甘茶(アマチャ)

アジサイ科アジサイ属の落葉低木。まれに自生し、多くは栽培される山紫陽花(ヤマアジサイ)の変種。花期は５～６月。周囲に目立つ装飾花がつき、中心部に小さな両性花が多数集合している。装飾花は先端が丸みを帯び、重なりあって１枚に見える。葉が赤紫色を帯びるのが特徴で、葉に甘味成分を含み、甘茶、甘味料、薬用に利用する。生の葉は噛んでも苦いだけだが、葉を摘み水をかけた後に積み重ね、むしろをかぶせて発酵させ、手で葉をよくもんでから乾燥させて煎じると独特の香りをもつ甘い飲料ができる。甘味成分のフィロズルチンは砂糖の１０００倍、サッカリンの２倍も甘く、食事療法やダイエットに使われる。

本種は、毎年４月８日に行われる灌仏会(花祭り)に出される『甘茶』の原料。灌仏会(かんぶつえ)とは釈迦の誕生を祝う仏教行事のこと。花で飾った花御堂の中に釈迦の誕生仏を安置し、人々は小さな柄杓に甘茶を汲み誕生仏の頭にかける。持参の容器に甘茶を入れ、家で分け合って飲んだ。

出典『里山の花木 ハンドブック』『樹木の名前』