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接ぎ木とは、植物を土台に、また別の植物を接着させて育てる方法です。別々の植物が切り口を合わせただけで育つなんて不思議ですよね。難しいと思われがちな接ぎ木ですが、意外とやってみると簡単なので、日々のガーデニングのときに挑戦してみてください。
今回は接ぎ木とはなにか、メリットや目的から、接ぎ木の仕方まで詳しくご紹介します。
接ぎ木とは、根のついた別の植物を台木として使い、芽のついた他の植物の枝の切り口同士を接着させて、あらたな株として育てていく方法です。他人の根をかりて成長する、といったイメージをもつとわかりやすいでしょう。
樹木類や果樹、野菜のほか草花も接ぎ木で育てることができますが、野菜や草花系の接ぎ木はミスト施設などが必要になるため一般家庭では難しいです。そのため、今回は比較的簡単な樹木や果樹、または木立性のバラなどにも活用できる接ぎ木の方法をご紹介します。
接ぎ木の仕組みは、植物同士の「形成層」と呼ばれるごく薄い層を密着させ、植物が癒合する力を利用して活着させて、栄養や水分のやりとりをすることで成り立っています。
この形成層は、植物がより大きくなるために枝や幹を太くするために細胞分裂をする場所です。たとえば年輪もこの形成層が定期的に細胞分裂をした結果つくられたもので、年輪と同じように茎や枝に対して円形にはいっています。
ちなみに植物が癒合するときには、水分が流れ出ないようにするための「カルス」、すなわちカサブタのようなものが形成されて合体します。よく剪定された樹木の切り口がドーナツ状に盛り上がっていますが、あれもカルスのひとつです。
接ぎ木は、他の植物の根をかりて成長するといった方法なので、根がでにくい植物や、太い根を数本しか伸ばさない直根性の植物を増やすのに向いています。
植物の増やし方では挿し木も知られている方法ですが、挿し木は植物から新たに根を伸ばしたり、ゆくゆくは鉢上げ(植え替え)が必要になるので、根の負担が大きいのがデメリットです。そこをカバーできるのが接ぎ木という方法です。
接ぎ木をした苗は新しく根を形成する必要がないので、すぐに開花したり、結実して収穫ができるようになります。果樹などは植え付け3〜5年もしないと結実しない種類がありますが、それらを接ぎ木で育てると、すぐに収穫できるようになりますよ。
接ぎ木は挿し木と同様、同じ性質の植物を増やすことができます。例えば、突然変異の斑入りの葉っぱがのびたとき、この枝葉を切り取って接ぎ木すれば、同じ斑入りの葉っぱが伸びていきます。
一方、このような突然変異株を種まきで増やすとうまく遺伝しないので、接ぎ木は園芸品種の開発にも一役買っているのです。
接ぎ木苗を使うことで、連作障害や土壌を介して伝染する病気を防ぐことができます。こうした障害や病気は、ある作物を育てている間に特定の菌や線虫が増加するために発生しますが、これらの菌や線虫は前作と違う作物には被害を及ぼしません。
つまり接ぎ木苗は、根だけは別の植物なので、連作障害や土壌を介したウィルス病を防げるのです。
育てていた植物が変な樹形になってしまったり、根腐れや病気にかかって弱ってしまったときは、接ぎ木をして新しい苗として育てることで、復活ができます。
このようなときには、主枝にしたい枝や、病気からの復活ならまだ被害が及んでいない枝を選んで接ぎ木するといいですよ。
接ぎ木に必要なものは、大きく下記の4つです。
台木とは、接ぎ木のときに土台となる、根を張った株のことです。台木の選び方は以下の項目をチェックしておきましょう。
とくに原種かそれに近い近縁種を使うと、生命力が強いので成功率が上がります。
穂木とは、接ぎ木をして育てたい、もしくは増やしたい植物のことです。穂木の選び方は以下の項目をチェックしておきましょう。
接ぎ木テープとは、接ぎ木専用のテープのことで、園芸点などで入手できます。台木と穂木を密着させるとともに、切り口の乾燥や病原菌の感染を防ぐ役割があります。
なお、テープの中にはそのまま外さずに育てられるものと、外しさなければならないものがあるので、製品説明をよく確認しておきましょう。
接ぎ木をするのに適した時期は3〜4月の春と、7〜8月の夏です。どちらも植物の生育期に接ぎ木するよう。
基本的には芽吹く前のタイミングで接ぎ木をするのがベストです。芽吹く前に接ぎ木をすることで、本来芽吹くために使うはずだった体力を、カルス(カサブタのような役目)の形成に回せるようになります。
つまり、芽吹き前は台木と穂木が活着しやすくなるので、この時期を逃さないようにしましょう。
接ぎ木の仕方にはいろいろな種類があります。そもそもどのような状態の台木をつかうか、どの位置で接ぎ木をするか、どのように形成層を密着させるのかによって、それぞれ手法の名前がついているので、代表的な手法をご紹介します。
ちなみに、居接ぎは接ぎ木した後の成長が早く、移植を嫌う台木などに向いている方法です。あげ接ぎは場所の制約がないのがメリットですが、活着は比較的鈍くなるので生命力旺盛な植物を穂木にするといいでしょう。
ここからは最も一般的な接ぎ木の方法である、切り接ぎの仕方についてご紹介します。切り接ぎに使用する穂木は、1つ以上の芽がついた枝を使いましょう。
作業自体は晴れた日の午前中に行いましょう。
簡単な手順をあらかじめ説明しておくと、穂木の準備→台木の準備→接着・固定、といったステップになります。作業途中で穂木が乾燥しないように注意してください。
接ぎ木の成功のカギとなるのが、形成層の合体面積です。台木や穂木の形成層をよく確認して、上記の2や6の手順のときにより形成層がより広く露出するようにカットしましょう。
また、切り口が凸凹していると密着できずに癒合しにくくなります。よく切れる清潔なカッターやナイフを使って、一太刀でカットしましょう。
ギコギコと切ったり、ゆっくり切ると傷口が広がってしまうので、素早く1回でカットして、切り口がなめらかになるようにしましょう。
接ぎ木をして活着するまでは、保温・保湿をすることが大切です。そのため、とくに鉢植えの台木に接ぎ木をした場合は、表土が乾いてきた頃に水やりをしましょう。
ただし、接いだ部分が水に濡れると接ぎ木は失敗します。そのため、接ぎ木テープをしっかり巻くほか、株下の土の部分に水やりをするようにして、濡らさないようにしましょう。
また、接ぎ木が成功して穂木の芽が動き出したら、ビニール袋に穴をあけて少しずつ外気にならしていきましょう。芽の勢いが増したらビニールを外してください。
接ぎ木した苗はしっかりと活着して、穂木の芽が動き出すまでは、明るい日陰程度の場所で管理しましょう。居接ぎで日差しが遮れない場合は、遮光ネットを被せるなどして、直射日光は避けてください。
あまり日が当たりすぎると、蒸散作用が活発になって、苗の水分バランスが崩れたり、乾燥しすぎて接ぎ木に失敗してしまいます。
とくに元接ぎで接ぎ木をした場合、台木から生えてくる芽はこまめに摘みましょう。もし穂木に2芽以上ついたまま接ぎ木をしていたのなら、ある程度全体が芽吹いてから、伸ばしたい芽をひとつ決めて、残りは芽かきをしてください。
ひとつの芽に栄養を絞ることで、よく成長していきます。
接ぎ木テープは基本的にそのうち勝手に切れて外れます。接ぎ木苗の新しい芽がテープを突き破って出てくるので、そのまま勝手に外れるまで何もしないでください。
ただし、秋口になって幹が太り出すころまで接ぎ木テープが残っていた場合は、食い込んでしまうため、外すようにしてください。
接ぎ木のコツは形成層をいかに広く合わせるか、いかに滑らかにするかです。また、保温と保湿も大切です。
それさえ守れば、樹木や木立性のバラなどの接ぎ木であれば、初心者でも簡単にできますよ。みなさんもぜひ気軽に挑戦してみてください。
GreenSnap編集部