warning
error
success
information

本記事を読んでいただいた方へアンケートのご協力をお願いしております。
ご回答頂いた中から抽選で15名様にAmazonギフト券(1000円分)をプレゼントいたします。
土に触れたり、水やりをしたり、自分の手で植物を育てるのは楽しいものですよね。最近では家庭菜園を楽しんでいる方も多いのではないでしょうか?
そこで気になってくるのが、植物や野菜を育てる環境について。私たちは宇宙から、大地から、食べ物から目に見えない放射線を日常的に受けていることを知っていましたか?
東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故から11年。放射線に対する基礎知識や人に対する影響などは、知っているようで、実は詳しくはわからないという人がほとんどなのでは?
今回はそんな放射線について専門家にお聞きしました。
中村麻子(なかむら・あさこ)
茨城大学理工学研究科(理学野)生物科学領域 教授
放射線生物学者として現在は大学のほか、日本放射線影響学会にも所属し、放射線に対しての疑問や不安に思ったことに答えるQ&A対応グループの活動にも参加しています。その活動の一つとして福島県の小学校や中学校を訪問し、放射線教育を行っています。
日本放射線影響学科会ページ
放射線教育をしていて嬉しいのは、放射線って当たり前に存在しているということを子どもたちが知ることなんです。小中学生に教える際、“ぼくは「ほうしゃせん」”という動画を使っていますが、この動画がとてもよくできていてわかりやすいんですよね。その後、放射線が白い筋のように見える「霧箱の実験」をすると、目をキラキラさせてくれます。
放射線は体に当たっても痛くもかゆくもないし目には見えていないけれども、実際に飛んでいるということを理解してくれます。
福島県内の学校や保育施設には、大気中の放射線量を計測するモニタリングポストが設置されています。校庭にあることを教えると、「あれで測っているんだ!」と納得しますよね。実感させてあげることが大切だと思います。
ぼくは「ほうしゃせん」(量子科学技術研究開発機構)
こうした活動を300回近く行う一方で、福島の風評被害についての問題が残っているのも事実。ただ、福島県内では、当事者として放射線を理解しようとする考え方や、強い思いがあるんですよね。できる範囲で、でもしっかりと自治体・教育委員会などが積極的に放射線教育に取り組んでいることに感心しました。
このような教育を受けた子どもたちが育ち、情報を発信できるような状況になれば風評被害も自然となくなっていくのではないかと思います。
放射線は基本的には光の仲間。電球をイメージすると分かりやすいかと思います。「放射性物質」とは、光を出す物体そのもののことで、例えるなら電球のようなもの。その電球から光を出す能力に相当するものが「放射能」です。
このように理解すると「放射能が飛んできた」という言葉には違和感があることがわかります。そして実際に電球から出てくる光に相当するものが「放射線」と呼ばれるものです。

放射性物質・放射能・放射線を電球・光を出す能力・光に例えた図
あまり聞きなれない単位の違いも気になるところではないでしょうか?ベクレルとは物質が持つ放射能の強さのこと。光で例えるとルーメンやワットのことですね。
グレイやシーベルトは、放射線が何か別のものに当たった時の強さを表す単位。これも光で例えると眩しさを単位化したものだと思っていいでしょう。グレイとシーベルトの違いは、グレイは人に限らず動物やものに対しても使える単位、シーベルトは人への影響にしか使わない単位です。福島では今もなお農産物の検査をしていますが、この場合は農産物の中に含まれている放射性物質の量、すなわち放射能を出す側の強さを測るので、単位はベクレルになりますね。
目に見えない放射線は空気中に当たり前のように存在しています。
例えば肥料の3大要素にも含まれているカリウムのうち約0.012%が放射性物質です。そもそもカリウムを豊富に含んだ食べ物は多くあり、海藻類やバナナなどが代表例。緑黄色野菜にも含まれていますよね。
バナナは朝食などで食べられることも多く習慣化しやすいので、バナナからの放射性物質の取り込みって他の食品に比べて意外と多いもの。だからと言ってバナナを食べて調子が悪くなったということはないと思います。
また、健康に良いといわれるラドン温泉などに行けば、空気中に含まれる放射性物質のラドンを取り込むことになります。
このように、食事など日常生活を通して放射性物質は私たちの体内に取り込まれています。ここで知ってほしいことは、放射性物質は取り込まれたとしても、代謝によって体外に排出されるということ。常に循環していると考えても良いかもしれません。
日本で生活して受ける年間の自然放射線量は、先ほど話した食事などからの放射線量も含めて2.1ミリシーベルト。
一方で、インドのケララやイランのラムサールなど、土壌に含まれるラジウムやトリウム、ウランなどの放射性物質が原因で、年間に最大150ミリシーベルトの自然放射線を浴びる地域があります。
ですが、これまでにこれらの地域に住んでいることによる健康被害ははっきりと報告されてはいないんです。
ポイントになるのは、こうした高い自然放射線の地域でも一度に浴びるのではなく、あくまでも年間でということ。一度に100ミリシーベルト浴びるのか、合計したら100ミリシーベルトになるのかによってもリスクは違ってきます。ですので、たとえば一度に10ミリシーベルトの放射線を浴びるCT検査や2.0〜5.0ミリシーベルトのPET検査などと単純に健康リスクを比較していいのか、と考えると、数字の捉え方は難しいですよね。
先ほどのケララ地域などと比べると福島の放射線量はぐっと低くなります(帰宅困難区は除きますが)。そこで育つ農産物に、土を通してどれだけの放射性物質が取り入れられるのかを考えると、他県で収穫された野菜とほぼ変わらないと思います。
福島県の農地は除染作業がされており、そこで育った農産物には厳しい放射能検査が行われています。基準値を上回った品目が市場に流通することはありません。また、先月8日には台湾において福島の日本産食品の輸入規制の緩和案が発表されるなど大きな進展もありました。
これまで放射性物質という言葉があまり日常的ではなかった中で、今までなかったものがいきなり存在したのか?と思われた方もいたかもしれません。
さらに数値化することでより気になってしまった人も多いのではないでしょうか?でも身のまわりには何かしらの放射性物質があり、ゼロということはありえないということを認識することが大切です。数字に踊らされることのないようにしたいですね。
ガン治療やレントゲン検査のほか、橋の亀裂を見る検査などの非破壊検査もそうですね。また花に敢えて放射線を照射し、自然には存在しない花色を作ることなどにもかつては使われていたようです。そのほかお米や野菜などの品種改良など、放射線育種と呼ばれるのですが、あらゆる分野で幅広く放射線が使われています。
ほとんどの放射性物質を除去した処理水ですが、普通の水と同じような性質のため取り除けないのがトリチウム。トリチウムを取り除くのは水から水を取り除くようなものです。
このトリチウムを含んだ処理水を海に放出する計画が検討されており、海の生物に与える影響が懸念されていますが、十分に希釈し基準値を下回る数値で放出されます。また約1km先まで海底トンネルを作りそこから放出されますから、魚などにトリチウムが過度に含まれるこということはほとんどありません。
また、トリチウムは放射性物質としての力は非常に弱いですし、トリチウム水を含んだ魚を食べたり、トリチウム水そのものを取り込んだりした場合でもトリチウムは比較的早く代謝によって体外に排出されるため、仮に人体に入ってしまったとしてもほぼ影響はありません。体内に取り込まれたトリチウムは5〜10日程度で半分の量になると考えられています※。
ですので、その魚を食べた私たちの体にどのくらいの量のトリチウムが残るのかといえば、ほとんど残ることはないと思います。
(※放射線を出しながら放射性物質の量が減っていき、元の量の半分になるまでにかかる時間のことを半減期という。また体内に取り込まれた放射性物質の量が代謝による排出で半分になるまでにかかる時間を生物学的半減期という。)
いかがでしたでしょうか?
放射線という言葉自体、身近なものではないと感じていた方も、食や環境を通して正しく知り、ただ怖がるのではなく考えてみることが大切なのではないかと思います。
本記事についてのアンケートにご協力宜しくお願いいたします。
ご回答頂いた中から抽選で15名様にAmazonギフト券(1000円分)をプレゼントいたします。

GreenSnap編集部