南京櫨(ナンキンハゼ)

トウダイグサ科ナンキンハゼ属の落葉高木。中国原産。ロウの原料として江戸時代に導入され、西日本〜琉球で栽培された。スペード型の葉は秋に紫、赤、オレンジ、黄色が入り交じり華やかに紅葉するため公園樹や街路樹として植えられる。花期は6〜7月。枝先に黄色の小さな花が穂状に沢山つく。雌花は穂の付け根の1〜3個だけで、ほとんどが雄花。果実は蒴果。三角状偏球形で径1.5㎝。秋に茶褐色に熟して裂開し、3個の白いロウ質に覆われた種子が出る。油脂の一種である白いロウ質は仮種皮(かしゅひ💬種子の外側を被って種皮のように見えるもの。普通の種皮より柔らかく肉質)で鳥のごちそうであるため、鳥はこの種子をよく食べる。本当の種子は白いロウ質の中にあり、黒く球状で有毒。鳥に種子の部分を食べられては困るので毒を含み、白いロウ質だけが消化され、種子は排泄し散布され、時に河原や林縁に野生化する。

昔は櫨木(ハゼノキ)と共にロウ質をロウソクの原料として利用した。また、中国木蝋は、秋に果実を採取し種子のみを集めて、適当な温度を加えて圧縮すると蝋様物質が採れる。これを中国木蝋という。ススキ類の茎を軸にしてこれに燈心を巻き、この表面に蝋を塗り重ねてあとでススキの軸を抜き去って造る。中国独特のローソクで油煙が出ない。

昔は中国などからの渡来物に『南京』をつけて呼ぶことがあり、ウルシ科の櫨木(ハゼノキ)と同じような性質で美しく紅葉して種子からロウが採れたので『渡来物のハゼ』の意味でこの名がついた。

出典『里山の花木 ハンドブック』『秋の樹木図鑑』『都会の木の花図鑑』『薬草の呟き』