狐の剃刀(キツネノカミソリ)

ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草。山野に生える。葉は早春に伸びだし、長さ30〜40㎝、幅0.8〜1㎝で、夏になると枯れる。花期は8～9月。葉が枯れたあと、花茎が伸びて高さ30〜50㎝になり、黄赤色の花を散形状に3〜5個つける。花被片は斜開し、反り返らない。雄しべは花被片とほぼ同じ長さで、葯は淡黄色。果実は蒴果。直径約1.5㎝の扁球形。地下の鱗茎は黒褐色の外皮で包まれた径4㎝ほどの広卵形。有毒部分は全草。特に地下部の鱗茎に毒成分が多い。アルカロイドのリコリンを含み、中毒症状は嘔吐、下痢による脱水性ショック。嘔吐、下痢が続くことで身体から水分が失われて、胃腸炎、呼吸不全、痙攣などを起こして死に至る。

変種のオオキツネノカミソリは雄しべが花から大きく飛び出すのが特徴。ムジナノカミソリは長崎県対馬と宮崎県のみに自生し、花の大きさも雄しべの長さもキツネノカミソリとオオキツネノカミソリの中間。

春に伸びる白緑色の細い帯状の葉を、キツネが使うカミソリに見立てたことが名前の由来。有毒で役に立たないためキツネとついたという説もある。別名にキツネノタイマツ、キツネユリ、キツネバナなど。

出典『野に咲く花』『色で見わけ五感で楽しむ野草図鑑』『夏の野草』『薬草の呟き』