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家庭菜園を始めるときに初心者がつまずきがちなもののひとつに、土作りがあるのではないでしょうか。土作りの基本をしっかりと抑えれば、生育中のハプニングやトラブルにも強い野菜を育てることができますよ。
今回は、初心者こそ抑えてほしい、家庭菜園の土作りの基本的な手順やコツをご紹介します。

家庭菜園で野菜を育てるときは、次の4つのポイントを満たした土作りをすることが大切です。
これらの条件をクリアした土、かつ、活発な微生物が含まれていると、野菜や植物が育つのに一番理想的な状態になります(これを「団粒構造」といいます)。
団粒構造の土だと、水やりをしたときに、団粒の隙間に水や空気が入り、水分・酸素・栄養分が蓄えられるので、野菜がすくすく育つようになります。

団粒構造を人工的につくった野菜にとって生長しやすい土が「培養土」です。土の調合に慣れていない場合には培養土を利用するとよいでしょう。
家庭菜園の土作りには、観葉植物やガーデニングで草花を育てるのとは違って、酸度調整が必要です。土にも一定の酸が含まれていて、その濃度はpHの値で表されます。
それぞれの野菜には栽培適正pHが決まっていて、多くの種類が「pH6.0前後の弱酸性〜中性」を好みます。
▼主な野菜の好む酸度(pH)
| 土壌 | pH | 主な野菜 |
| 酸性 | 5.0〜5.5 | スイカ |
| 弱酸性 | 5.5〜6.0 5.5〜6.5 |
ジャガイモ/サツマイモ/ダイコン トマト/キュウリ/キャベツ/ニンジン/レタス |
| 中性 | 6.0〜7.0 | タマネギ/ホウレンソウ/ショウガ |
しかしながら日本の土壌は酸性雨のせいで酸性に傾きやすいため、苦土石灰などを土にまいてアルカリに傾けさせ、酸度調整を行う必要があるのです。
自分で土を配合する場合は、「苦土石灰」を使って酸度調整しましょう。市販の野菜用培養土は酸度調整済みのものが多いので、製品表示をよく確認してください。

有機栽培中の方なら、貝殻・カキガラ石灰を利用してください。苦土石灰・石灰の使いすぎは土を固くするという副作用がありますが、貝殻・カキガラ等の石灰は土を固くしません。効きがゆっくりですが、副作用はほぼないですよ。
家庭菜園をするとき、土作りと同時に肥料も考えていくようにしましょう。植物の生育には、「チッソ(N)」「リン酸(P)」「カリ(K)」の三要素が必要であり、チッソは茎葉に、リン酸はつぼみや花に、カリは根や株全体に効果的とされています。
また、とくに野菜の栽培では、マグネシウムやカルシウムなどの微量要素・二次要素があると美味しく育つため、家庭菜園に用いる肥料にはこれらを多く含む「有機肥料」がおすすめです。とくに、畑栽培ではよく用いられています。
ただし、有機肥料は臭いや害虫が寄りつきやすいため、家庭菜園初心者には栄養効果が緩やかに長期間続く、「緩効性化成肥料」がおすすめです。
土作りのときに有機肥料や緩効性化成肥料をいれることで、野菜の生育初期に栄養を十分に供給することができます(これを元肥といいます)。
| 分類 | おすすめの肥料 | 主な野菜 |
| 葉菜類 | 窒素分の多い肥料 | キャベツ/コマツナ/ミズナなど |
| 果菜類 | 3要素(窒素・リン・カリウム)のバランスがいい肥料 | トマト/ナス/キュウリなど |
| 根菜類 | カリウムがやや多めの肥料 | ダイコン/ニンジン/ゴボウなど |

葉野菜栽培で窒素が過剰になると味が苦くなります。ひとつの野菜を育てるのに必要な肥料の量はそれぞれ違います。「使う土の量」「育てる数」「土にすでに含まれている栄養」などによって変わってくるので正確な数字を出すのはとても難しいのです。
家庭菜園の土作りは、酸度調整や肥料がなじむまでに時間がかかります。
プランター栽培の場合は「苗の植え付けや種まきの2週間前」から、畑栽培の場合は「作付けの約1ヶ月前」から、余裕をもって準備をするといいでしょう。

肥料を混ぜて時間を置きすぎると、雨などで肥料が流れ出てしまうことがあります。何か月、何年も放置した土には、特に流れ出しやすい窒素成分が含まれていないこともあります。
プランターで家庭菜園をするときは、当然ながら野菜を育てるのに適した土、すなわち培養土をつくる必要があります。
培養土は基本的に「基本用土」と「補助用土」を配合してつくりますが、野菜の種類によっても適した配合が異なるので、下記を参考にしてみてください。
| 基本用土の配合比 | 補助用土の配合比 | |
| 葉菜類・果菜類 | 赤玉土小粒6:腐葉土3:バーミキュライト1 | 苦土石灰2g/ℓ+化成肥料20g/ℓ |
| 根菜類 | 黒土3:赤玉土小粒3:バーミキュライト3:川砂1 | 苦土石灰2g/ℓ+化成肥料20g/ℓ |
家庭菜園初心者は、市販の培養土を用いてプランター栽培からはじめよう!
すでにさまざまな用土がバランスよく配合された「市販の野菜培養土」を用いると、より簡単になります。数種類の用土を用意したり混ぜる手間がなくなるので、家庭菜園の初心者におすすめです。
酸度調整済み、肥料配合のものであれば、上記手順の4からつくって問題ありません。
大根やニンジンなどの根菜類を育てたい場合は、とくに細かな土が必要とされます。粒が大きいと股割れしたり曲がったりと、いびつな形になりやすいので注意しましょう。
また、根菜類の野菜を育てるときは、「黒土」を畑に3〜4割ほどまぜて耕すのもおすすめです。黒土は粒が細かく、根菜類の栽培に向いています。ただし、リン酸の補給と水はけ向上などのための配合が必要です。
堆肥とは、有機物を豊富にふくんだ土資材のことです。
有機物が豊富だと微生物が繁殖し、その微生物が土を団粒構造へと変えてくれるため、結果的に水はけや水もちのバランスがよくなったり、通気性や保肥性が上がって作物が育ちやすくなります。
畑で家庭菜園を楽しむときに注意したいのが連作障害です。連作障害とは、同じ科の野菜を同じ場所で連続して育てることで発生する生育不良のことです。
連作障害の対策には、輪作(ローテーション栽培)をするか、栽培が終わったら都度、土壌のクリーニングをするといいでしょう。
家庭菜園で同じ土を数年使い続けていると、だんだんと野菜のできが悪くなってくることがあります。
畑栽培の場合は、野菜を育てていた上部の土と、その下の深い部分の土を、50cmほどずつ入れ替えてあげます(これを「天地返し」といいます)。天地返しが終わったら、新たに土づくりをはじめましょう。
プランター栽培の場合は、連作障害の危険性もあるため、その都度土を新しくするのがおすすめです。
プロからのアドバイス
連作障害が出る、野菜の生育が悪くなる大きな要因は、土中の微生物が偏り始めることです。野菜によって好む肥料が違うため、土の中に残っている肥料が違います。同じ野菜ばかり育てると、残る肥料が偏り、そこに居座る微生物の種類も偏ってきます。そのため以下の方法を試してください。
初心者のうちは培養土を買い直して栽培しながら、使用済みの土は正しく処分、もしくは上記の方法で一度ゆっくり再生しましょう。
家庭菜園において、土作りは栽培を成功させるカギです。野菜がすくすくと育っていけるように、その野菜が好む土質を理解し、適切に土作りができるようにしておきましょう。
土作りがきちんとできれば、初心者でも家庭菜園をかんたんに楽しむことができますよ。

七尾びび

GreenSnap編集部