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堆肥とは土壌改善効果をはじめ、植物が成長しやすい環境づくりには欠かせない園芸資材です。堆肥を与える意味や、その効果、種類と特性を理解しておくことで、これまでの生育不全の理由解明に繋がったり、上手に栽培できるようになります。
今回は、園芸における基本的な堆肥の役割、効果や特性、その種類や使い方、作り方などをご紹介します。
堆肥とは、腐葉土や家畜の糞を発酵させたもので、有機物を土に供給する園芸資材のことを指しています。
そもそも自然界には、落ち葉や枯れ枝、動物の排泄物などのあらゆる有機物が、あらゆる生物の間で循環しています。しかしながら、畑や花壇などの、人工的に整備した環境では、有機物の循環が望めないので、定期的に堆肥を与えて、土壌を改善し、植物の成長を促しすというのが、堆肥を与える理由です。
堆肥を土に与えることによって、土中の有機物が増えて、微生物が活発になり、土壌改善効果につながります。
植物の成長には、団粒構造(土が大小の団子状の塊になった状態)の土が好ましいです。この団粒構造は、微生物が有機物を分解する際に出す、のりのような分泌液によってつくられます。つまり、堆肥を与えることで、土壌が団粒構造へと改善されるのです。
団粒構造の土は保肥力、排水性、保水性、通気性がよく、植物にとって最高の環境を生み出してくれます。
堆肥に含まれる有機物は、三栄養素である窒素、リン酸、カリのほか、二次要素であるカルシウムやマグネシウム、イオウなどの栄養素の元となります。
とくに二次要素は、手軽で一般的な化成肥料では補えない栄養素なので、堆肥を与えて、あらゆる栄養(肥料)を供給させるのです。
なお、有機物は、微生物が分解して初めて、植物が養分として吸収できる状態(無機栄養素)に変換されます。つまり、堆肥による肥料効果は緩やかに持続するという特徴があります。
堆肥を与えることによって、土の中に土壌小動物、糸状菌、放線菌、納豆菌、細菌などの、さまざまな種類の微生物が集まるので、あらゆる病害虫への耐性が上がり、病害虫対策にもつながります。
堆肥と肥料の違いですが、堆肥は主に「土壌改善効果と、あらゆる栄養素の供給」、肥料は主に「堆肥では満たせない三栄養素を補う」役割を担っています。
堆肥は三栄養素、二次要素など、あらゆる栄養素を生み出しますが、堆肥だけだと三要素の必要量が足りないので、肥料を与えて補うという関係にあるのです。
堆肥の種類には大きく「植物質堆肥」と「家畜糞堆肥(生ゴミ堆肥)」があります。この2つには効果の面で大きな違いがあり、植物質堆肥は土壌改良に効果的で、家畜糞堆肥は肥料効果が高いのが特徴です。
さらに、「植物質堆肥」と「家畜糞堆肥」の2つには、より細かな堆肥の種類があるので、いくつかご紹介します。
植物質堆肥には、植物繊維の有機物が豊富に含まれているため、土の中の通気性が格段にあがり、次第に団粒構造へと土壌改善が進みます。ただし、窒素がほとんど含まれていないので、土づくりをする際には、元肥として肥料で補う必要があります。
広葉樹の落葉を堆積して発酵させたもの。高い土壌改善効果と、微量ながらもバランスのいい肥料供給が期待できる。原料が手に入りやすいため、自作したり安価に入手できる。
微生物が腐熟させた落ち葉でつくる改良用土で、有機質が豊富です。
主な含有成分の目安
窒素0.3〜1%、リン酸0.1〜1%、カリ0.2〜1.5%
樹皮を発酵させたもの。植物繊維が豊富に含まれているため、土壌改善効果が高い。発酵の際に鶏糞や油かすをまぜるので、その栄養も含んでいて、腐葉土より栄養成分が多い。
主な含有成分の目安
窒素0.8〜3%、リン酸0.2〜2%、カリ0.3〜1%
家畜糞や生ゴミをもとにしてつくられる堆肥には、栄養価が高いのが特徴です。特に窒素とカリを多く含むので、むしろ与えすぎには注意してください。基本的に土壌改善効果はありませんが、牛糞バーク堆肥など、植物質と混ぜ合わせたものは、バランスよく効果を発揮します。
牛糞におがくずなどをまぜて堆肥化させたもの。バランスのいい肥料効果以外にも、牛の排泄物には、主食である草の植物繊維が豊富に含まれているため、ある程度土壌改善効果も期待できる。
主な含有成分の目安
窒素2〜2.5%、リン酸1〜5%、カリ1〜2.5%
鶏糞を発酵させて堆肥化させたもの。ニワトリはトウモロコシなど、栄養価の高い穀物類を主食とするため、鶏糞堆肥にも高い肥料効果が期待できる。ただし土壌改善効果はあまりない。
主な含有成分の目安
窒素3〜5%、リン酸5〜9%、カリ3〜4%
野菜や果物の皮、切れ端などのほか、卵の殻や肉や魚のカスなどを発酵させて堆肥化させたもの。植物質・動物質の原料が混在しているので、土壌改善効果と肥料効果の両方でバランスよく効果を発揮する。
主な含有成分の目安
窒素3.5〜3.7%、リン酸1.5%、カリ1%
堆肥は家庭で自作することもできます。簡単につくれる堆肥としては、腐葉土と生ゴミ堆肥の2つです。
基本的には有機質のものに、発酵材となる米ヌカなどを加えて発酵を促します。
腐葉土の作り方にはさまざまな方法がありますが、ここでは簡単にできるビニール袋をつかった方法をご紹介します。
生ゴミ堆肥もいろいろな作り方があります。市販のコンポスターという専用容器を使えば、より手軽につくれますが、ここでは段ボールを使った作り方をご紹介します。
自家製堆肥は堆肥づくりに使う材料によって、栄養成分が決まります。とくに窒素、リン酸、カリの3大要素のバランスを考えて材料を配合しましょう。
植物質の材料はカリが多くてリン酸が少ないのが特徴です。反対に、動物質の材料にはリン酸が多くてカリが少ないのが特徴です。生ゴミ堆肥などでは植物質・動物質の材料のバランスをとってつくるといいでしょう。
堆肥づくりで理想的な含水量は50〜60%です。これは微生物がもっとも活発になる環境で、乾燥しすぎても、湿潤すぎてもよくありません。
理想的な含水量の目安としては、材料をかたく握っても水分が染み出さず、なおかつ手がしめる程度であることです。
指の間から水がポタポタおちたり、かたく握りしめてもパサパサとして水気を感じないのは水分が過不足しています。含水量が低い場合は水をじょうろなどで少しずつ足し、多い場合は乾燥させてからつくりましょう。
堆肥の完成は、季節や製造方法よって時期が異なります。堆肥の発酵が完熟したかどうか、完成したかどうかは、見た目や臭いで判別するといいでしょう。
未完熟の堆肥は、葉や木の枝などの原型が残っていたり、強い異臭がします。一方、完熟した完成品の堆肥は、分解が進み均等な粒感と、触るとふかふかした感触がします。
また、刺激臭はほとんどせず、ヨーグルトや漬物のような発酵食品のような香りがします。
堆肥の使い方の基本は、作付け前の土づくりの段階で与えることです。なお、堆肥は与えてから、有機物を微生物が分解し、無機栄養素に変換して、ようやく植物が吸収できる状態になるので、その効果は緩やかに長く持続します。
ただし、その効果は1年間ほどしか持続しないので、植え替えや作付けのたびに与える必要があります。
土づくりをするときは、基本的に作付けの2〜3週間前に始めるといいでしょう。次の4つの手順を参考に行ってください。
土づくりを始める前に、現状の土がどのような状態かを確認しましょう。土を触って団粒構造の状態を見たり、pH試験紙を使って酸度濃度を確認してください。また、栄養バランスを調べるときは簡易土壌診断キットなどを使うといいでしょう。
土の中の残渣や雑草を取り除いたら、堆肥を与えていきましょう。堆肥の種類によって、含まれる栄養分が異なるので、それぞれの施用量を守って与えるようにしてください。施用量と具体的な与え方については後述します。
堆肥を与えた1週間後に、苦土石灰などの石灰資材で、土壌酸度の調整をおこないましょう。なお、石灰資材と堆肥や肥料を同時に与えると、アンモニアガスが発生することがあるので、石灰資材を与えたら1週間ほど時間をおいてください。
与えた堆肥に含まれる栄養分を補うように、元肥を与えてあげましょう。ゆっくり長く効く緩効性化成肥料がおすすめですが、未発酵の有機質肥料を使うときは、まいてからさらに2〜3週間おいておく必要があります。
なお、最初に石灰をまいて、その1週間後に堆肥と元肥を同時に入れるのもいいですが、堆肥に家畜糞堆肥や未完熟堆肥を使う場合も、1ヶ月ほどなじませる時間をとっておくと安心です。
堆肥の施用量は、とくに家畜糞堆肥の場合は養分過多になる場合も多いので、下記の施用量を参考にしておくといいでしょう。
なお、土が砂質の場合、家畜糞堆肥は上記の半分の量を与えるようにしてください。
一年草の場合
多年草の場合
コンテナ栽培の場合は、畑や庭の土や、赤玉土などの基本用土が50〜60%、植物質堆肥30〜40%、改良用土(ピートモス・バミキュライトなど)が10%の割合で配合するといいでしょう。
土全体に均一に堆肥をまいて、土によくすきこんで畝を立てる方法。ただし、すぐに作付けすると肥料やけを起こすので注意してください。小松菜やホウレンソウなどの軟弱な葉菜類、草花栽培に向いています。
畝をたてる中心部分に深さ20cmほどの溝を掘り、そこに堆肥をまいて、覆土しながら畝をたてる方法。すぐに作付けできますが、根が伸びて堆肥や肥料に届くまで効き目はありません。トマトやナスなどの果菜類、大根、ニンジンなどの根菜類向きです。
植え穴の下部分に堆肥を与える方法。溝施用の一種で、すぐに作付けでき、堆肥や肥料に無駄なく、長時間効果が持続します。トマトやキュウリ、ナスなどの果菜類に向いています。
市販されている堆肥には「乾燥牛糞堆肥」「牛糞堆肥」などの名目で、乾燥しているものか否かの2種類あるのを見かけるかと思います。
これは堆肥が完熟しているか未完熟なのかの違いで、乾燥していれば完熟、乾燥していなければ未完熟の堆肥ということになります。
未完熟堆肥を完熟堆肥と同じように扱うと、植物に悪影響を及ぼすので注意してください。具体的には、未完熟堆肥を与えてから作付けまでは、1ヶ月の時間をおくようにしましょう。
未完熟堆肥をまいた直後は、微生物が土の中で活性化し、土の中の窒素が欠乏したり、二酸化炭素が大量に発生して、植物に害を与えるので、時間をあけてください。
堆肥は肥料と同じくらい、ガーデニングや家庭菜園を楽しむ上で欠かせない園芸資材です。堆肥は植物が成長しやすいように、あらゆる面で環境を整えてくれるので、定期的に与えてあげるようにしましょう。
七尾びび
GreenSnap編集部