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ランはラン科植物の総称で、2万5千種以上の野生種があり、その分布は非常に幅広く、南極以外の全ての大陸に存在します。主に日本~東アジア原産のランの一部(春蘭、風蘭、エビネ、セッコクなど)を「東洋ラン」、それ以外を「洋ラン」といい、趣味の観賞用や贈答用の花として古くから愛されてきました。
種類にもよりますが、一般的な家庭環境であれば温室がなくても育てられるものも多いです。この記事では、基本的なランの育て方ポイントをご紹介します。
暖かくなったら屋外の明るく風通しの良い場所に置きましょう。与えられる水の量に対して光線が強すぎると葉焼けを起こしてしまうので、その場合は日除けをしてください。
冬はレースのカーテン越しの室内に置きましょう。寒い地方では、窓際に置いてしまうと寒さで傷んでしまうことがありますので、夜は窓から少し離すか、箱をかぶせるなどして下さい。
ランは多くの場合、春から秋にかけて新芽を伸ばす「生育期」と冬に葉の生育が止まり、花芽を出しやがて花を咲かせる「休眠期」があります。
ランの生育期である5〜10月頃には、植え込み材の表面が乾き始めたタイミングで水をたっぷり与えましょう。生育期に水が少ないと株の生育が悪くなり、良い花が咲かなくなってしまいます。
休眠期に当たる11〜4月には、良く乾いてから水を与えましょう。冬の水やりが多すぎると根腐れを起こしやすいので注意しましょう。
ランは厳しい環境を生き抜いてきたこともあり、ほかの草花と比較して、ごくわずかな肥料で見事な生育を見せます。
春の植え替えのときに緩効性肥料を与えるか、春に新芽をのぞかせてから夏の終わり頃にかけて、1〜2週間に一回ほど、1000倍ほどに希釈した液肥を与えましょう。
それ以降に肥料を与えてしまうと、植物内の肥料が余って花芽をつけなかったり、根を痛めてしまう原因になってしまうので、気をつけてください。生育期に肥料を与えるので、花が終わったあとのお礼肥えという感覚とは違うためご注意ください。
※蘭は原則として土を使用せずに育てますが、本記事ではわかりやすく植え込み材料のことを「土」と表現します。
ランの植え替え時期は、生育期にあたる4〜6月です。何年に一度という感覚ではなく、新しく出てくる芽がはみ出そうになったらもしくは、土(植え込み材料)が傷んだら植え替えるようにしましょう。
もし花が咲いていたら、花が終わってから植え替えをしましょう。
ランを植え替えるときに使う土(植え込み材料)は、市販の洋ラン用培養土(ミックスコンポスト)か、水苔もしくはバークを使います。東洋ラン専用の培養土もあるので、ランの種類に合わせて探してみましょう。
比較的高価ではありますが、洋ラン用培養土は排水性・保水性のバランスがよく、根が細い種類のランや初心者に向いています。胡蝶蘭などの根が太い着生ランは水苔もおすすめです。
ここからはパフィオペディラムを例に、洋ラン培養土(ミックスコンポスト)への植え替えを写真付きでご紹介します。
ランの植え替えには、下記のものを用意しましょう。
まずはランをポットから取り出します。種類によっては、根の成長が遅く折れやすいものもあるので、根鉢を揉むのではなく、そっと外すかハサミでポットを切って取り出します。
ポットが抜けたら、苗を揺すって軽く植え込み材を落とします。隙間が少しできたら根を傷つけないようにしながら指をいれるなどして、できるだけ古い植え込み材を落としましょう。
古い植え込み材がある程度とれたら、根のスカスカになっているもの等や傷んで黒ずんでいる部分を、消毒したハサミで切りましょう。ハサミの消毒はライターやバーナーで焼いて消毒するか、リン酸三ナトリウム飽和溶液に15分程度付けておくかします。
新しい鉢に鉢底ネットを敷いて、鉢底石をしきつめ、あらかじめ鉢の3分の1程度まで、新しい洋ラン用培養土などの植え込み材をいれます。
鉢を苗の真ん中にすえて、一番上の根の生え際は、鉢のふちから2〜3cm下の位置になるよう、あらかじめ入れる植え込み材の量を調整します。
あまり押し付けると根が折れるので、そっと置いてちょうどいい位置にしましょう。
根の隙間に入り込むように、少しずつ植え込み材をいれていきます。数回にわけて土を足して、その都度、鉢を揺らしながら根の隙間に土を落としていきます。
根が多く根の間に植え込み在が入っていきにくい場合は棒などを使って根の隙間に植え込み材を積めるようにします。
根の隙間にしっかり土が入ったら、鉢の周りもしっかりと植えていきます。植え替え後は緩効性肥料を鉢のふち側に置き肥しておくといいです。水やりも鉢底から流れ出るまでたっぷり行いましょう。
今回は化粧土の代わりに洋ラン用バークを表面にしいて、より見栄えがよくなるように仕上げました。
こちらの記事では胡蝶蘭を例に、水苔やバークに植え替える方法もご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
ランは花茎の下から順に花が咲き、早く咲いた花から枯れていきます。咲き終わった花を放置すると病気に感染するリスクが上がるので、枯れた花から順次折り取っていきましょう。
また、花茎が黄色くなってきたら、まだ咲いている花がついていても、花茎ごと根本から5cmほどのところで切り取ります。黄色い茎を放っておくと、そこから腐って株全体が弱るので気をつけましょう。
ランの増やし方は「株分け」が一般的です。
株分けは春の植え替えと一緒に作業しましょう。鉢から株を引き抜き、植え込み材料を取り除き、バルブ(茎)を3〜4本ほどつくような分け目を探し、手で優しく分けましょう。あとは植え替えで紹介した方法と同じように、新しい植え込み材とともに植え付けてください。
なお、バルブが少ない場合は無理に株分けすると、両方とも枯れることがあるので、充実した茎が増えるまで控えてください。
ランが注意すべき病害虫は、ほかの植物とくらべて少ないとされています。ただし、下記のような病害虫が発生することもあるので、より良い状態で花を保つためにも、病気や害虫を早期発見できるように、日頃のお手入れを心がけてください。
ウイルス病 | 感染すると、葉や花弁に黒い斑点や色抜けなどが起こり、正常に生育しなくなります。ハダニなどの吸汁害虫の媒介や、ハサミについた汁液により感染し、一度かかると他の株にも感染が及ぶ危険性があります。そのため器具などの消毒作業を忘れないようにしましょう。 |
難腐病 | 細菌性の病気で、あたたかくなってきた春頃、新芽や葉、株が黒ずんで腐敗してしまう病気です。水がたまっている箇所に発生しやすいため、鉢を吊るしたり、植え込み材が乾いてから水やりをするなど、水気が溜まらないようにします。 |
ハダニ | 体長は0.5mm程度と小さいものの、梅雨から夏にかけて繁殖し、葉の汁を吸うなど生育を妨害します。成虫だけ駆除しても、卵さえ残っていれば繰り返し繁殖するので、殺ダニ剤と残留薬剤を用いてどちらも駆除するのがおすすめです。 |
ナメクジ | ナメクジは花弁や葉、出できたばかりの新芽などを食べてしまいます。見つけたら早いうちに殺虫剤で駆除しましょう。 |
アザミウマ | アザミウマは蕾の中に入り込み、花弁の汁を吸います。繁殖力が強く、被害も広範囲にわたってしまうので、見つけたら早いうちに殺虫剤で駆除しましょう。 |
カイガラムシ | カイガラムシはバルブや葉、花茎などあらゆる所で増殖し、汁を吸い株を弱らせます。バルブの薄皮の下や葉の裏などわかりにくいところにつき始め、気がついたときにはカイガラムシの巣になってしまっている事もよくあります。花弁や葉、見つけたら早いうちに殺虫剤で駆除しましょう。 |
ナメクジ以外は植え替えの時にオルトランDXを播いておくとある程度の予防になります。
ランは初心者から上級者まで、誰でも育てがいを感じることができる植物です。難易度も種類によって千差万別ですが、ていねいに育てれば色鮮やかなお花があなたを迎えてくれることでしょう。
ランは一部の種を除き、基本的に一年中屋外栽培をすることは難しいということを認識しておきましょう。比較的寒さに強い品種は、屋内に取り込むだけで冬越しができますが、寒さに弱い品種は、寒さが厳しい冬の場合は暖かい室内で育てたり、夜間は箱をかぶせたりするなどの工夫が必要です。
品種によって耐寒性は異なりますので、購入される際に確認することをおすすめします。
河村賢治
GreenSnap編集部