鼠黐(ネズミモチ)

モクセイ科イボタノキ属の常緑小高木。暖地の林に自生し、庭や公園にも植えられる。対生する葉は鋸歯がなく、厚く光沢がある。葉を揉むと甘い香りがする。花期は5～6月。枝先に花序を出し、先が4つに開いた白い花を多数咲かせる。果実は核果。長さ8～10㎜の楕円形で、秋～冬に紫黒色に熟す。核は長楕円形。ヒヨドリなどの野鳥が旺盛に果実を食べ種子を散布する。

果実の形状がネズミの糞に似ていて、葉が黐の木(モチノキ)に似ることが名前の由来。女貞(じょてい)ともいうが、中国では女貞は唐鼠黐(トウネズミモチ)にあたる。種子は女貞子(じょていし)という漢方薬で、滋養強壮や老化防止などに効果がある。太平洋戦争で物資不足だった時代には、種子を炒ってコーヒーの代用品とした。別名の玉椿(タマツバキ)は、葉が椿(ツバキ)に似ることに由来する。本来はツバキの美称として歌などに詠まれる言葉で、柾(マサキ)の別名として用いられる場合もある。


中国原産のトウネズミモチによく似る。主な違いは次の通り

ネズミモチ
・花期は5～6月
・葉を光に透かしても葉脈があまり見えない
・果実は楕円形で、潰すと指が紫黒色に染まる

トウネズミモチ
・花期は6～7月
・葉を光に透かすと葉脈がはっきり見える
・葉や丈が大型
・果実はほぼ球形で、潰しても指は染まらない
・中国原産で工場や公園の緑化樹だが野生化している

出典『里山の花木 ハンドブック』『葉っぱで見わけ五感で楽しむ樹木図鑑』『樹木の名前』