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ノビルは日当たりのよい道端や土手に生えている野草で、意外と身近によくある野草です。食材として流通することは少ないですが、春の山菜として楽しむ愛好家も多いです。
古くから薬草としても利用されており、滋養強壮によいといわれています。
ノビルはヒガンバナ科(ネギ亜科)ネギ属の多年草で、全体的にニラとそっくりな姿をしています。地下にできる球根と葉は食べられますが、毒のあるタマスダレと草姿が似ていることもあり、採取する際は注意が必要です。
また、花びらの先が薄紫色がかった白く美しい花を多数咲かせます。草丈は10~30 cm程度ですが、花茎はすっと伸びて50〜80cmほどにもなります。成熟すると花にムカゴができ、それが落ちることによって繁殖していきます。
古来ノビルは、ニンニク・ニラ・ネギ・ラッキョウと並んで五葷(ごくん)のひとつとして扱われていました。さまざまな説がありますが、五葷とは仏教などの宗教哲学に基づき食べることを禁じた5つの野菜のことを指します。
ニンニクやネギなどの成分は身体によいとされていますが、一方では脳や神経を刺激する成分によりあらゆる負の感情を引き起こすともいわれ、修行の妨げになるとしてこれらを禁じました。
古来、ニラやニンニクなどのネギ属の野菜を蒜(ひる)と呼び、野に生える蒜でノビル(野蒜)と呼ばれるようになりました。蒜とは、食べる際に辛くて口の中や舌がヒリヒリとしたことが語源だといわれています。
ノビルは5月~6月の初夏にかけて花を咲かせます。開花後、花の中央(花径の先端)に赤褐色のムカゴができやすい性質があり、花が多数開花している状態は珍しいといえます。
花は直径1cmほどの大きさで、散形状に小さな星のような花弁の先端が薄紫色の白い花を多数咲かせます。
タマスダレはヒガンバナ科の植物で、有毒です。ノビルと葉姿が似ているため、自生しているノビルを採取する際には十分にご注意ください。可食部分であるノビルの鱗茎は白いですが、タマスダレは茶色です。
花は全く異なる見た目をしているため開花していれば容易に見分けがつきますが、葉の形はよく似ています。タマスダレの葉はノビルと比べてやや緑が色鮮やかで光沢があり、すこし硬そうにも見えるでしょう。
花茎の高さや色合いがノビルとよく似ています。しかしハタケニラは根元付近に葉をつけており、ノビルには葉はついておらず茎のみです。
ハタケニラの葉を切ってもニラやネギのような匂いがしないのも特徴で、花も小さく真っ白な点もノビルと見分けられるポイントです。
葉姿から味までノビルとよく似ていて、ノビルの代わりに五葷として扱われていたという説もあります。
エシャロットの根元はノビルよりもやや赤みを帯びていて、可食部分の鱗茎が細長いのもノビルと異なる点のひとつです。
春の3月~5月または早秋の旬な季節、花茎が伸びないうちにノビルの葉と鱗茎を収穫しましょう。鱗茎は5~10cmほどの深さの地中にできるため、根元付近を揺らしながらゆっくりと引き抜きます。
なかなか手で抜けない場合はスコップを使いましょう。ノビルの根元付近にスコップを入れると鱗茎を傷つける恐れがあるため、少し離れた場所から円を描くようにまわりの土ごと掘り起こしてください。
ノビルはニンニクとラッキョウの中間のような味わいで、臭みもそれほどありません。生の葉は独特な辛味がありますが、茹でると甘く和らぎます。収穫してから時間が経つと辛味が強くなり風味も落ちてしまうので、収穫後は早めに調理しましょう。
軽くさっと茹でたノビルの鱗茎と葉をラッキョウのように醤油漬けにすると、おつまみや箸休めになりおすすめです。生食できるため、酢味噌につけてそのまま食べても美味しくいただけます。
ノビルの花言葉には「タフなあなたのことが好き」「胸の高まり」「よろこび」などがあります。
ネギやニンニクのような独特な匂いと滋養強壮にもよいとされるその効能が由来し「タフなあなたのことが好き」という花言葉がつけられたといわれています。
日当たりがよく草丈の低い植物が生えている土手や道端で群生していることが多いノビルは、食材として流通がすくないものの身体にうれしい効能が豊富で積極的に食べたい野菜のひとつです。
有毒な植物との見分け方に注意しながら、旬の季節にはノビルを探して収穫してみてはいかがでしょうか。
橘