山藤(ヤマフジ)

マメ科フジ属の落葉つる性木本。日本固有種。山野に自生するフジの仲間で、西日本に多く生える。フジによく似るが、フジよりも花穂が短く花はやや大きい。園芸的には花美短(カピタン)と呼ばれて改良品種も多い。花期は4～5月。紫色の花が一斉に咲く。開花時につぼみはほとんど残らない。果実は豆果。秋に熟すと、大きな音とともに莢が捻れて裂開し、黒紫色の種子を飛ばす。つるは編み籠やリース材料に。昔はフジとともに樹皮の繊維で布を織った。

フジの名前の由来には諸説ある。フジのつるの繊維で布が織られていたことから、糸かけである『綜(ふ)を打つ』を意味する『綜打ち』からフジになったという説。つるを鞭(むち)にしたことから『ブチ』がフジになったという説など。漢字の『藤』は中国では植物のつるを意味する。日本では、中国で紫藤と書くフジを藤だけで表すようになった。牧野富太郎はフジとヤマフジを区別するために、フジに野田藤(ノダフジ)という名をつけた。『ノダ』は地名で、現在の大阪市福島区野田である。野田は南北朝時代からフジの名所として知られる。


ヤマフジとフジの主な違いは次の通り。

ヤマフジ
・つるは左巻き
・小葉は4〜6対
・花序は20㎝未満
・花は全花がほとんど同時に開く
・若枝はかなりの期間有毛
・分布は近畿以西
・花はやや大きい

フジ
・つるは右巻き
・小葉は5〜9対
・花序は30～100㎝
・花は上から下へ順に開く
・若枝は最初のみ有毛
・分布は北海道を除く全国

出典『里山の植物 ハンドブック』『樹木 見分けのポイント図鑑』『樹木の名前』