昔々ある浜辺に、お月見の大好きなカニの夫婦がいました
ある新月の夜、お嫁さんが言います
「お月さまはどこへ行ったのかしら」
旦那さんはお嫁さんの言葉が気になりました
次の朝たまたま浜辺に遊びにきた少年に尋ねます
「お月さまは時々どこへ出かけてしまうのでしょう？」
「太陽の光の当たらないところだよ」
月は太陽の光で照らされていることを知った旦那さんは更に尋ねます
「もし太陽さんがいなくなったら、お月さまには逢えないのですか？」
「そうだよ」
旦那さんは少年から聞いた話をお嫁さんに伝えます
お嫁さんは泣き出しました
「夜は太陽さんは眠っていると思っていたわ、お月さまは時々お休み出来るのに、太陽さんはお疲れなのじゃないかしら」
旦那さんも悲しくなります
次の日、今度は夫婦二人で浜辺に遊びにきた少女に尋ねました
「太陽さんに何かお手伝い出来ることはないのですか？」
「本人に直接聞いたらいいわ」
少女はそう言って夫婦二人を手の平に乗せ空に舞い上がりました
初めて空を飛んだカニ夫婦は恐くなって身を寄せます
すると雲間から初めの少年が現れ、近づいてきました
「僕たちは太陽に時々こうして話を聞きに行くんだ、君達が僕達のところに歩いてきた様にね」
少女もにっこりと微笑みます

1/26/21