ほぼエッセイです 日差しが強すぎる…… サムネイルは間引くタイミングがわからなくなったイタリアンパセリ。
何が西日の直射日光に耐えるのか
生活が色々変わったので、自宅で25年間誰も足を踏み入れなかったベランダに、植物を置きたいと思った。 だが、5月のベランダで待ち受けていたのは生物焼却西日光線だった。 愛知県の夏は、暑い。 いや名古屋の北側は涼しいのだが。 だが残念ながら、自分のエリアは名古屋より太平洋に近い。自分が暑さと湿気に弱いのもあって、体感的には殺人的に暑い。このご時世に熱中症は洒落にならない。 そもそも4月5月は夏ではないはずだ。 何でこんなに暑いのだろう。 南西向きが悪いのか。6月の今日、試しにベランダで一番暑そうな場所の日照時間を計測したら、実に14時間だった。 冷房は4月から回っているし、部屋着もその頃から半袖だ。 反対に冬場はそこそこ暖かく、特に自分がいる地域は雪など滅多に降らないし、降っても積もらない。人間もあまり寒いと感じない。 風土の把握するのは難しい。 肝心の植物の話をする。 灼熱のベランダで育成できそうな植物として思いついたのがローズマリーだった。 画像は15cm程度の苗を購入しておよそ2ヶ月後 ローズマリーは地中海原産の植物だ。 その利用歴は非常に長く、そもそも学名の「ロスマリヌスRosmarinus」は古代ローマで使われていた頃からのラテン語だ。 学名には死語である(≒変化が非常に少ない)ラテン語が用いられることは良く知られているが、その中でもロスマリヌスは、ラテン語が現役の言葉だった頃から使われていた名前で、新大陸組などの新参者たちと比べると抜きん出て古い。 rosは露、marinusは海を表す形容詞だ。よく「海の露」と訳されているが、これは海部分が形容詞ではなく属格のmarisに見えてしまうので、元のラテン語の文脈が伝わりやすい訳は「海露」として熟語にするやつだと思う。 園芸サイトでは地中海の夏は涼しいと言われているが、そんなことはない。そもそも、地中海の北側と南側は札幌と福岡ぐらいの緯度の違いがある。エジプトが地中海世界なのは良く忘れられている。 だが地中海北側のイタリアの付け根あたりも、夏になるとサハラ砂漠から吹き付ける地中海の熱風シロッコが直撃し、気温計は40度を叩く。 日本と違うのは湿度だ。夏場の地中海沿いの陸地はカラッと乾燥している。その代わり冬場の雨が多い。 ローズマリーの湿度が苦手な性質も、この天候に適応したからだろう。 日本で生育するには、夏場のモンスーンがもたらす雨が大敵となるのも頷ける。 そんなわけで、ベランダにローズマリーを置いてみた。 果たして我が家にやってきたロスマリヌスは、頑強であった。 一応立性のマリンブルーのはずなのだが、悪天候続きの折に湿気か日照不足かで購入したらうねってしまった。 しかし日差しには負けない。 ポリエチレンやステンレスすら劣化していく悪環境のベランダに出したら好き勝手伸びている。もう一回剪定した。 多分プラスチックの鉢より、植っている人の方が長生きするだろう。 最初に外に出した時、6号鉢のバジルが危うく死にかけたが、ローズマリーはしおれさえしなかった。 土の表面がカピカピになり、鉢が軽くなってから水をやっても十分間に合う。 やたら硬い葉っぱは、水が切れると葉脈の模様が浮いてシワっとしてくるようだ。こうなっていても水をやって一晩経てば、元のツルツルになる。 かつて地中海を席巻した、ローマ軍団のごとき忍耐力だ。地中海の本物の男に違いない。 驚くべきは、なにもしていないのに、いい匂いがすることだ。 野菜の香りを良くするために栽培に色々工夫が凝らされていることは聞き及んでいたが、何もしていないのにものすごいロスマリヌス臭がするのはすごいことだ。 ローズマリーの香りが好きな人は、本物を育てると有意義だと思う。
ローズマリーが気に入ったので、別の品種をもう一頭お迎えした。 「レックス」という品種のようだ。 カタカナのレックスにピンときて札を裏返すと、やはり綴りはRexである。ラテン語で「王」だ。ティラノサウルス・レックスのレックスと同じだ。 成長すると、その名に恥じぬ2mの背丈になるらしい。動物も植物も大きな品種が好きだ。鉢植えでその大きさになるかどうかはわからないが、夢がある話だ。 せっかくなので、彼のベランダ領の王権を承認して「陛下」と呼ぶことにした。 Long live the King! 品種が変わってもやはりローズマリーのようで、西日を受けてもびくともしない。安心感がある。 先住のローズマリー・マリンブルーを摂政に任命でもしようか。
また我が家には強風の問題もある。 強風は別に愛知の名産品ではないのだが、なぜか自宅は年中風がすごい。ビル風のような地形的な問題である気がする。 天気が崩れると、西日の代わりに今度は風速が発生する。 写真は「かわいくて、強い」と札があったので購入したロータス・ブリムストーン。 強いかどうかはわからなかったが、かわいいには偽りがない。 別記事のアスパラガス・プルモーサス・ナナスはじめ、食べない植物は感触で選んでいる。 ブリムストーンもフワッフワで触ると気持ちがいい。アスパラガスと違って、部屋に置くと日照が足りなさそうなのが残念だ。調子がいい時には爆発的に増えるらしいので大きくなってほしい。 ……こんな感じでたくさん並んでいる中から気に入った苗をら選んできたというのに、なんと鉢に入れて3日目で風に鉢ごと倒されてしまった。 直根を痛めると大ダメージをウケるマメ科なので、慌てつつも慎重に植え直した。だが下の方の葉っぱが取れてしまった…… 「丈夫」とお墨付きをもらうだけあって、今のところ枯れはしなさそうだが、成長している様子が全然ない。心配だ。 プラ鉢に軽い鉢底石は軽くて便利だが、4号程度のサイズは転倒に気をつけたほうがいいと思った。 これに懲りて、ベランダで風通りがいい場所に風車を立てた。今のところ全力で回転しているので、しばらく風には気をつけたい。
ローズマリー王権の廷臣に、地中海産の古典組を用意した。 黄色いオレガノと、緑のオレガノである。 ……というのは冗談として、両方とも食べれるオレガノだ。 画像は最初に植えたときと、一月後の様子だ。 右は"普通の"Origanum vulgare。 Origanumもずっとオレガノという植物を意味してきたラテン語だ。vulgareは「普通の」である。 左はゴールデンオレガノという品種らしい。やたらでっかくなってしまった。 ところで、園芸界隈では、このように黄色っぽい葉っぱの品種を「オーレア」と呼ぶようだ。この響的に、綴りは「Aurea」だろうか。 ラテン語で金はAurumという。学名のように属格を使うならAuriだ。 ということは、オーレアは名詞の属格ではない。 調べてみると、ゴールデンオレガノの綴りはOriganum vulgare 'Aureum'だった。 Aureumは形容詞だ。意味はそのまま「金の、Golden」である。 ラテン語の形容詞は複雑で、形容詞がかかる単語と単数/複数・性・格に合わせて変化する。形容詞単体では言葉として成立しない、それがラテン語だ。 Aureumは、Aureusの単数・中性・主格である。これは同じく単数・中性・主格であるOriganumにかかっていると思われる。 ここで別の疑問が出てくる。 Aureumはアウレウス、英語読みするとオーレアムで、オーレアにはならない。 どこでオーレアになったのか? Aureusの変化表を見ると、隣の単数・女性・主格はAureaである。 検索すると、Filipendula ulmaria ‘Aurea’が出てきた。メドースイートの金色品種である。Filipendulaは単数・女性・主格だ。品種名は学名のうち属名にかかる形容詞でつくことがあるという発見があった。 おそらく、最初に日本に定着した金色の葉を持つ品種は属名が単数・女性・主格で、オーレアだったのだろう。 日本語には格変化は無いので、オーレウス・オーレア・オーレウムが区別されることはなくなったに違いない。(違ったら恥ずかしい) 両者とも、同郷のローズマリーと共に、西日にも平気な様子で生えている。 というか、オーレウム君は茂りすぎだ。こんな速度で大きくなるのがわかっていたらもうちょっと大きなプランターに入れた。 この様子では根詰まりによる植え替えは遠くなさそうなので、両者をひっぺがすことも考えておかなければ。 ここまで書いて気づいたが、ティラノサウルス・レックスのレックスは単数主格で、属格では無い。 なぜティラノサウルス・レギスにならなかったのだろう。 学名の世界は摩訶不思議だ。
屋内か、屋外か
飼い主領とベランダ王領を行き来している組がいる。 一つ目はアサギリソウだ。 朝霧とはこれまた優雅な名前である。見るからにフワフワしていて、触ると優しい感触がする。 現状、環境が半日影の屋内or西日直撃のベランダの2択しかない。 アサギリソウは直射日光が得意では無いらしいので屋内にいたのだが、アブラムシが発生してしまった。 虫に触るのが平気でも、この形状で手動駆除は難しい。 というわけではじめての農薬を体験した。 薬剤への心理的抵抗であるが、正直全くと言っていいほど無い。強いて言えば手動で害虫を排除する楽しみがなくなることぐらいだろうか。 というか、蚊にアレルギーがあって、刺されるとツベルクリン結核感染疑いぐらい腫れるので、天然由来などクソ喰らえである。人生はディートとピレスロイドと共にある。May the agricultural chemical be with you. とはいえ、薬を吸い上げさせたものを屋内に置いて良いのかはさすがにわからなかったので、しばらく直射日光に気をつけながら外に置いている。 地表に見える薬剤が溶け切ったあたりで室内に戻してみたい。 なお侵略者アブラムシ・アマゾネスは撒いて2日で壊滅した。(アブラムシは単為生殖を行うので大半がメスだ) 恐るべし浸透移行性。ありがとう浸透移行性。対戦ありがとうございました。
もう一頭は、うちで一番心配な奴、シンニンギア・カーディナリス、通称「断崖の女王」である。 まず名前がすごい。 シンニングさんが見つけたからシンニンギアなのはわかるが。断崖の女王とは?崖側に生えていることしか想像できない。 愛らしい花が咲くらしいが、高級ビロードのような抜群の手触りの葉っぱで、花がなくとも非常に満足感が高い。 なんとか常緑になってくれないか。 困ったことに育て方がよくわからない。 インターネットの評価は「頑丈」と「繊細」で二分しているからだ。どっちなのだろう? 見た限り、陛下とその廷臣ほど頑丈ではないと思う。 一応、葉焼けっぽい茶色い部分は購入時からある。 この写真では見えないが、「塊根」と呼ばれる幹だか根っこだかが球根のように水タンクがついており、乾燥に強そうだ。 だがどういう気候が適しているのかいまいちわからない。ついでに水のやり方はまったくわからない。 当初屋内に置いていたが、うっかり深い鉢に植えてしまったために、全然土が乾かなくて不安になり、外に出した。 そして案の定1日目にしてしおれ、慌てて水をやった。翌日復活した。乾燥には強かった。 ここしばらく蒸し暑いからか、あまり元気がないような気がしている。水をやっていいのかいけないのかわからない。 成長期と休眠期の差が激しい植物のようだが、いきなり家に置くと今がどっちなのかがピンとこない。移行期間はあるのだろうか?緑色なので成長期でいいのだろうか? 非言語コミュケーションの難しい草である。 とりあえず、1日数回律儀に葉っぱをフカフカして、乾燥を感じたら霧吹き、萎れているのを感じたら水やりをしている。 次の植え替えまでに浅めの鉢を探したい。
凄く読み応えがありました🤗💕
西日に灼熱の夏を
無事乗り越えたら
いいですね😅