扁桃(アーモンド)

バラ科サクラ属の落葉高木。葉は長楕円形で鋸歯があり表面は平滑で光沢がある。花期は3～4月。花は径2～3㎝、花弁はふつう5枚、雌しべ1個、雄しべ30個余り、葉が出る前に開花する。果実は核果。桃に似るが扁平、果肉は水分が少なく堅いが、熟すと裂けて核を露出する。核は扁平で、割れにくい硬核種から、紙のように薄く割れやすい軟核種まであり、核内にはふつう1個の仁がある。この仁がアーモンドナッツとして利用され、軟核種が果実用として栽培される。

原種は紀元前2500年頃に中央アジアや西アジアで確認されている。広く野生種が分布し変異は大きい。栽培の歴史は古く、4000年以上前から栽培されていた。栽培は、世界中のアーモンドの80％が生産されるアメリカのカリフォルニアをはじめ、スペイン、イタリア、フランス、モロッコ、ポルトガルなどで多く栽培されている。品種は30種類以上。日本には明治時代初期に扁桃(巴旦杏)の名前で導入されたが、気候にあわず、一般には栽培化されていない。

仁に苦味をもつ苦仁種(苦扁桃)と、甘味を持つ甘仁種とがある。苦仁種は薬用としてその抽出油の苦扁桃油は咳止めに使用される。苦仁種は甘仁種より芳香が強いのでアーモンドエッセンス製造用に使われている。苦仁種には青酸が含まれているので、科学的処理をしてから用いられている。香りは杏仁に似ているので、中国料理の杏仁豆腐の香りづけや、リキュールにも使われる。甘仁種の甘仁油は保健によい。アーモンドナッツは甘仁種の仁。仁を包む褐色の薄皮は、熱湯をかけるか、蒸気処理で簡単に除去できる。生食のほか、炒ったり、塩や調味料を加えて油炒めにする。チョコレート菓子や、スライスして練り菓子やアイスクリームに、ペースト状にして菓子類の材料にしたり、広く利用される。

出典『日本大百科全書』『アーモンドを食べるだけでみるみる若返る』