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健太の冒険の一覧

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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 30 今日は牛の子が生まれるんだ。 今から出かけるがついてくるかね。 先生が健太にたずねた。 すると、看護師のマリさんが心配そうに口をはさんだ。 先生、良いんですか? あぁ、大丈夫だ。 健太くんには、全部が勉強だ。 そう言うと、先生は健太をのせて往診に向かい、その道々牛のお産について説明した。 牛のお産の前後は農家が一番気を遣う時期でね。牛のお産は産気づいてすぐというわけではないんだよ。農家は何日も前から氣を配って牛の様子を見守るんだ。 はじめに、牛のお産が近づくと、子宮の外の出口が緊張して、糊状の粘液が出てくる。だが、その日はまだお産は始まらない。 子宮の出口が1〜2指幅に開いて、粘液が少し緩くなったら、お産は少し進んで明日か明後日になる。 子宮の出口が3指幅に開いて、粘液が緩くなったら、お産は今日か明日に近づく。 子宮の出口が拳が入るくらい開いて、胎胞(牛の赤ちゃんが包まれた袋)が触れるようになったら、お産はやっと12時間以内くらいの目安になる。 そして、やっと牛の足胞が外陰部から見えてくると、そこから初産の牛で2時間以内、経産だと1時間以内に産むことになるんだ。 長い道のりだろう。 そして、お産は何度も子供を生んだ牛でも、毎回順調とも限らないんだ。君のところの花子の時も、難産で僕が呼ばれたね。 健太は、花子のお産を思い出して、こくりと頷いた。 今日のお産は産気づいてからずいぶん時間がたつらしい。どうも難産らしいから、すぐ来て欲しいと呼ばれたんだよ。 先生の厳しい表情に、健太も緊張しながらメモしていたが、突然、窓のそとの風景に嬉しそうに声を上げた。 あっ!ヒゲジイの家だ! そっかぁ、ヒゲジイ家の牛のお産だったのかぁ! 車が細い小道を曲がった先に見えたのは、健太の知ってるヒゲジイの家だった。 ヒゲジイは、ヒゲを生やしているからと健太のつけたあだ名で、本名は日毛さんと言った。 村で牛を飼っているのは、健太の家とヒゲジイの家2軒だけで、父親どおしが懇意にしており、小さい頃から健太もよく父に連れられて訪れ、子供のいないヒゲジイに孫のように可愛がってもらっていた。 そうだよ。だか、産気づいてから時間が経って母牛もぐったりしてしているらしい。 牛はもちろん命懸けだが、農家も獣医も真剣勝負だ。しっかり見ておくんだよ。 そう言うと先生は、車を降りて健太を連れ足早に牛舎に向かった。 牛舎につくと、ヒゲジイが走って先生を出迎えた。 先生、来てくれて良かった! どうも、1日たつが生まれる様子もないんですじゃ。母牛も弱ってきたもんで…。何とか助けてください!お願いします。 先生は頷くと、小走りにヒゲジイの後に続いた。 🐄 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GS繋がりに感謝♡
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 29 空よりも青い碧 綿雲よりよりも 白いしろ あの日 幸せの中にいたことに ずっとあとに 氣づく ふっと感じる 染みるほどあたたかな光 甦った遠い記憶の あなたの声 今 あなたに会えたら 伝えたい言葉が あるんだ 🌿 健太の見学3日目 その日は、病院は比較的静かだった。診察の合間に、先生はいろんなエピソードを話してくれ、健太はそれをノートにまとめた。 1日の診察が終わる頃、1本の電話がなった。先生はうんうんと話を聞いていたが、やがて沈黙の後、静かに受話器を置くと言った。 昨日診察に来たはるさん家のシロくんがなくなったそうだ。電話口のはるさんは泣いていた。昨日点滴をしてもらってシロくんが少し楽そうになったこと。穏やかに眠るようになくなったこと。そして話を聞いてもらえて、心の整理になったとお礼を言われたよ。 そう話す先生の目元に涙が光っていた。 そして、 さぁ、診察は終わりだ。 ちょっと出かけてくるか。 そう言うと、白衣を脱いで外に出かけてしまった。 唖然として、健太がドアのほうを見ていると、看護師のマリさんが笑っていった。 大丈夫よ。先生はドライなふりをしてるけど、本当はとっても患者さん思いなの。今日みたいなことがあると、いつも大好物を買って、笑顔になって戻ってくるのよ。 それがパフォーマンスなのか、本心なのかわからないけどね…。 まぁ、見ててごらんなさい。 マリさんがいたずらっぽく笑って言った。 そして、その言葉通り、30分もしない内に、シュークリームの箱を大事そうに抱えて、笑顔の先生が戻ってきた。 ねっ! マリさんが健太にウインクして見せた。 さぁさあ、お茶にしよう! 先生がにこにこと幸せそうに、箱を開け、シュークリームにかじりつく。それを見ながら、健太と看護師さんも、シュークリームを口にした。 そして、先生の冗談に診察室が笑いに包まれた。 健太はふと思った。 凄いなぁ、先生はこうやって空氣を作ってるんだ。優しくて暖かい事と、感情に巻き込まれない事は別なんだ。流されない、そしてちゃんと切り替えて自分に戻ってくる。僕も、いつか、そんな大人になれるかな。 健太はそっとノート「流されない」「暖かい空氣を作る人に」と書き込んだ。 🏷️so・raの小さな物語 🏷️たぬき桜 🏷️健太応援団 🏷️GS繋がりに感謝♡
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 28 ひ とは誰でも め には見えない こ ころの宝を持っている う れしい事ばかりじゃない人生の そ の行く道に出会った 小さな花でさえ 人生を支える 力をくれることもある そうして一歩 また前を向く 今までも 今も 道の途中 🌱 健太の見学2日目 きむら動物病院は、町外れの小さな病院だったが、朝から絶え間なく人が訪れていた。 お昼が過ぎて 午後3時 やっと昼食を取ろうとした時に、一人のお婆さんがドアを開けた。 休憩の時間なのは知ってるんですが、どうか見て下さいと、ぐったりしたわんちゃんを抱いていた。 やぁ、はるさん、久しぶりですね。こんな時間に珍しい。 先生はドアを開いて、気さくに声をかけた。 シロくん、ずいぶんぐったりしてるようだが…かまいませんよ、さぁどうぞと、はるさんを診察室に招き入れた。 どうされましたか? はるさんの抱いていた犬を預かると、先生が聞いた。 もうずっと食欲がなくて、あまり食べなくなってたんです。暑さのせいかなと思って様子を見てたんですが、水も飲まなくなって…。この子は大丈夫でしょうか? そう言ってはるさんは、心配そうに 犬に目を向けた。 そうでしたか。 はるさんの話を聞きながら診察していた先生が、しばらくすると口を開いた。 ずいぶんと衰弱しています。 それに、口のなかとお腹に大きなしこりがあります。癌かもしれません。いろんな検査をすれば、詳しい診断ができますが、この衰弱のようすじゃそれすらも負担になってしまうでしょう。今日は点滴をして、様子を見てはどうでしょう? はるさんを優しく見つめると先生がたずねた。 そうなんですか。 はるさんは、震える声でこたえると、ポタポタと涙を落とした。 もっと早く連れてきたら良かったことは、知っていたんです。一人暮らしの私にとって、この子は大切な家族だから。でも…重い病気だったら…日々の暮らしが精一杯でそのお金も払えないからと、診察に来るのをためらってました。…どんどん弱って、ついに水も飲めなくなって、やっと連れてくる決心がついたんです。弱ってくこの子を看病しながら、見守ってるだけしかできなかったんです。もっと早く連れてきてあげれば…。 そう言ってポタポタと涙を落とすはるさんの背中を、看護師さんが優しくさすった。 ずっと心配されてお世話されてきたんですね。大丈夫ですよ。はるさんの想いは、ちゃんとこの子に伝わってますよ。シロくんは、とても衰弱していますので、点滴をしてあげると少しは楽になるかもしれません。今日は点滴をされますか? はるさんが頷き、その日シロは点滴を受けて帰っていった。 点滴をしている間、先生は、はるさんからシロとの生活やこの間どんな看病してきたか、はるさんの言葉に時間をかけて静かに耳を傾けていた。 はるさんの診察が終わり、みんなが昼食を食べたのは、もう夕方になってからだった。 先生、犬の癌って多いんですか? 健太がたずねた。 年をとると多くなるね。癌の宣告をするのは人も犬も辛いものだ。と先生がこたえた。 動物病院はね、病気や治療方針を飼主に理解してもらうために、まずその飼主のお人柄を深く理解することが大切なんだ。 どんな価値観を持っているか、 家族の中でペットがどんな存在か、家庭環境や金銭的な状況も考慮して話を進める必要があるんだよ。 獣医師として見れば、血液検査やレントゲン、超音波、もっと高額な検査もある。…いろんな検査で正確な診断をめざすこともできる。 だけど、もしも、もうすぐ命の終わりが来そうなペットに、苦しい思いをさせて検査をすることをどう思うかね。 はるさんは、旦那さんがなくなった後、愛犬のシロくんと支えあうように生きてきたんだよ。前回は2年前だ。あの時は元気だったが…。 犬のがんの手術は、平均10万〜15万円くらいかかるし、さらに抗がん剤治療は1回3万円以上する。それを月に2、3回を最低でも半年から1年続ければ軽く見積もって年間70万円。手術も入れるとトータルで100万円くらいかかってしまう。ここはバスも来ないから、通院に払うタクシー代もバカにならない。 シロくんの存在がどれ程、はるさんの支えになっているか、今までの様子から良くわかる。だけど、診察費用の心配をして、ここに連れてこれなかったはるさんの思いも、痛いほどわかるんだよ。 どんなに、悔しくて悲しいか。 もしも、シロくんがなくなったら…はるさんのこれからも気がかりだ。だけど、僕らにできることは、ここでの時間だけ。思いを誰かに伝えることで、少し心の整理がつくこともある。点滴の間話を聞いていたのは、そんな気持ちだったからなんだよ。 診察で無償で助けてあげたいと思うこともある。だけど、噂は広まるから、一人にサービスすればやがて全員にサービスしなければならなくなる。仕事だからね…そこに葛藤がある。だけどね、それでもできることに真心を注ぐことはできると、私が先生と尊敬していた人が教えてくれた事なんだ。戦時中、もっと厳しいときの話をたくさん聞いた。僕はその言葉を忘れないようにしてるんだよ。 先生はそう言うと、健太の肩をポンとたたきにっこり微笑むと、昼食もそこそこに、午後の診察に向かっていった。 🏷️たぬき桜 🏷️so・raの小さな物語 🏷️健太の冒険 🏷️GSの繋がりに感謝♡ 🌿ヒメコウゾ🌿 花言葉 過去の想い出 源氏山から北鎌倉へ 険しい山道の途中で出会った ヒメコウゾ(姫楮) クワ科 コウゾ属 コウゾは和紙の原料であるが、ヒメコウゾはコウゾとカジノキの雑種と。 初めて見た♪ 野苺みたいな可愛い実💖 甘いのかな?美味しいのかな? 好奇心で、実を一粒噛んでみた ジャリジャリ…😅甘くなかった💦
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 27 む なしくて く るしくて げ んきが なくなってしまった時 信念 をもって精一杯努力しても どうにもならん時もある そして信念を見失ったと人は嘆くが 信念は今の心を信じると書く 昨日でも 明日でもない 今なんだよ 信じればいつも今そこにある それでも顔を背けたくなるときは 一旦止まって 好きなものを 腹一杯食うことだ そう言って笑うと、獣医の先生は、シュークリームを大きな口を開けてかぶりついた。 そして、2つ目に手を伸ばした所で、 だめです! お体に触りますから、1個だけです。と、看護師さんが取り上げた。 なぁ、あと1個ぐらい良いだろう? 健太くんももう一つ食べたいよな。 先生は同意を求めるように、健太のほうを見ていった。 いえ、僕はもうお腹一杯です。 そう健太が笑って答えると、 ほら、ご覧なさい。健太くんだってわかっているんですよ。と、看護師さん。 なんだよぉ。 厳しい監視役が一人 増えちゃったのかぁ。 先生のおどけた声に、看護師さんも笑い、診察室は和やかな笑いが広がった。 🌱 夏休みの初日、その日を待ちかねた健太は、自由研究の取材に父から紹介された獣医さんを訪れた。 メモの住所には、きむら動物病院と書かれていた。健太がその建物を見つけたちょうどその時、犬を抱いた女性がお辞儀をしながらドアから出てくるところが見えた。続いて見送りに出てきた日に焼けた恰幅の良い白髪の男性を見て、健太が驚きの声をあげた。 あっ、先生だ!! 父から詳しい話もないまま、行けばわかると言われて、メモをたよりに到着した健太は、父が取材を頼んでくれた獣医さんが、いつも花子や家の動物たちを診察してくれる、健太が大好きな、憧れの獣医さんと知って、健太は胸が一杯になって駆け出した。 獣医さんは健太を見つけると笑顔を向け、手を振った。 やぁ、健太くん! 待っていたぞ。先生は健太の肩に手をのせ、ドアを開けて健太を室内に招き入れた。 清潔で温もりを感じるこじんまりした診察室。先生の傍らには、20代くらいと思われる優しそうな看護師さんが立っていた。 はじめまして、健太くん。 先生からお話しは聞いてました。看護師のマリと言います。先生は大雑把だから、何か困ったことがあったら、遠慮なく言ってね。 とマリさんは手を出した。 先生は、マリさんと握手して挨拶をする健太をニコニコと見ながら、 おい、大雑把はないだろう。 言うなら。おおらかって言うんだよ。未来有望な若者に、いい加減なことを教えちゃ行かんぞ。 わっはっは。 そう愉快そうに笑うと、健太に椅子をすすめた。健太は、よろしくお願いしますと深々とお辞儀をして、先生に向かい合って座った。 さて、健太くん。おおよそのことはお父さんから聞いているが、単刀直入にたずねたい。君は私の所で何を学びたいのかね。 先生に聞かれて、健太はカバンから一郎の観察記録やそれまで調べた牛の成長や獣医の仕事など、まとめたノートを先生に渡した。 これは、僕が一郎の成長の記録と獣医さんの仕事について、今日までまとめてきたノートです。始めたきっかけは、自由研究の宿題が出たからだけど…一郎が生まれたとき、先生の仕事を見て凄く感動して、将来獣医さんになりたいって前よりも憧れて…。それに、助けたい生き物にであった時、僕にも知識があったらって思って。 それで、いろいろ調べたんだけど、情報が少なくて…それなら、自分で直接見たり聞いたりして調べたいって思ったんです。 健太の言葉を頷きながら静かに聞いていた先生は、健太から渡されたノートを読み始めた。 今日のお花 🌸 ムクゲ 花言葉「信念」 🏷️たぬき桜 🏷️健太の冒険 🏷️so・raの小さな物語 🏷️GS繋がりに感謝
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 26 健太の家の山の畑の入り口に、 1本の百日紅の樹があった 畑の周りの雑草を一通り刈り終わると、父が百日紅の木の下で、一休みしようと健太を呼んだ。 畑の脇には、山からのチョロチョロと湧き水が流れ出ている。その小さな流れにつけていた、真っ赤なトマトを取り出すと、父が健太に放って渡した。 よく冷えてるぞ! 最高だね!父さん。 父からのトマトを受けとると、健太は満面の笑みでかぶりついた。 野良仕事の至福の時間だな。父も健太の隣に腰を下ろして、トマトにかぶりついた。 百日紅の枝を、山から吹いてくる風が優しく揺すっていく。 汗をぬぐうと、百日紅を見上げていた父が口を開いた。 この樹は、お前が生まれた記念に植えたんだよ。殺風景な山の畑も少し華やかになって、楽しみができるかなと母さんが言ってな。 しばらく健太と樹を見上げていた父が、健太に向き合うと、お前も大きくなったなぁとしみじみ言った。 母さんから聞いたよ。 夏休みの自由研究に、牛の子の観察をしようと思ってる話や、将来獣医になりたい夢を持っていて、獣医の仕事を調べたいと思ってると。 それでな、この間、懇意にしている獣医さんに相談してみたら、それならうちに取材や体験をしに来てみてはどうかなと言ってくれたんだよ。 どうだ?お前が本気で取り組むつもりなら、獣医さんにお願いしてみるが…。 父の言葉に、健太は飛び上がって父に抱きついた。 本当?!父さん! もちろんだよ!凄いや!ありがとう。ありがとう父さん! 健太の喜びように、父も笑いながら続けた。ただし、期間は一週間だけだぞ。それに、遠い距離だが、隣町まで毎日自転車で通えるか? もちろん! もちろんだよ、父さん! やったぁ、やったぁ! 小躍りしながら父の周りをぐるぐる駆け回る健太の声を、蝉の合唱が追いかけた。そんな健太を見守る百日紅の花を、風がそっと揺すっていった。 🏷️たぬき桜 🏷️健太の冒険 🏷️so・raの小さな物語 🏷️GS繋がりな感謝♡
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 25 花子の産んだ子牛はすくすく育った。朝起きると、顔を洗うのもそこそこにまっすぐ子牛のもとにかけていく健太を、 「まるで恋人に会いに行くみたいだな。いっそ牛小屋の隣にお前の部屋を作るか?」と父がからかった。 子牛が産まれてから家族の笑顔も増えていた。花子の産後の回復も順調で、健太は暇さえあれば牛小屋に入り浸って過ごしていた。たぬ吉の事件以来、笑顔が少なくなった健太を心配していた両親は、その嬉々としたようすが何よりも嬉しかった。 梅雨が開け、蝉が賑やかに鳴き始めた夏休み間際のある日、健太たち6年生は、卒業文集に載せる「将来の夢」についての作文と、自由研究の宿題が出された。 えー!自由研究だって~。 うざ~、だる~。 不満を口にする子供たちに、 適当にやってる研究はやり直しですよ!と先生から釘を刺された。 やり直しかよ!そんなの聞いたことないぞー! 先生に抗議するたび、どんどんハードルが上がっていくので、ついに、子供たちは共同研究をしようとか、良い本がある真似すれば良いよ!と知恵を出しあい始めた。 そんな声を聞きながら、健太は自由研究かぁ、楽しみだな。と一人にやにやとしていた。 夏休みに入ってから、いつもあちこちと野山を飛び回っていた健太が、机に向かって何かを調べているかと思うと、深いため息をつくようになっていった。そんな健太の変化を両親は心配しながら見守っていた。 ある日、健太は母から玉ねぎの皮むきを頼まれた。いつもは皮むきをしながら母といろんな話をする、2人にとって楽しい時間だった。でも、その日は健太が何かを考えてるようすで、口も開かず黙ったままだった。そして、ついに大きなため息をついた健太に、母が手を止めて訪ねた。 今日は無口だし、ため息なんて珍しいわね。一郎が産まれてから楽しそうにしていたのに、どうしたの?このところ何か調べたりもしてるようだけど…何か悩んでることでもあるの?良かったら話してみない? 母の言葉に、ハッとして顔をあげた健太は、少し考えるように躊躇していたが、ゆっくり口を開いた。 母さんにはお見通しだね。 実は、夏休みの宿題に自由研究をしてくるように言われたんだ。 それで、いつか獣医になりたいと思っていたから、よし!と思って、一郎の成長や獣医の仕事について調べようと思ったんだ。楽しそうだし、簡単だって思ってたんだけど…。 一郎の観察は楽しいし、順調なんだ。でも…獣医の仕事は調べても、決まりきったことばかりしか書いてなくて、挫折しちゃってるんだ。もっと、何て言うか生きた情報が欲しいなって。僕が一郎が生まれた時に助けてくれた獣医さんに感動したみたいな何かを書きたくて。 それに、実際に獣医になるにはどんな勉強したら良いかとか、どんな道があるかとかも知りたいんだ。そこで、止まっちゃって…。 そう言うとまた健太はため息をついた。 まあ、自由研究を。獣医さんのお仕事は素晴らしいけど…実際の仕事の事を調べるのは難しいわねぇ。 そう言うと母さんはしばらく考えているようすだったか、やがて顔をあげると優しく微笑んで言った。 獣医になるのも、そのお仕事も、考えてる何倍も大変な事かも知れないわね。だけど、知りたいと思った時、自分の目でみて確かめたり考えることは大切よね。 えっ!母さん! 何か心当たりがあるの? 健太が目をキラキラさせて母に訪ねた。 そうねぇ、何か方法があるか、お父さんにも聞いてみるわね。 やったぁ! 健太が飛び上がってガッツポーズを取るのを母は笑って見上げながら、 さぁ!あと一息!皮むきを頑張りましょう。そう言って皮むきを再開した。健太は、さっきとは打って変わって満面の笑みで、腕まくりをして皮むきを再開した。 賑やかな蝉の声 百日紅をふきすぎる風に 庭先の風鈴がチリンと鳴った。 🏷️たぬき桜 🏷️健太の冒険 🏷️so・raの小さな物語 🏷️GS繋がりに感謝♡ 🌿写真は、6月に訪れた北鎌倉の源平山公園の山道に咲いていた山百合です。とても綺麗でした。 ところで、皆さんは、🧅玉ねぎを長持ちさせる工夫をご存知ですか? 農家は、玉ねぎを畑から収穫後にビニールハウスなどに干して乾燥させてから出荷します。そのまま、ある程度乾いたものを保存すると、時々茶色の外皮の内側に黒かびがついている玉ねぎあり、これをそのままで保存すると、そこから腐り始めてしまうんです。そこで、一手間でも、乾いた外側の皮をむいて、タオルで玉ねぎをふいてから、もう一度乾燥させて、外側に茶色の皮ができたら取り込むんです。黒かびのところもふいてしまうから、腐ることもなく玉ねぎは長持ちします🤗。 お店て買われた玉ねぎも同じです。長持ちするので、良かったらお試しください。 🌿
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できるか できないかではなく 今 やるか やらないか 扉は その一歩から開く 自分を信じる心に たくさんの力を秘めて 眠っている種 その芽ぶきを 繋がった大地で 世界中が待っている 蕾を開き 花が空にのびていく 夏が来る 🌿上野 不忍池 タチアオイの花が咲き始めました。 🌱🌱🌱🌱🌱🌱🌱🌱 so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 24 強くなった陽射しに、田畑の緑が濃くなって、みんなTシャツ姿になっていた。 健太が学校から帰ると、牛小屋に獣医さんと父の姿があった。 もしかして! 健太が駆け寄ってみると、真っ黒な牛の赤ちゃんが生まれていた。 生まれたんだね! やったぁ! 喜ぶ健太に、父が笑顔で話しかけた。 難産だったんだよ。 それで獣医さんに来てもらった。 無事に生まれてよかった。 健太の家の雌牛花子は、真っ黒な体に長いまつげ、健太がそばに行くと顔を近づけてくる。健太にとって家族のような存在だった。 花子の脇に座り込んでいた獣医さんも、立ち上がって健太を見た。 お帰り!健太くん。 弟ぶんが生まれたよ! 良かったなぁ。 難産だったけど、花子は本当に頑張ったよ。お産は人も動物も、命がけだからねぇ。おそらくこれが花子の最後の子供になるだろう。 大事に世話してあげてね。 健太は、牛の赤ちゃんな近づいて、そっと背中を撫でた。 すごいね! 生きてるって奇跡だ! そしていのちを助ける獣医さんって やっぱりかっこいいな。 先生、ありがとう! そう言うと、健太は深々と頭を下げた。 ねぇ、父さん。 この子、一郎って名前をつけても良い?僕の好きな野球選手とおんなじ名前。 父と獣医さんは顔を見合わせて笑った。 良い名前だ。 だが、大きくなったら売らねばならん。情をうつしすぎると辛くなるぞ。 分かってるよ。牛の世話も、今までより頑張るから! 一郎!僕が兄ちゃんだぞ。 元気で大きくなれよ。 牛の子を撫でながら喜ぶ健太を、父と獣医さんが優しく見守っていた。 その日の夕食は、お赤飯に母の心尽くしの手料理が並んだ。 なぁ、母さん、牛の子は、一郎だぞ。一郎。健太と一郎で健太郎だ!はっはっは! 久しぶりの晩酌に顔を赤らめながら陽気に笑う父に、 良かったですねぇ。 母も嬉しそうに笑い声をあげた。 父さんや母さんの笑い声を聞いたの、何年ぶりだろう。 そんなことを思いながら、健太は心のなかで小さな決心をした。 俺、獣医さんになる! けれど健太は知らなかった。 その夜、健太が寝たあと、父の怪我を母が手当てをしていた。 難産で牛の子を取り上げる時に、綱で引っ張った父の小指が骨折していたのだ。赤く腫れ上がった指を冷やしながら、母が尋ねた。 こんなに腫れて…痛いでしょう?骨が折れてるんじゃない?お医者さんに行った方が良いんじゃないかしら? 医者に行って、ギプスでも巻かれてみろ、仕事にならんぞ。それに、医者代もバカにならん。なぁに、そっとしとけばじきに治るさ。 健太の家の家計はギリギリだった。牛の出産で獣医さんの往診も依頼し予想外の費用もかかった。限られた収入のなかで、健太の中学進学に必要なお金に手をつけるわけには行かないと、父は結局医者には行かなかった。 折れた指に添え木を当て、絆創膏で固定して、父はいつもと変わらずに仕事を続け、健太は父の怪我に気づかず、それを知ったのはずっと後の事だった。 🏷️たぬき桜 🏷️健太の冒険 🏷️so・raの小さな物語 🏷️GSの繋がりに感謝♡
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so・raの小さな物語 ** たぬき桜 ** その 23 小さな種が 草の根が 再びの 春を知って いのちを漲らせる 出逢えたことの奇跡 同じ時間を生きた奇跡 にありがとう 🌱2枚目の写真の花は庭の🥕の花 ほんの少し人参の頭から育つ不思議 強く優しく 咲いてみたいな🌱 ************ 🌱たぬき桜🌱 芽吹き始めたたらの芽 ワラビにゼンマイ 息子の学費の足しにと 山菜で一杯になった籠を下ろして 山の畑の土手に腰掛け 父はおにぎり頬張っていた すると突然、後ろの藪がガサガサと 音をたてた。一瞬身構えた父の前に 一匹の狸が現れた。 お前、もしやたぬ吉か? そう問いかける間もなく 先に現れた狸の後ろから、そろそろと子供を連れたメスの狸も現れた。 メスの狸と子狸は、先に現れた狸の周りをくるりと一周すると、後ろを振り返りながらまた藪の中に入っていった。 その姿を見送ると、 狸は父の隣にやって来た。 たぬ吉、お前元氣になって良かったなあ。今日は会いに来てくれただけでなくて、家族も見せに来てくれたのか? 父の声を覚えているかなように、 狸が父の膝に頭をすり寄せ 父は、そっとその頭を撫でた。 お前、たぬ吉だな。 よくわしがここにいることがわかったな。そして、ちゃんと覚えていて挨拶に来てくれるとは。お前も大変だったろうに、可愛い子供だったなあ。家族もできて良かったなあ。 健太もどんなにか喜ぶだろうて。 あれから2年も経ったのか。 手のひらにたぬ吉の温もりを感じながら、父の胸には昨日のことのように、想いがよみがえった。 お前ともっと一緒にいたいが、 こんなところを誰かに見られては大変だ。さぁ、山にお帰り。 父はそう言ってもう一度頭を撫でると、持っていたお握りを半分にしてたぬ吉の前に置いた。 たぬ吉は、お握りを咥え、父の姿を2度3度と振り返りながら、再び藪の中へと消えていった。 父は、たぬ吉の消えた藪をしばらく見つめていたが、にっこり微笑むと腰を上げ籠を背負い市場へ向かった。その日、市場で山菜は思いの外高値で売れた。 帰宅した父から、 山菜が思いの外高値で売れたから健太の靴も靴下もいろいろ買うことができた。それにほら!肉もあるぞ。 報告を受け、買ってきた品々を受け取りながら、いつになく満面の笑みの父に母がたずねた。 まあ、こんなに!山菜が高値で売れて良かったですね。でも、それにしてもあなた嬉しそう。 何かあったでしょう? ははは。父はお前には隠せないなと笑うと、山で出会ったたぬ吉と家族の事を話した。 まぁ、覚えていてくれたなんて、しかも家族を見せに来てくれるなんて…野生の生き物でもそんなことが本当にあるんですね。そう言うと、そっと涙をぬぐった。そして、 なんだか、報われた氣がします。 そう、ポツリと口にした母に、 そうだな、お前も狸騒動以来いろんなことがあって、乗り越えてきたんだものな。わしも同じ想いだ。そう言って父はうなづいた。 その日の夕食時、新しい靴や下着を渡された健太は、 わぁ!ありがとう! と大喜びだった。 それだけじゃないんだよ。 父が山でたぬ吉や家族に出会った話を聞いた健太は、 父さん、本当に!本当?! そう言って一瞬黙るとポロポロと涙をこぼした。それは、健太の胸の奥に長い間閉じ込めていた想いの詮が抜けたかのように、喜びと安心とたまった悲しみが混じりあったような涙だった。 なんだか、涙が止まらないよ。 あれから、本当にいろんな事があって…でも、思うな考えるなって押し込めてきた。それに、たぬ吉も一人で乗り越えたのかなと思うと、本当に良かったなぁって。 それにしても、父さん、俺もたぬ吉に会いたかっなぁ。父さんだけずるいや! 涙にグシャグシャになりながら、そう抗議する健太に、父と母が声をあげて笑い、つられた健太も笑いだし、その夜は家族みんなの心が不思議な安らぎに包まれたのだった。 🏷️たぬき桜 🏷️健太応援団 🏷️GSつながりに感謝♡
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①ノイバラ 「今日のお花」 5月12日 山下公園 今年のノイバラと ❀野バラ (ノイバラ) の花言葉は、 一般的に「上品な美しさ」「純朴な愛」「素朴な愛らしさ」などがあります。また、ノイバラの持つトゲから、「孤独」という花言葉がつけられる場合もあります。 ノイバラの花言葉の由来: ❀「上品な美しさ」: 一重咲きの美しい花姿と、少し控えめな花姿からイメージされる。 ❀「純朴な愛」: 素朴で可憐な花姿と、自然の中で自生する様子からイメージされる。 ❀「素朴な愛らしさ」: 一重咲きの花びらの数や、花後の赤い実など、全体的な姿からイメージされる。 ❀「孤独」: バラ科の植物で、強いトゲがあることから、孤独を連想する人もいる。 その他、ノイバラの花言葉: ❀「才能」: 有名な作詞家や作曲家がよくノイバラを題材に詩や曲を作っていたことからイメージされる。 ❀「詩」: 詩的な雰囲気を持ち、詩作のモチーフとしてよく使われることからイメージされる。 ❀「無意識の美」: ノイバラの自生地である山野の、自然な美しさからイメージされる。 その他: ノイバラは、別名「野薔薇」とも呼ばれる。 ノイバラは、日本全国の河原や野原に自生するバラ科の植物。 ノイバラの花は、5月~6月頃に咲き、花後に赤い実を付ける。 ノイバラの実(ローズヒップ)は、ジャムや紅茶などに加工して利用される。 ノイバラは、バラの台木としても使われる。 ②③薔薇の様子を観に〜♪ 山下公園 ④チューリップを観に〜♪ 横浜公園 ⑤素敵便 ⚜@幸せのサラダ さんよりカヌレ たくさんごちそうさま❣デシタ~♡ 綺麗で〜もったいなくて… やっとさっき食べました\(◡̈)/♥︎ 美味しかった💝✨ これからも仲良くしてちょ(✿ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾
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藤の花 「 今日のお花 」 5月6日 💜藤の花の花言葉は、「優しさ」、「歓迎」、「決して離れない」、「恋に酔う」、「忠実な」など、女性らしい優しさを象徴する言葉が多いです。 「優しさ」: 藤の花が、小さな花をたくさんつけ、それらがゆったりとした動きで風に揺れる姿から、優雅さや優しさを連想させる。 「歓迎」: 藤が風に揺れて相手を招き入れているように見えることから、歓迎の意味が込められている。 「決して離れない」: 藤が樹齢が長く、永遠に続くイメージから、離れないという意味が込められている。 「恋に酔う」: 藤の美しい花姿と香りが、恋心を高めることから、この花言葉が生まれた。 「忠実な」: 藤の花言葉は、女性らしい優しさや誠実さを表すため、忠実なという意味も含まれる。 これらの花言葉は、藤の美しい花姿と香りに合わせて、女性らしい優しさを表現するのにぴったりです。 ✎﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏ 藤は色によっても花言葉が変わります。花の印象とともにその意味を知っておくと、もっと藤の魅力を楽しめます。 🌿藤の花の色別の花言葉 💜紫の藤:気品、優しさ、知性 → 落ち着いた美しさがあり、藤を象徴する代表的な色。年齢を問わず人気があります。 🤍白い藤:純粋、清楚 → 凛とした印象で、結婚式や贈り物にも選ばれやすい色です。 🩷ピンクの藤:愛らしさ、恋愛の喜び → 珍しく、写真映えする春らしい色。気分を明るくしてくれます。 色ごとの花言葉を知っておくことで、見る楽しみ方や、贈る際の気持ちの込め方もより豊かになります。
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