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sora の物語の一覧

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so.ra
【やまぶきの物語】第8話 その夜、夢の中で娘は山の神様に会ったんじゃと。 神様よぅ、なんでこんなことになったのか、おらにはさっぱりわからねえ。ばっさまも帰ってこねえ。 おら一人で、どうしていいかわからねえ。神様、助けてくれろ。 夢の中じゃったが、娘がザンザン泣いて神様を呼ぶもんだから、ついに夢に神様が言ったそうな。 『 泣くでない。人に聞いてもわからぬものよ。お前の過ちは、お前が歩む道々で気づいていくしかないのだ。今までお前は目を閉じて歩いていたようなもの。目を開けば、見たくないものも見えようが、その倍以上の幸せも見えるのだ。辛かろうが、しっかり目を開いてこれからの道を歩く覚悟をするのだぞ。そして、これから言うことを、しっかり続けていくのだぞ。 今日からは、村中の山の下草や田畑の畦道の草を刈るのだ。困ってる人や村のみんなに尽くすのだ。 そうすれば、きっとお前の幸せが見つかろう。』 朝、目覚めると、娘の頭にはやっぱりキノコが生えていた。それどころか、おでこや顔にも生えていた。むしれば2つに増えるから、娘は泣く泣くほっかむりして、田畑へ出かけていったんじゃ。 娘の噂は、たちまち村中に広まった。娘が食べ物をわけてくれろと、戸に手を掛けるとその戸にキノコが生えた。 近寄らないでくれろ! 村人から避けられて、近寄れば石を投げられて、子供らからは化け物と囃し立てられた。 ちやほやされてそだった娘には、それは想像もしなかった毎日だった。はじめは泣き暮らしていた娘も、仕方なく神様の言う通り、山や田畑の畦道の草苅をするようになったのだった。 子供らに石を投げられないように、昼間は山の草を刈り、早朝や夕方に畦道の草を刈ったそうな。 (続く)
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135
so.ra
【やまぶきの物語】第7話 氣絶していた母さん狐は目を開けると、立つことができずぐったりした子狐に気がついた。その晩は、けーんけーんと母狐のなく声が、山々を震わせるように響いたそうな。子供を助けたい一心で、母狐は我が子を3日3晩なめ続け、子狐はやっと動くことができるようになったんじゃと。 一方、意地悪娘は、そんなことも露知らず、いつになったら狐がお礼を持ってやって来るのかと、ニヤニヤしながら待っておった。しかしのぅ、そんなわけじゃから、待てど暮らせど一向に、狐が現れなんだ。娘は痺れを切らして怒り始めたんじゃ。 あの恩知らずの狐め! お礼にやっていてこいと、はっぱをかけにゃわかるまい! 娘はそういうと、鎌を持って、山道の草をばったとばったとなぎ倒し、いつかの洞穴のところまでやって来た。 やい!狐! 良く聞くがいい! あんたの子を産む助けをしてやった、その恩を忘れたか! 思い出したら、とっととやまぶきの花を持って礼にやってこい! そういうと、にんまり笑い。 娘は山道を帰っていったんじゃ。 さぁて、それから3晩が過ぎた夜明けに、意地悪娘の家の戸を叩く音がする。 ばっさまが不思議に思いながら戸を開けると、そこに白い狐がおったそうな。 ありゃこりやたまげた、白きつねさまでねぇか。 ばっさまが手をついてお辞儀をすると、白い狐は口にくわえた一輪の、真っ白なやまぶきの花を土に置くと、振り返りもせず山へと帰っていったんじゃ。 ばっさまは、狐のきんと張りつめた厳しい顔つきを不思議に思いながらも、白いやまぶきの花を神棚に飾ったそうな。 そして、娘を起こすと心当たりはないか?と訪ねたんじゃ。 娘は、ばっさまに問われて得意顔で、狐の洞穴を探しあて、子を生んでいる狐を助けた話をしたんじゃと。そして、あんまり礼が遅いので催促に行った話をしたそうな。 ばっさま、喜べ。 これはお礼のやまぶきの花じゃ。礼儀知らずの狐もやっと持ってきたか。これでおらも、あの娘以上の金持ちじゃ。 娘の話を聞いて、ばっさまは腰を抜かした。日頃わがまま放題じゃったが、娘の心の浅ましさに涙を流したんじゃと。 お前良くお聞き。 お前さんは、とんでもないことをしたんだよ。自分の欲で動物になんとむごいことを。母狐は無理やり子供を引きずり出されて氣を失うとは、なんぼか痛かったじゃろう。子狐とてなんぼか苦しかったろう、無事であればよいが。。 あぁ、その上、お前さんは、礼を持ってこいと催促に行ったのか。なんと罪の深いことじゃ。欲の深いことじゃ。このわしが間違っておったのじゃ。不憫に思うばっかりに甘やかして、お前の心の目を曇らせてしまったんじゃ。そういってばっさまは一晩中泣いておったが、翌朝になると姿が見えなくなっておったと。 意地悪娘は、ばっさまがなぜ泣いているかもわからずに、やまぶきの花を見てはにこにこしておったが、翌朝になってばっさまの姿が見えなくても、なぁにすぐに顔を出すべぇと、のんきに待っておったそうな。 さて、娘が顔を洗おうと顔を撫でると、頭にはキノコが生えていることに気がついた。 ありゃりゃ~! どうしたことだ!! 娘が驚いてキノコを折ると、今度は二本になった。あまりの出来事に、さすがの娘も青くなった。 さて、飯でも食おうと釜に米をいれると、米もみんなキノコになった。触るもんも、見るもんも、みんなキノコになっていくもんだから、ついには強気な娘も泣き出した。 神様、助けてくれろ。 わしは狐を助けただけじゃ。 なんでこんな罰を受けにゃならん?助けてくれろ。 そうして、ばっさまぁ~!ばっさまぁ~!と呼んだが、ばっさまの姿もとんと見えねぇ。娘は大泣きに泣いておったが、いつの間にか泣きつかれて眠ってしまった。 (続く)
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78
so.ra
【やまぶきの物語】第6話 山は物音一つせず、しんと静まり返っておった。時々バタバタと鳥が飛び立つ音がしては、またすぐに静かになった。 ふん!なにさ! あんな娘にいい思いさせて、私には何もないなんて不公平よ! 私だって、狸の手伝いくらい朝飯前よ! 娘は、鎌で山道の草をばったばったとなぎ払うと、ずんずんと山奥へと入っていった。 さて、狸の洞穴でも見つけようと、娘が周りを見回すと、大きな木の幹に隠れるように、小さな洞穴が見つかった。 しめしめと娘が中に入ってみると、そこには一匹の狐が丸まって、こちらを睨んでおった。 その狐も、どうやら子を産んでる最中で、娘には驚いたが、今はそれどころじゃないとばかりに、再びいきみ始めたんじゃ。 見つけたぞ! これじゃこれじゃ!! 手伝いすれば金の花 意地悪娘はそういうと、なんと狐が産みかかっていた子供を、無理矢理ひっ掴むと、乱暴に腹から引きずり出したんじゃと。 狐は可愛そうに痛さのあまりに泡を吹いて気絶してしまったんじゃ。引きずり出された子狐は、動くこともできなくなっておった。 なんとも可愛そうなことよ。そんなことすらわからずに、娘は大喜びでこう言った。 さぁさぁ、これで良し! おらぁ、手伝いしたんだ。 あとは狐が花をもって、お礼に来るのを待つばかりじゃ。 そういうと、もう用事はすんだとばかり、穴から外に這い出ると、一目散に家へと帰ったそうじゃ。 (続く)
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86
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【やまぶきの物語】第5話 ところがな、村にはそんな話を聞いていた、同じ年頃の意地悪娘がおったんじゃ。 意地悪娘は、やはり両親を早くに失くして、遠い親戚のばっさまに育てられておったんじゃ。 ばっさまは、親のいない娘を不憫に思って野良の仕事はさせずに、綺麗な着物を着せて大切に育ててな、自分は朝から晩まで泥だらけになって働いておったんじゃと。 『なぁ、ちいとばかり、畑仕事を手伝ってくれんかの?』 ばっさまが頼んでも、 『嫌じゃ、綺麗なべべが汚れるからの。綺麗な手が荒れるからの』と、娘は手まりをついて遊んでおった。 ばっさまが具合が悪くて寝込んだときも、娘は腹がすいた、いつになったら飯くれるのかと、ばっさまに催促するばかり、看病もしないでわがまま放題じゃったと。 そんな娘でも、少しばかり器量が良かったもんだから、外に出れば村の若者たちからにチヤホヤされて、いずれ立派な金持ちな婿どのに見初められ、玉の輿に乗るんじゃと夢を見ては、有頂天になっておったんじゃ。 そんなある日、娘は久しぶりに町に出たそうな。一張羅の晴着を着て紅をさして出かけたのに、今日は誰も声をかけない。 不思議なこともあるもんだと思いながら、村外れまで来ると、若者たちが一人の娘を囲んで楽しそうに話をしておった。 娘はボロボロの野良義を着て、化粧ひとつしてないのに、なんとも可愛い顔をしておった。そんな娘の周りを囲んだ若者たちは、意地悪娘には目もくれず、娘の話を聞いては幸せそうに、何度も笑い声が上がっておったんじや。 娘は、その輪の中にそっと入り込むと、みんなの話に耳を澄ませた。そこで、娘と狸との不思議な話の一部始終を聞いた後、一目散に家まで帰ると、鎌とざるをもって家を飛び出したんじや。 (続く)
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123
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【やまぶきの物語】第4話 狸はくわえていた花の枝を、そっと地面に下ろすと、二度ほど振り返りながら帰っていった。 狸さん、綺麗なやまぶきだなぁ。 有り難う、大事に飾っておくからな。 娘は、じっさまにことの顛末を話すと、神棚にやまぶきの花を飾って、その日もせっせと働いたんじゃ。 さあて、その日から不思議なことがはじまったんじゃ。娘がいく先々で、まるで花が咲くように次々に幸せが広がっていったんじゃよ。 田畑の仕事をすれば、たちまち実りは2倍に、近所の手伝いをすれば、仕事がふしぎなほどはかどった。病人の家にいけば、病人はみるまに元気になった。 そんな嬉しいことが続くもんだから、村人は、そらぁ娘に感謝して大事にするようになっていった。 うちに来てくれろ! いんや、うちこそ先に来てくれろ! あちこちに引っ張りだこになるほどじゃった。 やがて噂が広がって、殿様にも娘の話が伝わった。娘に会いに来た殿様は、日頃からの娘の優しさと心がけに感心して、娘に広い農地と立派な家を与えたんじゃと。 娘はやがて気立ての良い婿どのを迎え、じっさまと3人、 仲良く暮らしていったんじゃと。そして、村の親たちは、あの娘のように、優しく親切にするんだと、子供らにいって聞かせたそうな。 (続く)
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so.ra
【やまぶきの物語】第2話 娘は山にはいると、ひとまず大きな樫の木の 根本で雨宿りしておった。 小一時間たった頃、グヌゥ~グヌゥ~と唸り声が聞こえてきたんじゃ。 こら~困ったことになった。 山の獣の縄張りに入ってしまったにちげえねぇ。 娘は恐ろしさに震えながら、どこから声がするのかと耳を澄ませたんじゃ。 娘が座った樫の木 の脇には、山肌に小さな穴が空いておって、どうやらその中から聞こえてくるようじゃった。 声は威嚇すると言うよりも、何だか苦しくて呻いているようじゃったので、娘は恐る恐る穴を覗き込んでみた。 すると、その中に一匹の狸がうずくまっておったんじゃ。 どうやら狸は子供を産んでるようで、子供がうまく腹から出ないもんだから、苦しがって呻いておったんじゃ。 娘はしばらく見守っておったが、あんまり苦しそうなもんで、このままじゃあ死んじまうかもしんないなぁと、だんだん心配になったんだと。 噛まれるかもしんねぇが、その時は仕方なぇ。殺される訳じゃぁなかろう。どれ、手伝ってやるべぇ。 覚悟して狸に近づくと、娘はやさしく狸の腹を撫でたんじゃ。そして、狸が再び呻いた頃合いで、狸の腹から出かかった子狸の頭を息を合わせて引っ張った。 そらぁ、引っ張るぞー。 狸さぁ、頑張れよー。 娘は、里で飼ってる山羊の出産も手伝だった事があったから、少しは慣れておったんじゃ。声をかけ息をあわせて引っ張っることを繰り返し、一際、狸の唸り声が大きくなったかと思うと、するするっと赤んぼが産まれたんじゃ。親狸は安心するように力を抜いて、産まれたばかりの子狸をなめ始めたそうな。 良かったなぁ、狸さん。 娘はにっこり微笑むと、穴から外に出た。外は雨も上がって、うっすら日もさしてきた。 続く 東京 晴れ 14℃ 今日も良い日に💕 これは去年お出かけした山で撮った写真です😊。 山葡萄と思ったのだけど、野ぶどうなのかなぁ?どなたか、ご存じのかたがいましたら、教えてください🙏➡️この実は『ノブドウ』と教えていただきました💖有り難うございました🤗💕
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so.ra
soraの物語 🌿アガパンサスの咲く庭で🌿 その25 最終回 一年後の検査で先生が驚いた声をあげるから、また悪い知らせかと思ってドキドキしてたら、 妊娠してます! これはもう、奇跡です!!って。 そばにいた看護婦さんも、ビックリされて、本当に喜んでくれて、良かったですね!良かったですね!って何度も祝ってくれて。 私抗がん剤の治療や、いろんな治療をした後だから、ちょっと心配だったけど、有貴ちゃんが夢で約束したように私の赤ちゃんになって、もう一度生まれて来てくれたんだって信じて産むことにしたんです。 主人もとっても喜んでくれて。 こんな奇跡があるんだねって。 それで、このところの暑さで、ちょっとつわりがひどくて、少しだけ大事にしましょうかって、入院してたんです。 まぁ、そうだったの。 それは二重におめでとうございましたね。きっと、その有貴さんの生まれ変わりの、可愛いお子さんが産まれるわね。たくさんご苦労なさったから、その分幸せになって下さいね。 老婦人の言葉に頭を下げ、水筒を出して喉を潤していると、遠くから男の子が手を振りながらかけてきた。 お母さ~ん! 目の前に立って息を整えると 握った手を開いて、一枚の四つ葉のクローバーを差し出した。 あ母さん お父さんと行った空き地に たくさんクローバーがあったから、一生懸命探したの。 ほら、すごいでしょ! 四つ葉だよ! お母さんにあげるから! お母さん幸せになるからね。 まぁ有り難う 大切にするわね。 そう言って受けとると、男の子の頭を撫でた。そうして気がついて尋ねた。 あら、カブトムシは? あのね、可愛そうだから近くの木に逃がしてあげたの。きっと、カブトムシもお母さんのところに帰りたいかなって。 そうだったの。 今頃カブトムシも元気になって、きっとお家に帰ってるわね。 男の子の後ろからついてきたお父さんも、ニコニコして老婦人に一礼すると、一恵の荷物を持ち上げ、待たせたね。帰ろうかと声をかけた。 今日初めてお会いしたのに、何だか母がそばにいてくれるような気持ちがして、たくさん話を聞いていただいてしまいました。お陰さまで、とても素敵な時間でした。有り難うございました。 一恵が立ち上がり、そう老婦人に頭を下げると、老婦人の膝に乗っていた猫が膝から飛び降りて、アガパンサスの茂みへと消えていった。 私の方こそ、とても素敵な時間を過ごさせていただいて、有り難うございました。あなたの幸せが本当に嬉しいわ。お体を大切にされてね。元気な赤ちゃんをご出産されますように、祈ってますね。それと、畑仕事も順調にいきますように。 一恵は老婦人と笑いあうと、一礼して歩き出した。 息子を真ん中に、三人が歩く後ろを影法師が並んで楽しそうについていく。 生きるって素敵ね 青空に伸びるアガパンサスの花を見つめながら、老婦人がぽつりと呟いた。 終わり 🌿アガパンサス物語 儚い姿のアガパンサスですが、一年を通して見守るととっても強い花だなと、その姿に心打たれます。大好きなアガパンサスの花に、主人公の姿を重ねて物語を書いてみました。 最後まで読んでいただいて、有り難うございました。
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soraの物語 🌿アガパンサスの咲く庭で🌿 その24 ベンチの脇の茂みから 一匹のみけ猫が顔を出すと 老婦人の足元に体を寄せた 老婦人が背中を優しく撫でると 慣れた様子で 老婦人の膝の上に飛び乗り 膝の上で丸くなった まぁ 可愛い猫ちゃん よく慣れてるんですね そうなのよ いつの間にかお友達に してくれたみたい いつも綺麗にしてるから どこかで飼われてるのかも知れないわね 時々顔を見せて 遊びに来てくれるのよ いいですね 私も猫を飼ってみたいなぁ そうね 猫はちょっと気まぐれだけど とっても癒されるわね あなたはその後お病気の方は 回復されたの? ええ 不思議なんですけど。 有貴ちゃんが亡くなって1ヶ月が過ぎた頃、いつもの定期検査のあと、先生の診察があって。癌が小さくなってほとんど見えないくらいですって。劇的に薬が効いたのか、こんなケースは初めてですって、すごく驚いて喜んでくれて。 一度は絶望的って言われたのに、もう嬉しくて泣いちゃいました。そんなわけでまもなく無事に退院できたんです。 それから、有貴ちゃんが残してくれたノートや本にあった事を参考に、野菜や花の栽培や瞑想や呼吸法やお水を変える事とか、少しずつできることを始めてたんです。やってみると、本当にワクワクして楽しいことばかりでした。 自分の育てた野菜を食卓に出すって、お料理にもこんなに愛情を注ぎたくなるんだなって再認識したり。毎日が今までの何倍も楽しくて有りがたくて。有貴ちゃんに貰ったのは、本当に幸せの種だったんだなあって思いました。 そして、諦めないことや、しっかり自分で調べて意思を持つことや、気持ちを表現する事、少しずつ取り入れていこうって。一度死にかけた命だから、これからは自分を大切にして、楽しく生きていきたいなって思うようになったんです。 それに、自分を大切にできないと、周りの人も大切にできないってことにも、改めて気がついたんです。私が毎日を楽しむようになって、家族が前よりもみんな仲良くなって一緒にいるのが楽しくて、何だか幸せが倍になったみたいで。ほんとに嬉しいことばかりなんです。 あの夏から今日で一年。 今日は一年後の定期検診だったんです。そして、また今日嬉しいプレゼントがありました。 続く
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soraの物語 🌿アガパンサスの咲く庭で🌿 その22 ノートに書かれた手紙を読み終わると、お父さんは申し訳なさそうに言った。 娘のぶしつけな願いで、あなたの気を悪くしないといいんですが。。 いいえ、とっても嬉しくて私、感動してるんです! 一恵は有貴ちゃんのお父さんに、昨日の不思議な夢のことを話して、手に一輪残ったアガパンサスの花を見せた。 そんな不思議なことが。。 驚いたお父さんの目から涙が溢れた。これは失礼しました、慌てて涙をぬぐうと、お父さんは続けた。 妻を亡くしてあのこと2人生きてきました。いつかあのこの子供を胸に抱くことが私のささやかな夢だったんです。 あのこの分も、あなたはきっとお元気になられるよう、私も祈っております。 ここに入ってるのは、あのこが読んでた本です。良かったら読んではくれませんか? お父さんはそう言うと紙袋を差し出した。そこには、有貴ちゃんが読んでいたたくさんの本が入っていた。 涙で濡れた顔を上げると、一恵はお礼を言って本を受け取った。 そして、もしも奇跡が起きて病気が治り、子供を授かることができたら、きっと連絡をしますからと、お父さんと連絡先を交換した。 そんな素敵な言葉をいただけるとは思いませんでした。今日あなたの幸せが私の希望になりました。有り難うございます。 そう言って有貴ちゃんのお父さんは帰っていった。 お父さんが去った病室で、一恵は、有貴ちゃんから貰ったノートに、手に握っていたアガパンサスの花をそっと挟んだ。 有貴ちゃん きっと病気が治るって 信じさせてくれて有り難う。 未来は私達みんなの共同創造なんだよね。だから、素敵な夢が実現できるように頑張るからね。 有貴ちゃんが最後まで挑戦してた未来、夢に見ていた未来、私引き継いでいくね。そして元気になったら、いつか私の赤ちゃんなってまた会いに来てね。 窓から見下ろす中庭には、夕暮れの淡い光のなかで、あの夢の中のように、アガバンサスが青く光って優しく揺れていた。 続く
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soraの物語 🌿アガパンサスの咲く庭で🌿 その21 大好きな一恵さんへ ノートを読んでくれて有り難う これを読んでくれてると言うことは、私は旅だったのね。 痛みが辛くて痛み止の量が増えてきて、頭がだんだんぼんやりしてくるの。手にも力が入らなくなってきてるの。 だから、意識があるうちに、私が知ったたくさんのことを、一恵さんに役立てて欲しくて、このノートを書いたの。少しずつでもいいから、読んでもらえたら嬉しい。 本には 食事のこと、食品添加物のこと、医療のこと、環境のこと、農業や植物のことなどが、可愛いイラスト入りで詳しく書かれていた。 一恵さん、 本当のことは自分で探すのよ。 なぜなんだろう?本当のことがどうして隠されてる?って調べる程、疑問が湧いてきたのよ。 自分で調べて自分を守らなきゃいけないのよ。良く調べて自分で考えて選ばなくちゃダメなのよ。私達の体はじぶんで治す力を持っていて、植物たちは力を貸してくれているの。それを忘れてしまったのは人間なの。100%収穫がないといけないなんてことはない。7割でちょうど調和してうまく回るのよ。緑と生きること、とっても大切なことを忘れないでね。 一恵さん、奇跡って信じてる? 私、もう一度生まれ変わりたい。神様にもう一度生まれ変われますようにってお祈りしたの。それから、奇跡を起こして、一恵さんの病気も治してって祈ったの。 そしたら、夢の中で一恵さんの赤ちゃんになって、一恵さんの抱かれてる夢を見たの。素敵な夢だった。あなたの赤ちゃんになって生まれてこれたら素敵だなぁ。 私が夢に見た未来。 花や緑と一緒に生きる未来。 一恵さんが叶えてくれたら嬉しいな。一恵さんから始まる幸せが、世界中に広がっていくの。素敵だと思わない? もし、小さな奇跡が起きたら、そしたら、生きる希望をもって病気を越えられる? 一恵さん、私応援してるね。 奇跡を信じてね。 きっときっと幸せになってね! 一恵さん、有り難う。 生まれ変わって会える日を夢見て -有貴より- 続く
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soraの物語 🌿アガパンサスの咲く庭で🌿 その20 ドアを開けたのは看護婦さんだった。 体調はどう?有貴ちゃんのお父さんが会いたいそうなんだけど、いいかしら? どうぞ、と招き入れると、有貴ちゃんに面影が似ている小柄な男性が入ってきた。 はじめまして。 有貴の父親です。 娘が世話になってたと、娘からいつも聞いておりました。あなたのおかけで、娘もどれほど勇気づけられたか。大変遅れましたが、今日は一言お礼を言いたくてうかがいました。 はじめまして。 お目にかかれて嬉しいです。 私のほうこそ、有貴ちゃんにとってもお世話になったんです。私のほうこそ、千倍もお礼をしなくちゃいけないほどなんです。 一恵は有貴ちゃんと知り合ったエピソードを話して、お父さんにお礼をいった。 そうだったんですか。 あなたもとっても辛い思いをなさって来られたんですね。そして、ご無事で生きてこられて本当に良かった。 実は、昨夜、娘が、有貴が亡くなったんです。最後はにっこりと微笑んで穏やかな顔でした。声になりませんでしたが、父さん有り難うと言ってくれまして。あのこは、最後まで見事に生きてくれました。 そして、少しの間固く口を結び顔を伏せていたが、言葉を続けた。 闘病中のあなたに、娘の死を知らせるべきか悩みましたが。。娘の荷物を整理していて、あなたに宛てたノートを見つけまして、できたら受け取っていただきたいと。 有貴ちゃんのお父さんは声を震わせながらそう話すと、大切そうに手にしていた紙袋を開いて、一恵にノートを差し出した。 これは? あのこがあなた宛てに書いたノートです。良かったら読んでやってください。 今、読んでも良いですか? お父さんがコクリと頷き、一恵はノートを開いた。 続く
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soraの物語 🌿アガパンサスの咲く庭で🌿 その19 あのね 一恵さん 私好きな人はいたけど 本当の恋をしたことがないの それが、この世界でやり残したこと とっても残念で。 唯一無二の愛する人と出会って 2人で理想の世界を築けたら 素敵なのにって いつも夢に描いてたから。 なのに 病院に入ってしまって、友達までいなくなっちゃったの。神様はみんな私から取り上げちゃうって、真っ暗闇に一人でポツンと取り残されたみたいで。 病気も辛かったけど、ほんとは孤独がとっても辛かったの。 夜になるとこっそり泣いてたのよ。 でも、一恵さんと出会えた。 泣いたり笑ったり。 私、人生でこんなに自分の気持ちを素直に話せた人いなかったし、心から安心してつき合える友達もいなかった事に気づいたの。病気のご利益ね。 神様は何にもくれないって怒ってたけど、最後の最後にとっても素敵な贈り物を貰ってたんだって気づいたの。神様に謝らなくちゃね。 一恵さんにとっては、同じように病気で苦しんで、いのちの瀬戸際で戦ってた知り合いくらいかも知れないけど。 私、一恵さんの存在に たくさん支えられて、頑張って生きてこれた。 孤独に潰されないで乗り越えてこれた。 だから、どうしてもお礼が言いたくて。 有り難う 本当に有り難う そう言って有貴ちゃんは ポロポロと涙を落とした ほほを伝って落ちる涙は 丸いつゆの雫のように キラキラと光っていた。 有り難う有貴ちゃん。 それを言うのは私のほうだわ。 有貴ちゃんがいなかったら、あの時ダイブしていっかんの終わりだったと思うし。 入院してるのに、脱走したり、お菓子を食べたり、大人になってからこんなに冒険したこともなかったわよ。 病気の辛さを忘れさせて貰った。本当に楽しかったね。 死ぬかもしれないって深刻にならないで、こうして乗り越えてこれたのも、有貴ちゃんのおかげよ。 私は有貴ちゃんよりもっと人生を生きたけど、こんなに心の深いところまで話してつき合えた友達ははじめてだったの。 有貴ちゃんが良かったら、ずっと友達でいられたらって思ってるの。私のほうこそ有り難うね。 有貴ちゃんは涙をぬぐうと、照れ臭そうに笑った。 何だかプロポーズの気持ちって、こんなかなって。 ほんとだぁ、そうかも。 2人はいつものように笑いあった。 しばらく笑った後、有貴ちゃんは、一輪の花を差し出した。 これはお礼の気持ち そして私の祈り 受け取って そして 元気になって 私の分も生きてね うわぁ綺麗ね 有り難う 差し出されたプルーのアガパンサスを受け取ると、有貴ちゃんが嬉しそうにコクリと頷いた。 有貴ちゃんの姿がかすんでいくと、手の中で花がぽおっと青白く輝きだした。 これで大丈夫 きっとまたすぐに会えるわ ありがとう 有貴ちゃんの声がこだまのように遠退くと、アガパンサスから舞い上がった青い光が一恵を包んだ。暖かくて柔らかな渦のような光のなかを通って、目を開くと、そこはいつもの病室のベットの上だった。 不思議な夢。 気がつくと一恵の手に 一輪の花びらが残っていた。 あの花だわ 夢じゃなかったのかも その時、一恵の病室のドアを ノックする音がした 続く 🌿 光の粒の中に、一粒一粒観音様が座っているようで、私の大好きな写真です🍀
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so.ra
soraの物語 🌿アガパンサスの咲く庭で🌿 その16 有貴ちゃんは振り向くと、両手を広げて一恵をハグして迎え入れた。 来てくれて有り難う!どうしても会いたくて、看護婦さんに無理を言って伝言を頼んだの。 そういうと、有貴ちゃんはナースコールを持ち上げて,クスクス笑った。 やだ、私を呼ぶためにナースコールで看護婦さんを呼んだの。 そうよ、今日は一恵さんに会いたい緊急事態だったから。 有貴ちゃんは楽しそうに笑うと、一恵さんにプレゼントしたいものがあってと、本を取り出すと一恵に渡した。 まぁ、素敵 アナスタシア物語~響きわたるシベリア杉~ なんだかワクワクするわ。 絵本なの? ううん、とっても信じられないファンタジーのような話なんだけど、現実にあった話らしいの。 いつか父さんの病気を治したくて食べ物とか勉強してるって言ったわね。いろいろ調べていくうちに、食品にも飲み水にもお菓子にも、そして野菜までたくさんの身体に毒になるものが入っていて、それはもう信じられないくらいだったの。本当によく生きてるなって思うほどよ。私達が治療した抗がん剤もワクチンもかえっていのちを縮めるようなものだったの。だけど、じゃあどうしたらいいの?そう思って調べれば調べるほど、出口のない迷路に迷いこんで、本当になんでこんな事を知らずに食べていたのかって悔しくて。でも、癌になって入院しててもう手遅れ、解決策もなくてどうしたらいいのって、とっても辛かったわ。 でもね、この本に出会って救われたの。 いつか話した奇跡のリンゴを育てた木村さんの話、覚えてる?この本は、木村さんと同じことを言ってるんだなって感じたのよ。真実は一つなんだって。 有貴ちゃんは、ほんのり頬を上気させて、目をキラキラ輝かせて話すのだった。 凄いわね。この本にとっても素敵なことが書いてあるのね。 そうよ。ほんとにこの本にもっと早く出会ってたらって。 ここに書いてあるのよ。 有貴ちゃんは本を開くと指さした。 「あなたと庭の植物との間にゆるぎない関係が確立されたら、植物たちがあなたの病を治し、面倒をみてくれる。彼らはあなたの健康状態について的確な診断をし、最も効果的な、あなた専用の特別な薬をつくってくれる」 ちゃんと自分で愛をもって育てた植物は、その人の健康状態を知って、特別な成分を作ってくれるのよ。凄いでしょ! そして、種のまき方から苗木の植え方まで具体的に書いてあるの。ほんとにびっくりすることばかりなの。 続く
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soraの物語 🌿アガパンサスの咲く庭で🌿 その14 人生のどん底にいるときって、辛くて苦しいことが重なるものですね。 あの子、学校でいじめられてたんです。私はいつも忙しくてバタバタしていたから、毎日顔を会わせながら、あの子の顔をしっかり見たり、ゆっくり話を聞いてあげる事もなくて。 夏休みが終わった頃から、朝になると学校に行かないと登校をしぶりはじめて、休みグセがついたからだろうなんて思い込んで、ぐすぐすしないで早くしたくしなさいって、怒って送り出してたんです。 そんなことが1ヶ月くらい続いたある日、学校から子供が怪我をしたから来てくださいって連絡があって。慌てて学校に行ったら、友達に突き飛ばされて滑り台から落ちたって。子供は虫歯一本なかったんですが、前歯を折ってしまいました。 幸い頭の打撲の怪我は軽くすんだんですが、その時やっと子供から話を聞いて、ずっといじめを受けてたってわかったんです。 始まりは、ボス的な体格のいい子に逆らったことからみたいなんですが、そのうちみんなからのいじめの対象になって、何人もから馬乗りされて頭や背中に砂を入れられたり、突き飛ばされてランドセルごと引きずられたり、通せんぼされたり、足をかけられたり、仲間はずれにされたり。。話を聞いていて、本当にずっと辛かったろうって、涙が止まりませんでした。それなのに私ったら、気づいてあげる事もできずにいて、叱ってばかりだったんです。自分が情けなくて、子供に申し訳なくて、子供を抱き締めて泣きました。 その夜、学校からの連絡で、怪我をさせた子の親が謝罪の電話をくれたんです。 でも、お詫びと言うより、子供の遊びですからお互い様ですよねえ、なんて言われて。もう気持ちのやり場がなくて。翌日、主人と学校に行って担任の先生に、今までのいきさつを話し、2度とこんなことがないように対応して下さいってお願いしたんです。先生は調べますって言われたけど、その後返事はないままで、いじめた子たちからも、その親からも、その後一言もなかったんです。もしかしたら首の骨だって折ったかもしれないって、これからの事もあるし、しっかり抗議しようって言ってたんですが、 『かあさん、ぼくもういいよ。 ぼくばもっと強くなるから大丈夫たよ』ってあの子が言うんです。 ちょうどその時は、私が今回の入院をする直前だったんです。 私が体調が悪いのを気づかってそんな言葉を。私は自分の事ばかりだったのに、子供の方が辛いだろうに。 子供ですから守らなくちゃいけないし、無理して我慢させてはいけないと思いましたが、夫が、僕が責任をもって見守る、僕に任せろって、言ってくれたので、私は後ろ髪を引かれながらも、主人に任せて入院したんです。 入院しても心配してました。 いつも大切な時には逃げずに立ち向かいなさいなんて教えてたのに、結局子供を守ってあげる事も、一緒に戦ってあげる事もできなくて、自分が病気でなかったらって悔しくて、入院してからも泣いてたんです。 息子は主人と話し合って、強くなりたいって空手を習い始めたそうなんです。お見舞いにくるたびに、だんだん明るく積極的になって、そのうち学校でいじめる子もいなくなったそうなんです。道場で仲良しの友だちもできて、今は、あんなに元気です。 これまでの間、まだ小さいですから、どんなにか辛かったろうにって思います。私の入院もあって、寂しかったろうって思いますし。 彼なりに辛い時間を乗り越えて、あまえんぼでわがままだったのに、とっても成長したなって思います。そう言って女性は、涙をぬぐい小さく微笑んだ。 そう、大変だったのね。 たくさんの試練が重なったのに、あなたも、息子さんも、ご主人も、とても頑張って、家族みんなで乗り越えられたんですね。 息子さん、元気になられてほんとに良かったわね。 一つ一つの言葉を想いを込めるように口にすると、老婦人は優しく頷いた。その眼には涙が宿っていた。 🌿続く
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soraの物語 🌿アガパンサスの咲く庭で🌿 その13 2人が座るベンチの上で、 ヒグラシが鳴き始めた。 額にかいた汗をぬぐいながら、もうすぐ夏が終わりなんですね。と女性が口を開いた。 あの蝉の声、子供の頃は 惜しいツクツク 惜しいツクツク もういいかい もういいかい って聞こえてたんですよ。 そう言って、女性は笑いながら話を続けた。 まだ、全然夏休みの宿題が終わってなくて、蝉の声にせかされて、べそをかきながら日記をまとめたりして。。 そして、しばらく枝を見上げると話を続けた。 不思議ですね。 あの頃の麦畑の風景や、夏草の匂い、トマトの青い匂いまで、今もとてもリアルに思い出せるなんて。。 そうねと、 老婦人が頷いた。 私も、ふと思い出すことがあるわ。 もうずいぶん昔になるけど、私にも息子がいて、夏休みはずいぶんと山へ虫取りに行くって付き合わされたわ。 思い出の中の自分は年を取らずに、ずっと同じ時間を生きてるのよね。 さっきの可愛い息子さんは、おいくつなの? 小学2年生なんです。 元気な子だったんですが、一年の夏ごろから、忘れ物が多くなったり、学校に行かないってぐずったりして、私怒ってばかりで、あれこれ口うるさくしたものだから、ますます言うことをきかなくなってしまって、主人にもあたったりしてしまってたんです。 でも、本当はあの子の気持ちをわかってなかったのは、私だったんです。 言葉を詰まらせてうつむいた女性の頬を、涙が一筋流れ落ちた。そんな女性を優しく見守る老婦人の前を、木漏れ日に羽を光らせながら、白い蝶が飛んでいった。 続く
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soraの物語 🌿アガパンサスの咲く庭で🌿 その11 父さんのために料理の事を調べ始めたら、いろんな事がたくさんわかったの。。 ねぇ、一恵さん 本物の野菜は腐らないって知ってた?お米も野菜も、農薬も肥料も使わない元気な土で育てたら、水がなくなってしわしわに枯れても腐らないんだよ。 お米もそうなんだって。 私それを知ってビックリした。 そんな大切なこと、どうして誰も教えてくれないんだろうね。 奇跡のリンゴの映画をネットで見たの。それから木村秋則さんの講演もYouTubeで聞いたの。 どんな草にも役目があるって、木村さんは言うの。どんないのちも丸のまま肯定してて、私は病気の自分もみんな包み込まれて、そのままでいいよって優しく抱き締められた気がして、涙か止まらなかった。 花や葉っぱに虫がつくのは土が汚染されてるからなんだよ。元気な土になると虫もつかなくなるんだって。だから、農薬も要らなくなるって。 だけどね。一度肥料を施された土が戻るのに3年、農薬が施された土が戻るのに7年~10年もかかるんだって。だから、みんな途中で諦めちゃうって。 お塩もね、今作られてる塩は、薬品のように作られる塩なの。ほんとのお塩はマグネシウムとか、ミネラルがたくさん入ってるんだよ。 父さん、血圧が高くて調べたの。化学薬品みたいな塩を食べるから血圧が上がるけど、天日干しのミネラルがたくさんある塩を食べたら、全然大丈夫なの。 これはね、そう言って指差したのは、お日様に干したベットボトルだった、STAP細胞で身体が活性化して若返る、玄米乳酸菌のレシピなんだよ。水と玄米と塩と黒砂糖だけでできるんだよ。すごいよね。作ってみたかったなぁ。 これはね、葉っぱ療法 葉っぱを貼るだけなんだって、怪しいけど効くみたいだよ。自然って、底無しに神秘的だよね。 そう言いながら、有貴ちゃんは ノートをめくって楽しそうに笑いながら、これまでの成果を話すのだった。 一恵さん、私が毎日食べてた物は、命の脱け殻の、毒で一杯の形だけの食べ物だったの。 だから、身体に苦しめて悪かったなぁって。。私ね、わかったことを本を書いてみんなに教えてあげたいなって。そしてね、広い土地を買ってみんなと畑や田んぼを作りたいって思うの。大好きな果物もたくさん育てたい。庭には鶏を放し飼いにして、近くの小川には、ドジョウや魚がたくさんすめるようにして。たくさんの人と繋がって、命の村を作りたいんだ。 病気になってる場合じゃないよね。時間が足りなくて、悔しいよ。 有貴ちゃんは、キラキラ目を輝かせながら、そんな話をしてくれた。 つづく 🌿玄米乳酸菌や葉っぱ療法は、ネットで調べるとやり方がわかります。良かったら試してみて下さいね。無農薬といわれる野菜とそうでない野菜を並べて、腐る早さを比べてみました。無農薬と表示されてる野菜なのに、早く腐ってしまうものもあって、肥料などの違いかなって思ったりしました。この事を知って、自分で確かめてみて、本物の野菜がわかるんだなって思うようになりました。 それから、実は、私は一昨日、怪我をしてしまったんです。室内で虫を見つけて捕まえようと椅子に登ったら、足を滑らせて落ちた弾みに机の角に肋骨を強打してしまい、痛みがお腹まで走り息ができなくなって、あぁ肋骨折れちゃったかなって。以前、ニ回右の肋骨を折ってるから同じだなって。 湿布をして、庭で育ててる琵琶の葉を患部に当てて安静にしてました。 そう、チャンスなんで葉っぱ療法を試したんです。今日で三日めになるけど、だいぶ痛みも引いて、ほんとに楽になりました。以前の時と比べて三倍くらいの回復力。私が育てた琵琶の木だからかな?自然のちからってほんとに神秘的って思いました💖
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soraの物語 🌿アガパンサスの咲く庭で🌿 その10 父さんが倒れたって聞いて、私父さんと2人きりなんだって、今更ながら気づいたの。 どうしよう、もし、父さんがいなくなっちゃったらって怖くって。 何て言ったらいいか、深い絶望の暗闇を見たような気持ち。 看護婦さんの許可をもらって、ちょっとだけならって、父さんの病室に行ったの。 父さん、やつれて真っ白な顔をして寝ていたの。その顔を見ていたら、涙がポロポロ溢れてきて、父さんごめんねって、父さんたくさん有り難うねって。 私、その時初めて、父さんがどんな気持ちで私のベットに毎日足を運んでくれたか、ちょっとだけ気がつくことができたのよ。 私の命が永くないことを知ってて、一人残される気持ちとか、 きっと悲しくて泣きたい時もあったのに、誰にも愚痴をこぼさないで、ずっと私に笑顔を向けてくれてた父さん。 毎日、早く仕事を終わらせて、私の病室に来てくれて、遅くまで付き添ってくれて、洗濯物とかいろんな事もしてくれて。 持ち帰った仕事を、きっとその後したりもしたんだと思う。 私の治療費もきっとたくさんかかって、お金の心配もあったと思うし。 考えたらきりがないよね。 たった2人きりの家族なのに、父さんの体の心配もしてあげられなくて、私自分事ばかりだったってほんとに情けなくて、涙が止まらなかった。 父さんね。少ししたら目を覚まして、泣いてる私を見つけて頭を撫でてくれて、 大丈夫だよ。心配かけたねって。 私、ホッとして、父さんに抱きついて死なないでねって。 2人で泣いたの。はじめてみる父さんの涙だった。 有貴ちゃんの頬を涙がスーと一筋流れた。 一恵さん、私ね、その時に決めたの。元気になったら、父さんに美味しいご飯を作ってあげよう、父さんが元気で長生きできるよう、いろんな事も調べようって決心したの。 私、もうすぐ死んじゃうから、どうせ何をしたって意味ないと思ってたの。でも、そんなこと関係ないって気がついたの。 私がいなくなった後も、父さんが元気で過ごせるように、簡単にできて栄養のあるご飯のレシピを作ろうと思ったの。もし死んだら、もう一度生まれ変わって、父さんに美味しいご飯を作ってあげられるように、きっと生まれ変わって来るって決めたの。終わりなんかないって思ったの。 父さんをたくさん幸せにしてあげたいって思ったら、あと少ししか時間ないのに、ほんとに、毎日もったいなかったなって思ったのよ。 ほら、これがそのレシピ。 有貴ちゃんは、ちょっとはにかみながら、ノートを見せてくれた。 そこには、かわいいイラスト入りの料理と、作り方と、お父さんへのメッセージが添えられてた。 うわー。すごいね! 可愛くて、わかりやすくて、 それにこのお父さんへのメッセージ、愛がこもっててホロリってくるわ。 一恵が感動してページをめくるのを、有貴ちゃんは嬉しそうに眺めていた。 ねっ!ナイスアイデアでしょう!父さんね、毎日楽しみに持って帰って、感想を教えてくれるのよ。 体は痛くて辛いけど、入院して初めての幸せな時間。一恵さん、誰かのためになにかできるって、ほんとに素敵ね。 そう、自分のいのちの役目はいつでも見つけられて、終わりなんかないんだって。そして、父さんに毎日レシピを書いてるうちに自分が死んでしまう恐怖も薄らいできたの。何だか、そのさきも続きがあるような気がして。 ねぇ、一恵さん、生まれ変わりって信じる?生まれ変わって続きを生きるってできると思う? 私夢を見たの。生まれ変わって続きを生きてる自分。たくさんの人に囲まれて、良かったね、有り難うねって、喜びあってる私の夢。可笑しいわね。 有貴ちゃんは笑って続けた。 私ね、決めたの。そのさきを生きるために今できることを最後までやり抜こうって。 それからね。。 そういうと、有貴ちゃんはもう一冊のノートを取り出した。 続く
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