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春に白~薄紫の小さな花を数珠なりに咲かせるフジ(藤)。藤棚から垂れ下がるフジの花は、ブドウの房が花になったようにも見えます。公園や庭園で咲いているイメージが強く、個人で育てるのは難しそうに思えますが、網や柵を使って壁面仕立てにしたり、窓際に「逆L字形」になるよう誘引して鉢植えで楽しむこともできます。今回は、そんなフジの育て方をご紹介します。
フジの育て方では、日当たりの良さとたっぷりの肥料、花後の剪定作業が大切となります。
フジは日当たりが悪いと花が咲きにくくなります。また、花が終わったあとに花がらを放置しておくと、栄養が種にまわってしまい、株がしっかりと育たなくなります。花が枯れたらきちんと剪定を行いましょう。
フジを育てるには、「水はけがよく、日当たりのよい場所」が適しています。前述の通り、日陰では花が咲きにくくなるので注意しましょう。
フジを育てるには、「水はけと水持ちがよい用土」が適しています。
ベースの黒土に腐葉土や有機肥料をたっぷりと混ぜ、川砂を加えるとよいでしょう。また、鉢植えの場合は、市販の園芸用土でも問題ありません。
フジの植え付け時期は、落葉期の11〜12月もしくは2〜3月です。特に2~4月初旬頃が植え付けの適期です。
フジは根がとても繊細な植物です。根が切れると花が咲かないこともあるため、根が切れないよう慎重に取り扱ってください。
地植えにする場合は、根鉢の倍くらいの幅と深さの穴を掘って植え付けます。
フジを地植えする場合は、特に水やりの必要はありません。自然の降雨に任せましょう。ただし、降雨がない日が続き、土が極度に乾燥しているようなときは、たっぷりと水やりをしましょう。
鉢植えの場合は、土の表面が乾いていたら、たっぷりと水やりします。いずれの場合も、水切れしないように気を付けましょう。
フジは肥沃な土を好むため、たっぷりの肥料を与えましょう。
花が終わったあとから梅雨前(5月中旬頃〜6月上旬頃)には、お礼肥として有機肥料を与えます。また、2月頃にも寒肥として、堆肥などの有機肥料を与えます。
肥料を与えるときは、株まわりに溝を掘り、そこへ肥料をまきましょう。
フジを鉢植えで育てている場合は、2〜3年に1回程度のペースで植え替えが必要となります。
ただし鉢が大きすぎると、根の成長が活発になっても、花がつきにくくなることがあります。必ず、ひとまわり大きい鉢に植え替えましょう。このとき、くれぐれも根の取り扱いには注意してください。
植え替え時期は、3〜4月頃の気温が暖かい日が適期です。
なお、地植えの場合は植え替え不要です。
フジはツル性植物ですので、放置しているとツルが伸び放題になり、葉が茂ります。こうなると、株の内側に日が当たりにくくなり、ツルばかり伸びて花芽が少なくなったり、風通しが悪くなり蒸れてしまいます。
花つきをよくし、病害虫の発生を防ぐためにも、定期的に剪定してあげる必要があります。
なお、剪定方法は時期によって少し異なります。
花の咲き終わった後の5月下旬〜6月頃に行う剪定です。
花が終わると、葉が茂り混みあいます。風通しと日当たりをよくするためにも、混みあっている箇所の不要な枝を切り落とします。枝の分かれ目から切ったり、伸びすぎた枝の先端を適当な長さに切りつめましょう。
落葉後に行う剪定です。
花芽が付いていない不要な枝や枯れ枝などを切ります。できるだけ花芽を多く残しましょう。
花芽がふっくらと丸みのある形をしているのに対し、葉芽はシュッとしています。冬の時期なら、花芽と葉芽を簡単に見分けることができます。
フジを鉢植えなどで小さく育てたいときは、矮性品種を選ぶようにしましょう。
また、枝がどんどん伸び散らからないように、7月頃も少しだけ剪定を行います。徒長した枝を、4芽ほど残したところで切り落としてください。ただし、たくさんは間引きしすぎないように注意してください。
開花前のつぼみをふくらませる3月頃に霜にあたってしまうと、つぼみを落とす原因となります。
地植えの場合は、ワラや腐葉土を敷き詰めてマルチングにて対応しましょう。鉢植えの場合、冬場は軒下や暖房のあたらない室内に移動させましょう。
フジの増やし方は、「挿し木」「接ぎ木」といった方法が一般的です。
春(3月~4月頃)または秋(9月頃)に挿し木します。
充実した元気のよい枝を選び、15㎝程に切りましょう。発根率をあげるためにも、切り口に発根促進剤をつけてから、挿し木してください。
種まきで2~3年育てたフジの苗を台木にして、接ぎ木します。
手順は次の通りです。
フジの種は9月~10月頃に採取します。種が乾燥しないように、濡れティッシュで包み、数日間室内の暖かい場所で保管します。発根したら、すぐに種まきします。春頃に発芽し、本葉が3~4枚になったら、1本ずつ鉢上げします。
ただし、フジは種まきから開花までに3年ほどかかるため、初心者の方は苗木から育てるのがおすすめです。
こぶ病 | 枝や幹に、表面がざらざらして盛り上がった褐色や灰褐色のこぶが生じる病気です。梅雨などの過湿時に病原菌が繁殖しやすく発症します。こぶは徐々に成長し、フジの発育不良を招きます。なるべく早く、こぶと周辺部を切り取り、殺菌剤を散布しましょう。 |
うどんこ病 | 葉や茎にうどんこをまぶしたような白いカビが生える病気で、風通しが悪い環境で発症しやすいです。また、チッ素過多も発生しやすい原因となるため、肥料のバランスにも気を付けましょう。葉の表面をカビに覆われると、光合成ができなくなり、発育不良に陥ります。感染拡大を防ぐため、感染した葉は早めに取り除き、殺菌剤を散布してください。 |
アブラムシ | 新芽や葉の裏に寄生し、汁液を吸います。また、病気を媒介する間接被害もあるため注意が必要です。一匹一匹は小さいですが、繁殖力が旺盛で、見過ごすわけにはいきません。殺虫剤を散布するなど、早めに対処しましょう。 |
ハダニ | 葉の裏に寄生し、汁液を吸います。はじめは、葉に針で突いたような小さな点があらわれ、数が増えると、葉が白いカスリ状になり、発育不良に陥ってしまうため注意が必要です。早めに殺虫剤を散布して駆除しましょう。 |
カイガラムシ | 葉や茎、枝に寄生し、汁液を吸います。発育不良に陥る直接被害の他、カイガラムシの糞が病気を誘発する間接被害もあるため、注意が必要です。見つけたら、早めに殺虫剤を散布して駆除しましょう。 |
ケムシ | ガやチョウの幼虫で様々なケムシがいます。主に葉を食害するため、見つけたら捕殺します。ドクガなどのケムシもいるため、くれぐれも素手で触らない、肌に付けないよう気を付けてください。 |
病気や害虫が心配なら、定期的に殺菌殺虫剤を散布して予防することをおすすめします。
大きく分けて、フジには2種類あり、ノダフジと、ヤマフジに分かれます。ツルの巻き方が反対で、ノダフジが右巻きなのに対し、ヤマフジは左巻きです。これならすぐに見分けられますね。
ノダフジ | 一般的にフジと呼ばれる品種で、ツルは右巻きです。 |
ヤマフジ | 本州西部や四国、九州の山に自生する品種で、ツルは左巻きです。 |
ノダナガフジ | 花房が長いのが特徴の品種で、六尺フジとも呼ばれています。 |
アケボノフジ | 白花品種なのですが、つぼみは淡紅色で、花が開くと花弁の先が淡紅色になるため、口紅フジとも呼ばれています。 |
アカバナフジ | 桃色フジとも呼ばれている、淡い紅色の品種です。 |
シロバナフジ | その名の通り白い花を咲かせる品種です。 |
ヤエフジ | 八重黒竜とも呼ばれている八重咲きの品種。花の色は濃い紫色です。 |
フジの育て方や増やし方などについてご紹介しました。公園や庭園などの藤棚のイメージが強く、優雅で美しいフジをご家庭で楽しむのは難しい気がしますが、実は、フジの花をご家庭でも楽しむことができます。
もちろん、小さくても藤棚を用意すれば、立派になりますが、網や柵を使って壁面仕立てにしたり、窓際に這わせたり、鉢植えでも育てることができるのです。
優雅で美しいフジの花をお宅の庭にも咲かせてみませんか?
松原真理子
GreenSnap編集部