烏野豌豆(カラスノエンドウ)

マメ科ソラマメ属の越年草。道端や畑、野原など日当たりの良いところに生える。小葉は巻きひげとなって絡みつき、普通先端は3つに分かれる。葉の下の托葉や萼などに蜜腺がある。花期は3～6月。紅紫色の蝶形花が葉腋に1〜3個つく。果実は豆果。熟すと真っ黒になり斜め上を向いて2裂し、よじれて種子を飛ばす。種子はほぼ球形で、莢に10個ほど入る。春先の蔓や青い果実は食べられる。蔓は先端部から10〜20㎝のところに手を当て、軽く曲げて折れるところから先が食べられる。

植物は花以外のところに蜜腺(花外蜜腺)をつくり、アリを呼んで外敵を追い払わせる。カラスノエンドウには葉の下の托葉や萼になどに蜜腺があり、アリがイモムシなどの天敵を追い払う。ところが、カラスノエンドウに大量に群れて茎や葉の汁を吸うアブラムシには効果がない。アブラムシから分泌される『甘露』と呼ばれる液体はアリの大好物で、アリはアブラムシを守る。『花外蜜腺』でアリを警備員として雇うカラスノエンドウの作戦も虚しく、茎にはアブラムシがびっしりとつく。

名前は、果実が『烏』のように黒くなる『野』に生える『豌豆』という意味。また、『烏』は物の大きさの例えという説もある。昔の人は植物の名前をつける時、よく知っている動物の名前を借りてつけた。特に大きさの大小を表すことが大切な時は、名前だけで大きさが想像できる動物を選んだ。カラスノエンドウとスズメノエンドウ、カラスウリとスズメウリなどである。大きいもに『烏』、小さいもに『雀』、さらに小さいものに『蚤(ノミ)』、烏より大きいものには『鬼』をつけた。

出典『野に咲く花』『草木の種子と果実』『薬草の呟き』『すごすぎる雑草』『野草の名前 春』