谷空木(タニウツギ)

スイカズラ科タニウツギ属の落葉小高木。日本固有種で、北海道から本州の日本海側に自生する。日当たりのよい沢や林道沿いに生える。枝を挿しただけで容易に根付く性質から、崩壊地や雪崩跡地の植生回復に用いられる。公園の植え込みに改良されたタニウツギが植栽される。葉は対生。先端は尖り、基部は円形～広いくさび形。葉裏は全体に白毛が密生する。花期は5～6月。他のタニウツギ属と同じようにラッパ形の花をつけるが、咲き始めから淡紅色で箱根空木(ハコネウツギ)や二色空木(ニシキウツギ)のような色の変化はない。果実は朔果。円筒形で、秋に熟すと縦に2裂し、中軸の先が細長く出て残る。種子はごく小さく、楕円形で周りに翼がある。果実は長く枝に長く残り、雪が降り積もるような時期にも目につく。

山の日の当たる斜面や谷間に多く見られるウツギなのでタニウツギの名がついた。田植えの時期に花が咲くことからタウエバナの異名がある。初夏の谷間にピンクの花が咲く姿はとても美しいが、火事を思わせるとして、地域によっては火事花(カジバナ)と呼ばれ嫌われている。遺骨を拾う箸や死者のための杖をタニウツギからつくったためか、死人花(シビトバナ)、葬式花(ソウシキバナ)などとも呼ばれる。

出典『都会の木の花図鑑』『草木の種子と果実』『樹木の名前』