油瀝青(アブラチャン)

クスノキ科クロモジ属の落葉低木。山地の沢沿いなど湿った場所に生える。細い幹を多数出す株立ち樹形になる。花期は3～4月。葉が出る前に透明感のある淡黄色の小さい花が径約7㎜に丸く集まって咲く。葉は楕円形で互生する。果実は液果。径1.5㎝ほどの球形で秋に黄褐色に熟す。表面に皮目という小さな点がある。乾燥すると割れて中に1つある大きな種子を出す。

アブラチャンの『アブラ』は『油』。『チャン』とは『瀝青(れきせい)』のことで、天然アスファルトやコールタールなど炭化水素化合物の総称。この木の樹皮や種子が油分を多く含み、灯火用の油を採取したことが名前の由来。山里では菜種油が手に入りにくく、沢沿いに生えるアブラチャンを利用した。油は樟脳に似た香気がある。


よく似た檀香梅(ダンコウバイ)との違いは次の通り。

アブラチャン
・葉は長さ4～9㎝で葉先は分かれない
・花序に柄がある
・液果は大きく、帯黄色に熟すと不規則に割れる

ダンコウバイ
・葉は長さ5～15㎝で葉先は浅く3裂することが多い
・花序に柄がない
・液果は小さく、赤から黒色に熟す

出典『里山の植物 ハンドブック』『里山の花木 ハンドブック』『秋の樹木図鑑』『都会の木の花図鑑』