短編集【ムーミン谷の仲間たち】の中に収録されている『ぞっとする話』は
心理学者も引き合いに出すほど興味深いお話です。

空想好きな男の子ホムサは、自分の遊び場は戦場で自分は勇敢な戦士であると真面目に空想しています。

空想遊びにのってこない弟に対して言います。

「そのちょうしでいくと、おまえはたちまち、おとなになるな。パパやママみたいになって、さぞ世間の役にたつことだろう。そうなったら、おまえはただありきたりのことしか、見たりきいたりしないんだ。いっとくけど、そりゃなんにも見もせず、ききもしないってことだぞ。そうなったらもうおしまいだな。」

そして弟はヘビに食べられてしまった、と(もちろん空想) 両親に報告するのです。

両親は嘘はよくないとホムサを叱ります。

でもホムサにとって、それは空想上の真実であり決して嘘ではないのです。

怒ったホムサは家を飛び出し、泥ヘビや幽霊馬車や生きたキノコなどの怖い空想をしながらタンスの上にいるミィと出会います。

ミィはホムサの空想にのって、生きたキノコはもうドアの向こうまで来ていると脅します。
脅かすことに関しては意地悪なミィの方が数段うわてでした。

怯えたホムサは、そんなこと嘘だ！ぼくが発明したんだから！と怒ります。

今まで空想に浸って、それを嘘だと言う大人たちに反発していたホムサが、今度はそんな大人たちと同じ態度にでたのです。

そして迎えにきた父親に
「あいつ、ぼくをペテンにかけたんだよ！まるっきりのうそをならべてさ！あんなうそをきかされると、むなくそがわるくなっちまう。」
と言いながら家に帰るのです。

私が好きなお話のひとつでもあります。


〜ロバツスのフローティングフラワーに沈めたムーミン〜

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