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山草の一覧

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玉簾(タマスダレ)/ゼフィランサス ヒガンバナ科タマスダレ属の多年草。明治時代初期の1870年頃に観賞用として渡来したブラジル原産の帰化植物。人家周辺でしばしば逸出、野生化している。地下に直径2~3㎝のラッキョウに似た形の鱗茎(りんけい💬俗にいう球根)から、長さ40㎝ほどの扁平で線形の葉を、秋から冬にかけて叢生する。花期は5~10月。高さ30㎝ほどの花茎をだし、直径6㎝ほどの白色の6弁の花を上向きに単生する。花は日光が十分当たると開き、夕方日が陰ると閉じ、翌日日が昇ると開く。これを数日間繰り返す。鱗茎はよく分球して群背逸する。果実は蒴果。楕円体を3つくっつけたような形。成熟すると裂開して種子を落とす。種子は果実に7~20個入る。種子はやや扁平な楕円形や卵球形で、片面が丸く反対面には鈍い稜がある。長さは6~7㎜。 タマスダレの名前は、葉が並んでいる様子を簾に見立て、花の白さを玉に例えた。同属で花色が淡紅色のサフランモドキ(江戸時代末期に渡来した帰化植物)などとまとめてゼフィランサスという属名で呼ぶことがある。 全体に有毒成分を含み、葉をニラと、鱗茎をノビルと誤食して中毒事故が起きる。症状は激しい吐き気と嘔吐、下痢による脱水性ショック。嘔吐、下痢が続くことで身体から水分が失われて、胃腸炎、呼吸不全、痙攣などを起こして死に至る。アルカロイドのリコリンはヒガンバナ科の植物の多くに含まれており、致死毒になりうるが、中毒死することが少ない。それは、催吐性があるため、たとえ口にしても胃の中のものを吐き出してしまうために、吸収される毒成分の量は少なく、大事に至ることは少ないからである。 出典『日本帰化植物写真図鑑』『帰化&外来植物見分け方マニュアル 950種』『都会の草花図鑑』『草木の種子と果実』『薬草の呟き』
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石見川(イシミカワ) タデ科イヌタデ属のつる性一年草。道端や田の畦、河原などに生える。茎は長さ1〜2mに伸び、下向きの鋭い刺でほかの草や木に絡みつく。葉は互生し、長さ2〜4㎝の三角形で、葉柄は葉身の基部近くに楯状につく。托葉鞘は鞘状の部分は短く、上部は葉状に広がって円形になる。花期は7~10月。茎の先や葉腋に短い総状花序を出し、淡緑色の小さな花が多くかたまってつく。花序の基部には丸い葉状の苞があってよく目立つ。花冠の裂片に見える肉厚の萼片はほとんど開かない。径は3〜4㎜で5裂する。萼は多肉質になって痩果を包み、直径約3㎜の球状になる。色は緑白色から紅紫色、青紫色へと変化する。痩果は黒色で光沢がある。 名前の由来にはいくつかの説がある。 ①現在の大阪府河内長野市の近くに石見川村があった。江戸時代中期の『倭訓栞』によると、薬草『杠板帰』としての本種は、石見川村のものが良質だったので、イシミカワと呼ぶようになった。 ②江戸時代中期の『和漢三才図絵』によると、イシミカワのつる葉は、骨折の場合に膠の如く骨を接ぐ。骨を石の如くつけるので『石膠』。石膠が『いしみかわ』に訛った。 ③石のようにかたい果実に皮があることから。 出典『野に咲く花』『野草の名前 秋』『里山のつる性植物』
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醜男
秋明菊(シュウメイギク) キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草。人里近くの林縁に生え、庭にも植えられる。古い時代に中国から入ってきた栽培品が野生化したと考えられる。高さは50~80㎝。根生葉は3出複葉で長い柄がある。小葉は3~5裂し、不揃いの鋸歯がある。茎葉は2~3個が輪生し、上部のものは小さく、ほとんど無柄。花期は9~10月。花は直径約5㎝で、花弁はない。萼片は約30個あり、外側のものは厚くて淡緑色を帯び、内側のものは紅紫色または白色の花弁状。花は変化が大きく、一重で萼片が5枚程度のものもよく見られる。結実することは稀で、地下匐枝を出して殖える。 全草に毒成分のプロトアネモニンを含む。花を傷つけたときに出る汁に含まれており、局所刺激作用があって、発赤、発疱、化膿などの皮膚炎を起こす。この花に触れるときは手袋を使ったほうが良い。田舎では家畜が食べてしまい、胃腸障害などの中毒症状が多発しているため、ウシゴロシの別名もある。 鎌倉~室町時代初期に中国から渡来したと推定される。中国へ渡航した修行僧が出身寺院への土産として持参した。寺院に届けられたシュウメイギクは美しく、日本にはないので『黄泉の国』の秋咲きキクの意味の『秋冥菊』とつけた。その後、『冥』が『明』になった。別名の貴船菊(キブネギク)は、かつて京都の貴船に野生化したものが多かったことによる。名前に菊とあるがキク科ではなく一輪草(イチリンソウ)の仲間。英名はジャパニーズ・アネモネ。 出典『野に咲く花』『薬草の呟き』『帰化&外来植物見分け方マニュアル 950種』『野草の名前』
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赤地利蕎麦(シャクチリソバ) タデ科ソバ属の多年草。アジア原産の帰化植物。昭和初期に中国から薬用植物として導入され小石川植物園に植栽された。各地で薬用として栽培され、逸出して野生化している。河川敷などの水辺では無数の大群落を築く。昭和36年の『日本薬局方』に高血圧症や脳出血治療薬のルチンが収穫されてから、ソバに代わる原料としてシャクチリソバが盛んに栽培された。その後、ルチンを多く含む生薬の槐花(かいか💬エンジュの花)が輸入され始めると、シャクチリソバの栽培は姿を消し、一部が野生化している。花期は7〜10月。径5〜6㎜果実は3稜のある三角形。黒褐色。 全草にルチンを多く含む。ルチンはアンチエイジング、毛細血管の強化、循環器系の保護・強化などで人気を誇る成分。普通のそばよりもずっと多く含まれるので、様々な健康機能食品などに応用される。一方、ルチンが豊富であるがゆえに、えぐ味が強い。食べられるが工夫が必要。蜂蜜や他の薬草で味を調える。ビタミンCとの併用が作用を助けるともいわれる。 赤地利(シャクチリ)というのは中国から持ち込まれた時の漢名で、牧野富太郎が和名として命名した。宿根蕎麦(シュッコンソバ)ともいわれる。そば粉の原料とされるふつうのソバは結実すると短期間で枯れるが、本種は根が残れば毎年新芽を出す。 出典『帰化&外来植物見分け方マニュアル 950種』『日本帰化植物写真図鑑』『薬用植物辞典』『季節の薬用植物150種』『薬草の呟き』
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芙蓉(フヨウ) アオイ科フヨウ属の落葉低木。中国原産で古くから庭木として植えられ、暖地の海岸に近い林などに野生化している。日当たりのよい環境を好み、大気汚染などに強く丈夫なので、道路沿いに植えられることが多い。葉は5角形で浅く3~7裂し、柄は長い。花期は7~10月。直径10㎝以上にもなる大輪の一日花を次々と咲かせる。淡紅色または白色の5花弁で、花はしぼんでも落ちずに翌日も残る。果実は蒴果。球形で表面に多くの毛があり、秋に熟すと上向きに5裂して多くの毛のついた種子を出し、冬にも枝に残る。 名前は中国名『木芙蓉』の木を略して音読みしたもの。中国では『芙蓉』は蓮を意味し、『木芙蓉』は『花が蓮に似ている木』、すなわちフヨウを意味する。日本でも平安時代は芙蓉と木芙蓉が使い分けられていたが、いつしか『木』の1字が忘れ去られ、『芙蓉』の2文字だけでフヨウを表すようになった。また、八重咲きの園芸品種『酔芙蓉(スイフヨウ)』は、朝開いたときは白色だが、段々と赤みを帯び、夕方には紅色になり酒に酔ったように見えることが名前の由来。近年は草本でフヨウ属の仲間のアメリカフヨウが盛んに栽培される。アメリカフヨウは葉に裂け目がなく、花が大きく数も多い。 出典『樹木の事典600種』『樹木の名前』
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醜男
山椒(サンショウ) ミカン科サンショウ属の落葉低木。野山に自生する日本古来の香辛料。丘陵や低山の林に生え、庭で栽培もされる。高さ約3mになる。枝や葉に赤褐色の刺が2本ずつ出るのが特徴。葉は羽状複葉で互生する。花期は4~5月。花は淡黄緑色で目立たない。雌雄異株。果実は雌株につく。果実は蒴果。2〜3個の分果となる。分果は球形で径約5㎜。熟すと2裂し、種子は糸状の種柄でぶら下がる。種子は分果の中に1個。太い幹はこぶだらけなので、すりこ木として使われる。 春の若葉は『木の芽』と呼び、吸い物や筍料理に添え、薬味に利用される。辛味を持つ若い果実は『実山椒』と呼びチリメンザンショウなどの佃煮にされる。熟した果実の果皮を粉末にしたものが『粉山椒』で、鰻の蒲焼きに添える。『花山椒』は煮物に利用される。生薬として胃薬や整腸剤、正月の屠蘇散にも使われる。『七味唐辛子』、中国料理の『花椒(ホアジャオ)塩』『五香粉』の材料。刺がほとんどない朝倉山椒が最も風味が良い。 サンショウは日本原産で、古名を『はじかみ』という。古事記にも登場するほど古くから利用されてきた。はじかみの語源は、『花から実が爆ぜるカミラ(ニラの古名)』の意ともいう。辛くて『歯が蹙(しか)む』という説もある。2〜3世紀頃にショウガが日本に渡来し、辛い味からこれも『はじかみ』と呼ばれたため、サンショウ、ショウガと区別されるようになった。大陸の花椒、胡椒と区別して、日本の『山に生える椒(はじかみ)』と呼んだとみられる。 出典『里山の植物 ハンドブック』『里山の花木 ハンドブック』『草木の種子と果実』『食材図典』『樹木の名前』
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醜男
紫苑(シオン) キク科シオン属の多年草。中国、朝鮮半島、シベリアなどが原産地の野菊の一種。古い時代に薬用植物として朝鮮か中国から渡来したが、花が美しいので平安時代から観賞用に栽培され、枕草子や源氏物語にも記載がある。中国地方と九州の山地に自生するが、栽培されていたものが逸脱して野生化したものと考えられる。高さは1〜2m、茎にはまばらに剛毛がある。根生葉は花の頃は枯れてないが、大型のへら状長楕円形で、大きいものは長さ65㎝にもなる。茎葉は長さ20〜35㎝、幅6〜10㎝の卵形または長楕円形で、上部のものほど小さく、幅も狭い。花期は8~10月。頭花は直径3〜3.5㎝。舌状花は1列で淡青紫色。花柄には短毛が密生する。総苞は長さ約7㎜の半球形。総苞片は3列で先は尖り、縁は乾膜質。外片は少し短い。痩果は長さ約3㎜のやや扁平な倒卵状長楕円形で黒紫色を帯び、毛がある。冠毛は汚白色または赤みを帯び、長さ6㎜ほど。 シオンは『紫苑』という中国からの生薬名を音読みした名前である。シオンの根が紫色を帯びていることから『紫苑』の名前がある。生薬の『紫苑』は鎮咳と去痰の薬効があり、今日も生薬として利用されている。シオンの導入は薬用が主であったが、花が美しかったので観賞用に栽培され、普及するにつれ野生化していった。 出典『野に咲く花』『薬草の呟き』『都会の草花図鑑』『野草の名前 秋冬』
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彼岸花(ヒガンバナ)/曼珠沙華(マンジュシャゲ) ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草。古い時代に中国から渡来したとされる。田のあぜや土手などに群生する。日本全国どこでも秋の彼岸の頃に地下の鱗茎(りんけい💬俗にいう球根)から花茎を立て、赤い花を数個開く。花茎は30~50㎝になり、鮮紅色の花を散形状に5~7個つける。花被片は長さ約4㎝の狭披針形で6個あり、強く反り返る。雄しべ6個と雌しべは花の外に長く突き出る。花が終わると種らしきものはつくが枯れてなくなる。種ができず鱗茎(球根)で殖える。葉は晩秋、花後に伸びて地面に広がって冬の間じゅう青々として鱗茎(球根)に栄養を送り、翌年の5月頃に枯れる。鱗茎(球根)のまま夏を越し、秋の彼岸の頃に花を咲かせる。なお、花が白いシロバナマンジュシャゲは、本種と鍾馗水仙(ショウキズイセン)の自然交雑種。 全体に猛毒であるアルカロイドのリコリンを含み、誤食による中毒例がある有毒植物。特に鱗茎(球根)に多く含むが、飢饉の際は澱粉を採り、水にさらして毒抜きをして食べた。根にも有毒成分が含まれており、その成分を害虫や害獣対策に利用したため、今でも田畑のまわり、墓地などで多く見かける。 ヒガンバナ属(ヒガンバナ、ナツズイセン、キツネノカミソリなど)は葉見ず花見ず(ハミズハナミズ)といい、花の季節には葉がなく、葉が茂っている頃には花が咲かず、花と葉が出会うことはない。お互い姿を見ないので思い合っているだろうと思われ、『相思華』ともいわれる。秋の彼岸の頃に咲くことから彼岸花の名が付いたが、他にも死人花、火事花、仏花など多くの異名を持つ。曼珠沙華(マンジュシャゲ)は梵語で『天上に咲く赤い花』という意味。 出典『野草・雑草の事典530種』『里山の植物ハンドブック』『野に咲く花便利帳』
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青の栂桜(アオノツガザクラ) ツツジ科ツガザクラ属の常緑矮性低木。高山帯の雪田跡や礫地に群生する。高さ10〜30㎝。葉は広線形、長さ5〜15㎜、裏面の主脈に白色の細毛を密生し、縁に細鋸歯がある。萼の外面には腺毛を密生する。花期は7~8月。花は枝先に4〜7個ずつ下向きにつく。花柄は黄緑色。花が終わると花柄は伸びて直立し、果実は上向きになる。萼は閉じて果実を包み込む。 ツガザクラ類は雑種ができやすく、典型的な形のものはわりに少ない。本種はオオツガザクラとごく近縁で葉は酷似する。高山帯での分布は広く、色などに変異も多い。ツガザクラとアオノツガザクラの雑種群には、花冠の形がツガザクラに近いシロウマツガザクラ、花冠が壺形に近く、萼が有毛のセイカコツガザクラなどが命名されている。枝が長く伸びるハイツガザクラも両者の雑種起源とする見方もある。 サクラソウをはじめ、いくつかの草や木にサクラの名前がついている。高山の常緑小低木の中に、花色が桜と似ている種があった。壺形の花が淡紅色で、基部の萼が茶紅色の種である。桜の花弁と萼の色が似ている。それが本種の仲間のツガザクラの花である。本種は花が淡黄緑色なので青がつきアオノツガザクラとなった。なお、ツガザクラの葉はコメツガの葉に似るためツガがついた。 出典『高山に咲く花』『夏の野草』『西穂高の花100選』『野草の名前 夏』
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