寒葵(カンアオイ)

ウマノスズクサ科カンアオイ属の常緑多年草。山地の林内に生える。葉は卵心形で基部は深い心形、表面にしばしば白斑が入る。花期は10～2月。花は地面に埋もれるように咲き、花弁状のものは萼片で下部は筒状。その形のまま果実となり、熟すとくずれて中の種子が出る。種子は倒三角状で大きな種枕(しゅちん💬エライオソームともいう。スミレなどの種子につく物質で、アリを誘引し、種子ごと巣に運ばせて散布させる働きがある)がつく。花をキノコと間違えたキノコバエが花粉を運ぶらしい。ギフチョウの食草としても知られる。

カンアオイ類は本種を含めて日本各地に固有種が多い。カンアオイの仲間は、限られた地方にだけ分布するものがほとんどで、全国どこでも見られる種というものはほとんどない。種子の分布をアリに頼っているため、分布が広がる速度が遅く、そのために各地の集団が独自に分化して様々な種が成立したと考えられる。

冬に葉は枯れない。寒い時期に花が咲く。フタバアオイの葉に似るので『寒葵』という。

出典『野草 見分けのポイント図鑑』『里山の植物 ハンドブック』『草木の種子と果実』『四季の野の花図鑑』