく深い鉢(6号が目安)を用意して、根を広げるようにして植え替えを行って下さい。
フクジュソウの増やし方は2通りあります。
1つ目は、株分けです。9月から10月の植え替えの際に行います。株をあまり小さく分けてしまうと、十分に生育しなかったり枯れてしまうことがあるので気をつけましょう。
株に5つから6つの芽が付いている形が理想です。株から土をしっかりと落として、地下茎と芽を確認しながら手で分けます。芽が密集している場合は無理に分けずに、自然に分かれる個体のみを分けて株分けを行いましょう。
2つ目は、種まきです。フクジュソウのタネは、複数の小さなタネがまるで金平糖の様にギュッと集まってできています。
タネを乾燥させると発芽率が下がるため、採りまき(タネを採取してすぐ土にまく方法)で種まきを行います。時期としては、タネが未成熟で手で触れると自然に落ちる頃を目安とします。
タネを撒くときは、親株と同じ用土を使います。未成熟なタネは腐りやすい為、まいてから7日間程は土を被せないようにします。その後、土を1cm程土を被せて、棚下に苔が生えないように気をつけましょう。
翌年の春頃に双葉が発芽しますが、タネをまいてから開花するまでには約4年ほどかかります。株分けを楽しみながらも種まきでじっくりとフクジュソウが育つ様子を楽しむのも良いですね。
病気ではありませんが、冬場に凍結してしまい株元が腐ってしまうものが多く見られます。植え付けが遅かった株などはできるだけ凍結しないように気をつけて育てます。
また、夏場には白絹病が発生しやすくなります。白絹病が発生すると、白い糸の様なもので株元が覆われ株全体の生育が衰え、やがて枯れてしまいます。
防止策として、地植えを行なう際は土をよく耕して日光消毒を行ったり、鉢植えを行なう際は清潔な用土や鉢を使用することがポイントです。もし白絹病が発生してしまった場合は、その株は処分しまいましょう。
また、害虫はナメクジが春先から発生し始めます。ナメクジは芽を食べてしまったりするので見つけ次第捕殺するか、薬剤を使用して駆除します。
薬剤を使いたくない場合はポピュラーなナメクジ対策としてビールの飲み残しを使った方法や、ドリップコーヒーの出がらしを土にまく方法などがあります。
また、お酢を使用する方法などもあり、お酢を直接ナメクジにスプレーで吹き付けることで浸透圧によりナメクジがカラカラに乾燥します。お酢を使用する場合はできるだけ植物にかからない様に気をつけて駆除作業を行います。
フクジュソウは基本的に山野で生活している植物なので、難しい温度管理はありません。また、暑さにも寒さにもそれなりには耐えてくれます。
そのため、霜に当たってもあまり問題はありませんが、凍結してしまうと根腐れや株が傷む原因になってしまうので、土が凍ってしまう程寒くなってきたら室内に鉢を取り込むなどします。
フクジュソウは、ぐるりと黄色い花びらの詰まった花を咲かせます。山野の中でも目立つような濃い黄色の花色で、お正月用の寄せ植えなどにもよく使用されています。フクジュソウが芽を出したばかりの時期は、見た目がフキノトウに似ているともいわれます。
このフクジュソウの花は、初春の開花時期ならずっと咲いているわけではなく、天気や気温によって花びらを閉じたり開いたりするのが特徴です。天気がよく晴れ、日の当たるときにはしっかりと花を開いてくれます。
また、蕾が付いた状態の鉢を購入した場合、蕾が黄色く色づいているのにも関わらず開花しないことがあります。日照不足が原因でなければ、乾燥が原因と考えられます。
蕾が被っている薄皮が乾燥していると、蕾が色づいていても開花してくれないこともあります。その場合は、花をダメージを与えないよう細心の注意を払い、鋭角な物体で薄皮をつついて破ってあげると花が咲きます。
美しい花とは対象的に、根には毒があるので扱いには注意しましょう。
フクジュソウの花言葉は「悲しき思い出」、「幸せを招く」、「永久の幸福」です。
フクジュソウの学名であるアドニス(Adonis)は、ギリシャ神話で猪に殺されてしまった美少年アドニスの名前に由来しています。花言葉「悲しい思い出」はこの悲しいエピソードにちなむといわれています。
また、フクジュソウは昔から縁起物の花として認識されているので、「幸せを招く」、「永久の幸福」などの花言葉がつけられました。
新春を祝う花として有名なフクジュソウですが、相手の幸せを願って贈り物にするのもおすすめです。
今回は、山野でよく見かけられる、フクジュソウの育て方についてご紹介しました。根に毒を持っていますが、手で触れたり匂いを嗅いだりしただけではさほど害はないので大丈夫です。フクジュソウの毒の被害に合うケースのほとんどは誤飲とされています。
庭にフクジュソウの芽が出てきた頃、フキノトウなどと間違えないようにしてくださいね。それだけ気をつければ、福を呼び込んでくれる美しい花を楽しめるに違いありません。
GreenSnap編集部