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山草の一覧

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藪虱(ヤブジラミ) セリ科ヤブジラミ属の越年草。野原や道端に生える。葉は長さ5〜10㎝の2〜3回羽状複葉。小葉は卵状披針形で、細かく切れ込み、両面とも粗い短毛が密生する。花期は5~7月。枝先に小型の複散形花序を出し、白色の小さな花をつける。小花柄は4〜10個。総苞片は細長い。果実は分果。長さ2.5〜3.5㎜の卵状楕円形で、全体に刺状の毛が密生する。『ひっつき虫』のひとつで、毛はカギ状に曲がり衣服などによくつく。果実は熟すと2つに分かれる。手で潰すと特異な香りがする。夏が過ぎて秋になると、この香りが少なくなる。 藪に自生し、果実がシラミに似ていて服に付きやすくわずらわしいことが名前の由来。 漢方原料の蛇床子(ジャショウシ)は中国ではオカゼリの成熟果実。名前の由来は、蛇がこの植物の下に好んで住み種子を食べるからと『本草綱目(ほんぞうこうもく💬1596年に刊行された中国の本草書)』にある。日本ではヤブジラミの成熟果実のことで、和蛇床子という。 よく似たオヤブジラミとの違いは次の通り ヤブジラミ ・花期は5〜7月 ・花は白色 ・茎は緑色で毛に覆われる ・果実の柄が短く、果実がひとかたまりに見える オヤブジラミ ・花期は4〜6月 ・白い花弁の縁が紫色を帯びる ・茎はふつう紫色で毛に覆われる ・果実の柄の長さが不揃いなので、まばらに見える ・果実がヤブジラミより大きく紫色で刺が長い 出典『野に咲く花』『草木の種子と果実』『野草 見分けのポイント図鑑』『薬草の呟き』
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夏椿(ナツツバキ) ツバキ科ナツツバキ属の落葉高木。山地の落葉樹林に生え、庭や公園、寺社に植えられる。樹皮は不規則に剥がれ、褐色やベージュ、オレンジ色などのまだら模様になる。やや厚い葉は倒卵形~楕円形で短い柄をもち互生する。秋にややくすんだオレンジ色に紅葉する。花期は6~7月。梅雨の頃、葉に隠れるようについた丸いつぼみが開くと、しわのよった白い花弁が5枚あらわれ、しっとりとした風情のある花が開く。直径5㎝ほどのやや大形の気品のある花で、朝開いて夕方には落ちる一日花。花弁の縁に細かい鋸歯がある。花の下に、萼片より短い苞がある。果実は蒴果。卵形で先が尖り、熟すと5裂して種子を出す。種子は倒卵形で背面は丸みがあり、腹面は平らで縁には翼がある。裂開した果実は落葉後も枝に残る。 6月下旬頃、椿(ツバキ)とよく似た花を咲かせることが名前の由来。沙羅の木(シャラノキ)の別名もあるが、平家物語の冒頭にも登場する沙羅双樹はインド北部原産のフタバガキ科のサラノキのことで本種のことではない。沙羅双樹はマメ科の無憂樹(ムユウジュ)、クワ科の印度菩提樹(インドボダイジュ)とともに仏教三大聖樹のひとつに数えられる。仏教では、ブッダの入滅のとき四方にフタバガキ科のサラノキが2本ずつ生えていたとされるが、日本ではナツツバキがそれに該当すると誤解されたことから、沙羅の木とも呼ばれる。 よく似た姫沙羅(ヒメシャラ)との違いは次の通り ナツツバキ ・葉は倒卵形~楕円形で長さ4~12㎝ ・花は径5~7㎝、花糸・子房とも無毛 ヒメシャラ ・葉は長卵形~長楕円形で長さ3~8㎝ ・花は径2~3㎝、花糸の基部に白毛があり、子房は有毛 出典『樹木の事典600種』『都会の木の花図鑑』『樹木 見分けのポイント図鑑』
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木大角豆(キササゲ) ノウゼンカズラ科キササゲ属の落葉高木。中国原産で江戸時代初期に渡来した。畑や庭に植えられ栽培される。民家の庭先に大木を見かけるのは、昔ながらの薬木であったことを伺わせる。地方の古い街の庭にこの木を植えている家は、ほとんどが昔は漢方医だったか漢方薬店だったのだという。また時に、川岸などで野生化したものが見かけられる。葉は桐に似た円形で秋に黄葉する。花期は6~7月、枝先の円錐花序に多数咲かせる。花は淡黄色、花弁の先が5裂した漏斗状で内側に濃紫色の斑紋があり、裂片の縁はちぢれている。果実は朔果。長さ30~40㎝のササゲに似た長い果実が枝から垂れ下がり晩秋に熟す。果実の中の扁平な種子は両端に長毛がついていて風にのって遠くまで飛ぶ。種子は荒廃した河川敷などで芽を出すとすぐ生長し育つと10mの高木になるが、高さ1m前後でもう花を咲かせて実を結び種子を作る。よく似たアメリカキササゲは北米原産で街路樹にされ、白い大きな花を咲かせる。 果実は梓実と呼ばれ利尿薬に利用した。10〜11月、果実が熟して弾ける寸前の蒴果をとって天日で乾燥させる。種子のなくなった鞘は薬としての品質が落ちるとされている。 名前は、細く垂れ下がる果実が野菜のササゲに似ていて、木だからキササゲとなった。キササゲを植えると雷が落ちないといわれ、雷電桐、雷の木とも呼ばれた。生長が早く避雷針の代わりになるという説がある。 出典『秋の樹木図鑑』『薬草の呟き』『樹木の名前』
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玄圃梨(ケンポナシ) クロウメモドキ科ケンポナシ属の落葉高木。山地の渓流など湿った環境に稀に自生する。神社等にも植えられている。大形の葉はヤマグワの不分裂葉に似るが、鋸歯の形や縁が波打つ点などで見分けることができる。葉序は互生だが、葉が2枚ずつ交互につくコクサギ型葉序になる部分がある。花期は6~7月。淡緑色の小さな5弁花を多数つける。果実は核果。球形で径7〜10㎜。9月頃に汚白色に熟し、ごつごつと折れ曲がる肥厚した果柄の先につく。果実は食べられないが、肥厚した果柄は梨の味と香りに熟し甘くて食べられる。 酒酔いを治す妙薬である。酩酊している者に葉5〜10枚、または果軸4〜5本を400mlくらいの水で半量に煎じて飲ませる。酒酔いには驚くほど効くが、酔いが覚めても吐息はアルコール臭がするので、アルコールが分解されるわけではない。また、皮や枝をお茶として服用すると肝臓に良いとされる。韓国では葉を健康茶とし、口臭や二日酔いに効くとされる。日本でも市販のガムにエキスが配合されている。 名前は『拳棒梨』が訛ったもので、人の5指に似て肥厚した手のような実のなる梨という意味。果軸の香りと味が梨に似ているという。また、棒のような手をいう『手棒(てぼう)』『手ん棒』が『てんぽ』になり、さらに『けんぽ』に転じたともいわれる。けんぽの漢字は縁起の良い玄圃を当てたもので、中国由来のものではない。玄圃とは仙人の居所のことだという。 出典『葉っぱで見わけ五感で楽しむ樹木図鑑』『都会の木の花図鑑』『里山の花木 ハンドブック』『薬草の呟き』『樹木の名前』
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菩提樹(ボダイジュ) アオイ科シナノキ属の落葉高木。中国原産で寺院などに植えられる。葉は先が鋭く尖り縁に鋸歯があり、裏面に灰白色の毛が密生する。基部がやや左右非対称になるのが特徴。花期は5~6月。香りの良い淡黄色の花が長い柄の先に10〜20個ぶら下がって咲く。花弁は5枚で直径1㎝。果実は堅果。球形で表面にも毛があり秋に熟す。丸い果実の中に硬い種子が1個入る。葉に果実がつくように見えるが、葉ではなくヘラ状の総苞で、中途まで果序の柄と癒合している。総苞は1〜3個の果実をぶら下げたまま風に飛ばされ、ヘリコプターのようにくるくる回って落下する。 ボダイジュの『ボダイ』はサンスクリット語で悟りを得たことを意味する『bodhi(ブーディ)』に漢字を当てはめたもの。仏教では、釈迦は熱帯の木であるクワ科インドボダイジュの下で瞑想していて悟りを得たとされる。インドから中国に仏教が入った時、中国には同じ樹木がなかったため、葉の形が似ている本種で代用した。それが日本に伝わり、日本でも寺に植えられるようになった。18世紀に記された『大和本草』によると、宋に留学した栄西が天台山のボダイジュを持ち帰り、香椎宮に1190年に植えたという。 釈迦ゆかりの木としてよく寺院に植えられるが、仏教三霊樹の菩提樹とは別種。また、種子から数珠を作るのに使われるのはホルトノキ科のジュズボダイジュ、シューベルトの歌曲『菩提樹』に登場するのはセイヨウボダイジュで、いずれも別種である。同属でよく似た科木(シナノキ)は山野に生え、公園や街路樹としてよく植えられ、蜜源植物にもされる。長野県には古くからシナノキが多く、信濃という言い方はシナノキを産する野の意味ともいわれる。 出典『樹木の事典 600種』『葉っぱで見わけ五感で楽しむ樹木図鑑』『身近な草木の実とタネ ハンドブック』『樹木の名前』
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梔子(クチナシ) アカネ科クチナシ属の常緑低木。温暖な地域の山野に自生し、庭や公園にも植えられる。甘い香りを放つクチナシは、春の沈丁花(ジンチョウゲ)、秋の金木犀(キンモクセイ)と並び三大香木として知られる。卵形の葉は光沢が強く、基本は対生だが、時として三輪生することがある。花期は6~7月。直径5㎝ほどの手裏剣のような形の白い花が咲く。花弁は6枚に見えるが実際には漏斗形の花が6つに裂けたもの。花の中心で*の形に見える部分が雄しべ。橙色の果実は冬に熟し先端に萼片が残る。果肉にカロチノイド色素を豊富に含み、飛鳥・天平時代から黄色の染料とされ、乾燥させたものを『山梔子(さんしし)』と呼び用いていた。無毒なので、栗きんとん、たくあん、チョコレートなどの天然着色料としても使われている。1㎏の果実からたった5g程度の色素しか採れない。果実の中にぎっしり詰まる種子は、平べったく赤くて硬い。冬の間にヒヨドリなどが実をつつき、種ごと果肉を食べて空洞にする。 実が熟しても口を閉じて種を出さないことから『口無し』といわれている。碁盤の足はこの実をまねてつくられていて、碁を打つ際は無駄口をたたくなとか助言無用を意味しているのだという。 出典『都会の木の花図鑑』『葉っぱで見わけ五感で楽しむ樹木図鑑』
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蕺草(ドクダミ) ドクダミ科ドクダミ属の多年草。半日陰地に群生することが多い。全体に特有の臭気がある。踏みつけたり抜いたりするとさらに強い臭気を放つ。根茎を伸ばして殖える。高さ15〜50㎝。葉は互生し、長さ3〜8㎝の心形で、先は短く尖る。花期は5~8月。茎の上部に長さ1〜3㎝の花穂を出し、小さな花を多数つける。白い花弁のように見えるのは総苞片で4個ある。花柱が3裂した雌しべと雄しべ3個を持つ花がびっしりつく。果実は蒴果。ほぼ球形で反り返った花柱が目立つ。熟すと花柱の元から裂開する。種子は広楕円形。種子は果実に8〜10個ほど。 名前の由来は主に3説ある。 ①毒痛説 毒や痛みに効くことから『毒痛草』→『毒痛み』→『ドクダミ』に変化した ②毒矯め説 悪い性質などを改めるという意味の『矯める(ためる)』から『毒矯め』となり変化した ③毒溜め説 特有の臭気から、草に何かの毒が入っているという意味の『毒溜め(どくため)』が変化した ドクダミには十薬(ジュウヤク)の別名もある。民間薬として利用され、10種の薬効があるのが名前の由来。獣医が馬に用いると10種の薬効があることが由来との説もある。 薬草として古くから親しまれ、民間薬として利用される。ドクダミは生の葉と十薬で使用法が異なる。 ・十薬 5〜6月の花の咲いている時期に地上部を刈り採り、水洗後2日ほど天日で乾燥させた後に日陰干しして十分に乾燥させたのもを生薬名で十薬(ジュウヤク)という。ドクダミの悪臭成分は乾燥すると酸化されて無臭となるが、殺菌力もなくなる。十薬には葉にクエルチトリン、花穂にイソクエルチトリンなどが成分の代表で、緩下作用、利尿作用、毛細血管強化作用がある。1日10〜20gを水600〜900mlで煎じ3回に分けて服用する。 ・生の葉 生の葉には悪臭成分の精油デカノイルアセトアルデヒドなどがあり、強力な殺菌力を持つ。生の葉2〜3枚を塩少量で揉んで柔らかくし、左右の鼻腔に交互に30分くらいずつ差し込んだあと鼻をかむと蓄膿症、慢性鼻炎に効果がある。生の葉をアルミホイルに包んで火で炙り柔らかくなったら腫れ物の上にのせてテープでとめておくと化膿性の腫れ物に効果がある。水虫には生の葉をつぶして擦りつける。生の葉ジュースを作り5分の1の蜂蜜を混ぜ約3ヶ月間冷暗所に保管し味をみて酒になっていたら飲む。 出典『野に咲く花』『草木の種子と果実』『都会の草花図鑑』『野草の名前 夏』『薬草の呟き』『プログレッシブ国語辞典』
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捩木(ネジキ) ツツジ科ネジキ属の落葉小高木。里山の乾いた林縁や尾根に生える。やせ地にもよく生育し、庭園樹、生け垣にも普通に用いられている。冬芽や冬芽がつく枝は真っ赤に染まる。葉は水滴形で、ふちがよく波打つのが特徴。葉先もねじれることが多く、葉柄には毛が密生する。秋には葉がややオレンジ~赤色に紅葉する。花期は5~7月。前年に伸びた枝に、白い壺形の花が整然と一列に並んで下向きに咲く。果実は蒴果。秋に上向きに熟すと裂開して種子を出す。葉や花は有毒で、特に若葉に多い。毒性は激しく、家畜の飼料に混ざって誤食すると嘔吐や運動麻痺が起こる。 材は堅く緻密で、鼓車、折りたたみ尺、洋傘の柄、櫛(木曽の阿六櫛)、ろくろ細工に用い、また本種で作った木炭は特に漆器の研磨に用いられる。 遺伝的に幹がねじれることが名前の由来。ねじれる方向は一定ではなく、木が生えている場所の傾斜や風向きにより変わる。材はかたく、しかもねじれているため、斧を入れて薪とするのは難しい。そのため女性を困らせるという意味で『ウバノテヤキ』『バアナカシ』という別名がある。若い枝が赤いことから『塗りばし』、花の形が飯粒に似ているので『飯粒の木』などとも呼ばれる。他にカシオシミ、カシオズミノキといった別名もあるが、その語源は明らかではない。 出典『樹木の事典 600種』『薬草の呟き』『樹木の名前』
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