甘茶蔓(アマチャヅル)

ウリ科アマチャヅル属のつる性多年草。雑木林や林縁に生える。葉は鳥足状複葉で、ふつう5小葉だが、3または7小葉のこともある。花期は8～9月。雌雄異株。葉腋に直径約5㎜の小さな黄緑色の花を総状につける。果実は液果。直径約7㎜の球形で、熟すと黒緑色になる。萼や花冠の跡が環状の線になって残る。液果に種子は1〜3個。

古い頃から青森県下の農山村では、アマチャヅルの全草を刈り採って天日で乾燥させ、タライに水と一緒にこの草を入れて洗濯に使った。もみ洗いすると泡が出て汚れが落ちる。電気洗濯機が普及するまで、この地方では洗濯剤として利用されていた。

本種は茎葉に朝鮮人参と同じ成分を含むことが分かってから一時ブームになった。朝鮮人参に含まれるサポニンであるジンセノサイド11種類中4種を含むが、朝鮮人参のように興奮作用を起こす成分が含まれていないので代用にはならない。

アジサイ科アジサイ属の落葉低木に甘茶(アマチャ)という植物がある。まれに自生し、多くは栽培される山紫陽花(ヤマアジサイ)の変種で、葉に甘味成分を含み、甘茶、甘味料、薬用に利用する。生の葉は噛んでも苦いだけだが、葉を摘み水をかけた後に積み重ね、むしろをかぶせて発酵させ、手で葉をよくもんでから乾燥させて煎じると独特の香りをもつ甘い飲料ができる。これが毎年4月8日に行われる灌仏会(花祭り)に出される『甘茶』である。アマチャヅルの生の葉を噛むとかすかな甘みがある。それを甘茶になぞらえて名前にアマチャがつき、草姿が蔓であるからツルが加わった。

出典『野に咲く花』『薬草の呟き』『野草の名前 秋』