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アブラムシは園芸をしているのであれば、誰もがいつかは出くわす害虫です。見慣れた虫ですが、一株に繁殖すると、気づかぬうちにほかの株にも発生して被害が広がります。モザイク病のウイルスも媒介して広めるので注意しましょう。
今回はガーデニングや家庭菜園に頻出するアブラムシの生態と、その防除方法をご紹介します。
アブラムシはカメムシの仲間で、体長1〜4mmほどの虫です。体色は緑色、黒色、灰色、赤褐色など種類によってさまざまです。
新芽、葉、つぼみなど、植物のやわらかい部分を中心に、あらゆる部位に集団で寄生しているので発見は容易で、植物の汁液を吸って成長しています。
草花や葉菜類、果樹などに被害を与える、もっともよく見られる種類は「モモアカアブラムシ」「ワタアブラムシ」などです。
また、特定の科の植物に寄生するアブラムシも多く存在し、この習性を利用して、育てたい植物に無害なアブラムシを発生させて天敵をおびき寄せて増やし、育てたい植物のアブラムシを捕食させて防除する方法があります。後述のコンパニオンプランツのデントコーンがその一例です。
ほかには、マメ科に発生する「マメアブラムシ」、アブラナ科に発生する「ニセダイコンアブラムシ」、ネギ科に発生する「ネギアブラムシ」などがあります。
アブラムシは窒素成分の多い肥料を一度にやり過ぎると発生しやすく、以下の野菜ではよく目につきます。
例)ワケギ、オクラ、キャベツ、トウモロコシ、にんにく、ピーマン、ブロッコリー、レタス、玉ねぎなど
アブラムシの被害で一番の懸念は、病気が大きく広がる危険性があることです。ウイルス病やモザイク病に感染した株が一つでもあると、アブラムシが吸汁して健康な株に感染させ、全体に広がっていきます。
また、アブラムシの排泄物(甘露)は粘着質の甘い蜜状になって、放っておくとそこにすす病を誘発したり、蜜を好む蟻がよってきて、アブラムシと共生します。
アブラムシの発生時期は、ちょうどガーデニングシーズンとなる4〜11月にあたります。
どこからともなく発生するアブラムシですが、冬は一般に卵で越冬し、春に孵化した虫が成長し、翅を持った成虫が現れて植物に飛来し、そこから繁殖していきます。秋になるとオスとメスが交尾して、樹木の芽の近くなどに卵を産み付けて、そのまま越冬します。
アブラムシは幾種類かのアミノ酸成分を好む習性がありますが、このアミノ酸は、植物の茎・葉の成長を促す窒素分から生成されます。
したがって、窒素分の多い肥料を一度にやりすぎることによって、アミノ酸が過剰につくられると、そこへアブラムシが引き寄せられて発生するのです。
また、株間が狭く、風通しが悪い密植状態のところにも発生しやすいです。
アブラムシなどの微小害虫は、粘着テープなどを使って、貼り付けて取り除くのが効果的です。
粘着度によっては植物自体を傷つけてしまう可能性があるので注意してください。強いシャワー状の水流で洗い流すのもいいでしょう。
食品の食酢を使用したスプレー剤が販売されています。身近な成分なのでアブラムシ対策に利用してみてください。
アブラムシが大量に発生してしまった場合は、効果が低下するため、発生しはじめた時に、2~3日おきに散布すると効果的です。
牛乳スプレーはあまり効果が期待できないうえに、臭いやカビも発生しやすいため、あまりおすすめしません。
草間祐輔
アブラムシの天敵はテントウムシやヒラタアブ、クサカゲロウなどですが、なかでもナミテントウは人に害もなく、飛行能力が低いので扱いやすいくておすすめです。
ネットなどで幼虫を購入することができます。アブラムシが大量発生した場合でも、ナミテントウは1匹で1日にアブラムシを10~30匹捕食してくれるので、効果的です。
市販の殺虫剤を用いるのが最も簡単な方法で、あまりに大量に繁殖してしまったときに効果的です。
スプレータイプや粒剤タイプ、希釈して使用するタイプなどがあります。殺虫方法も、直接虫に散布して退治する方法だけでなく、植物自体に成分を浸透移行させて、虫に吸汁させて退治するタイプもあります。
一番手軽で効果的なのは、粒状の殺虫剤を、植え付け時に土に混ぜておくことです。生育期に株元に散布する方法もあります。
殺虫剤などの薬品を使うのに抵抗がある場合に、木酢液や米酢を水で薄めたスプレーを使ってみようかと思う使う方もいるようですが、「木酢液」には直接的な殺虫効果があるとはいいきれないため、おすすめはできませんし、現在、殺虫効果を謳って販売されていません。
「食酢」は適切に薄めれば、それなりに効果はありますが、濃すぎると植物に薬害がでる心配がありますので、植物の病害虫対策用に、あらかじめ濃度を調整して効果を確認し、上手な使い方が書かれた「ピュアベニカ」や「やさお酢」といった、食酢プレーをおすすめします。
草間祐輔
アブラムシにはキラキラ光る反射光を嫌う性質があります。
これを利用して、畑に銀色、もしくは銀色の線が入ったポリマルチやポリフィルム、防虫ネットを張ることで、アブラムシを遠ざけ、飛来による繁殖被害を防ぐことができます。
コンパニオンプランツとは2つの違う植物を混植することによって、病気や害虫を抑え、互いの成長を促す植物の組み合わせのことです。
ミントやニンニク、マリーゴールドのように、強いにおいをもつハーブや草花を混植して、害虫を近寄りにくくします。
トマト、きゅうり、ナスなどの果菜類の栽培には、デントコーンが有用です。
トウモロコシの一種、デントコーンにはムギクビレアブラムシが発生します。このアブラムシが、ナナホシテントウやクサカゲロウなどの天敵をおびき寄せるので、果菜類に被害を及ぼすアブラムシを捕食してくれて発生を抑えられます。
なお、ムギクビレアブラムシは果菜類に被害を及ぼしません。
キャベツなどの結球葉菜類、オクラ、キュウリ、ナス、インゲンなどの果菜類の栽培には、白クローバーが有用です。
栽培予定地にあらかじめ、白クローバーの種をまいて一緒に育てておくと、白クローバーで天敵が増え、それらの天敵がアブラムシなどを捕食し、被害を軽減できます。
アブラムシにはいろいろな対処方法がありますが、自然の力を借りるのも一法で、テントウムシを放して自然環境サイクルのなかで防除していくことです。みなさんも、アブラムシの適切な対処方法を学んで、ガーデニングや家庭菜園を楽しみましょう。
草間祐輔
GreenSnap編集部