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山草の一覧

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鳳仙花(ホウセンカ) ツリフネソウ科ツリフネソウ属の一年草。インド、マレー半島、中国南部原産。日本には江戸時代に中国から渡来した。庭などに観賞用として植えられ、人家の周りに野生化している。学校などでもよく栽培され、小学校の理科の教材としても使われる。草丈50〜60㎝の高性種と20〜40㎝の矮性種の2タイプがあり、花形も、清楚な一重咲き、豪華な八重咲き、八重咲きのなかでも花弁数の多い椿咲きなど多数あって花色も豊富。花期は6~9月。花は花弁と萼片が組み合わさった複雑な形で、萼片の1つは後ろに細長く伸びた『距(きょ)』になっている。この奥に蜜があり、口の長いマルハナバチなどが蜜を吸う。雄しべはキャップ状に雌しべを覆い、花粉を出した後抜け落ちて中から雌しべが出てくる。この時間差の仕組みを雄性先熟といい、自家受粉を避けている。果実は蒴果。熟した果実は触れると果皮が急に裂けて内側に巻き、黒褐色の小さな種子が勢いよく飛び散る。属名のインパチェンスは不忍耐、気短、怒りっぽいなどの意味で、熟した果実が勢いよく裂けることに由来する。 名前は漢名の音読み。女児がこの花とカタバミの葉を揉み合わせて爪を染めて遊んだことから爪紅(ツマクレナイ)やツマベニとも呼ばれる。魚の骨が突き刺さったときに種子を飲むと骨が柔らかくなって抜けることからホネヌキという別名もある。 出典『散歩の草花図鑑』『都会の草花図鑑』『色と形で見わけ散歩を楽しむ花図鑑』『花の事典 970種』『薬草の呟き』
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96
醜男
矢車薄荷(ヤグルマハッカ)/モナルダ シソ科ヤグルマハッカ属の多年草。北アメリカ原産。暑さ寒さに強く育てやすいハーブ。観賞用として花壇に植える。茎は断面が四角形で直立し高さ0.5~1mに達する。葉は対生し卵状披針形で長さ約15㎝。花期は6~10月。茎上部に数個の花からなる頭状花序を開く。花色は緋紅色のほか白、桃、紫色などで、花冠は筒状で2唇に分かれ長さ4〜5㎝、包葉は紅色を帯びる。 モナルダには、唇形で緋赤色の花を茎先に固まって咲かせタイマツバナの和名があるディディマ、桃色の大きな苞と黄色い花が美しいプンクタータ、ヤグルマギクに似たピンクの花をつけヤグルマハッカの和名があるフィスツロサなどがある。 民間療法では殺菌、鎮静など。また、通経作用、子宮刺激作用による月経の調整。妊娠中の使用は危険。授乳中も使用は避ける。苦味と辛味があり、タイムに似た芳香を持つ。乾燥させた葉をハーブティーに。また、精油として利用。ミカン科のベルガモットオレンジとは同名別種。 和名は松明花(タイマツバナ)。花を放射状に咲かせる様子を松明の火に見立ててこの名がついた。属名のモナルダで呼ばれることもある。北アメリカ原産の香料植物で、ミカン科のベルガモットと香りが似るため、ベルガモットと呼ばれることもある。 出典『薬用植物辞典』『日本大百科全書』『花の事典 970種』
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89
醜男
大葉擬宝珠(オオバギボウシ) キジカクシ科ギボウシ属の多年草。山野の草地や林内などに生える。庭や公園などで観賞用に植えられている。根茎は太くて短く、横に這う。葉は大きく、長い柄がある。葉身は卵状楕円形で先は尖り、基部は心形。裏面の脈が隆起し、脈上に小さな突起が少しある。花期は7~8月。花茎は高さ0.6〜1mになり、白色〜淡紫色の花を横向きに多数つける。花は筒状鐘形。花の基部には緑白色の苞がある。花は下から上へ咲きのぼり、花穂は長くなる。果実は蒴果。種子は扁平な楕円形で片側に翼がある。 ギボウシの仲間は学者の間でも分類に諸説があり難しいグループのひとつだが、本種はその中でも最も普通に見られる。本州の日本海側の山地に生えるものは花茎がそれほど高くならず、葉が粉白を帯びるものが多い。これをトウギボウシと称し、オオバギボウシをトウギボウシの亜種または変種とする考え方もある。 若葉はウルイと呼ばれる山菜で、柔らかく美味。ウルイはアイヌ語起源の言葉。最近は栽培され、販売もされている。塩少々を入れた熱湯で茹で、水で晒して絞り、酢味噌や胡麻和えにして食べる。生のものを天ぷらにする。煮浸しにしても美味しい。 日本の伝統的な木造の橋に欄干がある。欄干の柱に葱坊主の形をした飾りがついている。これを『擬宝珠』という。ギボウシの仲間の蕾はどれも、この擬宝珠と似ている。それでこの仲間にギボウシの名前がついた。擬宝珠の『宝珠』とは、竜王の脳から出た頭の尖った火焔形の玉をいう。これは仏教語で如意宝珠ともいって、どんな願いも叶える不思議な珠のことである。橋の欄干の柱を如意宝珠に似せて(これを擬という)つくることで、橋の安全や、橋を渡る人々に幸せがもたらされるように願う。さらに、この橋を邪悪な鬼たちが渡らないよう祈るとか、擬宝珠にはこのような橋の製造者の思いが込められていた。本種は葉が他の仲間の葉より大きいので『大葉』がついた。 出典『野に咲く花』『四季の野の花図鑑』『色と形で見わけ散歩を楽しむ花図鑑』『薬草の呟き』『野草の名前 夏』
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醜男
小紫(コムラサキ) シソ科ムラサキシキブ属の落葉低木。湿地などの近くに自生するが自生種はまれにしかなく、栽培種が逃げ出して野生化したものが多い。自家受粉により結実できるので実つきがよく、一般に市販されているものはほとんどが本種である。庭や公園に近縁種の紫式部(ムラサキシキブ)の名で植えられ、園芸店でもムラサキシキブといって販売されていることもある。葉は小さく、上半分だけに鋸歯がある。花期は6~8月。10~20個の淡紫色の花を葉腋の上部につける。花は雄しべ4本、雌しべ1本が突き出る。果期は9~11月。果実は核果。径3㎜ほどの球形で、葉の付け根より上につく。紫色を帯びた細い枝が長く伸びて枝垂れ、丸い果実が群がるようにつく。白い果実の園芸品種がありシロミノコムラサキまたはシロシキブと呼ばれる。 樹高3mほどの近縁種、ムラサキシキブに似るが、樹高が40~120㎝で小さいことが名の由来。別名のコシキブは、紫式部に対して、優雅な女流歌人として知られた『小式部内侍(こしきぶのないし)』にあやかってつけたともいわれる。また、ムラサキシキブは江戸時代初期までは実紫(ミムラサキ)、玉紫(タマムラサキ)、山紫(ヤマムラサキ)といい、その語源は紫の実が敷きつめられた『紫敷き実』であったようで、このムラサキシキミが変化してムラサキシキブになった。別の説として、紫色の実がたくさん成ることから『紫繁実(むらさきしげみ)』の転訛ともいわれる。他にも、植木屋が源氏物語の筆者『紫式部』にあやかろうと、ミムラサキの実の色にかこつけて命名したのではないかともいわれる。 よく似た紫式部(ムラサキシキブ)、藪紫(ヤブムラサキ)との識別点は次の通り 小紫 ・紫式部より全体に小形 ・葉は小形で若葉に毛がある ・花は葉柄からやや離れてつく ・果実は径3㎜で葉の上側にまとまってびっしりとつく ・茎に稜の出ることがある 紫式部 ・葉は無毛 ・花は葉柄の付け根につく ・果実は径3.5㎜でまばらにつく ・茎はまるい 藪紫 ・葉は裏面に毛が密生する ・花は葉腋に数個つく ・果実は径4~5㎜で葉に隠れる部分もある ・果実の半分を毛のある萼が包む ・茎はまるい 出典『木の実のガイド』『里山の花木 ハンドブック』『都会の木の実・草の実図鑑』
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醜男
紫式部(ムラサキシキブ) シソ科ムラサキシキブ属の落葉低木。野山の雑木林に生える。高さ3mほどに育ち、細身の枝を横方向に広げる。葉は対生し、尾状に先が尖った長楕円形で鋸歯がある。花期は6~8月。対生する葉の付け根に芳香のある淡紫色の小さな花が群れ咲く。筒形の先が4裂して平らに開き、4本の雄しべが突き出る。果期は9~12月。果実は核果。径約3.5㎜の球形で、葉が緑色の頃から紫に色づき、落葉後も枝に残る。園芸店でムラサキシキブといって販売されているものは、ほとんどが近縁種の小紫(コムラサキ)である。 ムラサキシキブの幹は真っすぐ伸びて強く、金槌などの道具の柄、杖、箸、傘の柄に用いられた。特殊な用途として、火縄銃の銃身掃除や弾丸込めの唐子棒に使われた。 江戸時代初期までは実紫(ミムラサキ)、玉紫(タマムラサキ)、山紫(ヤマムラサキ)といい、その語源は紫の実が敷きつめられた『紫敷き実』であったようで、このムラサキシキミが変化してムラサキシキブになった。また、紫色の実がたくさんなることから『紫繁実(むらさきしげみ)』の転訛ともいわれる。他にも、植木屋が源氏物語の筆者『紫式部』にあやかろうと、ミムラサキの実の色にかこつけて命名したのではないかともいわれる。 よく似た小紫(コムラサキ)、藪紫(ヤブムラサキ)との識別点は次の通り 紫式部 ・葉は無毛 ・花は葉柄の付け根につく ・果実は径3.5㎜でまばらにつく ・茎はまるい 小紫 ・紫式部より全体に小形 ・葉は小形で若葉に毛がある ・花は葉柄からやや離れてつく ・果実は径3㎜で葉の上側にまとまってびっしりとつく ・茎に稜の出ることがある 藪紫 ・葉は裏面に毛が密生する ・花は葉腋に数個つく ・果実は径4~5㎜で葉に隠れる部分もある ・果実の半分を毛のある萼が包む ・茎はまるい 出典『里山の植物 ハンドブック』『都会の木の花図鑑』『薬草の呟き』『樹木の名前』
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醜男
凌霄花(ノウゼンカズラ) ノウゼンカズラ科ノウゼンカズラ属の落葉つる性木本。中国原産で古い時代に渡来し、古くから観賞用に植えられる。茎はつる性で、気根と呼ばれる根を出して他の植物や塀などに吸着して生長する。葉は対生し小葉の縁に粗い鋸歯がある。花期は6~9月。枝先の円錐花序に濃いオレンジ色の花が対生して咲く。花はラッパ形で花筒は短い。萼は緑色、穂は長く伸びる。曇天が続いたり、過繁茂して光不足になると落花する。日本ではほとんど結実しないが、秋に実る果実は太い莢状。筋にそって裂けると、中からグライダー型の種子が飛び始め、風で遠くに運ばれる。 近縁種に花が小ぶりな北アメリカ原産のアメリカノウゼンカズラがあり、近年は本種とアメリカノウゼンカズラの交雑種のマダムガレンと推定されるものが多く栽培される。本種とそっくりだが、花の穂はあまり長くならず、萼の色も橙色。南アフリカ原産のピンクノウゼンカズラは別属。 漢字では『凌霄花』と書き、高いところまで生長することから『空をしのぐ花』という意味がある。日本では『凌霄花』を『りょうしょうか』と読み、やがて『のうしょう』から『のうぜん』に変化した。『かずら』はつるの意味。 出典『身近な樹木図鑑』『都会の木の実・草の実図鑑』『樹木の名前』
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94
醜男
馬の鈴草(ウマノスズクサ) ウマノスズクサ科ウマノスズクサ属のつる性多年草。川の土手や畑、林縁などに生えるが、近年は数が減った。全体に無毛で粉白を帯びる。茎は細く丈夫でよく分枝し、他の木や草に絡みつく。葉は互生し、長さ4〜7㎝の三角状卵形。基部は心形で両側が耳状に張り出す。花期は7~9月。葉腋にサックスに似た形の花が1個ずつつく。萼筒は長さ2〜4㎝でゆるく湾曲し、先端は斜めにスパッと切り落としたような形で、やや反り返る。ハエを一晩閉じ込めて花粉を運ばせる。花は甘い香りと蜜で、体長2.5㎜ほどのハエの一種を誘う。花に入ると、密生した毛でハエは戻れなくなる。翌日、雄しべから花粉が出ると毛が萎れてハエは解放される。その時花粉を背負わされて、新しい花に運び込む。果実は蒴果。広卵形で長さ2.5〜3㎝ほど。熟すと果柄ごと縦に6裂する。果実は内が6室に分かれ、室ごとに種子が重なって入っている。種子は薄い台形で片面に張り出し、くぼんだ面には薄い膜がつく。 ジャコウアゲハの食草として知られる。本種には毒があり、好んでこれを食べる虫はジャコウアゲハだけ。触ると臭いにおいを出す。蛹を菊虫と呼ぶ。 葉が馬面(ばめん💬馬の顔につける鎧)に似る。さらに、果実が熟すと基部から6裂して果柄も糸状に6裂してぶら下がる。この形が、馬の首に鈴をつけているように見えることが名前の由来。 出典『野に咲く花』『色と形で見わけ散歩を楽しむ花図鑑』『里山の植物 ハンドブック』『里山のつる性植物』『草木の種子と果実』『野草の名前 夏』
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87
醜男
亜米利加塊芋(アメリカホドイモ)/アピオス マメ科ホドイモ属のつる性多年草。北アメリカ原産。日本には明治時代中期に渡来し、主に花を観賞するために栽培された。花期は6~8月。ネックレス状になる塊根を食べる。掘り出して乾燥させると1ヶ月ほど保存できる。豆類ではあるが、基本的にはイモ類の調理方法でよい。茹でて軽く塩をふっておつまみに、素揚げ、ホイル焼きなど。ホクホクとしてさつまいもとじゃがいもの中間のような味。現在は青森県東部地方や南部地方で食用に栽培される。 近縁のホドイモは北海道から九州にかけて分布し食用となる。花は淡い緑色を帯びつつ、翼弁がほのかな桃色を帯びる。 ホドイモは漢字で書くと『塊芋』。地下に美味しい塊があるものを『ホド』といい、ヤマユリ、カタクリ、ウバユリなどの自生種はもちろん、ジャガイモやサツマイモもかつては『ホド』と呼ばれた。東北地方などでは食用として現代でも『ホド』と呼ばれるが、本種であるほど利用価値は高い。自生種としての『ホド』もホドイモとして残るが、その数は少なく、山野ではなかなか出逢う機会がない。3都県で絶滅危惧種に指定されるに過ぎぬが、実態はもっと少ないかに思われる。 出典『野菜と果物の品目ガイド』『帰化&外来植物 見分けマニュアル950種』
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98
醜男
木斛(モッコク) モッコク科モッコク属の常緑高木。温暖な地域の海岸近くに自生する。庭木や公園樹としても植えられる。幹は真っすぐ伸び、葉は適度な光沢ある濃い緑色が上品で、枝葉が密生して樹形が美しく整うことから、庭木の王様とも呼ばれ人気が高い。枝先に葉が集まって車輪状につき、シャリンバイやトベラに似るが、鋸歯がないこと、葉柄が赤いこと、葉が反り返らないこと、葉裏は明るい黄緑色で葉脈がほとんどが見えないことなどで見分けられる。花期は6~7月。葉の付け根に白い花をつける。花柄はやや上を向き、花は下向きで芳香を放つ。両性花をつける株と、雄花しかつけない株がある。果実は蒴果。球形で秋に赤く熟す。果皮はかたく肉厚で不規則に割れて種子を出す。種子は赤く先端がしぼむ。果実に種子は3〜4個。種子の先に糸状物が残る。果実が全裂開する頃、種子はこの糸状物でぶら下がる。 新年の縁起物として、センリョウ、マンリョウ、アリドオシをモッコクとあわせて箱庭をつくり縁起を担ぐ風習があった。『千両、万両、お金が木の斛(ます)でかき集められ、いつもお金が有り通し』と洒落たもの。モチノキ、キンモクセイと合わせて庭木御三家といわれる。材は緻密で赤色。沖縄県では重要な建築材とされ、首里城正殿に使われた。 名前の由来は、白い花がラン科の石斛(セッコク)に似ているためとも、香りが似ているためともいわれる。木のセッコクなのでモッコクとされた。種子が樹上で赤く色づくことからアカミノキの名もある。 出典『葉っぱで見わけ五感で楽しむ樹木図鑑』『樹木の事典 600種』『都会の木の花図鑑』『草木の種子と果実』『樹木の名前』
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醜男
南天(ナンテン) メギ科ナンテン属の常緑低木。温暖な山野に自生するが、中国からの渡来植物ともいわれる。庭や公園に植えられる。小さな葉が3枚ずつついているように見えるが大きな葉の一部で、1枚の葉は50㎝にもなる。これは、3回3出複葉(💬3出複葉が3回繰り返し生え羽状になったもの)と呼ばれる珍しい形。常緑だが冬に紅葉することもある。花期は5~7月。白い小さな花が円錐状にたくさん咲く。黄色い雄しべが6本ある。果実は液果。径約7㎜の球形で、晩秋に赤く熟す。果実がなった枝は翌年開花しない。 『難を転じて福をもたらす』との縁起担ぎで玄関に植えられる。敷地の鬼門に災難から免れるようにという意味を込めて植えられる。冬の庭を彩る赤い果実は、正月の床の間に飾られたり雪ウサギの目になったりする。果実や枝は有毒な一方で薬や消毒に使われ、手水に浮かべたり料理に添えたりする。食あたりを防いで長寿になるという意味で南天の箸が使われる。葉に含まれる毒素が熱い赤飯の上で熱と水分により腐敗防止作用のあるチアン水素に分解されるため、熱い赤飯などの上に置いて飾りと同時に腐るのを防ぐのに使われる。赤い果実を乾燥させ生薬にしたものを鎮咳剤に用いる。乳白色の白実南天(シロミナンテン)や薄紫色の藤南天(フジナンテン)、橙色に熟すウルミナンテン、支那南天(シナナンテン)などの園芸種がある。 中国の中部以南に産するので南天といい、株立ちの姿が竹に似るから南天竹という。中国名が南天竹で、乾燥果実の薬名が南天実。名前はこれを和音読みしたもの。 正月を飾る赤い果実といえば千両、万両、南天だが、他にも猿捕茨、黒鉄黐、黐の木、藪柑子(十両)、青木、飯桐、七竈、野茨、ピラカンサなど、冬は赤い果実が目につく。これらの植物は鳥に向けて信号を送っている。鳥の視力は鋭い。その目は人間と同様、赤い色を最も刺激的に捉える。鳥に食べてほしい果実は競って赤い色で装う。次いで多いのは黒い果実だが、鳥には紫外線領域も見えているので、人の目に黒く見える果実の中には、紫外線を反射して鳥には色付いて見えるものも含まれる。 これらの果実は、鳥の口にぴったりの飲み込みやすい形に作られている。果実を丸ごと飲み込んでもらい種子を運ばせようという魂胆。赤い果実の内部には柔らかな果肉にくるまれてこっそり種子が仕込まれている。種子は硬くて丈夫な材質に包まれていて、鳥の消化管を通過しても消化されないよう工夫されており、そのまま糞の中に出される。植物は動けないが、果実を食べた鳥が移動した後で糞をしてくれれば、種子は親植物から遠く離れた場所で芽を出せる。 香りに乏しいのも共通の特徴。鳥は嗅覚が鈍いため香りで誘ってもほとんど意味がない。また、冬に多いのは、虫が少ないため食べられる心配がないから、あえて冬に果実をぶつけて誘惑する。 これらの果実は苦かったり渋かったりしてまずく、毒を含むものもあるが、それにも理由がある。もしも果実が美味しければ、鳥がその場で食べ続けてしまい、種子があちこちにばらまかれない。植物は果実をわざとまずくしたり毒を含むことによって鳥が1回に食べる量を制限している。こうして種子は何度かに分けて少しずつあちこちに運ばれる。 冬の赤い果実には植物の思惑が隠されている。 出典『身近な木の実・タネ』『日本有用樹木誌』
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夏櫨(ナツハゼ) ツツジ科スノキ属の落葉低木。山地の日当たりの良い乾燥した場所に生え、庭木にもされる。幹の根元近くから枝分かれし、株立ちの不規則な樹形になる。葉は楕円形または長楕円形〜卵形で縁に細かい鋸歯と尖った毛がある。夏の頃から葉が赤く色づき、秋も赤〜オレンジ色に紅葉する。花期は5~6月。本年枝に鐘形の花を多数つける。色は黄緑から赤まで変化に富む。果実は液果。上部に萼の跡が大きく残るのが特徴。ブルーベリーの仲間で秋に黒く熟す。甘酸っぱく、生でもジャムでも食べられる。ナツハゼの果実にはアントシアニンが他のベリー類の6倍も含まれており、目の疲労回復や血液浄化作用を強く期待できるという。 山の尾根で夏のうちからウルシ科の櫨の木(ハゼノキ)のように赤く紅葉するナツハゼ。紅葉の特徴がそのまま名前の由来となっている。黒い果実の上部に萼の跡が輪状に残る姿を鉢巻に見立て、中国地方ではハチマキイチゴ、山梨などでハチマキブドウ、山形県では鉢巻をした男の子に見立ててヤロコハズマキと呼ぶ。長野県では、茶釜に見立ててブンブクと呼ぶ地方もある。 出典『樹木 見分けのポイント図鑑』『里山の花木 ハンドブック』『木の実のガイド』『薬草の呟き』『樹木の名前』
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醜男
藪虱(ヤブジラミ) セリ科ヤブジラミ属の越年草。野原や道端に生える。葉は長さ5〜10㎝の2〜3回羽状複葉。小葉は卵状披針形で、細かく切れ込み、両面とも粗い短毛が密生する。花期は5~7月。枝先に小型の複散形花序を出し、白色の小さな花をつける。小花柄は4〜10個。総苞片は細長い。果実は分果。長さ2.5〜3.5㎜の卵状楕円形で、全体に刺状の毛が密生する。『ひっつき虫』のひとつで、毛はカギ状に曲がり衣服などによくつく。果実は熟すと2つに分かれる。手で潰すと特異な香りがする。夏が過ぎて秋になると、この香りが少なくなる。 藪に自生し、果実がシラミに似ていて服に付きやすくわずらわしいことが名前の由来。 漢方原料の蛇床子(ジャショウシ)は中国ではオカゼリの成熟果実。名前の由来は、蛇がこの植物の下に好んで住み種子を食べるからと『本草綱目(ほんぞうこうもく💬1596年に刊行された中国の本草書)』にある。日本ではヤブジラミの成熟果実のことで、和蛇床子という。 よく似たオヤブジラミとの違いは次の通り ヤブジラミ ・花期は5〜7月 ・花は白色 ・茎は緑色で毛に覆われる ・果実の柄が短く、果実がひとかたまりに見える オヤブジラミ ・花期は4〜6月 ・白い花弁の縁が紫色を帯びる ・茎はふつう紫色で毛に覆われる ・果実の柄の長さが不揃いなので、まばらに見える ・果実がヤブジラミより大きく紫色で刺が長い 出典『野に咲く花』『草木の種子と果実』『野草 見分けのポイント図鑑』『薬草の呟き』
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